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【ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSE】
8U-英雄- 編 Episode 34  英雄たちよ、永遠に

2022.09.11

ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSE 月刊ホビージャパン2022年10月号(8月25日発売)

【ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSE】8U-英雄- 編 Episode 34  英雄たちよ、永遠に

 ULTRAMAN SUIT ANOTHER UNIVERSEフォトストーリー、8U編最終回。
 圧倒的な闇。圧倒的な絶望。DARK ZAGI=ダークゴーネの力で過去に飛ばされたULTRAMANたちを待ち受けるのは、ガタノゾーア復活という上海の悪夢の再来だった。それでも戦い続ける英雄たちに、奇跡の光は宿るのか。UAU、堂々クライマックス!

ストーリー/長谷川圭一
設定協力/谷崎あきら
ULTRAMAN SUIT/SEVEN SUIT/ACE SUIT/
TIGA SUIT/ZERO SUIT/TARO SUIT/
DARK ZAGI/ ZERO SUIT /SH 製作:只野☆慶
GLITTER TIGA SUIT 製作:Rikka
ZOFFY SUIT 製作:小澤京介

8U-英雄-編
Episode 34  英雄たちよ、永遠に

 ズルッ。ズルッ。ズルッ。
 次郎の耳に響くのは、過去の仲間たちが地面を引きずられる音だ。
「未来から、はるばるご苦労だったな。プレゼントだ」
 EVIL TIGAが投げたのはTIGAだ。そのボロボロに傷ついた体が、既に倒れているもう一人のTIGAのすぐ脇へと転がった。
 悪夢だ……。次郎が心の中で呟く。
「何で……こんなことに!?」
『誤差が、生じたようです』
 混乱する次郎に、ZEROとは違う声が静かに語り掛ける。それは、
『マヤか?』「……マヤさん?」
 ZEROと次郎が同時に驚きの声をあげる。彼女は、アンドロイド01の人格として科特隊指令室にいたはずだ。
「どうして……」
『あの時、ゼロが解放した時空復元力は、たしかにダークザギと、過去から召喚した上海を歪曲空間に押し戻しました』
 良かった。少なくとも元いた世界は、これで救われたわけだ。
『その瞬間、ザギはあなた方ウルトラマンも道連れに、歪曲空間に引きずり込んだ』
 最後に聞いたZAGIの言葉がよみがえる。
 ──そこまで愚かとは……!!
『それに気づいた私は、データリンク回線を通じて自分自身をこのスーツのストレージに量子転送したんです。何か、私にもできることがあると思ったから』
 できることがあるのに何もしないのはただの罪――諸星の口癖だ。
『だけど、この時系列への到着に誤差が生じた。ザギと他の七人は私たちよりも前に、私たちはいちばん最後に、ここへ来てしまった』
 マヤは淡々と続ける。
『記録では、進次郎君が生体テレポートでピラミッド内に侵入。イーヴィルティガとの交戦の末、ガタノゾーアの殲滅に成功した。でも……』
 どさっ! EVIL TIGAが無造作に投げ捨てたのはボロボロに傷ついたULTRAMAN――過去の進次郎だ。
『その未来はなくなりました。過去が、書き換わってしまったから』

「過去が……書き換わった……?」
 科特隊指令室。オープン回線で話すマヤたちの会話に井手がうめく。
「彼らは本当に未来から来たというのか?」
 井手の傍らでモニターを見つめる早田が相槌を打つ。
「彼女の話は首尾一貫している。信頼していいだろう。同じIDのスーツが同時に二体存在する現状とも符合する。しかもそのうちの一体は──」
 早田が、倒れているZOFFY SUITのデータを呼び出した。
「私のプロトタイプスーツの完成形だ。私専用のスーツを装着できる人間は、私以外にいない。そうだろう?」
「当局への申請なき時間遡行、認証なき未来情報開示。既定事象の恣意的改変。すべて重大な星団法違反だ」
 エドが、心なしか語気を荒げて割り込んだ。
「速やかに原因を排除し、この時系列に秩序を取り戻さなくてはならない」
 どうやら彼らが未来からやってきたことは間違いないらしい。
 だとしたら聞きたい事は山程ある。科学者として、科特隊の指揮を預かる者として。
「君たち! 未来で何があった? これから何が起きるというんだ!?」
 井手の問いかけに答えたのはマヤたちではなく、
『勿論、滅亡です』
 メインモニターから響くDARK ZAGIの声だった。
「重力変動検出! 最大級です!」
 オペレーターが告げると同時に、ULTRAMANたちが倒れている瓦礫の山が音を立てて陥没した。そこにSUITの軋みと生命維持機能が発する警報、そして装着者の苦悶の声が重なる。まさに叫喚地獄だった。

