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【ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSE】
Episode 22 青い夜の記憶2021 前編

2021.09.14

ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSE 月刊ホビージャパン2021年10月号(8月25日発売)

【ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSE】 Episode 22 青い夜の記憶2021 前編

ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSEフォトストーリー特別編。
 土井垣が開発した「ハーキュリーズ」のテストは堀井、中島のものと同じく散々な結果に終わった。意気消沈する土井垣はとある地下アイドルに救いを求めるが、その正体は地下どころか地底の…?
 ZOFFY SUITの開発秘話にも注目の第22話。

ストーリー:長谷川圭一 設定協力:谷崎あきら ハーキュリーズ/SEVEN SUIT/ZERO SUIT 製作:只野☆慶

Episode 22 青い夜の記憶2021 前編

 科特隊本部・大深度地下耐爆試験坑では今まさに新型兵装ハーキュリーズの実用テストが行われようとしていた。
 テストを行うのは勿論、諸星だ。既にSEVEN SUITを装着。運ばれてきたハーキュリーズを値踏みするようにジッと眺めている。
 それを見守るのは井手と科学チームの面々。その中心である三人の天才エンジニア、堀井、中島、そして土井垣。彼らは科特隊の三賢者と自任しているが、裏では子豚三兄弟という実に可愛らしいニックネームで呼ばれる大食漢たちだ。
「……必ず採用される……必ず採用される……必ず採用される……必ず採用される」
 今回のハーキュリーズの開発者である土井垣はテスト開始前からずっと同じ言葉を呪文のように唱え続けている。ただでさえ汗っかきなその額には脂汗が滝のように流れていた。
「さっきから、なにブツブツ言うてんねん」
 そんな土井垣を堀井が鬱陶しそうに見つめ、
「口パクパクして、まるで呼吸困難の金魚やな」
 とからかうと、
「堀井さん堀井さん、それはあまりに失礼だ。金魚に失礼だ。俺には釣り上げられたフグにしか見えない」
 負けずに中島も心無い追い打ちをかける。
「確かにそうやな!」「でしょ!」
 爆笑する堀井と中島。その時、
『静かにしろ』
 諸星に一喝され、叱られた子犬のように二人がしょぼんと黙り込む。

 試作対怪獣噴式重鉄拳《ハーキュリーズ》。それは、SUITの上から装着する巨大な右腕だった。機関部をなすバックパックに連結され、左側から伸びるブームの先端にはジンバルを介してロケット噴射管が取り付けられている。右腕の挙動にリンクして自動的に噴射し反動をコントロールする《ハイドラヘッド》だ。
 SUITへの装着と点検が完了し、テストが始まった。
 土井垣の丸眼鏡の奥の目が限界まで大きく見開かれる。
 ハーキュリーズが複合装甲の標的を握り潰し、太い鉄骨をへし折り、小山のような岩塊を打ち砕く。軽装甲車を掴んで投擲し、振り出された鉄球を受け止める。

試作対怪獣噴式重鉄拳《ハーキュリーズ》

 テスト終了。ハーキュリーズを脱ぎ捨てたSEVENとの回線が開かれた。
 身を乗り出す土井垣に、諸星が告げる。
『酔狂なオモチャだが、実戦でこれが役立つ状況が思い付かん。パワーはともかく有効射程も命中率も既存の兵装に及ばん代物を、速力と機動性を捨ててまで運用する理由があるか? クリスマスパーティーで一発芸でも披露するのが関の山だ』
 けちょんけちょんだった。
 土井垣の顔からみるみる血の気が引いていき、糸が切れた操り人形のようにその場にへたり込んだ。
「丸二週間引き籠った成果がこれか? ほんま情けない」
「まあ、残念ながらというか、やる前から結果は見えてたけどねー」
「う、うるさい! 自分たちだって不採用だったくせに!」
 相変わらず心無い言葉を浴びせかける堀井と中島に、土井垣が必死に言い返す。
「何言うとるんや。中島の物干し竿は確かに不採用やったけど、ワシの曙丸は寄生怪獣の親玉を見事に倒して結果を出したんや!」
「あんなの偶然だ! 単にあの怪獣との相性が良かったに過ぎない!」
「なんやと! もう一遍言うてみい!」
「何度でも言うさ! 不採用は不採用だ! ただの失敗作だ! 粗大ゴミだ!」
 そう言い放つと土井垣は泣きながらその場を走り去った。
「おい、こら待て! 粗大ゴミはお前やろ!」
 猛然と追いかける堀井。
「はい、施設内は走らない。走るな! そこのデブ二人!」
 さりげなく堀井をディスった中島も後を追う。
 そんな様子を見ていたマヤがSUITのバイザーを開いた諸星に近づき、
「あの三人、すごく仲がいいね」
「僕にはそうは見えんが」
「ううん。絶対そう」
 走り去った三人の方に目を細め微笑むマヤを、諸星が無言で見つめる。その姿はつい先日までの無表情なアンドロイドではない。諸星が知っていた美しくて優しいマヤ本人の姿だ。
 井手の指揮の元、SUIT開発チームが総力をあげて完成させたマヤ専用ボディ《ゼロワン》の中に電子生命体のマヤは宿った。どこから見ても普通の人間にしか見えない完成度だ。実際、事情を知らない職員はマヤとすれ違うと例外なく振り向き、その美しさに見とれる。諸星はそれが誇らしくもあり、少し苛つく。
「どうしたの、怖い顔して」「別に」
 マヤがゼロワンの姿を手に入れた直後から何度となく同じやり取りをした。
 そんなマヤは今、オペレーターとして科特隊で働いていた。電子生命体としての能力は仕事の上でも十二分に発揮され、井手も予想以上の自分の仕事の結果に御満悦だ。
 その井手が諸星を見て、
「ではそろそろ、次のテストに移ろうか」

