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【ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSE】
Episode 19 聖地 -サンクチュアリ-

2021.06.07

ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSE 月刊ホビージャパン2021年7月号(5月25日発売)

 ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSEフォトストーリー、特別編第2回!
 異界獣ペドレオンを使役し、再びダイゴの前に現れたカミーラ。ダイゴはTIGA SUITをSKY TYPEに変形させて応戦するが、混乱に乗じて現地で知り合った少女・セラをさらわれてしまう。カミーラによる罠だと知りつつも、ダイゴは戦場カメラマンの姫矢とともにセラの救出に向かうのであった。

ストーリー:長谷川圭一 設定協力:谷崎あきら TIGA SUIT(SKY TYPE)製作:只野☆慶

 密林に残された気配は確実にダイゴを誘(いざな)っていた。ダイゴを殺すために。
 カミーラはその餌としてセラという少女をさらい、そしてダイゴが必ずセラを救いに自分を追って来ると確信している。カミーラはダイゴの性格を知り尽くしているからだ。
 この世界とは別時空の世界。闇の力によって既に滅んでしまった故郷。その世界でダイゴとカミーラは恋人同士だった。互いを信頼し共に地球星警備団の隊員として任務を遂行してきた。なのにその歯車は狂ってしまい、今はこうして敵対し、カミーラはダイゴを心の底から憎み、殺そうとしているのだ。
 また遠くで乾いた銃声が響く。
 今ダイゴがいるこの国にも憎しみと恐怖が渦巻き、毎日のように誰かが誰かの命を奪っている。もしかしたら彼らもまた本当は互に信じ合い、愛することが出来たのかもしれない。だが戦争という狂気がそれを許さないのだ。
 この熱帯のジャングルにはそうした人の心を狂わせる歪んだ空気が満ち溢れているようにダイゴは感じた。
 がさっ。不意に背後で物音がした。
 ゲリラか。ダイゴは瞬時に身をひるがえすと逆に追跡者の背後を取った。そしてすかさず相手の銃器を奪おうとして気づく。その手にあるのは一眼レフカメラだ。
 それは姫矢だった。背中には大きなカメラバッグをしょっていた。それを取りに一度村に戻り、こうして追って来たに違いない。
「セラは俺が助ける」
 姫矢が強い意志を宿した目でダイゴを睨みつける。
「セラは俺の全てだ。お前だけに任せるわけにはいかない」
 その言葉は前にも一度聞いていた。姫矢にとってセラは特別な存在なのだ。その気持ちはダイゴにも想像できた。この地獄のような戦場においても、セラという少女は純真無垢な笑顔をダイゴにも見せてくれた。その笑顔が姫矢の心の支えなのだろう。
「……わかった。一緒に来い」
 どんな言葉で追い払おうと無駄だ。ダイゴは仕方なく姫矢の同行を認めた。

