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【ULTRAMANフォトストーリー】特別編 Episode 29 ヒーロー×邂・逅 後編
【ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSE】

2022.04.11

LTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSE 月刊ホビージャパン2022年5月号(3月25日発売)

【ULTRAMANフォトストーリー】特別編 Episode 29 ヒーロー×邂・逅 後編【ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSE】

 

 『ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSE』×『SSSS.GRIDMAN』特別編!
 アルテリク星人が科特隊のネットワークに侵入し、電子生命体のマヤを蝕み始めた。マヤを救うためにコンピューターワールドへダイブした進次郎は、ハイパーエージェント・グリッドマンとの邂逅を果たす。

ストーリー/長谷川圭一
設定協力/谷崎あきら
ULTRAMAN SUIT/製作:只野☆慶
グリッドマン/製作:GAA(firstAge)

特別編
Episode 29 ヒーロー×邂・逅 後編

 曲がりくねったチューブを思わせる光の道を通り抜け、ULTRAMAN SUITを装着した進次郎とグリッドマンは、システムの新たな領域に降り立った。
「ここがこの世界の中枢だ。恐らくヤツもここにいる」
「ここが……?」
 進次郎は周囲を見回し息を飲んだ。暗く広大な空間に、色とりどりのエッジを輝かせた高層ビル群が林立し、まるで大都市の夜景のようだ。見上げると、空からも同様のビル群が逆さまに連なっている。二人は、そうしたビルの狭間を立体迷路のごとく縦横に繋ぐハイウェイのひとつに立っていた。トラックやバイクの代わりに、無数の光球が絶え間なく行き交っている。
「急ごう、ウルトラマン」
 グリッドマンが、ハイウェイを疾走する光球に飛び移った。義経の八艘飛びよろしく次々に光球を乗り換え、ぐんぐん高みに登ってゆく。
 進次郎も慌ててそれを追った。

「いた!」
 光の街を一望できるビルの上から眺めると、一目瞭然だった。複雑に絡み合いながらも全体としては放射状に広がる夜景の光条・光点が集まる中心部。そこにそびえる、化学コンビナートのごとき巨塔の頂上に、巨大アルテリク星人が陣取っていた。
 大アゴを開き、金属的な光沢を放つ粒子を四方に放射している。その粒子を浴びた建造物は毒々しい紫色に変わり、形状も変化して自らも粒子をまき散らし始める。侵食は、急速に広がりつつあった。
「あまり時間はなさそうだ」
「早く止めないと!」
 ULTRAMANとグリッドマンは、ビルや光球を飛び渡り、粒子を吐くタワーのひとつに接近した。
「スパークビーム!」
 グリッドマンが拳から光弾を発射する。ULTRAMANもスラッシュを投じた。しかしどちらもタワーに到達する前に粒子に阻まれ、相殺されてしまう。
「駄目だ、もっと火力のある武器じゃないと!」
「私に任せろ!」
 グリッドマンがそう請け負うや、またどこかで声が聞こえた。
「アクセスコード・バスターボラー!」
 もの凄いモーター音が響いて来た。また何か飛んでくるのかと空を見上げたULTRAMANの予想に反し、それは足元の地面を砕いて現れた。高速回転する二基のドリルを備えた地底戦車だ。本来は巨大な車両なのだろうが、今はグリッドマンと同様に出力サイズを絞っているのか、せいぜい四輪バギー程度の大きだった。
「ええええっ!?」
 意外な物体の出現に、進次郎は思わず声を上げてしまう。
 ゲシッ、その場で超信地旋回をかましたクローラーの縁で、向う脛を蹴りつけられた。ギラリとキャノピーを光らせる地底戦車に「失礼だなオマエ」と睨まれた気がした。
「シドニー凝固弾頭弾!」
 タンクから発射されたシリンダーが粒子に触れて弾け、ぶちまけられた流体がタワーの粒子散布ダクトを塞いで固まった。
「武装合体超人・バスターグリッドマン!!」
 地底戦車と合体したグリッドマンが、ガトリング砲やミサイルを嵐のように連射してタワーを破壊する。驚くべき火力だ。進次郎は、一瞬とはいえこの奇天烈な兵装の有効性を疑ったことを心の中で詫び、反省した。