 観測室にエドと次郎が入室する。なぜ招かれたのか怪訝な顔の次郎に、井手が言う。
「君も興味があるだろうと思ってね」
 メインホールの中央にはSEVENと、もう一人のULTRAMANが立っている。進次郎はまだ北斗と共に上海に詰めているはずだ。では誰なのか? 次郎には心当たりがあった。
「……早田さん?」
 進次郎の父親、早田進だ。次郎は以前、彼に稽古をつけてもらったことがある。その際のSUITは砲鉄色だったが、いまはあざやかな銀と赤に塗装されていた。モニターには《ZOFFY》と表示されている。
「早田自身の命名だ。旧約聖書に似た名前の智天使が存在するが、それとは関係なく頭に閃いたらしい。《ゾフィー》と」
「彼がウルトラマンであった頃の記憶に刻まれた名なのかもしれないな」
 次郎の疑問を察してか、井手とエドが解説を加えた。
ZOFFY SUITは、早田専用プロトタイプULTRAMAN SUITの完成形だという。進次郎のSUITの実働データから得られたノウハウもフィードバックして早田の肉体に合わせた細かな調整が施され、胸のスペシウムコア周囲にそれを補助するサテライトコアを配置して負荷を分散すると同時に出力の強化が図られている。
 今日はその実証テストを兼ねた模擬戦訓練なのだ。
「疲れているところをすまないね、諸星君」
「あなたと実戦テストができるとは光栄ですよ、早田元防衛大臣」
『諸星クン! 模擬戦ね、模擬戦!』
 念を押す井手の声が諸星に届いていたかどうか。テストは兵装の使用も無制限の激しいものとなった。この試験坑の外殻が持ちこたえたことが不思議なくらいだ。
「すごい……」
 圧倒される次郎は、テスト終了を告げるブザーの音で我に返った。
 テストは有意義な成果を挙げた。しかし。
「早田さん!?」
 がくりと早田が膝を落とした。前後してバイタルが乱れ始める。今まで気力で正常値を維持してきたとしか思えない。肉体的には、やはり疲労が限界に達していたのである。

「土井垣のアホ、子供みたいに泣きくさりおって、一体どこ行ったんや?」
 堀井は土井垣を見失い、仕方なく研究室に戻りながら尚も悪態をつくと、中島が訳知り顔でニヤリと微笑む。
「多分、あそこだな」
「あそこって、どこ?」