「ゼロ、でしたっけ? 未来ではよくも私の邪魔をしてくれましたね」
 超重力が十二人のULTRAMANたちを瓦礫に埋める中、ZAGIがゆっくりとZEROに向かい、
「正直ムカつきましたよ。私にたてつくなどありえない。でも結果は見ての通り。お前たちには何もできなかった。どんなにあがこうが全て無駄。この世界は滅びるのです。絶望という名の闇に飲み込まれ、恐怖の悲鳴を奏でながら」
 DARK ZAGIがさらなる重力を上乗せし、ZEROを踏みつける。
「さあそのスーツの耐久荷重はどの程度です? 五〇〇トン? 千トン? さすがに一万トンには耐えられないでしょう?」
 次郎は声も出せない。
「…………!!」
 肺に空気が入っていかない。視界が狭まる。思考が鈍ってゆく。
「ふん」
 動かなくなったZEROを爪先で蹴ったZAGIは、それきり興味を失った。
「さて、儀式を続けるとしますか」
 EVIL TIGAたちに命じるZAGI。するとカミーラが、倒れている二人のTIGAに光の剣を突き付け、
「その前に、この男にとどめを刺させて。この私の手で」
「時間の無駄です」
「でも――うがっ!」
 カミーラの体が吹き飛び、瓦礫に激突した。
「カミーラ!」
 ヒュドラとダーラムが駆け寄る。
「私の命令は絶対です。そもそも私が来なければ、お前たちはウルトラマンに敗北し、消え去っていたのですから」
「そいつは初耳だな」
 EVIL TIGAがぐっと顔をZAGIに近づけ、
「だが、もう歴史は変わったんだろ」
「お前も吹き飛ばされたいですか?」
「いや。儀式は続けるさ。それにしても、いいスーツだ。マスター指導者ザギ」
 そう言うと踵を返し、黒いピラミッドへと向かっていく。カミーラもヒュドラ、ダーラムに支えられ、EVIL TIGAの後に続いた。
 それをZAGIが見送り、
「邪神ガタノゾーア。美しき滅亡をもたらすもの。復活すれば、今度こそ誰にも止められはしない」
『……止める』

UAU ULTRAMAN 8U 34-1

「!」
 ZAGIが振り向くと、全身を苦痛に震わせつつZEROが再び立ち上がった。
『俺が……必ず……止める!』
「死にぞこないが」
 更に強烈な光弾をZAGIが放とうとした時、背後から回転する何かが飛来、ZAGIの体勢を崩して瓦礫に突き刺さった。D装備。大型破断刀〈アイスラッガー〉だ。
「死にぞこないなら、ここにもいるぞ」
 瓦礫の中、二人のSEVENが立ち上がる。SUITはボロボロ、体力も限界なのは誰の目にも明らかだ。しかし二人は、寸分たがわぬ霞の構えを取って言い放つ。
「言ったはずだ。必ず貴様を地獄に落とすと!」
 猛然と斬りかかるダブルSEVEN。攻撃をかわすZAGIが反撃しようとした時、今度は光線が、火球が、背後から放たれる。間一髪で回避するZAGI。
「どういうことです……」
 その目の前に、二人のTIGAが、二人のACEが、JACKが、TAROが、ZOFFYが、そして二人のULTRAMANが立ち上がる。
 巨体のJACKが頭を振りながらぼやく。
「飲み過ぎたかな。旦那が二人に見えるぜ」
 一方のULTRAMANが聞いた。
「その声……ジャックさん?」
 ACEの一人が返す。
「知らないってことは、そっちがこの時系列の先輩ですね」
 TIGAの一人が、場違いな歓談を打ち切った。
「後にしろ。こいつを倒すのが先だ」
 ZAGIを包囲するように並び立つ十二人の戦士たち。
「倒す? 十二人がかりなら倒せるとでも? わかっていませんね。十二対一ではない。十二対二万五〇〇〇だということが!」
 瓦礫の隙間から、隧道から、水中から、いたるところから、数万というゾイガーの群れが飛びたち、ZAGIに従うように旋回する。
 だが十二人は怯まない。
「二番煎じですよ、そのセリフ」
「どんな絶望の中でも、希望はある」
「守るべきものがいる限り、俺たちは戦う」
「それが、ウルトラマンだ!」
 突如現れたもう一人の自分。見知らぬSUIT。ここにいるはずのない男たち。不可解なことだらけで事態がまるで掴めない。だがその一言で、全員の心が結ばれた。
 そしてもう一人──
「光が……見える」
 戦場からやや離れた緑地帯に着陸している小型ビートル。
 その機内でじっと祈りをささげる少女、ユザレもまた彼らと心が繋がっていた。
「やれやれ、どこまで私を怒らせたら気がすむのですか?」
 満身創痍でありながら闘気をみなぎらせる戦士たちをZAGIが見回し、
「今度こそ、まとめて息の根を止めてあげましょう!」
 ドス黒い波動をまとい、猛然と戦士たちに襲い掛かった。