 無言のまま二人は密林の中を進んだ。
 いつどこから銃弾が飛んでくるか分からない。足が地雷を踏むかもしれない。神経を研ぎ澄ましながら三〇分ほど経過した時、不意に姫矢が呟く。
「俺は……狂ってたのかもしれない」
「……」
「幾つもの戦場を渡り歩き、数えきれない理不尽な死をカメラに収めるうち、知らず知らず心が蝕まれ、きっと狂っていたんだ」
 無言で前を進むダイゴに姫矢がとつとつと語り出す。
「クライマーズハイって言葉を知ってるか? 登山家が、興奮状態が極限を超えると恐怖が麻痺してしまうそうだ。俺もそんな精神状態……いや、それ以上だったのかもしれない。だから死ぬことがいつしか怖くなくなっていたんだ。ふとそれに気づいた時、俺は……そんな俺が怖くなった。まるで死神に魅入られたみたいに戦場で人の死に何も感じずシャッターを切り続ける俺が、何だか恐ろしい怪物のように思えたんだ」
「……そうか」
 姫矢のその気持ちがダイゴにもわかった。人は知らないうちに怪物になってしまうことがある。光を飲み込む闇は誰の心の中にも巣食っているのだ。
「俺は……死に場所を求めていたのかもしれない」
 また姫矢が続ける。
「もう人間には戻れなくなってしまった怪物が死ぬ場所を。そして不眠不休で戦場をさまよっていた俺は熱病に罹り倒れた。薄れる意識の中、ようやく死ねる、俺はそう思った。でも……気がついた時、目の前にいたのは死神でも悪魔でもなかった。天使のような笑顔が俺を見つめていたんだ。俺が生きていることを心の底から、セラは喜んでくれたんだ」
 さっきまで鬼気迫る顔とは違い、姫矢が微笑み、続けた。
「それから俺は生まれ変わった。ずっと戦場の中で蝕まれてきた魂が、ギリギリのところで救われたんだ。セラの笑顔で。俺はその笑顔を撮りたいと思った。俺は夢中でシャッターを切った。そして思い出したんだ。俺がなぜカメラマンになったのかを。俺は俺が撮る写真で何かを変えたかった。ほんの少しでもいい。俺の写真が誰かの未来を僅かでもいいものに変えられるなら、そんな青臭い情熱を取り戻させてくれたんだ」
「……すまなかった」
 語り終えた姫矢に、ダイゴが言った。
「そんなに大切なものを、俺のせいで危険にさらしてしまって」
「……」
「本当にすまなかった」
 立ち止まり頭を下げるダイゴを見つめ、姫矢が言った。
「救ってくれるんだろ」
 その言葉に、さっきまでの怒りや焦りは消えていた。
「約束してくれ。必ずセラを救うと」
 姫矢の目をしっかり見つめ、ダイゴが言う。
「必ず、救う」
 その時だった。
 鬱蒼としたジャングルの木々の向こうに突如、予想外の光景が姿を現した。
 洞窟だ。黒くぽっかり空いた穴が、まるで獲物を待ち受ける食虫植物のように見える。
 カミーラが残した気配はその穴の中へと続いていた。これほどわかりやすい罠は無い。だがその中へ進まないという選択肢はダイゴには無かった。
「姫矢。君はここで待っていてくれ」
「いや。俺も一緒に行く」
 予想通りの答にダイゴは迷わず姫矢の鳩尾に一撃を入れた。「ぐっ」とうめき声をあげ崩れ落ちる姫矢に、「すまない」と言葉をかけ、ダイゴは一人洞窟へと向かった。

 足を踏み入れた闇は単純な横穴ではなく、水の侵食によって出来た奈落へと続く階段という風情だ。ゴツゴツした岩を乗り越えながら暫く進むと、不意に広大な空間がダイゴの目の前に広がった。ドーム状の天井にはシャンデリアを思わせる無数の鍾乳石。その下には深い緑色の水をたたえた巨大な地底湖がある。そして湖の中央には直径三メートルほどの平たい岩が小島のように浮かんでおり、その上に小さな人影が横たえられているのをダイゴが視認した時、
「待っていたわ。ダイゴ」
 闇に歓喜を帯びた声が頭上から響き、カミーラが姿を現す。
「どう? 素敵な場所でしょ? ここがお前の墓場になる」
 空中に浮遊し冷たい笑顔を浮かべるカミーラを見つめ、ダイゴが言う。
「その子を返してもらう」
 ダイゴの視線は地底湖の小島に横たわるセラに向けられていた。身動き一つしない。生きているのか? ダイゴに不安がよぎった時、
「安心なさい。まだ殺していないわ」
 ダイゴの心を読んだかのようにカミーラが言うと、どこに潜んでいたのか複数の異界獣ペドレオンがドーム状の闇の中を青白い光を放ちながら、深海を泳ぐ発光生物のように飛び回る。
 燐光を放つ湖水の底に、無数の人骨が沈んでいるのが見えた。
──そうか。ここが祭壇か。
 異界の獣を呼び寄せるには儀式が必要だ。この地底の大伽藍がその祭祀場に違いない。これだけの数の化物を召喚するために、いったい何人の血と怨嗟を捧げたのか。
 幻想的な美しさとは裏腹に状況は極めて危険。下手にダイゴが動けば異界獣の群れは一斉にセラに襲い掛かるだろう。だが躊躇せずダイゴはTIGA SUITを装着。スカイタイプとなって、ペドレオンの群れに飛び込んだ。
「やっぱり思った通りね。それでこそダイゴ」

