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【ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSE】
Episode 20 霧が来る2021 前編

2021.07.12

ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSE 月刊ホビージャパン2021年8月号(6月24日発売)

【ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSE】 Episode 20 霧が来る2021 前編

 ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSEフォトストーリー特別編。
 ムキシバラ星人の脅威が去り、マヤとの平穏なひと時を過ごす諸星。しかしそれも束の間、騒々しいエンジニアトリオ…堀井・中島・土井垣の乱入に遭う。彼らが開発した新武装のテストに付き合う諸星だが、その裏で科特隊本部に異変が迫っていた。

ストーリー:長谷川圭一 設定協力:谷崎あきら ZERO SUIT/SEVEN SUIT 製作:只野☆慶 アルファ・スペリオル 製作:アスイ

Episode 20 霧が来る2021 前編

「マヤ。君はここに来るのは初めてだな」
「……うん」
 返事がわずかに遅れた。
 確かにマヤがこの科特隊本部を訪れるのはこれが初めてだ。でもマヤはこの施設の事を隅から隅まで全て知り尽くしていた。以前、遠く上海の病室からマヤは一瞬でこの科特隊本部の基幹システムに侵入し、あらゆる情報をサーチしたのだ。
 そう、マヤは電子生命体だ。
 科特隊本部に併設された光の巨人記念館を一緒に歩く諸星弾と出会った時は、彼女自身もそのことは知らず、ごくありふれた人型有機生命体として過ごしていた。だが実際はムキシバラ星人によって改造された破壊工作員であることを知り、そして数年ぶりに諸星と再会し、彼を騙し利用した。感情というものを無くしていたマヤは淡々と任務をこなすはずだったが、諸星という存在がマヤに再び人間としての心を取り戻させた。結果、彼女はムキシバラ星人を裏切り、その命をかけて自分の犯した罪を償おうとした。
 でも諸星は自分を騙した卑劣極まりない相手に「一緒に生きよう」と言ってくれた。そして強力な破壊力を持つマゼラニウム爆弾を積んだ小型円盤と共に宇宙空間で自爆しようとしたマヤを最後まで諦めず救おうとしてくれた。だから今こうしてマヤは生きている。
「どうかしたのか?」
 傍らで諸星が聞く。ずっと無言だったマヤを怪訝に思ったのだろう。
「周りの目なら気にするな」
 更に諸星に言われ、マヤは周囲を見回す。確かに来場客や子供たちが好奇の視線をマヤに向けていた。無理もない。マヤは今、シルバーメタリックの実に素っ気ないデザインのアンドロイドの電子頭脳に宿り、諸星と共に歩いていた。
「別に気にしてない。この場所なら私、案外馴染んでると思うし。それに……」
 次の言葉を発しようとした時、胸が少しぎゅっとなる感覚がする。
「もうすぐ、弾と出会った時の姿に戻れるんだもの」
 今日、諸星とマヤがこの場所を訪れたのには二つ理由があった。
 一つ目は現在開発中のSEVEN SUIT専用の強化兵装を諸星自身が試用し、果たして使い物になるか検証すること。
 もう一つはマヤ専用のボディ──女性型アンドロイド、ゼロワンがもうじき完成すると井手から連絡を貰い、マヤ本人にその最終チェックをしてほしいと頼まれたのだ。
 マヤは上海でのムキシバラ星人との最終決戦で諸星たちに命を救われた後、半年間はずっとZERO SUITの中に、別の意識体と同居状態だった。
 その意識体とは、やはりムキシバラ星人たち侵略者に母星を滅ぼされた孤高の戦士だ。
「同じボディに二つの人格はさすがに疲れる」
 ある時、その戦士(今はZEROと呼ばれている)が愚痴をこぼした。ZEROはおよそ冗談など口にしないキャラなので、ZEROの装着者の薩摩次郎は本気で焦りまくり、すぐさまそれを諸星に報告した。もしかしたらZEROが同居するマヤにストレスを感じ、何か危害でも加えるのではと本気で心配したのだ。
 さすがにそんなことは無いとは思ったが、確かに今の状態はZEROにとってもマヤにとっても不自由に違いない。
 基本どちらかの意識が表に出ている時、もう片方の意識は消え、二人の人格が同時に現れることはない。だが時折、それが混乱を起こしたことも幾度かあった。次郎がZEROに話してるつもりがマヤであったり、逆の経験を諸星自身もしていた。
 そんな勘違いを防ぐため、それぞれの人格によってボディカラーが変化する機能が井手たちにより組み込まれてはいたが、根本的な解決とは言えなかったようだ。
 諸星も次郎の心配に乗っかる形で、マヤ専用の別のボディを作れないかと井手に進言したのだ。無骨なものではなく、出来るだけ昔のマヤの姿に近いものをと。
「任せたまえ」
 井手はSUIT開発チームの総力をあげ、人間そっくりの美しいアンドロイドをマヤにプレゼントすると約束してくれた。
 諸星はそのことはマヤには内緒にしていた。別にサプライズを仕掛けたというわけではなく、もし井手が作ったものが期待外れの風貌であったら、きっとマヤが悲しむと思ったからだ。
 しかしそれは杞憂だった。完成目前のアンドロイド、ゼロワンを見せられた時、思わず諸星は息を飲んだ。それほどそのアンドロイドはマヤの姿を見事に再現していたのだ。
 ベースは開発途上にあった、人間そっくりのオペレーター用アンドロイドだった。職員の負担軽減に貢献すると期待されたものの、意外に内部の評判が芳しくなく、採用を見送られた経緯がある。精巧に過ぎたのか、俗にいう「不気味の谷」に嵌まってしまったのだ。ゼロワンはその外装をマヤに似せて新造し、内部機構に最新の技術でブラッシュアップをかけたものだ。
「どうだい? 彼女も気にいってくれるかな?」
「はい、きっと。ありがとうございます」
 井手に礼を言った時、諸星は普段は見せない笑顔を浮かべていたに違いない。