 ド――――ン!
 何かが激しくぶつかりあう衝撃音が黒いピラミッドの中にも響く。
 EVIL TIGAとカミーラたちの前には儀式用の異形の祭壇があり、異界の門を開く巨大な眼――ルボイア星人が拘束されている。
「始めよう。大いなる闇の支配者、復活の……うっ」
 不意にEVIL TIGAの脳裏に、あるはずのない記憶が流れ込む。
 ──弱いな。弱いから、お前は闇に心を飲まれたんだ。
 ──黙れ黙れ黙れ、黙れええええええ!
 ULTRAMANの放ったスペシウム光線と、EVIL TIGAの放ったゼペリオン光線が激突。真っ白な光に包まれ!
「……そういうことか」
「どうした?」
 小さく呻くEVIL TIGAをカミーラが怪訝に見る。
「たしかに……君が正しい」
 その両腕を広げると同時、床や壁が蠢き、大量の重力波がルボイア星人の眼の中へと送り込まれた!

 ありえない。こんなことは、あり得るはずがない……!
 ZAGIが――その漆黒の鎧をまとうダークゴーネが、心の中で呟く。
 十二人のULTRAMAN。確かに侮れない数ではあるが、いずれも満身創痍、立っているのが不思議なほどのダメージを受けている。数で勝ろうとも瞬殺できる、そう確信していた。だからあえて時間を操ることなく真正面から潰すことにした。その判断は間違ってはいなかった。実際、ZAGIは十二人の戦士たちの同時攻撃も余裕で躱し、一人一人に致命傷となる一撃を加えた。だが奴らは何度倒れようと再び立ち上がり、戦列に復帰した。いくら攻撃しても十二人、誰一人欠けることがない。次第にZAGIは圧され、相手の攻撃がヒットし、初めて無敵の鎧に傷がつく。
 初めて感じる焦り。苛立ち。動揺。そして……恐れ。
 こんなこと、ありえない! ありえない! ありえない!
 その時――、
 ゴゴゴゴッ! 漆黒のピラミッドから火柱が立ち上ると、時空がぐにゃりと歪み、異界の門が開かれた。
「ようやくですか。待ちわびましたよ」
 門の奥の闇に爛々と光る赤い双眸。おぞましい咆哮が響き、幾本もの巨大な触手が這い出してくる。

「井手。奴の姿を見ない方がいい。人間の精神力では自我を保てないだろう」
 エドの忠告に従い、井手はすべてのオペレーターおよび戦闘員に可視光域での観測を禁じ、音声のモニタリングも止めさせた。画面が模式図や波形グラフに切り替わる。

 うおおおおおおおおおおん!