 薄暗く狭い空間。響く歌声。それを掻き消さんばかりの声援。
 ここは地下アイドル専用のライブハウスだ。
 多くの若者が色とりどりのサイリュウムを振り、ジャンプする。
 その熱気の中に土井垣の姿もあった。
 ステージでは五人の女性が踊り、歌っていた。
 衣装はアイドルとしては独特で全員が黒いスーツ、しかも黒いサングラスをし、手には光線銃みたいな水鉄砲を持っている。
 彼女たちはメイド・イン・ブラック。ハリウッドで何度も映画化されたヒット作に登場する謎の黒服の組織をモチーフ……いや、もろにパクっているのは誰の目にも明らかだ。
 センターで歌うのは来栖沙夜(くるす・さや)。
 五人の中でダンスも歌唱力もずば抜けておりファンも一番多い。土井垣もその一人、熱烈な来栖沙夜のガチオタ──クルスチャンである。
 一時間ほどのライブが終了。ファンたちにとってはこれからが本番だ。
 土井垣も遅れを取らぬようファンの波の中を突進する。今日は沙夜ちゃんにどうしても言わなければならないことがある。先日のまさに奇跡みたいな出来事のお礼をしなければ。
 だが悲しいかな土井垣は鈍足かつパワー不足。気が付くと沙夜の前には数人の列ができていた。恐らく三〇分は他の男どもと沙夜ちゃんのツーショットを拝む羽目になる。
「あ。やっぱりいた」「え? どこ?」「ほら、あそこ」「ほんまや!」
 ライブハウスに中島に連れられて来た堀井が、ファンの中に鼻息荒く佇む土井垣を発見した。
「中島。これは今、何しとるんや?」
「チェキ会。つまりオシメンとツーショットでチェキが撮れるサービスです。値段は基本一枚千円。これにサインや握手などが加わると値段も加算され、ハグだと一枚五千円、更にウチワやハッピなどのグッズも買うとかなりの出費になります」
「なるほど……て、中島、お前やけに詳しいな」
「はい。このライブハウスを土井垣に教えたのは何を隠そう、俺ですから」
「なんやて」
「でも土井垣の奴、俺以上にドハマリして、研究室に巣ごもりしてる間も三日に一回はここに通ってたのを俺は知ってます。出費も相当してるな~」
「アホくさ。開いた口がふさがらんわ」
 本気で堀井が呆れ果てた時、不意に怒号が響いた。
「そのサングラス外せって言ってるだろ!」
 土井垣の待つ列の先頭、長髪の男が沙夜に絡んでいた。
「沙夜! 俺がお前に今までいくら貢いだと思ってんだよ! 素顔を見せろよ! 他のメンバーはサングラス外してるのに何でお前だけ絶対外さないんだよ!」
 確かに他の四人のメンバーはサングラスを外し素顔でファンとチェキを撮っていた。
「舐めてんの? お前、人として終わってるよ!」
 ドン! 男が沙夜を突き倒した。その衝撃でサングラスが床に飛ぶ。
「あいつ!」
 思わず堀井が飛び出そうとした時、
「大丈夫、沙夜ちゃん!」
 土井垣が倒れた沙夜を抱え起こしていた。そして近くに落ちたサングラスを拾い沙夜に渡した時、
「見ないで! あっちに行って!」
 土井垣を強く払いのけると、沙夜は顔を隠すようにその場を走り去った。
 騒然となるチェキ会。さっき沙夜に暴言と暴力を振るった長髪男は他のファンに囲まれ、ライブハウスを追い出された。だが土井垣は茫然とその場に佇んだままだ。
「おい」
 そんな土井垣の肩を堀井が叩く。
「一杯飲みに行くで。今日はワシが奢ったる」
「……ホントですか」
「一杯だけ。あとは割り勘」
 堀井と中島に支えられるようにして出て行く土井垣。それを誰かが見つめていた。

 科特隊の医務室。
 体を休める早田の元に次郎が来る。
「大丈夫ですか? 早田さん」
「薩摩君か」
 早田が次郎を見て微笑む。以前ここの訓練場で相対した時の厳しい表情からは想像もできない、ごく普通の老人の優しい笑顔だ。
「俺、まだちゃんとお礼を言えてませんでした」
「お礼?」
「突然ゼロの装着者になって何の訓練も積んでないド素人の俺に、早田さんは真正面から教えてくれました。これからウルトラマンとして、戦う覚悟を」
「覚悟……か」
「はい。それに早田さんは進次郎君のことを頼むとまで言ってくれました。嬉しかったんです。ずっと憧れていた人に仲間として認めて貰えた気がして。俺、頑張ります! ウルトラマンとして一人でも多くの人の役に立てるよう、もっと強くなります!」
「そうか……」
 やや興奮気味な次郎の言葉を聞き終えると、早田は小さくため息をつく。
「どうかしましたか? あの、俺、何か変なこと言っちゃいました?」
「いや。昔のことを思い出したんだ。まだ私が君くらいに若かった頃のことを」
 早田は窓の外の曇り空を見つめ、静かに語り出す。
「正確に言えばこれは私の記憶ではない。ウルトラマンと同化していた時の記憶は私の中にはない。でも……憶えているんだ。人類の平和を守るために戦った、その代償の重さだけは」
「代償の……重さ……」
「不思議だが、その苦い感覚は私の胸の中にはっきりと刻まれていた。私がウルトラマンとして倒した多くの怪獣、そして異星人。凶悪で強大な力で人類を脅かす相手とは、こちらも力で対抗するしかない。結果、人類の未来を守る代償として、相手の未来を奪わなくてはならない場合もある。彼らも……そうだった」
「彼ら……」
「地底人だ」
 かつて地上破壊工作をもくろみウルトラマンと科特隊の前に敗れ去った地底人。彼らは星団評議会により滅ぼされたが、その生き残りがいた。長きにわたり復讐の念を溜めこみ、先日、村松キャップの墓参りに集まった早田たち科特隊に襲い掛かったのだ。
「戦いは勝者がいれば敗者がいる。そこには恨みや憎しみが残る。復讐だ。平和を守りウルトラマンとして戦うには、そういうものを背負う覚悟が必要なんだ」
「復讐……」
 早田の言葉を聞き、次郎の胸に複雑な思いが去来する。次郎は仲間全てを滅ぼされた地底人と同じように復讐の念を戦う目的にしている者を知っていた。
 ZEROだ。今は次郎の相棒といえる存在。彼の思いを果たして背負いきれるのだろうか。
「それじゃ、失礼します」
 複雑な気持ちを噛みしめ、次郎は早田の病室を後にした。

