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【ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSE】
Episode 21 霧が来る2021 後編

2021.08.14

ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSE 月刊ホビージャパン2021年9月号(7月21日発売)

【ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSE】 Episode 21 霧が来る2021 後編

 ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSEフォトストーリー特別編(後編)。
 SEVEN SUITの新装備テストの最中に起こった寄生生物による惨劇。その被害は想像以上に深刻だった。次々に寄生され暴走する職員から逃げ惑う堀井の子供たち。彼らを保護したZERO SUIT=次郎にも、寄生生物の魔の手が忍び寄る…。

ストーリー:長谷川圭一 設定協力:谷崎あきら ULTRAMAN SUIT ZERO〈LMモード〉SEVEN SUIT 製作:只野☆慶 曙丸 製作:アスイ

Episode 21 霧が来る2021 後編

 科特隊本部が未知の寄生生物による襲撃を受けてから既に三〇分が経過した。
 刻々と報告される被害状況を聞き、ため息を漏らす井手。防護隔壁は作動せず、霧と共に移動する寄生生物により被害は爆発的に拡大。寄生された人間たちは急速に増え続け、手の施しようがない。
 進次郎と北斗は上海のダイブハンガー建設地だ。連絡したところで到着するまでに最速でも二時間はかかる。それまでは持たないだろう。今は諸星と薩摩だけが頼みの綱だ。

 諸星は井手からの通信で、寄生生物による汚染は例の隕石が運び込まれた分析室を中心に発生していることを知る。
「隕石をぶち壊してくる。マヤはここで待っていろ」
 諸星は再度SEVEN SUITを装着。マヤを残し汚染エリアへと向かった。

「何やて!」
 展示館の一般客の避難は完了。無人の館内でミチルと合流した堀井は継夢と未来がいないことを聞く。
「ミチル。二人はわしが必ず見つける」
 一緒に行くと言うミチルを説得し、堀井は継夢と未来を探しに向かった。

 同時刻、職員通路には白い霧があふれ、寄生生物に操られた職員たちが継夢に迫っていた。
 その時、継夢のピンチを救ったのは薩摩次郎だった。先日の川上鉄太郎、そして早田との戦闘訓練がものを言う。次郎は素早い動きで的確に寄生された人間たちを倒し、継夢を守る。
「今のうちに安全な場所に行こう」
「待って! 未来を見つけな!」
 継夢はかくれんぼをしていた妹がまだどこかにいるはずだと次郎に言った。

SEVENとZERO LMモード

 SEVENはEXライフルを携え汚染エリアに到着した。分析室はすぐそこだ。周囲は濃い霧が充満しているが、SUITにはBNC防護機能がある。吸引してしまう心配はない。壁と言わず天井と言わず貼り付き蠢いている寄生生物のコロニーが、次々に弾けては濃密な霧をSEVENに浴びせかける。
「無駄だ!」
 ライフルで片端から撃ってゆくが、すぐに弾薬の無駄と気付いた。事が終わってからゆっくり洗浄すればいい。だが、廊下の両サイドから寄生された職員たちが次々に迫ってくるのには閉口した。射殺するわけにはいかない。EXライフルのマガジンをノンリーサルのゴム弾に交換し、衝撃による無力化を試みる。骨にヒビが入るくらいのダメージはあるはずだが、痛みを感じないのか、多少後ずさりはするものの、一向に怯む気配がない。手こずるSEVEN。

 残されたマヤの脳裏に、運び込まれた隕石を見た時の記憶が蘇る。
 あの違和感は気のせいじゃなかった。あの時ちゃんと話していれば被害を未然に防げたはずだ。激しく後悔するマヤ。──私も何かしなくては。
 マヤは、意識を仮住まいさせているガイドボットの無線ネットワークアダプターを開き、電子生命体として再び本部の基幹システムに接続。現在の寄生生命体による被害状況を把握すると、諸星のあとを追い、汚染エリアへと向かった。

「継夢! 未来! どこにいるんや!」
 必死に二人を探す堀井。と、その前に中島と土井垣が現れる。
「わしの子供らが逃げ遅れた! 頼む、一緒に探してくれ!」
 頭を下げる堀井。だが二人は無反応だ。
「どないしたんや……あ」
 中島と土井垣が不自然に首を傾けると、そこに寄生生物が貼り付いていた。