 その声を聞くだけで正気を失い、姿を見るだけで発狂する異形の怪物。暗黒の旧支配者。邪神ガタノゾーアが、漆黒のピラミッドを引き裂いて上海の街に出現した。
 その超巨体に向けて両腕を拡げ、DARK ZAGIが勝ち誇る。
「はははは! 結局はこうなるのです! お前たちがいかに抵抗しようと、大いなる時の流れの中ではほんのさざ波に過ぎない! さあ怯えるがいい! 絶望するがいい! お前たちの恐怖が! 狂気が! 混乱が! 邪神の糧となり私の力となるのです!!」
 ガタノゾーアの触手のひと薙ぎが、高層ビルを打ち崩した。巻貝を思わせる外殻表面から無数のゾイガーが湧きだし、十二戦士に襲い掛かった。

「ビーコンロスト! 位置を見失いました!」「生命維持系統が機能していません!」
「パリ本部から緊急入電! ゾイガーが世界中に出現したと!」
 科特隊指令室に情報が錯綜する。しかし井手は、それらに対応する力を失っていた。
「もはや我々に希望はないのか……」
「井手!」
 早田が、うなだれる親友の肩を掴み顔を上げさせる。
「俺たちが希望を捨ててどうする!」
『そのとおりです』
 小型ビートルにいるユザレからの声が響いた。
『目を逸らさないで。見て下さい、彼らの姿を。聞いて下さい、彼らの声を。世界中に届けて下さい、彼らの戦いを──』
「…………」
 井手の表情が変わった。
「映像と音声を通常に戻せ。通信制限も報道管制も解除。各方面に通達急げ」
「そんなことをしたら──」
「私が全責任を負う!」
 温厚な井手の剣幕に驚き、オペレーターたちは一斉にコンソールに向き直ってキーを叩いた。
 メインスクリーンに実景の映像が戻り、音声が復活する。サブモニターには各国の報道映像が映る。十二戦士の戦いの、全世界同時中継・同時配信が開始された。
 ULTRAMANは戦っていた。いかに打ちのめされようと、何度叩き伏せられようと立ち上がり、光輪を放った。ソードを振るった。ビームを光らせ、スピアを伸ばし、ランスを唸らせ、雄叫びを上げて炎を迸らせた。それを見る人々に、やがて変化が起こった。闇に怯え、目を伏せて耳を塞ぎ、うずくまっていた人々に、変化が。
 負けるな……頑張れ……はね返せ……俺たちが付いてる……!!
 拳を握り、息を弾ませ、立ち上がって空を見上げた。
 小型ビートルのユザレも、それを感じていた。
「光が、広がってゆく……」

 一方、DARK ZAGIは動揺を隠せずにいた。
「おかしい……なぜ恐怖が集まってこない? 絶望が蓄積されていかない?」
「当然だ」
 ゾイガーの一群を屠ったZOFFYが応える。
「我々も人々も、誰も恐がっていない。誰一人絶望していないんだからな」
 その右に、左に、戦士たちが集結し、DARK ZAGIを指さす。
「俺たちはお前など恐れない!」
 中継を見つめる人々が、一斉に歓声を上げた。
 ユザレがすっと目を閉じ、精神を集中する。
『聞こえますか? 私の声が。……視えますか? この世界を守るため、最後まで諦めず戦うウルトラマンたちの姿が……』
 世界各地に、この呼びかけをより鮮明に受け取ることのできる人々がいた。後にデュナミストと名付けられる、先天的にユザレの意識を共有する能力の高い人間たちだ。
 彼らの中には、この時系列を生きるレネがいた。姫矢准とセラが、他にも一〇〇〇人以上の人々が、ユザレのメッセージを受け取り、その意味を瞬時に理解した。
 まだ希望はある。世界は滅んだりしない。
 その希望とは、自分たち自身なのだと。

 DARK ZAGIが超重力を発動させる。またも十二戦士が地に這わされ。その上にゾイガーの群れが折り重なって石化する。
「ぐ……あああああ!!」
 戦士たちの血を吐くような呻きが世界中に中継される。
「立て、ウルトラマン! 諦めるな!!」
 各地のデュナミストが叫ぶ。呼応して人々も声援を送る。
「これは……!?」
 指令室に映る地上観測衛星の映像に、井手が驚きの声を漏らす。世界中の人口密集地を中心に発生した幾万、幾億の金色の光が、上海に集まりつつあった。