 地下洞窟としては広大だが、たかが直径百メートルかそこらの閉鎖空間だ。スカイタイプの飛翔能力も旋回性能も、ここでは満足に活かせない。一方異界獣は空中を自在に遊泳し、また突如として弾かれたような瞬発力を見せこちらの攻撃を回避、反撃してくる。
 TIGAの劣勢は誰の目にも明らかだった。遂に追い詰められ、壁際の一廓に着地する。
「あなたは昔から少しも変わらない。どんな不利な状況でも迷うことなく真正面から飛び込んで、自分の命を投げ出してでも正義を貫こうとする。反吐が出るくらいに真っすぐ。だから必ず来ると思った。わざわざこんなジャングルにやってきた本当の目的を後回しにしてでも」
 カミーラはダイゴの愚直さを熟知している。
 だがそれは、あくまでもカミーラの知る彼の一面にすぎない。
 ダイゴは一途ではあったが、決して愚昧ではなかった。
「……空を飛ぶばかりが能じゃない」
 TIGAが走った。スカイタイプのまま、ほぼ円形の洞窟内の外周を、一歩ごとに脚部のスラスターを吹かして猛然とダッシュする。地を蹴る足はやがて壁を蹴り、天井を蹴り、鍾乳石を蹴った。ダイゴは、飛行中にこの洞窟の立体構造を頭に叩き込んでいたのだ。
 空力に支配される飛行と異なり、硬い足場を得たことで機動性はむしろ向上している。異界獣はその動きを追いきれない。上下左右、あらゆる方向から手刀が、スピアが飛んできては扁平な肉体を切り裂いた。彼我の距離が近く、軌道も読めないため回避が間に合わない。相手の武器である飛行能力を封じたつもりが、もうひとつの武器を研ぎ澄まさせる結果となった。
スピードだ。
 一匹、また一匹と体液をしぶかせて異界獣が湖面に没する。
 まばらになった群れの間を縫って、TIGAはセラの横たわる小島に降り立った。
「失せろ。俺にはまだやることがある」
 カミーラの眉がつり上がった。
 一瞬でSUITを装着し、光の鞭を振るう。
「わかってるわ。あの女を探しに来たんでしょ? あなたを惑わし私を裏切らせた、あの忌々しい女! ユザレを!」
 カミーラは憎悪を込めて叫ぶと更にTIGAを激しく攻撃した。
 セラを守るため、TIGAは動けない。
「あの女がまだしぶとく生きているのは私も感じ取っていた。だからこうしてあなたを追いかけて来たのよ! 私が受けた屈辱と絶望を何千倍にもして、あなたとあの女に返すためにね! ダイゴ! あなたをなぶり殺したら、その首をあの女のところへ持っていくわ。どんな顔をするかしら? 考えただけでワクワクする! そして絶望の底に叩き落した後、あの女も殺す! 今度こそ二度と復活できないように細胞一つ残さずこの世界から消し去ってやる! あはははははは!」
 カミーラが狂気の笑いをあげる。残った数体のペドレオンも攻撃に加わった。
「そんなことはさせない! 俺は必ず守る! セラを! ユザレを!」
 セラに覆いかぶさり攻撃を防いでいたTIGAが、振り下ろされたカミーラの鞭を掴み、奪い取る。そのまま薙ぎ払ってペドレオンの生き残りを一掃した。
 胸のコアが活動限界の近いことを報せている。鞭を投げ捨てセラを振り返った。無事のようだ。思わず安堵の息をつく。
 だが次の瞬間、地底湖の水面がざわめき巨大なペドレオンが出現した。切り裂かれた肉片が水中で結合し形成された大型集合体は、触手を伸ばしてTIGAを捕縛、完全に動きを封じた。
「よく頑張ったわダイゴ。でもここまで!」
 カミーラが悠然と鞭を拾い上げ、光の剣へと変える。そして動けぬTIGAを二度、三度と斬りつけた。甲高い金属音が洞窟内に反響し、飛び散る火花が繰り返し闇を照らす。
 ガキン! とうとうマスクがはじけ飛び、ダイゴの素顔が露わになった。
「さあ、いよいよお別れね。愛していたわ、ダイゴ!」
 カミーラが剣をダイゴの眉間に突き立てようとした刹那、突如、眩い光が闇に閃いた。
「なに!」
 反射的に光へと振り向くカミーラ。その一瞬の隙をつき、TIGAが触手を引きちぎる。

 そしてペドレオンへ向けきらめく粒子を右腕から噴射した。フリーザーグレーン。付着した界面に温度差を生じさせ、急激に熱を奪う特殊素子だ。悪趣味なオブジェのごとく凍結した巨大異界獣に渾身のゼペリオン光線を見舞い、爆散させる。
「おのれ、ダイゴおおおおおおお!」
 怒るカミーラが背後からTIGAを襲撃する。TIGAは残ったゼペリオン粒子にランバルト圧縮をかけ、光弾化して振り向きざまに放った。
「ぎゃああああああああ!」
 腹部に直撃。カウンターを食らい十数メートルも吹き飛んだカミーラは、絶叫と共に地底湖の底へと沈んでいった。

 ダイゴはSUITを解除し、さっき光が閃いた闇に眼を向ける。そこにカメラを手にした姫矢がいた。あの閃光の正体はカメラのフラッシュ。どういう意図で姫矢がシャッターを切ったかわからないが、結果としてその行動がダイゴの危機を救った。
「セラ! セラは無事なのか!」
 対岸から姫矢が叫ぶと、ダイゴの前に横たわるセラの目がゆっくり開かれ、「……ジュン」と呟いた。