 継夢と一緒に未来を探す次郎。だが寄生された人間たちに前後を塞がれ、完全に囲まれる。
 継夢を守るにはメンテナンス中のZERO SUITを装着するしかない。次郎が腕のポインターでZEROを召喚しようとした時、
「あ! お父ちゃん!」
 現れる堀井。思わず駆け寄る継夢。だが堀井の首には寄生生物が蠢いていた。
「行っちゃダメだ! ……うあっ!」
 継夢を引き留める次郎の首に寄生生物が貼り付いた。
「に……逃げろ」
 継夢を突き放す次郎。瞬時に寄生生物に自分の記憶が検索されていることを知覚する。
 寄生生物は、次郎がZERO SUITを装着しようとしていたことを知り、その力で自分たちの脅威を排除しようと判断した。脅威とは──SEVENだ。
「操られて……たまる……か」
 だが次郎の意識はそこで深い闇に沈み、消えた。

 汚染エリアに向かうマヤ。ふとアンドロイドの指向性マイクが何かを捕える。人間の、幼い女の子の声。怯えている。マヤは迷わずその声の主の元へと向かい、ロッカーの中に隠れていた未来を発見する。
 メタリックなアンドロイドの出現に驚く未来。
「安心して。こんな姿だけど、心優しいお姉さんだよ」
 未来を落ち着かせ、事情を聴くマヤ。兄とかくれんぼをしていたら、この異常な事態に巻き込まれ、ずっとここに隠れていた。涙をこらえて話し終える未来をそっとマヤが抱きしめる。
「怖かったね」
 こんな幼い少女がどれほど心細かったことか。マヤには未来の気持ちが理解できる。自分もそうだった。両親と離れ離れになり、ずっと自分を迎えに来てくれる時を待ち続けた。
 だけど……。
「会いたいよ。お兄ちゃんに。お父ちゃんに。お母ちゃんに」
「大丈夫。必ず会わせてあげるから」
 マヤは汚染エリアに向かうのは止め、まずは未来を安全な場所まで連れて行こうと考えた。だがネットワークに接続し、状況を確認したマヤは予想外の状況を知る。
 寄生された人間たちは今や全職員の八〇パーセント以上。その人間たち全てが一斉に地下エリアある場所を目指し動き出していた。その為、マヤと未来がいる場所から外への退路は全て塞がれていた。
 いずれのルートを進んでも寄生された人間たちとの遭遇は避けられない。未来を連れた状態で彼女を守り切れるのか? どうすべきか考えた末、マヤは一つの決断をする。
 寄生された人間たちを突破するのではなく、このまま最初の目的通り、汚染エリアに向かい、弾と共にこの事件の根源を破壊する。それがベストと判断した。
「これから怖いことがあると思う。でも私を信じて」
「……うん」
 金属とプラスチックでできたアンドロイドの言葉に、未来は疑うことなく素直に頷いた。
 この子は守る。絶対に。その決意を胸にマヤは再び汚染エリアへと向かった。

 継夢は恐怖で痺れる頭で理解する。さっきまで自分を守ってくれていた次郎が、今は自分を襲おうとしていることを。それだけでは無い。そうなってしまったのは大好きな父親のせいだ。寄生生物に操られた堀井が感情の無いドロンと曇った目で継夢を見つめ、ゆっくり迫ってくる。
「……もう駄目や。ごめんな、未来」
 継夢が呟いた時、思わぬことが起きる。ZERO(次郎)を先頭に寄生された人間たちが継夢の前を通り過ぎ、どこかへと歩き去ったのだ。何が何だか分からない継夢。助かったのかもしれない。……いや、違った。
 全ての人間が立ち去ったと思ったが、三人だけその場に留まっていた。中島、土井垣、そして、父──堀井が。

 マヤは未来と共に汚染エリアに向かっていた。その途中、状況確認のためにシステムを確認し、愕然となる。地下の隕石を守るために集まる人間の中に意外なIDを発見した。
 ZEROだ。すなわち薩摩次郎が寄生生物に支配され、今まさに背後から迫っていた。
ネットワークを通じてZERO SUITに宿る意思に呼びかける。駄目だ。C4Iも音声通話も弾かれた。外部との接続を物理的に封鎖しているのかもしれない。
 急がなくては。この最悪の状況をどう打開できるのかは分からない。でも今は諸星の元に行くしかない。マヤは未来を抱き上げ、汚染エリアへと急いだ。