 超重力に圧し潰されつつ、なお立ち上がろうとする十二戦士に、
「無駄だと言っているでしょう!」
 DARK ZAGIがさらに荷重をかける。
 その背後に、儀式を終えたEVIL TIGAと闇の三人衆が集結しようとしている。
「ご苦労でした。さあお前たちも……何!?」
 四人が放つ闇の波動は、DARK ZAGIに向けられている。
「どういうつもりだ!」
「気が変わった」
 EVIL TIGAだ。
「最初は好都合と思ったが、どうにも貴様とは馬が合わん」
 ダーラムがZAGIの右腕を、ヒュドラが左腕を押さえる。
「ダイゴを殺すのは私だ」
 光の鞭をZAGIの首に巻き付けて、カミーラが言う。
「お前には三千万年早い」
 EVIL TIGAが顔を寄せ、イーヴィルフォークを突き付ける。
「貴様にこんな上等なスーツを着る資格はない。ダスター雑巾ザギ」
「おのれえええええええええ!」
 ZAGIが、超重力の矛先を四人に振り向けた。

「今です!」
 上空を飛ぶ小型ビートル内のユザレが目を見開いた。
 上海に集まった光が収束し、十二戦士に降り注ぐ。
 光に触れたゾイガーが紙のように燃え上がり、石化した骸が蠟のように溶け落ちる。
 戦士たちの身体も光を放ち始め、二人のULTRAMANが、二人のSEVENが、二人のTIGAが、それぞれ一つに重なった。
「そうか、私も……」
 科特隊指令室の早田も光に包まれて消え、上海のZOFFYと一体化した。
 神秘的な光景に息をのむ井手たち。
「これが……光」

 不思議と、戸惑いも混乱もなかった。たしかに同じ時間の記憶が二つあるが、各自の中では矛盾なく繋がっている。思考も鮮明だ。
 あらためて、八人の戦士が立ち上がった。
「離れろ。そいつは俺たちが消し去る」
 ZAGIを押さえる四人に、TIGAが告げた。
「馬鹿を言え……こいつを潰したら、次はお前たちの番だ……覚悟しておけ!」
 そう嘯くEVIL TIGAも、ZAGIの超重力に苛まれ砕け散る寸前だ。
 三人衆も同じだった。
「光に当てられたか、カスどもが!」
 ガタノゾーアが咆哮し、超重力に超衝撃波が加わった。全員、一歩も動けない。
「邪神が復活した今、私の闇の力は無限です! 抗うことは物理的に不可能!」
『闇が無限であるように、光もまた無限です』
「!?」
 八戦士の頭上に、ユザレが浮かんでいた。
「よせ、ユザレ!」
『ダイゴ……大丈夫、これは私一人の力ではありません』
 ユザレは静かに微笑むと、自らも降り注ぐ光の一部となってTIGA SUITに吸い込まれた。光凝集装甲が金色に染まる。SUIT自体が強く発光している。
「そんなコケおどしなど!」
 DARK ZAGIが再び超重力を見舞う。
 それを、ZEROの放つ光の渦が押し留めた。体色が目まぐるしく変化している。時空復元力を発動させたのだ。
「ゼロ!? 復元力はもう残ってないって」
『俺じゃない』
 ZEROはこの世界に引き込まれる際に時空復元力を使い果たしていた。帰るべき世界が失われているダイゴやユザレにはそもそも復元力がない。では誰が?
『……私です』
 次郎の疑問に答えたのはマヤだった。だが理屈に合わない。マヤはずっと昔、諸星と共にあった。つまり同じ時空の存在だ。別の時空から来たZEROとは違う。時空復元力を持つはずがない。
「変わったのは、僕たちの世界の方……ということだ」
 諸星が言い添えた。彼は気付いていたのだ。自分たちが生きるこの世界が、どこかで共通の時系列から分岐し、マヤにとっての異世界に変わってしまったことに。