「ZERO。ご機嫌はいかが?」
 光の巨人記念館から地下の科特隊基地に諸星と共に移動したマヤが、メンテナンス中のZEROに声を掛ける。
「優しくて可愛らしい同居人がいなくなって寂しいんじゃない?」
「それ、自分で言いますか?」
 無言のZEROに代わって、メンテナンスにつき合っている次郎が答えた。
「まあ、確かにマヤさんが優しくて可愛らしいことは認めますけど。ね、諸星さん」
 からかうような笑顔を浮かべる次郎に諸星は軽く殺意を覚えたが、
「そうだな」
 と、出来るだけ静かに相槌を打つ。ここでいつものように次郎を睨みつけ死ぬほどビビらせては、せっかく上機嫌のマヤの気持ちに水を差しかねない。
「あー、いたいた!」
 その時、半分声を裏返させて叫ぶ、やや太り気味の白衣の男が諸星に向かって走って来た。
「おい、中島! 施設内は走ったらあかんとあれほど言ったやろ!」
 中島と呼ばれた男の背後を、やはり小太りの男が追って来る。
「いや、そうは言いましてもね堀井さん! 俺がようやく完成させたアルファ・スペリオルの芸術的な凄まじい完成度を一刻も早く諸星さんに実感して欲しいんです!」
「何が芸術的や。どうせまたしょーもない失敗作やろ。あんなもん、ただのポンコツや」
「ポンコツって言いましたか、今! 言いましたよね! もう一度言ってみろ!」
「ああ、何度でも言うたるわ!」
 思わずつかみ合いになる二人を見つめ、今度は明確な殺意を覚えた諸星が、
「いい加減にしろ!」
 低くドスの利いた声で一喝。途端に中島と堀井の動きが止まった。
「新型兵装のテスト開始は三〇分後の筈だが」
「……そうですよね」
 中島が叱られた子犬のようにしゅんとなる。
「では三〇分後にお待ちしております」
「見ろ。怒られたやないか。だからわしはよせって言ったんや」
「自分だって二時間も前から諸星さんを探してたくせに」
 相変わらず言い合いながら引き上げて行く二人をマヤが見送り、
「あの人たちが有名な科特隊の三賢者ですか」
「ああ。そのうちの二人だ」
 と、不機嫌に答える諸星の横で、
「子豚三兄弟とも呼ばれてますけどね」
 すかさず次郎がちゃちゃを入れ、今度こそ諸星に睨みつけられる。
 だが実際、堀井、中島、それに現在工作室に一週間連続巣ごもり中の土井垣を含めた三人は、井手も認める天才エンジニアであり、三人とも大食漢でやや太めである。
「その三人って、セブンスーツの開発にもずっと関わっていたんでしょ?」
「ああ。その通りだ」
 よく知ってるな、というニュアンスを諸星の声に感じ取り、マヤがしまったと後悔する。それも以前ここのデータベースに侵入した時に得た情報だった。
「今の諸星さんのセブンスーツが完成するまで、幾つもの試作品があったんですよね?」
 マヤの失敗に助け舟を出すかのようなタイミングで次郎が尋ねると、
「それに関しては私から説明しよう」
「!?」
 いつの間にか井手がすぐ近くに笑顔で立っていた。
「これが試行錯誤の連続でね」