「やめて……お父ちゃん」
 迫りくる堀井、中島、土井垣。継夢は父といつも喧嘩ばかりしている二人の天才エンジニアと何度か遊んだことがあった。父が知ると不機嫌になるのは分かっていたから言わなかったが、二人ともとても気のいい面白い人で、継夢は三人仲良くすれば最強なのにと常々思っていた。そんな三人が今、力を合わせて自分を襲おうとしている。悪夢だ。
「助けて、お父ちゃん!!」
 もう一度継夢が叫んだ時、堀井の眼に微かに光が戻り、次の瞬間──
「人間……舐めたら……あかんで!」
 継夢に襲い掛ろうとしていた中島と土井垣に殴りかかり、三人が掴み合いの大喧嘩になった。
 見つめる継夢。すぐに感じた。父が自分を守ろうとしているんだと。
 何とかして父に加勢したかった継夢は、無意識に近くにあったホースを握りしめ、水道の蛇口を開いた。勢いよく出る水が堀井と中島、土井垣に掛ると、次の瞬間、彼らの首に貼り付いていた寄生生物が剥がれ落ち、しぼむように消滅した。
「一体……何が起きたんや……?」
 我に返り茫然と呟く堀井がホースを握り締める継夢を見つめる。
「……継夢!」「お父ちゃん!」
 しっかり抱き合う親子。
「怖かった怖かった怖かった!」「ごめん。ほんま、ごめんな」
 そんな二人を見つめ、中島と土井垣も正気に戻る。
「あの、俺たち……今まで……」
「寄生生物に操られていたんや」
 堀井は今の状況を冷静に分析し、答を導き出す。
「水……そうか。ようやく、全てわかったで。奴らの正体が。あれは霧じゃなかったんや」

「きりが無い」
 汚染エリアでは雲霞の如く襲い掛る寄生された人間たちにSEVENは苦戦。事件の元凶の隕石に近づけないでいた。そこへ駆けつけるマヤと未来。
「マヤ! どうして!?」
「聞いて、弾! 薩摩次郎君が──」
 状況をマヤが伝えようとした時、それより早く、背後から猛然とZEROがSEVENへと突進し、襲い掛かった。
『次郎が寄生生物に支配された。俺の力ではどうにもならない!』
 SEVENを攻撃しながらZEROがスピーカーを通じて言った。首筋の装甲が不自然にめくれ、貼り付いた寄生生物のコロニーが露出している。ZEROはSUITの制御権を寄生生物に奪われてしまったらしい。
 更に数十人の人間たちもSEVENに襲い掛かり、絶体絶命だ。マヤは未来を守りながら、この状況を突破する唯一の方法を思いつく。成功するかは分からない。もしかしたら自分も取り込まれ、大切な人を襲うかもしれない。
 でも、やるしかない。
 マヤが宿るアンドロイドが素早い動きでZEROを羽交い絞めにした。が、次の瞬間、邪魔だとばかりに強引に薙ぎ払うZEROの鉄拳がアンドロイドの頭部を破壊した。
「マヤ!!」
 思わずSEVEN──諸星が叫ぶ。電子頭脳が破壊されればマヤは……。
 その時、ZEROの体色の赤い部分が青色に変化。マヤがZEROの中に侵入したのだ。
 青いZERO──LMモードは尚も抵抗し、SEVENに襲い掛ろうとするが、ある程度の知能を備えるとはいえ、寄生生物ごときが電子戦でマヤにかなう道理はない。たちまち制御を奪還したマヤは、次郎をSUITから強制排除することで寄生生物の支配からZEROを取り戻した。
「ごめんね、弾。言いつけ守らなくて」
「いや。よくやったぞ。マヤ」
 諸星とマヤの会話に、無線でZEROの意思が割込む。
『二人とも、まだ終わったわけじゃないぞ』
 確かにその通りだ。次郎を含め寄生生物に操られた人間たちが一斉にSEVENとZEROに襲い掛かってくる。
 早く分析室の隕石を破壊しなければ。だが寄生された職員たちの壁がそれを阻む。
「これじゃ埒があかない」
 焦れるように弾が呟いた時、井手からの通信が入る。
「堀井君からの報告で霧の正体が判明した」
 正確には、霧ではなかった。水の微粒子からなる霧ではなく、寄生生物が放散する微細な胞子の煙。それが火山の噴煙に生じる火山雷のように粒子の摩擦によって静電気を起こし、その放電を利用して互いにネットワークを形成、群体としての意思統一を図っていたのだ。
 静電気ならば、相対湿度を上げることでその発生を劇的に抑制することができる。
「つまり奴らの弱点は、水だ」
「わかりました」
 井手からの通信を受け、諸星は閃く。寄生生物を一気に全滅させる方法を。
 SEVENがEXライフルで天井のスプリンクラーを無造作に撃ち抜くと同時、大量の水が噴き出した。降り注ぐ水を浴びると、寄生された職員たちがバタバタと倒れ、首に貼り付いた寄生生物のコロニーも急激に萎縮・剥離し流されてゆく。
「マヤ」「うん」
 諸星の言わんとすることを瞬時に理解したマヤはシステムにアクセス。本部内の寄生された人間がいる全てのエリアのスプリンクラーを作動させた。これで寄生生物は殲滅できた。残るは分析室の隕石の処理だ。