「やりましょう。このチャンスを、無駄にはできない!」
 進次郎が号令する。
「アイ・アイ・キャプテン!」
 海軍式の答礼を返したJACKが腕の収縮ソードを伸展させる。
「言われるまでもない」
 TAROも両手に超高熱火炎を迸らせる。
「老いては子に従え、だな」
 ZOFFYがスペシウムブレードを展開する。
 ACEがメタリウムハンマーを打ち鳴らし、SEVENがソードの鞘を払った。
『スーツの機能を最適化します。システムロック解除。フェアリング・フルオープン!!』
 ZERO SUITの装甲に組み込まれた可変波長透過吸収機能が限界を超え、金と銀に輝いた。各部のカバーが開き、熱と共に光の粒子を放出する。時空復元力超解放モード──ZERO SUIT/SHだ。
 進次郎もSUITのリミッターを解除した。装甲表面が赤熱する。
「この三分で、全部終わらせる!」
 猛然と突進する八戦士。

UAU ULTRAMAN 8U 34-2


「調子に……乗るなあああああ!!」
 ZAGIが吠えた。
「こんな茶番は飽き飽きです。闇も光もどうでもいい。恐怖も絶望も興味はない。この上は私自身が邪神と一つになり、森羅万象すべてを混沌に帰せしめましょう!」
 組み付いた闇の四戦士ごと浮揚し、背後のガタノゾーアに向かってゆく。
「貴様……!!」
 EVIL TIGAたちを抱えたまま、ZAGIはガタノゾーアの口に飛び込んだ。
 うおおおおおおおおおおん!
 ガタノゾーアの眉間に、ZAGIの上半身が浮き上がった。
「これはお前たち自身が招いた結果です。後悔してももう遅い!」
 ZAGIはガタノゾーアの巨体を手足のように操って襲い来る。ビルをも砕く触手は音速を超え、魂を揺さぶる咆哮は地を裂く稲妻を伴い、全身から染み出す瘴気は触れれば即死する猛毒を含んでいる。天を衝く巨体には八戦士のどんな打撃も、刃も、炎も、いっこうに効いている様子がない。
 反対に邪神の攻撃はその一発一発が重く、鋭く、凄まじい。掠めただけでSUITの外装が砕け、複合装甲が弾け飛ぶ。皮膚が裂け、骨が軋み、血煙が上がる。しかし戦士たちは倒れない。攻撃の手を休めない。二分を過ぎるころには、連携し合って活路を開き、TIGAを眉間のZAGIに肉薄させていた。
「ありえない! 何がお前たちをそこまで……!?」
「愚問だな。しいて言うなら──」
 ふと、振りかぶった右腕に備わる防盾の表面に施されたマーキングが目に入った。
 ──ただの思い付きだ。忘れてくれ。
 あれは未来の記憶だったか、とダイゴはひとり得心する。
「GUTSだ!」
 渾身のストレートをZAGIの顔面に叩き込んだ。
 ZAGIの身体は勢い余ってガタノゾーアの眉間をぶち抜き、体内深く沈んでゆく。
 邪神の動きが止まった。TIGAとZEROを中心に八戦士が集結する。
 全員、見るも無残な有様だが、士気は微塵も衰えていない。
「やれるな、ゼロ!」『俺に限界はない!!』
 ZEROは両手にゼロスラッガーを握ると、傷つき歪んだ胸部装甲を自ら抉り捨てた。
 露出した胸部スペシウムコアから、極大の時空復元力がガタノゾーアへ放たれる。
「合わせろ!」
 金色のTIGAも、胸のクリスタルから光の奔流を放射する。
 MANとZOFFYは十字を組み、ACEは手首の砲口を、SEVENはソードを、JACKはレールガンを構え、TAROは特大の火球を生成する。
 ガタノゾーアの体内では、DARK ZAGIがもがいていた。
「まずい、早くこの時空から脱出しなくては……」
 その手足に絡みつく者があった。
「どこへ行く」
「逃がさないよ」
「ユー・アー・マイ・フレンド」
「キハアアアアァッ!!」
 EVIL TIGAと、闇の三人衆だった。
「……ありえない」
 二分五七秒。
 八戦士の一斉攻撃がガタノゾーアに炸裂し、その中心に開く異界の門にまで到達。上海一帯を、熱も圧力もない光芒が包み、邪神も、ULTRAMANも、その白い光の中に溶けていった──。