「次だ」
 別のタワーへ向かおうとした二人の鼻先を掠め、黒い槍が地面に突き刺さった。
 見覚えがある。ULTRAMAN ZEROの専用兵装ゼロランス。そのブラックバージョンだ。行く手にわだかまる墨を流したような闇の向こうから、その持ち主が靴音高く近づいてくる。赤い瞳。赤いスペシウムコア。黒い装甲。DARKLOPS ZEROだ。
「まさか、ダークロプスはあのとき……」
 爆発して失われたはず、という言葉を、進次郎は呑み込んだ。ここがマヤのシステムを視覚化した仮想世界であることを思い出したのだ。目の前のLOPSは、マヤの記憶データから生成した傀儡といったところだろう。

 ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSE SSSS.GRIDMAN 1

 LOPSが地面に突き刺さるダークゼロランスに手を伸ばしかけたと思ったときには、既に背後に回られていた。速い。突き込まれたランスを、進次郎はぎりぎりスペシウムブレードで挟み受け止めた。LOPSは即座にランスを手放し身を沈める。足を刈りに来たと見て飛び下がる進次郎。が、LOPSは宙に浮いた槍を垂直に蹴り上げ、さらに進次郎を蹴り飛ばす。次の瞬間にはバスターグリッドマンに急接近し、二挺のゼロスラッガーを喉元に突き付けていた。クローラーで後退しガトリング砲を斉射するグリッドマンだったが、すべて弾かれ、あるいは躱されてしまう。そして不意にとんぼ返りを打つと、落ちてきたランスをオーバーヘッドキック。背後からスラッシュを放とうとしていた進次郎の出鼻をくじく。体感で二~三秒の間の出来事だった。
「身軽なヤツだ」
 グリッドマンは武装合体を解除し、
「アクセスコード・グリッドマンキャリバー!」
 声と共に飛来した黄金色の剣を掴んで身構えた。
「電撃大斬剣・グリッドマンキャリバー!!」
 ULTRAMANも傍らに来て腕のブレードを展開した。
「グリッドマン、思い出したことがあります」
 進次郎がグリッドマンに囁く。
「マヤさんは以前、あのスーツの中に俺を捕えて、俺の仲間に攻撃させないっていう戦法を取ったことがある」
 ムキシバラ星人の居城、鋼鉄の次元回廊における戦いでのことだ。この世界がマヤの記憶から作り出されているならば、同じ戦略を企てる可能性は充分にある。
「つまりあのスーツの中には──」
「マヤさんの身体が捕らえられているかもしれないってことです!」
 タワーの残骸を挟み、グリッドマンとULTRAMAN、そしてLOPSが睨み合う。
 片手にランスを、片手にスラッガー二挺を器用に把持するLOPSが先に仕掛けた。ランスを突き、薙ぎ、空中へ投じたスラッガーにレーザーを反射させて思わぬ方向から攻撃してくる。その緻密な計算と正確な動作に、ますますマヤなのではないかという疑いを濃くせざるをえない。ゆえにこちらは致命の一打となりうる攻撃を放てず、防戦一方に甘んじるしかない。いずれジリ貧に陥ることは目に見えている。

「ウルトラマン。あの異星人を攻撃できないか?」
 今度はグリッドマンが進次郎に囁いた。巨大アルテリク星人は、今も巨塔の上で粒子を撒き、システムの侵食を続けている。あくまでも本命は、この世界を蝕むあの異星人の方だ。ヤツを倒せば、マヤも解放される公算は大きい。
「グリッドマンは?」
「彼女の身体がヤツに押さえられている限り、私は本来の力を発揮することができない。だが、君にチャンスを作るくらいはやって見せる」
 進次郎はアルテリク星人を見上げる。学校に現れた分身よりもはるかにでかい。そして絶え間なく散布されているあの粒子に触れればどうなるかわかったものではない。
 できるのか? 自分に、粒子をかいくぐってあのデカブツに一撃を食らわせることが。
 自分がLOPSの相手をし、グリッドマンが攻撃した方が確実なんじゃないのか?
 進次郎が逡巡する間にも、LOPSは襲ってくる。二人がかりでさえ、息をもつかせぬ猛攻だ。遂にグリッドマンが、手にしていた剣を弾き飛ばされた。
「グリッドライトセイバー!」
 グリッドマンはすかさず手首から光の刃を伸ばし、次の一手を防ぐ。
 さらに弾かれた剣が、意思ある者のごとく空中で反転、両刃の戦斧を思わせる形態に変化した。その刃が稲妻を放射し、LOPSめがけて振り下ろされる。やすやすと餌食となるLOPSではなかったが、さすがに面食らったようだ。警戒して距離を取った。
 グリッドマンが視線で進次郎を促す。
「ウルトラマン! 君の使命を果たすんだ!」