 その夜、オペレーターとして当直を務めるマヤが、広域電磁力場勾配観測システムに奇妙なノイズを発見した。要警戒閾値にも達していない僅かな乱れで、彼女でなければ発見したとしても報告しようとまでは考えなかっただろう。また、報告を受けた井手もさして気に留めなかったかもしれない。
 だがマヤの一言が、井手の重い腰を上げさせた。
「ケリチウム磁力光波が発するパターンによく似ています」
 ケリチウム磁力光波の発振に必要なゲルマタント鉱石は四万メートル以深の地層にしか存在しない。東京都心の地下数十メートルから検出されるのは、いかにも不自然だった。
 井手は諸星に高分解能磁力カウンターを持たせ、現場の確認を頼むことにした。
 あくまでも確認──そのつもりだった。

「お疲れ様~」「沙夜ちゃん。お先で~す」
 ライブハウスの控室。他の四人のメンバーが帰り、一人きりとなった沙夜はそっと黒いサングラスを外した。
「お前、人として終ってる……か」
 正面のメイク用のミラーに自嘲する自分の顔が映っていた。
「笑える……始まってもいないのに」
 沙夜は見えるはずの無いその顔を、特殊な知覚で見る。その顔には目が無かった。
 刹那、背後で誰かが近づく気配がした。慌ててサングラスをかける沙夜。
「心配するな。俺だ」
 沙夜の背後にはやはり黒いサングラスをかけた青年が立っていた。
「また、来たんだ」
「相変わらず人気者だな。そのお陰でさっきみたいなトラブルにも巻き込まれる。危ないとこだったじゃないか」
「そんな嫌味を言いに来たの? 何度言われても私、アイドルをやめる気はないから」
「わかってる。それは好きにすればいい。ただし……一つやって貰いたいことがある」
「……なに?」
 沙夜が聞き返した時、地底人の男は何かを感じ取る。
「どうやら客人が来たようだ。詳しい話はそいつを始末してからだ」
 そう言い残すと地底人の男は煙のように消え去った。

 諸星は移動指揮車にカモフラージュ用の塗装を施したバンを日比谷駐車場に入れ、磁力カウンターを手に単身で地下共同溝に進入した。都市の血管とも言えるライフラインが縦横に張り巡らされた、直径七メートルほどのトンネルを進む。現場はここから目と鼻の先、霞が関一丁目の地下約四〇メートル地点だ。程なく到着したが、カウンターに反応はない。レンジやモードを変更しても同じだった。指揮車に報告しようとインカムに指を当てた瞬間、激しい振動がトンネルを襲った。
 地震か? いや、トンネル内壁に亀裂が走ると同時に、カウンターの数値が跳ね上がった。崩落した床の下に明らかに人工の広大な地下空間が出現、数十メートル下の床に溜まった地下水がわずかに光を反射している。水柱を上げて落下した諸星の上に、大量の瓦礫が降り注いだ。

「ケリチウム反応検出!」
 指揮車に搭載されているモニターの前でコンソールに向かうマヤが報告した。
「諸星さん!」
 同行していた次郎は、バンを飛び出すなりZERO SUITを装着して共同溝へ走った。