 セラを連れてダイゴと姫矢が洞窟から出ると、外はスコールだった。
 激しい雨を避けるため、洞窟の入り口の岩陰に三人は身を寄せ合うようにして座った。
「ありがとう。セラを救ってくれて」
 姫矢はダイゴに礼を言うと、「怖くなかったか?」と、セラに尋ねる。
「うん。大丈夫」
 微笑み、頷くセラ。
「この笑顔に……姫矢……君は救われたんだな」
 全身に残るダメージに微かに顔を歪め、ダイゴが呟く。
「ああ。そうだ」
 横に座るセラの頭を愛おしげに撫でて姫矢も微笑み、
「さっきあの女が言ってたのが、ダイゴが探している大切な人なんだな」
「……ああ」
 ダイゴが真顔で頷き、
「ユザレは俺にとって掛け替えのない存在だ」
 雨音が響く中、ダイゴは自分がユザレを探し求めてこの場所に辿り着いたこと、唯一の手掛かりが姫矢の撮った遺跡の写真だと改めて話した。
「姫矢。あの写真を撮った場所を教えてくれないか?」
 すると以前に遺跡の写真のことを聞いた時と同じように姫矢が黙り込む。何か遺跡の場所を教えられない事情があるに違いない。そのことをダイゴが問い掛けようとした時、
「ジュン。ダイゴに教えてあげて」
「……セラ」
「大切なその人にダイゴを会わせてあげて。お願い」
「……そうだな」
 姫矢はふっきれたように微笑むと、ダイゴに言った。
「俺は恐れていたんだ。あの悪夢が、現実になることを」
「悪夢……?」
「セラと出会いもう一度カメラマンとして生きようと決心した俺は、偶然あの遺跡を見つけて写真に収めた。その時、何か不思議なパワーみたいなものを感じたが特に気にはしなかった。だけどその夜、俺は夢を見た。誰かの声に誘われるように俺は再びあの遺跡に行く。すると銃声が響く。ゲリラだ。俺は物陰に身を隠し、カメラを構える。また人の命が理不尽に奪われる瞬間を写真に収めるために。誰かが走って来た。少女だ。ゲリラに追われているのか? 俺がカメラを向けた時、フレームの中で少女が振り向く。そして俺の名前を呼ぶ。その少女はセラだ。俺を追いかけて来たんだ。俺は隠れろとセラに叫ぼうとする。ゲリラがすぐ背後に迫っていたからだ。だが俺は叫ばない。次の瞬間、銃声が響き、セラが倒れる。俺は夢中でシャッターを切る。何度も何度も。撃たれたセラがゆっくり倒れるのをカメラに収める。俺に罪悪感は無い。ただひたすらカメラマンとしての使命に従ったのだと心の声が囁く。
 俺は帰国し、その写真を発表する。それは戦場の悲惨さを伝える写真として注目を集め、俺は絶賛される。そしてやっと気づく。自分のしたことの愚かさに。醜さに。セラの死を見世物にして俺は栄光を手にしたことに。そして俺はセラのその写真を手に懺悔の言葉を繰り返し……自ら命を絶つ。そこで目が覚める。あまりにもリアルな夢に胸が悪くなり俺は吐いた。二度とこんな夢は見るまい。そう思った。だが……その日から俺は同じ悪夢を何度も見るようになった。どんなに意識は拒んでも、夢の中で俺はセラの死をカメラに収める。シャッターを切るのをどうしても止められない。だから……」
 一旦言葉を切ると姫矢は苦悶の表情を浮かべ、
「俺は怖いんだ。あの遺跡に行くのが。行けば、悪夢が現実になる気がして……」
 絞り出すように話し終えると、傍らのセラを抱き寄せる。
「ごめん、セラ……本当に、ごめん」
 それは夢の中でセラを見殺しにしたことへの謝罪か、遺跡の場所を教えることが出来ないということなのか、ダイゴにはわからなかった。姫矢の恐怖は想像できる。でも今の話を聞き終えて、ダイゴは一つだけ姫矢に確かめたいことがあった。
「姫矢。さっき洞窟の中で君はシャッターを切ったな」
「……ああ」
 ダイゴの問いに姫矢が頷く。
「あれもそうだったのか? 俺やセラが命を落とすその瞬間をカメラに収めようとしたのか? 夢の中と同じように」
「ああ。あの時、確かに夢の中の光景が頭をよぎった」
 姫矢は微かに震える声で語る。
「やはり俺は悪夢と同じことをするに違いない。セラの死をカメラに収め、それを公表し、人々の心を動かすのだ。恐怖で俺は叫びそうになった。この場から逃げろ。そう思った。だが体は本能的に動き、俺はカメラを構えていた。でも……」
 姫矢はダイゴに目を向け、言った。
「フレームの中で必死に戦うダイゴの姿を見た時、俺の中で声が聞こえた。お前も戦え。諦めず、未来を変えてみろ」
「未来を……変える」
 ダイゴの言葉に頷き、姫矢が続ける。
「確かにそう聞こえたんだ。俺自身の心の声だったのかもしれない。次の瞬間、俺は自分のすべきことがわかった。バッグからフラッシュを取り出しカメラにセットした。そしてシャッターを切った。ダイゴにではなく、カミーラというあの女に」
「……そうか」
 ダイゴは理解する。カミーラの注意を逸らすために姫矢がフラッシュを焚いたのだと。
 その結果、自分の命が奪われるかもしれないのに。姫矢は恐怖に飲まれ、その恐怖に麻痺するのではなく、乗り越えたに違いない。ずっと恐れて来た自分の中に棲む、怪物を。
「ダイゴ。俺は未来を変える。一緒に、あの遺跡に行ってくれ」
「……わかった」
 姫矢の言葉にダイゴが頷いた時、スコールが止み、明るい光が洞窟へと差し込んだ。