 井手の指示で液浸チェンバーが用意され、隕石を水に浸漬させた状態で大深度地下耐爆試験坑に移送、爆破処理することになった。
 チェンバーを運ぶSEVENとZERO・LMが試験坑に至るエレベーターを半ばまで降下したとき、またも異変が起こった。チェンバー内の水が消えたのだ。隕石が吸収したとしか考えられない。そして隕石の重量と体積が急激に増大、見る間にチェンバーを割り裂き、同乗するSEVENとZEROを圧し潰さんばかりに膨張した。重量オーバーの警告が鳴る。
 壁に圧し潰されながら、SEVENは器用にソードを鞘から抜き放ち、壁ごとエレベーターシャフトを斬り裂いた。シャフトの外は既に試験坑の中、床面は三〇メートルほど下だった。
 壁面に剝き出しのエレベーターシャフトから、二人は膨張した隕石もろとも転げ落ちるように飛び出した。SEVENはZEROの手を取り、壁面にソードを突き立てて落下速度を殺す。ソードが壁面を擦る甲高い音と、隕石が床面を叩く轟音が試験坑の大伽藍に反響した。
 隕石はまだ膨張を続けている。蟹が泡を吹くように、球状の細胞が増殖していくかのように見えた。数十メートルに肥大した隕石は、ついに立ち上がり頭部を振り立てて軋むような咆哮を上げた。頭部に相当する部位に目らしき器官は見当たらないが、全身を覆う球状の瘤に穿たれた円形の窪みがあたかも目のように見える。

「隕石に水を与えたのは迂闊だったか!!」
 指令室でモニターする井手が歯噛みした。
 寄生生物が水を嫌うのは、胞子の拡散と意思統一、コロニーの維持に支障をきたすためだ。単純に水に弱いと考えたのはあまりにも早計だった。
 では、その寄生生物とは明らかに異なる特徴を呈するこの大型生命体は何か?
 ロイコクロリディウムが寄生したカタツムリを開けた場所に誘導するのは、野鳥に自身を捕食させるためだ。カタツムリごと捕食されたロイコクロリディウムは、最終宿主である野鳥の腸内に棲み付いて産卵、繁殖する。カタツムリは中間宿主に過ぎない。
 これと同様に、寄生生物にとって人間は中間宿主に過ぎず、地上を目指したのは最終宿主に捕食させるのが目的だとしたら?
 後にマグニアと名付けられるこの大型生命体が、その最終宿主に違いない。マグニア自身は隕石のような仮死状態で宇宙を渡り、生存に適した環境の天体にたどり着いたときに活動を再開する生物なのだろう。寄生生物はそれに先んじて胞子を拡散し、中間宿主に寄生して最終宿主の元へ餌を運ぶ。そんな共生関係にあるのではないか?

「どうでもいい。ぶち殺すだけだ」
 マグニアの腹にEXライフルを連射するSEVENだったが、すべて弾かれてしまう。
 躊躇なくライフルを投げ捨てスペシウムソードの鞘を払った。銀色の帯を曳いてマグニアに躍りかかり、瞬きする間に七つの方向から七つの斬撃を見舞う。力任せに薙いだマグニアの腕を蹴って、マヤの傍に跳び戻った。
「弾!」
「大丈夫だ。だが……」
 スペシウムソードは刃こぼれを起こしていた。
 マグニアには傷ひとつ付いていない。
「ヤツの身体には〈目〉がない」
『目ん玉ならぎょうさん付いてますやん!』
 振り返ると、観測室の専用エレベーターから首に包帯を巻いた堀井が降りてくるところだった。医療センターから抜け出してきたのだろう。同じく包帯姿の中島と土井垣も続く。
 堀井のいう目ん玉とは、マグニアの全身を覆う眼球様の瘤のことだが、もちろん諸星が口にした〈目〉はそういう意味ではない。
 森羅万象にはその機能構造に応じ、成長や生成の過程で自ずと細胞や分子の配列に方向性が生まれる。それが目だ。目に沿って刃を入れれば容易に割け、目に逆らえば大きな抵抗を受ける。だがマグニアの身体にはそれがない。だから斬れない。斬撃が徹らない。