ZERO、ZOFFY、SEVEN

「フフ、完全にぺしゃんこだな」
 諸星を圧し潰した瓦礫の山に足をかけ、黒コートにサングラス姿の青年がほくそ笑んだ。
 その背後には、体長六〇メートルにも及ぶ金属製の巨獣が佇んでいる。地下空間を掘り抜いたのも、天井を砕いて諸星を奈落に落としたのも、この巨獣の仕業に違いない。
 と、足元の瓦礫がガラリと崩れた。青年はバランスを崩して転がり落ちる。
 瓦礫の山を押し破り現れたのはSEVENだった。諸星はトンネルの崩落より一瞬早くSEVEN SUITを装着していたのだ。
「また貴様か。懲りないやつだ」
 もがく青年のサングラスが外れている。その下に目はない。地底人だ。
「おのれ、やれメカテレスドン二世!」
 サングラスをかけ直した青年の号令一下、金属の巨獣が甲高い咆哮を上げた。
 村松キャップの墓参の折、諸星は地底人と一戦交えた経験がある。しかし今回は進次郎も北斗もこの場にいない。ケリチウム磁力光波の影響で通信が阻害され、ソードの転送を要請することもできない。更にメカテレスドンも強化されており、厚い装甲はSEVENのナイフを通さない。思わぬ苦戦を強いられ、諸星にしては珍しくこめかみを汗が伝う。
「助太刀します!」
 ZERO SUITの次郎が駆け付けた。諸星は彼に、ソードなりランスなりのスペシウム兵装持参を期待したが、残念ながら手ぶらだった。
「……チッ、気の利かん助っ人だ」
「ええっ、舌打ち!?」
 次郎が心外に感じるのももっともだが、事実として状況はほとんど好転しなかった。加えてこちらはトンネルに張り巡らされたライフラインを守りながらの戦いでもある。
 おまけに──
「祖国の仇! 同胞の仇! 貴様ら科特隊を滅ぼすまで俺たちの復讐は終わらない!」
 自分たちの非道を棚に上げてぬけぬけとほざく地底人のたわ言を真に受けたか、次郎は少なからず動揺しているように見えた。まずい。

「お困りかな?」
 頭上からの声に振り仰ぐと、ZOFFY SUITの早田が地下空間を覗き込んでいた。
 次郎が飛び出していった直後、マヤが本部に救援を要請したのだ。
 早田はひらりと二人の傍らに降り立った。体調はすっかり回復しているようだ。
「地底人を追い払うのに刃物はいらない。これが何かわかるか?」
 ZOFFYが地底人に向け、手にした筒状の物体を突き付ける。
「何だ、それは」
「特製のスタングレネードさ。ザラガスから採取した発光器官が入っている」
 かつて交戦した変身怪獣ザラガスの遺骸を、科特隊は回収し研究していた。その成果のひとつが、この特殊閃光発音筒《ザラガスフラッシュ》だ。ZOFFYが無造作にそれを放ると、破裂音と共に六千万燭光もの白光が地下空間を眩く照らし出した。
 地底人はこの強烈な閃光に耐えられない。サングラスの復讐者は悲鳴を上げてその場に悶絶し、戦意を喪失したメカテレスドンともども地底に撤退した。
 突然の、そしてあまりにもあっけない幕切れに、SEVENとZEROは、敵の逃げ去った大穴の縁で顔を見合わせるしかなかった。

 またも研究室に籠る土井垣。何度も深いため息をつく。自信作の新型兵装がボツになったショックを忘れに行ったのに、更に深いショックを受けたのだ。
「もうダメだ……終りだ……きっと、沙夜ちゃんに嫌われた……」
 思わず涙ぐむ土井垣。するとスマホに着信。画面に表示された文字を見た瞬間、土井垣の体が宙に浮いた。驚きのあまり一メートル近くジャンプしていたのだ。
「……嘘だろ! さ、沙夜ちゃんからだ!」
 なんと沙夜から連絡が来た。しかも二人きりで会いたいと言うメッセージ。
「俺……夢、見てるのかな」
 さっきまでの泣き顔には土井垣史上、最高の笑顔が浮かんでいた。

 土井垣にメールを送った沙夜。
「まさかお前のライブに科特隊の人間が来るとはな。しかも既にメルアドを交換してるとは驚いたよ」
 沙夜の傍らには微笑む地底人の男が。
「沙夜。これは我らの神が与えてくれた、千載一遇のチャンスだ」
 確かにそうかもしれない。沙夜はサングラスの男を見つめ、言った。
「……はい。お兄さん」

つづく


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Ⓒ円谷プロ ⒸEiichi Shimizu,Tomohiro Shimoguchi

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