「ここだ」
 姫矢の案内で、ダイゴは遂にその遺跡の前に立った。
「セラもこれ、夢で見たことがある」
「……え?」
 思わず姫矢が息を飲む。
「朝起きても、とってもはっきり覚えてたから、絵に描いた。それを長老様に見せたら、これは神が降り立つ場所だって教えてくれた」
 神が降り立つ場所。その言葉を聞いた時、ダイゴは確信する。
 ここにユザレはいる。ここで俺を待っている。
 ダイゴは姫矢とセラに見送られ、一人遺跡の中へと進んだ。そして闇の奥に、夢と同じ光を見つけ、近づく。すると、
「ダイゴ」
 頭に直接、ユザレの声が語り掛けた。
「ありがとう。私を見つけてくれて」
 更に進むと、そこに光の繭に包まれて微笑む、赤ん坊がいた。
 ガタノゾーア戦でエネルギーを使い果たしたユザレだ。
 肉体年齢の逆行──これが彼女の力の代償である。かろうじて思考力を保ってはいるが、もしまた力を使えば、今度こそ胚にまで還元され消滅するだろう。
「行こう、ユザレ。俺と一緒に」
 ダイゴは赤ん坊を抱き上げると、遺跡を後にした。
 新たなる戦いの日々に向かって――。

「うーん……」
 科特隊本部の執務室で、井手はディスプレイを見つめ唸っていた。
「なあに、二日酔い?」
 所用で訪れていた富士明子女史がおどけて尋ねる。
「またパリのTLT機関から症例の報告が上がってきたんだけど」
「例の、並行世界の自分を夢で見るっていう?」
「陽性者数に明らかな地域的偏りがあるんだ。ほら」
 ディスプレイ上の世界地図に表示された多数の光点は、北米、ドイツ、イタリア、中国、日本の特定の都市五箇所に集中している。女史がいつになく表情を曇らせた。
「これ、ガタノゾーアを召喚するための儀式が行われたっていう……」
「その影響で、脳内にある種のチャンネルが開いてしまった人達なのかもしれない」
 一時的に異世界と繋がる門が開き邪神が出現、上海を消滅させ多くの死傷者と発狂者を出した未曽有の大惨禍。世界はまだその打撃と混乱から立ち直ってはいない。
「機関では彼らを敵能者──《デュナミスト》と呼んでいるそうだ」

 ダイゴがユザレと再会した半年後、姫矢准の撮った「戦火の少女」というタイトルの写真がピューリッツア賞を取り、話題となる。
 地獄のような戦場で力強く生きるセラの笑顔が人々の心を打ったのだ。
 某国の悲惨な現状に国際社会の関心が高まった結果、内戦は終息。
 セラの村にも平和が戻った。
 だが姫矢准はセラの村を離れ、今も戦闘地帯の現実を伝えるべく写真を撮り続けている。

つづく


【8U編】

恐怖のルート89 前編

恐怖のルート89 後編

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史上最大の決戦 序章

暗界の超巨大獣

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Ⓒ円谷プロ ⒸEiichi Shimizu,Tomohiro Shimoguchi

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