 マヤと進次郎が、並んでコンバーターと計測装置に接続された電波暗室。そこに隣接するモニタールームに、呼び出し音が響いた。井手が携えるタブレット端末からだ。井手は発信元を確認し、怪訝な顔で「通話」をタップした。
「……中央電算室? 私だ──何!?」
 金属メッシュ貼りの小窓越しに二人を見守っていた一同──早田、北斗、エドの目が井手に集まる。井手は「どういうことだ」「そんなバカな」といった合いの手をいくつか挟んだ後、何かに思い当たったように黙り込み、こうまくし立てた。
「私の権限で許可する。最低限の維持機能だけ残して、進行中のプロジェクトをすべて中断。要求通り、全リソースをそいつに明け渡せ。そう全部だ!」
 どう聴いても穏便ではない発言だ。何が起こったというのか?

「進次郎君のウルトラマンスーツが、中央電算室に膨大な演算処理のリクエストを寄こしてきたそうだ。最優先のタグ付きで」
 中央電算室は、科特隊が擁する世界でもトップクラスの超高速・大容量のコンピューターシステム《イワモトⅡ》の管掌部門である。イワモトⅡは普段、科学センターをはじめ様々な部署からの情報処理や技術計算、変動予測、物理解析、機構設計などのリクエストを受け、リソースのシェアリングを行ないながら稼働している。常に多くのプロジェクトが並列して進行しているため、使用権を巡って長い順番待ちの列ができているほどだ。ULTRAMAN SUITの制御システムからも、搭載プロセッサの処理能力を超える演算の必要性が生じた際にはリクエストが発せられることがある。緊急を要する事態が進行中である場合が多いため、それに備えて一定の領域が確保されてはいるのだが、今回はそれをはるかに超える規模の処理要請が届いたということだ。
「おかしくないですか? 先輩はあそこで寝てるのに」
 北斗の言うとおりだった。
 進次郎はマヤと共に隔離されており、リクエストを発したという進次郎のSUITはメンテナンスルームでチェック中である。戦闘中でもなければ訓練中でも、試験中でもない。SUITが勝手にそんなリクエストを送るはずはないし、通信を遮断された電波暗室にいる進次郎とも、有線・無線を問わず連絡は取れないはずなのだ。
「私も最初はそう思った。だが気付いたんだ」
 井手が説明する。
 今の進次郎はSUITと人間の融合体だ。生体にSUITの機能の一部が統合され、しかもSUITとの量子的結合状態が保たれている。ULTRAMAN SUITやその装備に組み込まれている量子ビーコンと同じだ。たとえ電波が遮断されていようと、距離にも方向にも影響されず、時空の壁さえ超えてエンタングルメントが保たれる。進次郎の頭脳に融合したSUITのシステムは、SUIT自体のシステムと電波を介さず連動しているのだ。リクエストを発しているのは、進次郎の頭脳だ。彼がマヤのシステム空間へのダイブに成功し、今まさにそこで戦っていることの証左とも言える。