 そもそもULTRAMAN SUITは、装着者がウルトラマンの因子を持つことを前提に計画・設計されたシステムだ。並外れた筋力、瞬発力、認識能力、骨格の剛性、靭性、外力や放射線に対する耐性等々を有効に増幅し、補填し、防護する。そのために生み出された数百数千の要素技術を転用することにより、因子を持たぬ者であっても着用可能な強化防護服システム構築の可能性が模索されたのは、いわば必然だったといえる。何しろウルトラマン因子の保有者は人類世界にたった二人しか存在しないうえ、うち一人は未成年ときている。訓練されたエキスパートによる運用が可能ならば、実利的にも道義的にもそれに越したことはない。
 こうして最初に完成したのが、Version 0。次郎やマヤもよく知るZERO SUITである。しかしこれは実際に装着する諸星の運用スタイルにマッチせず廃番とされ、抜本的な再設計を余儀なくされた。爾来(じらい)開発は慎重を期して段階的に進められ、クリアすべき要件を細分化。動力源であるマグネリュームセルの組み込みから人工筋肉の落とし込み、制御システムのすり合わせなど技術的ハードルは多岐にわたり、幾度もの行き詰まりと大きなブレイクスルーを繰り返してその都度バージョン・ナンバーを更新していった。
 Version 7.0にして初の実戦テストを敢行。これが一定の成果を収めたことで、科特隊の装備として制式化され、いまに至っている。その後もSEVEN SUITは細かな改修を続け、現在のバージョンは7.21Bに当たるとのことだった。

「いつもながら諸星君の評価が厳しくてね。バージョン6の時も『何かが足りない』って言うんだ。その『何か』が結局何だったのか──」
 果てしなく続く井手の説明は、前方の通路を通過する小型カートに遮られた。密閉された金属ケースを載せている。数人の研究員が付き添い何やら厳重な雰囲気だ。
「あれは?」
 思わず諸星が聞くと、
「五日前、建設中のビル工事現場の地下から発見されたもので、メテオライトのようなんだが構造がかなり変わっているらしくてね。ここで分析することになったんだ」
「……あの隕石……」
 マヤが運ばれる金属ケースを見つめ、ポツリと呟く。
 何か一瞬、嫌な感覚がしたのだ。
「どうかしたのか?」
 また諸星の声にハッと我に返り、
「……ううん。何でもない」
 きっと自分のボディが完成するのが待ち遠しくて気持ちが高ぶってるせいだ。そうマヤは自分を納得させた。

 その頃、さっき中島と一緒に諸星たちの所へやって来た堀井は光の巨人記念館に展示された巨大ウルトラマン像の前にいた。
「すまん。あと三分で試作品のテストなんや」
 ぺこぺこ堀井が頭を下げるのは妻のミチルだ。
「呆れた。自分から遊びに来いって呼んでおいて」
「いや~最近忙しすぎて日にちを間違ってしまったんや。継夢。未来。父ちゃん、終わったらすぐ戻るからな」
 ミチルの後ろでウルトラマン像を見上げる小学生の兄妹が、
「いってらっしゃーい!」
 と笑顔で手を振る。
「じゃあな! あとでお好み焼き買ってやるからな!」
 大急ぎで走り去る堀井を家族三人が見送り、
「ごめんね。継夢。未来」
「別に気にしてないで。いつものことや」
「そうそう。お兄ちゃん、かくれんぼしよ」
「しようしよう!」
 じゃんけんをする二人を見つめ微笑むミチル。
「あの人のお陰であの子たち、たくましく育ってるのかも」

 科特隊本部大深度地下耐爆試験坑。特定危険物の処理や兵装の試験、演習等に使用される広大な地下施設に一同は集まっていた。SEVEN SUITを装着した諸星がメインホールの円内に立ち、厚さ一五五ミリのプレキシガラスを隔てた観測室に井手、マヤ、次郎、堀井、中島、そして一週間ぶりに工作室から這い出した土井垣の三賢者が顔を揃えている。