 次郎は巨大なピラミッドの前に立っていた。それは悪しき漆黒のピラミッドではなく、
 全高八〇〇メートルの巨大建造物、ダイブハンガーだ。
「とうとう完成したのか」
 青空の下、太陽の光を受け輝くその威風堂々をした鋼鉄のピラミッドを見上げ、次郎は自然と笑顔になる。
「よくやったな。次郎」
「……え?」
 次郎は傍らに立つ作業服の人物を見て、あっと息をのむ。
「……父さん」
 それは数年前に病魔に冒されこの世を去った次郎の父だった。
「立派に成長した。お前は自慢の息子だ」
「俺……父さんと一緒に作りたかった。人を幸せにする、夢の城を」
「そうか。でもお前は一人じゃないだろ。ともに苦しみ、ともに笑い、ともに頑張れる、仲間がいる」
「……うん」
「ありがとう、次郎。この世界を救ってくれて」
 父が満面の笑顔で次郎の頭をなでる。昔と同じように。
「みんなの未来を、夢を、守ってくれて」
「……父さん」
 涙で目が曇り、父の笑顔が滲み、消えていく。
「父さん!」

UAU ULTRAMAN 8U 34-3

「次郎」
 名前を呼ばれ、次郎が目を覚ます。
 夢を見ていたのか。
「次郎」
 もう一度呼ばれ、振り向くとそこには父ではなくZEROが立っていた。
「ここは……!?」
 次郎のいる場所は真っ白い空間だ。
 周囲を色とりどりの光の奔流が、網の目のように絡み合いながら無数に流れている。
 その様は、大樹の枝か毛細血管、あるいは末梢神経を連想させた。
「時の分岐点です」
 ZEROの横に白いケープの少女、ユザレがいた。
 ユザレの背後に、ダイゴとマヤの姿もある。
「時の、分岐点……」
「時間とは川の流れのようなもの。分岐することもあれば合流することもある。近い流れの中では、近い事象が起こっている。ほら」
 ユザレは周囲を流れる光の網目を示した。
「あのひとひとつが異なる宇宙です。そこにもあなた方のような人たちがいて、何かを守るために戦っているのかもしれません」
 次郎は理解する。この場所の意味を。
 わかっていたのだ。ZAGIとガタノゾーアが消滅すれば、歴史が書き換えられるということを。上海が消滅することがなければ、この世界と他世界を繋ぐ時空歪曲点も存在せず、すなわちZEROも、マヤも、この世界に来ることはない。
 そうとわかっていても、次郎たちは選んだのだ。大切な仲間との、別れを。
 次郎の背後には、進次郎、早田、北斗、ジャック、光太郎、諸星がいる。
 みんな無言で、その時が訪れるのを待っている。
「次郎」
 またZEROが名前を呼ぶ。
「お前と出会えて本当によかった。俺はお前に大切なことを教えてもらった」
「それは聞いた。諦めないことだろ」
「それともう一つ、人を好きになることだ」
「……え?」
「次郎と初めて出会った時、お前が命懸けで守った女性」
「アンナのこと?」
「そうだ。次郎。アンナが好きなんだろ」
「ちょ、急に、何言ってんの? てか、今それいう場面?」
 激しく動揺する次郎を見て、ZEROが笑った。初めて心の底から楽しそうに。
 そこにいる全員が笑顔になる。次郎も微笑み、
「俺も、ゼロに出会えて本当によかった。……ありがとう」
 次郎は手を差し出す。最後の握手になるだろう。
「ありがとう。次郎。お前のことは忘れない」
 ZEROが次郎の手を握る。するとダイゴが一歩、前に出る。
「……進次郎」
「ダイゴさん」
 向き合う進次郎とダイゴ。
「これから、どこに行くんですか? もう戻るべき世界は……」
「あるさ」
「え?」
「戻るべき場所はなくても、俺たちの生きるべき場所は必ずある」
「新天地、ですか」
「そこで俺は生きる。仲間たちの思いと共に」
「がんばってください」
「進次郎。お前もな」
 ダイゴと進次郎も最後の握手を交わす。
 その傍ら、マヤが一歩、前に出る。
「……ダン」
「……」
 諸星は無言だ。
「あなたにこうして会えたことは奇跡だと思う。神様がくれた宝物みたいな時間」
「僕は、神など信じない」
「ちょっと、諸星さん…」
 思わず声を出す北斗を「しっ」とジャックが制する。
「だけど、目に見えない大きな力は感じる。その力が僕たち二人を繋いでいる。とても深い部分で。だから……僕たちはこれからも一緒だ。たとえ離れていても、互いの存在を感じることができるはずだ。必ず」
「……ダン」
 マヤが微笑む。
「そんなにあなたがしゃべるとこ、初めて見たかも」
「……すまん」
「なに謝ってんすか」
 またも茶々を入れる北斗を今度は早田が睨む。
「でも……伝わったよ。ダンの、気持ち」
「……そうか」
 もう、みんな伝えるべき言葉は伝えた。そんな沈黙が流れる。
「そろそろ、時間です」
 ユザレがそう言うと、白い空間に、ZEROが、ダイゴが、マヤが、消えていく。
「さよなら、ゼロ」
「元気でな、次郎」
「さよなら、ダイゴさん」
「もっと強くなれ。進次郎」
「さよなら……ダン」
「マヤ……ありがとう」
 美しいマヤの笑顔が白い光に包まれ、消えた。
「私の最後の力は、あなた方を本来の時系列に戻すため、使います」
「ユザレ。そんなことをしたら、君は……」
 心配する早田にユザレが微笑み、
「大丈夫です。私はダイゴと共に生きます」
 残された進次郎たち七人が眩い光に包まれる。
 そして、光の中でユザレの声が聞こえた。
「英雄たちよ。永遠に」