「ウルトラマン!」
 間近に聞こえたグリッドマンの声で我に返る。眼前に、左腕をランスに貫かれたグリッドマンの姿があった。ULTRAMANを狙ってLOPSが投じた槍を、身を挺して防いでくれたのだ。またグリッドマンに助けられた。
「グリッドマン!」
 引き抜いたランスを打ち捨てて、グリッドマンを支え手近なビルに降下する。
「気にすることはない」
 左腕のグランアクセプターが破損していた。グリッドビームはもう使えない。
「でも──」
 ズン……LOPSとの間を隔てていた高層ビルが斜めに裂け、崩れ落ちた。その向こうに、LOPSが立っている。
 グリッドマンが進次郎の肩を掴んだ。
「もう一度言おう。この世界を救えるのは、君だけだ」
 ……そうだ。俺は何のためにここに来た?
 やるんだ。俺にしかやれないことを!
 進次郎が立ち上がる。
「……グリッドマン。俺にもう一度チャンスをくれますか」
 グリッドマンも、腕の傷を押して立ち上がった。
「もちろんだとも」
 LOPSがビルを蹴り、猛然とこちらに向かってくる。
「アクセスコード・バトルトラクトマックス!」
 横合いから、崩れたハイウェイをジャンプ台に、質実剛健を絵に描いたような装甲車が飛び込んできてLOPSに体当たりした。
「剛力合体超人・マックスグリッドマン!!」
 グリッドマンがその装甲車と合体し、巨碗を振るってLOPSを抱き抱えるように押さえ込む。
「行け、ウルトラマン!」

 進次郎はもう一度飛んだ。
 そして考える。
 ヤツを攻撃したとき、腕と腹の傷の様相が異なっていたのは何故か。
 グリッドマンではなく、自分にだけ世界を救えると断言する根拠は何か。
 聡明なマヤのことだ。何かヒントを残しているに違いない。
──バラのつぼみ。
 彼女が最後に言い残した謎の言葉。
 進次郎がこの世界で目覚めたとき、授業で聞いたバラの花の構造。
『何十枚もの花弁に包まれたその奥に子房と胚珠が──』
 ULTRAMANは、一直線にアルテリク星人の腹部を目指した。
 当然アルテリク星人は、迎え撃つべく光の粒子を吐きかけてくる。
「リミッター解除!」
 SUITの胸のスペシウムコアが赤く発光し、フェアリングを開いて放熱板が回転する。
 負荷を度外視してSUITの性能を限界まで引き出す、危険な緊急回避モードだ。
 たちまち全身の装甲が赤熱化する。この三〇秒が勝負だ。
 両手の掌を前方に向け、十六枚の光輪を重ねて盾とする。粒子に触れるたび、光輪は相殺され消滅してゆく。最後の一枚が消えると同時に、腹部にたどり着いた。
 背中へ向けて大きく膨らんだ腹部は、見ようによっては正にバラのつぼみだ。
 進次郎は腕のスペシウムブレードを露出させ、出力をレッドゾーンまで上げた。そして猛烈な勢いで腹の表面を削いでゆく。削いだ下には同じ表皮が何層にも重なっているが、構わず削ぐ、削ぐ、削ぐ。再生するよりも早く抉り、切り裂き、毟り取る。長い手足が背後から邪魔をしに来るが、ブレードのバックストロークで斬り払う。
 もう少し。きっとこの奥に──いた!
 腹の最深部に、手足を縮こめて眠っているようなマヤの身体が隠されていた。
 再生したアルテリク星人の六本の腕が襲い来る。
 しかしそれよりも早く、ULTRAMANの放った六つのスラッシュが、アルテリク星人の巨体を内側から八つ裂きにしていた。

 ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSE SSSS.GRIDMAN

「グリッドマン!」
 マヤを抱えた進次郎がグリッドマンに合図する。
「ではこの人形の中に彼女の身体はない、ということだな」
 マヤを救出した以上、もう遠慮はいらない。
 グリッドマンがLOPSを押さえる巨碗に一層力を込める。
 だがそれを上回る力でLOPSは腕を押し広げ、脱出した。
 背中が盛り上がり、新たに四本の腕が生えている。六本腕だ。
「なるほど。最初からそこにいたわけか」
 グリッドマンは、LOPSの中身に察しが付いたようだ。一旦剛力合体を解除し、再び飛来した戦闘機、地底戦車、装甲車と空中でフォーメーションを組むと、
「超合体超人・フルパワーグリッドマン!!」
 武器を満載した戦闘ロボットのような姿に合体した。
LOPSは六本の腕にランスとスラッガー、さらにEXライフルを装備し、攻撃を試みる。しかしろくに効いてはいない。
「グリッドォォォフルパワァァァフィニィィィィィッシュ!!」
 背中から引き抜いた剣を掲げ、全身を黄金色に輝かせて大上段から振り下ろされた光の刃が、DARKLOPSを真っ二つに両断する。
 その中からピンク色の生き物が抜け出し、駆けだした。どうやらこれがアルテリク星人の本体らしい。こいつなら勝てると踏んだのか、リミッター解除を経て力尽きたULTRAMANの方に向かってくる。グリッドマンもエネルギーが尽きたのだろう、合体を解除して片膝を付いている。
「ウルトラマン!」
 グリッドマンが自らの剣を放った。
 キャッチした進次郎が、しげしげと刀身を見る。
「俺を使え」
 剣がそう言っている気がした。
 こう見えても元科特隊エース隊員の息子だ。剣術の基礎くらいは心得がある。
 進次郎はマヤの身体を横たえると、グリッドマンキャリバーを両手で握り、走り来るアルテリク星人へ向かって正眼に構えた。
 力が湧き上がってくるのを感じる。
「ウルトラァァァグリッドォォォキャリバァァァエェェェェェェンド!!」
 口をついて出る言葉のままに、渾身の力で振り下ろす。
 アルテリク星人は、跡形もなく消し飛んだ。

 電波暗室で、マヤと進次郎が目を覚ます。
 重い二重扉を押し開け、北斗が、早田が、井手が駆け込んでくる。モニタールームではエドが拍手し、ディスプレイの向こうで諸星が安堵の息をつくのがわかった。
『帰国したら異星人街でメシでも奢ってやろう』
 それは正直遠慮したい、と曖昧に笑う進次郎に、マヤが問う。
「本当に良かったの?」
 進次郎が答える。
「……いいんです、これで」

 時間は少しだけ戻る。
 アルテリク星人が撃退されたことで、救出されたマヤはグリッドマンと一体化し、魂を取り戻した。そしてグリッドマンも、制約を受けていた能力の封印が解かれ、トライジャスターと呼ばれる胸の電光板が開放された。そこから放たれるフィクサービームには、侵食された世界を修復する力があり、マヤのシステムは完璧に復旧されたのだった。
 SUITを除装した進次郎は、マヤのシステム内に形成された《パドック》と呼ばれる空間で、グリッドマンと対峙している。進次郎の隣には、グリッドマンから分離したマヤの姿もあった。名残惜しいが、別れのときが来たのだ。
「ありがとう、グリッドマン」
「ウルトラマン、いや早田進次郎。私も君と共に戦えたことを誇りに思う」
 そしてグリッドマンは、進次郎にひとつの提案をした。
「どうだろう。君が望むなら、融合した君の肉体とスーツを、フィクサービームで分離することも可能だが」
 しばし黙考した後、進次郎はこう告げた。
「いえ、大丈夫です」
 マヤが意外そうに進次郎の顔を覗き込む。
「ウルトラマンになったときもそうだった。望んで手に入れた力じゃないけど、この力があるから救えた命もある。今日だって、俺がこんな身体だったから、マヤさんを助け出すことができた。これからも、俺だからやれることが、きっとある」
「…………」
「だから、俺はこのままでいい」
「……そうか」
 進次郎が差し出した手を、グリッドマンが握る。そこにマヤも掌を重ねた。
 パドックの天井に、パサルート──外部への経路が開く。
 電波暗室の扉が開かれたのだろう。
「それじゃあ皆、元気で!」
 グリッドマンが飛びたち、パサルートの彼方、ハイパーワールドへと帰還してゆく。
 進次郎とマヤは、笑顔でそれを見送った。
 さらばグリッドマン。
 ありがとうグリッドマン。
 さようなら、夢のヒーロー!




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Ⓒ円谷プロ ⒸEiichi Shimizu,Tomohiro Shimoguchi Ⓒ2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

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