 SEVENは砲身長二メートルを優に超える巨大な砲を手にしていた。中島試案の大型高速力線(りきせん)砲《アルファ・スペリオル》である。SEVENはそれを腰だめに構え、二キロ先に設置されたターゲットへ向ける。両肩の測量装置が小刻みに首を振り、背中にマウントされた管制システムと連携、砲身に接続されたアームが照準の調整を行ない、ターゲットを正確に指向し続ける。
 ブザーが鳴り、グリーンのランプが点灯した。SEVENがトリガーを絞る。砲口から伸びた火線がターゲットを射抜いた。続けてブザーが鳴る。別の位置にターゲットが出現し、不規則に移動する。あるいは彼我の間に鉄壁がせり上がりターゲットを遮蔽する。SEVENは時に大きく旋回し、時に左右へステップし、ジャンプし、ダッキングし、ありとあらゆる体勢から砲撃を放った。全弾命中。一射たりとも外すことなくターゲットは貫かれた。
「よっしゃああ!」
 観測室で中島が快哉を上げた。
 アルファ・スペリオルは、対怪獣戦を想定した彼の自信作だ。全長二十メートルを超えるような大型怪獣の出現は長らく影を潜めていたとはいえ、このところガタノゾーア、岩鉄城など過去に例のない巨大な敵との交戦が重なっているのも確かである。敵の射程外から正確に、かつ確実に有効な打撃を与えられる兵装が必要だと、中島は考えたのだった。
 リリースレバーを引き、白煙を上げる力線砲を足元に転がした諸星に、意気揚々と感想を求める。諸星が回線を開いた。
『重い。かさばる。トルクとリコイルで思うように動けん。連射も利かんし冷却も遅い。そもそもこのサイズでは戦闘中に取り回しようがない。ろくに振り向くこともできん。わざわざスーツに持たせるメリットが見当たらん。物干し竿にでもするんだな』
 ぼろかすだった。
 うわ、きつ──と、その辛辣さに、次郎が思わず肩をすくめる。
「……あざッス」
 天国から地獄、消沈する中島の隣では、堀井が手を叩いて大笑している。
「それみたことか。やっぱりガラクタや」
「ガラクタ言うな!」
 互いに掴みかからんばかりの口喧嘩が始まった。
「堀井さん失礼ですよ、こんな立派な物干し竿をガラクタだなんて」
「物干し竿じゃねえ!」
 仲裁に入った土井垣までが火に油を注ぐ。大騒ぎだ。
「……いつもこうなんスか?」
「いつもこうなんだよ……」
 同情する次郎に、井手がこめかみを揉みつつ応える。
 「くすっ」と笑ったマヤを、井手はきょとんと振り返った。
 いま彼女が仮住まいしているボディに、笑ってみせる機能など備わっていないからだ。
 無機質極まるステンレスフレームのガイドボットにしてこの愛嬌──彼女がゼロワンの主となれば、製作した自分ですら生身の人間と見分けがつくまい。

 同時刻。分析室に異変が起こっていた。
 運び込まれた隕石からGC/MSにかける試料を採取するため、研究員の一人が表面にスクレーパーを当てた瞬間、隕石が自然裂開し内部から霧状の粉体が噴出したのだ。不幸にも現場は気密も陰圧も施されていない低レベルのリスク管理区画に位置していた。X線とCTスキャンによる事前の非破壊分析の結果、大きな危険はないと判断されていたためだが、それは誤りだった。隕石の内部、あるいは隕石そのものが、未知の宇宙生物の繁殖器官だったらしい。噴出した粉体はたちまち研究員の簡易防護服の内側にまで侵入し、首筋に付着して担子菌の傘を思わせる半球が密集したコロニーを形成、皮膚を溶かして頸動脈に浸透し、脳を目指した。
 ロイクロコディウムという、カタツムリを中間宿主とする寄生虫がいる。彼らはカタツムリの体内で成長して触角に陣取り、その行動を支配して宿主を明るい場所に誘導するという。最終宿主である鳥に発見させやすくするためだ。
 ほかにもハリガネムシやタイワンアリタケなど、寄生した宿主の行動をコントロールして死地へ向かわせる生物の例はいくつか知られている。
 この宇宙寄生体も類似した生態を持っていた。中間宿主の前脳前頭葉白質を麻痺させ行動を支配したうえで、菌類で言えば胞子に当たるであろう霧状粉体の放散範囲を拡大、手当たり次第に宿主を増やしてゆく。寄生された研究員の救護を試みて駆け寄った別の研究員が次々と同じ運命をたどった。血液を養分としているのか、首筋のコロニーも急速に成長し、風船が割れるように弾け飛んでは近くの宿主候補に飛び移ってさらに犠牲者を増やした。地獄絵図である。
 警報ボタンを押せた者も、事態を他のセクションに報告する余裕のあった者も皆無だった。初動の遅れは多くの場合に致命的な結果を招く。保安部が異変に気付いた段階で、既に霧による汚染は同フロアの七〇パーセントにまで広がり、二十名以上の職員が寄生体の支配下にあって新たな獲物を求めさまよっていた。