『諸星さん! わしの《曙丸》やったらそいつを倒せるかもしれへん!』
 試作対怪獣大型超振動伐斬(ばつざん)刀《曙丸(あけぼのまる)》。堀井が開発したSEVEN SUIT用の試作兵装だ。この騒ぎがなければ、中島の《アルファ・スペリオル》に続きこの場で実証試験が行われる予定だった。
「仕様書には目を通した。あれがどう役に立つ?」
 諸星の認識では、威力こそ高いが粗雑で杜撰な兵装だ。スペシウムソードで斬れない相手を斬れるとは思えない。
『やってみましょう。パラメータは私がスキャンします』
 マヤだった。

「さすがマヤのアネさん、話が早いわ!」
 観測室の堀井が、すぐさまリフトの準備にかかる。
「何をする気です?」
「あんなガラクタより俺のアルファ・スペリオルの方が!」
「物干し竿はベランダでパンツでも干しとけ。見とれよぉ……」
 不審げな土井垣と中島を他所に、堀井はリフトを操作する。

 試験坑の一角の床が開き、エンジン付きの巨大な鉈がせり上がってきた。
 動力で刃を振動させ、強引に対象を切断するなんとも乱暴な武器だ。重く、大きく、諸星の熟練がなければ振るうことはおろか持ち上げることも出来ない豪刀だった。
『離れて、刃を縦にして、弾』
 マヤの指示で、SEVENはマグニアから距離を取り、曙丸を八双に構える。
 すかさずZEROがマグニアの背後に回り込み、手を触れた。
『チャンネルデルタで数値送ります。計算よろしく!』

「来た来た、来ましたでぇ!」
 観測室のディスプレイにグラフが表示される。マヤから送信されたマグニアの走査データだ。それを見て、中島と土井垣も堀井が何をやろうとしているのかようやく理解した。三人は阿吽の呼吸でキーボードに指を走らせる。
「計算完了!」「検算OK!」
「パラメータ送信! 諸星さん、踏ん張って下さいよ!」

SEVEN曙丸装備

 SEVENが構える曙丸の刀身が振動し始めた。脈討つように振幅と振動数が変わる。試験坑全体が鳴動し始めた。天井を支える鉄骨が波打ち、悲鳴を上げる。床面に厚く盛られた土がドラムに置いたビーズのように跳ねる。機材が落下する。照明が弾ける。観測室と試験坑を隔てる強化ガラスが一斉に割れる。
 液状化した床の土にSEVENの足が沈む。マグニアの足も沈む。やがて振動は一定の振幅と周波数で安定した。同時に、マグニアの身体が振動を始めた。
足を取られたマグニアは一歩も動けない。振動で輪郭がぼやけ、まるで霧の塊に見える。
 共振だ。堀井はマグニアの身体の固有振動数を割り出し、曙丸の振動を利用して共振現象を起こさせたのだった。固有震動数に同期する振動を与え続けられた物体は振幅が増大し続け、やがては破壊に至る。
 ピシ! ついにマグニアの皮膚にか細い亀裂が走った。
『今よ、弾!』
 マヤの合図で曙丸を正面から叩きつける。観測室のガラスと同じく、破砕は一瞬にして全身に伝わり、マグニアは柘榴石を思わせる血色の欠片の砂利山と化した。

「よっしゃー!」
 思わず中島、土井垣と手を取り合い喜ぶ堀井。
「どうですか諸星さん! これはもう正式採用決定でしょう?」
 喜色満面で尋ねる堀井に、諸星が答える。
『重い。かさばる。振動と抵抗で思うように動けん。そもそもこれは刀と呼べる代物じゃない。斬るんじゃなく砕くんなら削岩機でいい。あいにく僕は土木工事に従事するつもりはない』
 血色の砂利山のてっぺんに曙丸を突き立ててそう告げた。
「そんな殺生な」
 へこむ堀井を見て、ZEROに宿ったマヤが吹き出した。
 自分と大差ない評価に、中島も腹を抱える。
 砂利山を滑り降りた諸星は、バイザーを開いて追い打ちをかけた。
「土木工事がしたいならうってつけの人材を紹介してやる。即戦力間違いなしだ」

「へくしっ!」
 医療センターのベッドで、首に包帯を巻かれた薩摩次郎が大きなくしゃみをした。

つづく


【8U編】

恐怖のルート89 前編

恐怖のルート89 後編

ブギーマンの夜 前編

ブギーマンの夜 後編

史上最大の決戦 序章

暗界の超巨大獣

故郷なき者たち

時と生と死を覆う絶望の闇

英雄たちよ、永遠に (終) new

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【特別編】

戦場 -キリングフィールド- (TIGA)

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Ⓒ円谷プロ ⒸEiichi Shimizu,Tomohiro Shimoguchi

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