【鋼鉄ジーグ INFINITISM】PROLOGUE 1975

2022.10.15

スーパーロボットINFINITISM 月刊ホビージャパン2021年2月号(12月25日発売)

【鋼鉄ジーグ INFINITISM】PROLOGUE 1975

 

 ダイナミック企画×BANDAI SPIRITS ホビー事業部×月刊ホビージャパンで贈るフォトストーリー『INFINITISM』。『グレンダイザー』編、『マジンカイザー』編、『ゲッタードラゴン』編に続きシリーズ第5弾『鋼鉄ジーグ』に突入。まずはプロローグをお届けしよう。

原作・企画
ダイナミック企画

ストーリー
早川 正

メカニックデザイン
柳瀬敬之

協力
BANDAI SPIRITS ホビー事業部
ホビージャパン

PROLOGUE 1975

 昭和50年――阿蘇。

 粗い砂絵で描かれたような満月が浮かんでいる。
 月明かりが夜を照らし、岩や小石がくっきりと映し出す(まば)らなコントラスト。
 その光景は、いつか悪夢で彷徨(さまよ)った見知らぬ異世界のようだ。
 曇がゆっくりと流れる。硫黄の荒野は黄泉(よみ)へと続く(さい)河原(かわら)のように不気味な静寂に満ちていた。
 中岳の第一火口を臨む内輪の峰に、その人影は、たった独りで立って居た。


〝――わかってる、親父。親子喧嘩は後だ……〟


 人影は身じろぎもせず、先の闇を睨んだまま口は使わず脳波通信で応えた。
 不意に、方々でコトコトと小石が盛り上がり崩れる、渇いた音がした。


「…………?!」

〝――気をつけろよ、(ひろし)


 ――気をつけろも何も……、親父が〝ここで見張って敵を待ち伏せ、出て来たら構わないから片っ端から叩き潰せ――〟そういったんじゃねえか……と、心の中で呟いた。


〝――まあ、そうだがな……〟


 思っただけで話し掛けたつもりはなかったが、親父の(せん)次郎(じろう)から返事があった。
 慣れてない脳波通信は心の声がだだ漏れだった。
 男の名は司馬(しば)(ひろし)。二十代(なか)ばで精悍(せいかん)な顔つきで、頭髪はヒッピー程ではないが少し長く、自然に伸ばした乱れ髪で、修理工が着るような白いツナギを着ていた。
 見た目こそ、その年齢の平均的な成人男子と変わらなかったが、その目つきは、常人のそれとは明らかに違った。


「…………!」


 覚悟を決め――歩み出した男の顔だ。
 土塊(つちくれ)の転がる硫黄の荒野のそこそこに怪しい気配が次々と浮かび上がる。コトコトカタカタと不気味な音が方々で響いた。
 (あらかじ)め、あの不思議な(きょう)(だい)から聞かされた話によれば、邪魔(じゃま)(だい)王国(おうこく)のゾンビ兵・黄泉(よみ)軍兵(ぐんへい)の気配に他ならない。
 まるで恐怖映画だった。地面から湧き出した気配は次々と兵馬俑(へいばよう)埴輪(はにわ)(へい)のような姿を得て、彼らから見れば、その場に居る唯一の異分子である司馬宙に向けて、一斉に襲い掛かった。


「はじめるぜッ!」


 司馬宙は自ら内輪に飛び降り、黄泉軍兵の真っ只中に駆け込んだ。
 突っ込んで来る敵を(かわ)しもせず、それより先に出て拳で(あご)を砕き、次の相手の鳩尾(みぞおち)に深い膝蹴(ひざげ)りを炸裂させる。
 (はがね)のインパクト。黄泉軍兵は乾いた砂の彫刻のように次々と砕け散った。


〝――宙、夜明けまで四時間だ。それまでにすべて(たお)せ――! まだ、この脅威を町の人々に知られるわけにはいかん!〟

〝――チッ、簡単にいってくれるぜ……!〟


 軽く見渡しただけでも30体は居た。新しいのも、まだ、湧いて出て来ている。(とが)っていた学生の頃、河原で一度に決闘した相手の数より多かった。しかも、目の前の相手は人間ではなく、邪魔大王国の戦闘用ゾンビ兵だった。