「次はわしの番や」
 ダメ出しされた中島に代わり、堀井がコンソールの真ん中に進み出て両手を揉む。
「はい皆さん、笑う準備はよろしいですか?」
 中島が混ぜっ返す。
「やかまし、お前の物干し竿と一緒にすな。諸星センセもおっしゃってはったやろ。スーツに持たせるメリットを考ええいうてな。さあお待ちかねや。わしが心血注いだ最高傑作! 対怪獣大型超振動伐斬(ばつざん)刀! その名も──」
 堀井がスイッチを押そうとしたまさにその瞬間、けたたましいアラートが鳴り響いた。
 全員が一斉に顔を見合わせる。
「何が起こった!?」
 井手がタブレットを操作し指令室に繋ぐ。
 予想以上に状況は深刻だった。
 寄生体の胞子を含む霧は今や十五のブロックにまで拡がり、地上階に迫りつつあった。地下施設ゆえの強力な換気機能が却って被害を拡大した格好だ。胞子の繁殖力が、換気システムの集塵能力を上回っている。無論こうした事態に備えて区画ごとに気流はゾーニングされ、気密隔壁も備わっているが、それが作動していない。手動によって物理的に解錠されている形跡がある。誤って閉じ込められた際にのみ使われる緊急脱出コックだ。行動を支配された犠牲者たちは、それを利用している。脱出後、再び閉鎖する規則だが、彼らがそれを遵守するはずもない。どこにでも入り込み、どこからでも出ることが可能なのだ。
「……緊急事態を宣言。司令部・保安部勤務を除く職員はただちに退去。状況によっては全施設を破棄する」
 タブレットの向こうで、オペレーターの息をのむ音が聞こえた気がした。

 科特隊が今なお存続し、活動していることは非公開だ。地下で何が起こっていようと、地上を──光の巨人記念館を訪れている人々にそれが伝えられることはない。その原則を破り、記念館にも火災という名目で警報が鳴り響いた。どよめく館内の要所要所で、係員が客と職員の避難を誘導する。彼らも多くは知らされていない。しかし緊急事態宣言の重大さだけは理解していた。少なくとも民間人には、一人の犠牲者も出してはならない。誰もが必死だった。
「継夢! 未来!」
 騒然となる館内でミチルは避難する人の流れに逆らいながら、必死に二人の姿を探す。かくれんぼをしたまま姿が見えなくなってしまったのだ。

 その頃、継夢は未来を探して職員通路に迷い込んでいた。
「なんや、えらい騒がしいな」
 記念館の方から微かに聞こえる人々の叫び声。何かあったのだろうか? もしそうならママが心配してるに違いない。早く未来を見つけて戻らないと。
「おい、未来! 出て来い! かくれんぼはおしまいや!」
 だが未来の返事は無い。おびき出すため、継夢がそんなことを言っていると思っているのかもしれない。
「未来! どこにいるんだよ!」
 更に奥へと継夢が通路を進んだ時、突き当りのエレベーターが停止し、扉が開く。
「!?」
 思わず立ち尽くす継夢。
 開いた扉から大量の真っ白い霧が溢れ出したのだ。
 う~~~う~~~う~~~~~。
 そして不気味な呻き声をあげながら幾つもの黒い影が霧の中を近づいてくる。
「……何や……あれ……」
 呟く継夢の目が大きく見開かれる。
 霧の中を迫る研究員たち。その不自然に曲がった首にはブクブクと鼓動する醜悪な寄生体が張り付いていた。

つづく


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Ⓒ円谷プロ ⒸEiichi Shimizu,Tomohiro Shimoguchi

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