 トレーニングジムに隣接するロッカールームで、諸星は訓練の汗を拭いながら私用の携帯で通話していた。が、誰かの入室を察知するや、
「また連絡する」とすかさず切断する。
 入ってきたのは進次郎だった。
「お前か」
 安堵のため息から、進次郎は通話の相手に察しが付いた。
「ジャックさんですか? アメリカにいる」
「いつもの情報交換だ。今のところ問題は起きていない」
 七人は、最初にベイエリアの造船所で北斗が襲撃を受けた前日に戻されていた。各々、そのとき自分が存在していた場所に。七人とも、時空を超えた壮絶な戦いの記憶は残っている。しかし、この時点で既に起きていたはずの邪神復活の儀式に繋がる事件は発生しておらず、当然ながら上海も無事だ。恐らく今後も事件は起こらず、ダイゴやユザレがこの世界を訪れることもないのだろう。
 あれから数箇月。ジャックの提案で、諸星たちはこの件について口外しないことを決めていた。頭の固いお偉方に無用な疑念を抱かせ、以降の任務に支障をきたすことは避けたかったし、エドの言う星団法に抵触する恐れもある。言わぬが花だ。
「お前の方は大丈夫なんだろうな」
「俺も父さんも、その話はしないことにしてます。北斗もああ見えて口は堅いし」
「あとは、あの二人か」
 薩摩次郎と東光太郎の消息は掴めていない。科特隊の情報網をもってすれば造作もなく突き止められるが、実行すれば現状で何の接点もない一般市民になぜそこまで関心を持ったのか、説明を求められることになる。
「元気でいるといいんですけど」
 二人は知る由もないが、両者とも健在だった。
 次郎はアンナと共に、クレーン作業員として忙しい日々を送っている。
 光太郎はニューヨークである事件を追っていた。今度こそ、親友の生命を救うために。
 彼らとは、いずれ再会する日が訪れるような気がする。
 しかしマヤは──。
「…………」
 時空歪曲点からこの世界に来た彼女は、ムキシバラ星人に電子生命体に改造された破壊工作員だった。彼女はそこに戻ったのだろうか。いや、違う。マヤは諸星と再会したことで自分を縛るものから逃れ、本当の自分を取り戻したに違いない。諸星にはその確信があった。二人は深いところで繋がっている。その言葉通り、遠く離れていても諸星はマヤの存在をはっきり感じることができた。きっとマヤも同じはずだ。そしていつかまた出会えると諸星は信じていた。

 と、井手からの呼び出しを告げるコール音が鳴った。
『二人とも、すぐに作戦室へ来られるかな』
「事件ですか?」
『たった今、ニューヨークに正体不明の球体群スフィアが出現した』
 ULTRAMANの、新たな戦いのゴングが鳴ろうとしていた。



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Ⓒ円谷プロ ⒸEiichi Shimizu,Tomohiro Shimoguchi

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