〝――でもな、決めたからにはやる……!  奴らを一体もこの山から下ろしはしない!〟


 司馬宙は丹田(たんでん)に意識を集中させた。


「チェンジ、サイボーグッ!!!」


 その途端、磁流派エネルギーが宙の体から放たれた。閃光と共にナノ分解した衣服が消えると光の中から再構築された姿が露出した。
 その姿は金属の質感を持つ赤と青の人造筋肉が胸元で交錯する、しなやかな鋼の肉体そのものだった。
顔のフォルムは元の顔立ちを残していたが、後頭部に流れた髪は風を切る翼のように流体変化し、どこかゴシックロマンのダークヒーローを思わせる姿へと変貌した。
 ――これが俺の…、サイボーグの姿……?
 宙は自分で見える範囲の自身の姿を確認した。
 ――いや、ヒーローというより、ちょっとした怪人だな……。
 初めての変身(チェンジ)だった。受け入れ、自嘲(じちょう)するしかなかった。


〝――戦闘用のフォームだ。人の姿のままでも十人力はあるが、その姿なら百人力だ。しかも、どんなに暴れて汚れても、変身するたびに脳などを除く80パーセントの組織がナノ分解され再構築される。だから、少々のダメージなら修復するし、風呂に入る必要もない。おまけに変身すれば顔がバレる恐れもない。どうだ、凄いだろう?〟


 遷次郎はのうのうと解説した。生身の肉体の(ほとん)ど失った息子に対しても科学者としての自慢が入るのが遷次郎の欠点であり、憎めないところでもあった。この性格のお陰で何度か親子は断絶寸前まで行ったが、同じ理由で親子の関係は辛うじて繫がっていた。
 体が軽い。最早、黄泉軍兵は変身(チェンジ)した宙の敵ではなかった。サイボーグ宙は軽やかに駆け抜け、瞬く間に50体にも及ぶ黄泉軍兵を斃した。
 ―――もう、終わりか……?
 すると、第一火口の方からこれまでにない邪悪な気配が立ち上がった。


「なんだッ……?!」


 火口から工場地帯にあるような丸いガスタンクほどの大きさがある岩塊がゆっくりと浮かび上がり、月夜の中空に停止した。それはバキバキと音を立て千切れるように割れ、二本の腕と二本の足を出し、優に10メートル以上はある岩塊の怪物・()()()となった。


〝――ハニワ幻神です〟


 サイボーグ宙の通信システムに不思議な姉弟の弟の声がした。
 ――たくっ、あんなのと戦えってか……!


〝――宙、ビルドアップだ!〟


 遷次郎の声が、宙の最後の迷いを消し去った。
 
 
 
 ビルドベースは阿蘇くじゅう国立公園の熊本寄りの盆地にあった。
 終戦後、(ひろし)の父・司馬(しば)(せん)次郎(じろう)と研究仲間であった大利(だいり)(とし)(つぐ)博士が開所した民間の研究所で、堅実な研究を重ね、量子物理学の応用分野では〝磁流派エネルギーの制御〟や〝磁気性形状記憶〟や〝相転移磁場システム〟で世界に知られる成果を上げていた。
 といっても、常駐研究者は司馬と大利の二人しか居らず、他には助手が三人居るだけの小規模な研究所だった。三名とも若く、卯月(うづき)美和(みわ)は21才。()(すみ)()()は24才、その弟の()(すみ)(きょう)はまだ18才の現役の高校生だった。他にも施設を維持するための最低限の人員は揃えていたが、ビルドベースの機能を(まかな)っているのはこの五人といってよかった。
 宙から見れば、幼い頃に司馬家に引き取られて来た美和は幼馴染みであると共に妹のような存在で気心も知れていたが、五年ほど前から加わった美角姉弟はどこか不思議で、まるでこの世の者ではないような気配を(まと)っているように感じられた。
 時々、ビルドベースに顔を出すだけだった宙には、彼らは五年経っても初めて会った時と見た目も中身も変わらず、二人は初めからずっと落ち着いており、幾らまだ若いといっても、歳を重ねた気配がないように思え、それが不思議な違和感となっていた。
 五人は宙をサポートするために、それぞれの持ち場で待機していた。


「戦闘用サイボーグのフォームになっているといっても、初めての戦いで、あのまま巨大な化け物と戦うのは辛いぞ……!」


 大利博士が眉間に皺を寄せた。


「卯月くん、ジーグパーツの準備を――!」


 と、遷次郎が促したが、美和は「まだ政府からビッグシューターの飛行許可が降りていません」と応えるしかなかった。


「そうか……、まさか、こんなにも早く、ハニワ幻神まで現れるとは……!」


 すると、長髪の青年・美角鏡が落ち着いた声で代案を出した。


「司馬博士、この距離ならシューティングユニットのテスト用に設置した電磁砲(レールガン)が使えます」

「そちらにも予備パーツを1セット、セッティング済みです」


 姉の美夜が丁寧に報告した。
 司馬遷次郎はニヤリと笑んだ。


「……二人とも、流石だな。よし、卯月くん、電磁砲(レールガン)の照準を宙の軸線上に――!」

「了解ッ!」


 着座シートを射出コンソールの前に移動させた卯月美和は慣れた手つきで調整し、操作レバーを握った。
 美和の腕の動きに合わせ、開放された屋外のハッチから巨大な電磁砲(レールガン)が姿を現した。五本並んだ射出レールにはジーグの頭部以外の部位がセットされていた。


「宙さん、聞こえる――!」

〝――ああ、聞こえるぜ、ミッチー〟
 
 
 
 何処に居ても美和の声が聞こえるのは心強くもあり、照れ臭くもあったが、今はそんなことを考えている状況ではなかった。


〝――こちらの準備はOKよ!〟

「よし、教わった手順通りにやってみる」


 宙は不敵に笑み、目の前のハニワ幻神を威嚇するように叫んだ。


「鋼鉄ッ、ジーグッ!!!」


 それを合図にビルドベースの美和がスライドレバーを作動させた。


〝――ジーグパーツ、シュート!!!〟


 放電を纏った電磁砲(レールガン)からジーグパーツが放たれた。
 腕が、胴が、(もも)が、目にも止まらぬ超高速で撃ち出される。
 夜の阿蘇・内輪山の空――巨大な人体のバラバラの部位が宙を目指し、一斉に飛び出した。もし、事情を知らず目撃した者が居れば、それこそ悪夢のような不気味な光景に違いない。
 遷次郎の声がした。


〝――宙、ジーグパーツがお前に接近すると相転移磁場フィールドが発生し、お前の体は流体変化を始め、ジーグの頭部に変わる。お前の脳が、ジーグを動かすんだ! その体は、お前が邪魔大王国と戦う防人(さきもり)となる為の体だ――!〟


 放電を放ち、強力な電荷を帯びたジーグパーツが迫る!
 それぞれの部位が空中で合体を始め、サイボーグ宙はその電荷に導かれるように大きくジャンプし、放電する両手の拳を胸の前で合わせた。


「ビルド、アーップ!!!」


 全開した相転移磁場フィールドがサイボーグ宙を包み込む。その姿は空中で前回転しながらジーグの頭部に変化した。
 組み上がった体に頭部が合体し、司馬宙は鋼鉄ジーグになった。


「来やがれ、ハニワ幻神――。この俺が、鋼鉄ジーグが相手をしてやる!」

鋼鉄ジーク PROLOGUE

PROLOGUE 1975 完

【グレンダイザーINFINITISM】

PROLOGUE  漂泊ひょうはくの王子

第1回 守護神

第2回 方舟

第3回 アガルタ

第4回 友星

【マジンカイザーINFINITISM】

第1回 預言者

第2回 時の女神

第3回 時空超越

第4回 魔神皇帝

【ゲッタードラゴンINFINITISM】

PROLOGUE

第1回 ドラゴンへの道

第2回 百鬼と赤鬼

第3回 魔王鬼 再び

第4回 鬼の起源

【鋼鉄ジークINFINITISM】

PROLOGUE 1975

第1回 鋼の心

第2回 あめ逆鉾さかほこ

第3回 不死団ノスフェラトゥドゥンケル

第4回 魂の檻


 新たなる「INFINITISM」 

【マジンガーZERO INFINITISM】

プロローグ 1976

第1回 亡者たちの宴

第2回 終焉しゅうえんの魔神 new

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