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【マジンカイザーINFINITISM】第1回 預言者

2022.08.06

マジンカイザーINFINITISM 月刊ホビージャパン2019年11月号(9月25日発売)

【マジンカイザーINFINITISM】第1回 預言者

 

 ダイナミック企画×BANDAI SPIRITS ホビー事業部×月刊ホビージャパンで贈る新たなるフォトストーリー『INFINITISM』。4回にわたり続いた『グレンダイザー』編に続き、今回からは『マジンカイザー』編に突入。突如、海底深くより南極海に出現した不明の戦闘ロボット。彼らはベガ星連合に下った惑星デネブの巨神獣だった。タスマニア島を圧倒的戦力で破壊した彼らのさらなる侵攻を阻むべく、グレートマジンガーとグレンダイザーが立ちあがる!

原作・企画
ダイナミック企画

ストーリー
早川 正

メカニックデザイン
柳瀬敬之

協力
BANDAI SPIRITS ホビー事業部
ホビージャパン

第1回
預言者

 デューク・フリードの地球来訪に合わせたかのように、突如、海底深くより南極海に出現した不明の敵勢力――。タスマニア島を破壊した戦闘ロボットは〝ベガ星連合〟に下った惑星デネブの(きょ)(しん)(じゅう)だった。
 日の出間近の薄闇の中、剣鉄也とデューク・フリードはそれぞれの機体のコクピットから海の彼方を見据えていた。


「デューク、お前さんが言う通り、あいつらが宇宙の果てから来た宇宙人なら、なんで宇宙からじゃなく、地球の底から現れた?」


 鉄也の疑問は尤もだった。


「わからない。だが、その答えになりそうな可能性なら五万とある。しかし、今はその理由より、目の前の現実だ――」

「――冷静だな」

「そっけなく聞こえたのなら済まない」

「いや――想像していた宇宙人より、あんたが人間らしくって、こっちが反省しているところさ」


 日本とでは北半球と南半球の違いはあるが赤道を挟んだ殆ど同距離にあり、時差も1時間程度。日照のタイミングも1、2時間ずれる程だった。
 水平線に毒々しい朝焼けが始まった。
 密集して迫り来る巨神獣の(うごめ)きに遠くの海面が不気味な照り返しを放っている。聖なる来光でさえ、禍々(まがまが)しい逢魔(おうま)(とき)の邪悪さを(まと)っていた。


「始めるか――」

「――ああ」


 剣鉄也とデューク・フリードの表情が戦士の顔に戻った。
 
 
 

マジンカイザー 1-1 水平線

▼     ▼     ▼

 同じ頃――まだ夜明け前の光子力研究所に来客があった。
 昨日のデュークの地球来訪から、北海道のGCR(グランドコントロール)《摩周湖国際宇宙観測センター》やフォトン・アルファーだけでなく、国連も日本政府も光子力研究所も、ずっと稼働状態にあった。
 所長室に通され、その応接室で弓弥之助を待っていたのは二人の男だった。一人はクラシックスタイルのスーツ姿で、もう一人は鼠色のタートルネックに軍用ジャケットを身に着けていた。
 スーツの男が名刺を差し出した。


「国連調整役のガリプ・オルハンです」


 青みがかったグレイの頭髪を綺麗に七三に分け、丸眼鏡を掛けた青年だった。名刺には英語との併記で〝広域監視機構準備室〟とあった。若く見えるが国連本体の調整役ということは、極東エリアの代表である防衛省の鳴沢芳平の上司ということになる。


「所長の弓です」


 丸眼鏡の青年がもう一人を紹介した。


「こちらは、国連軍特殊戦略室の犬神大佐です」

「突然、押し掛けて済まない」


 (きも)()わった声だった。屋根の(ひさし)のように伸びた前髪が印象的で、背が高く、一見痩せているように見えるが、しなやかな筋肉を纏った黒豹のような男だった。こちらも三十代半ばといったところだ。
 弓弥之助が対面のソファーに腰掛けると丸眼鏡のガリプ・オルハンが切り出した。


「今日は国連の代理人(エージェント)としてではなく、どちらかといえば、グレイス財団の代理人(エージェント)として参りました」


 ――グレイス財団……?
 聞いたことはあるが、弓弥之助の感覚では、それは既に歴史の中に埋もれた名前だった。


「確か――18世紀に設立されたと伝えられている科学者のための世界最古の財団でしたね。グレイス博士の遠い御先祖の、デュルゼル公が始めたものだとか……。その程度しか存じ上げないが……」

「それだけご存じなら、問題ありません」


 犬神はニヤリと笑んだ。


「グレイス財団についてはヨーロッパの神秘主義の流行と同じで、歴史的事実として捉えていいのか、一部の好事家の個人的な援助団体に過ぎなかったのか、歴史家の意見も分かれるところです。そもそも、最初のパトロンだとされているフランスの貴族はフランス革命で途絶えているはずですからね。それが今に至るまで歴史の影で活動を続け、しかも、どちらかといえばマッドサイエンティストに属する科学者たちの支援をしているとは、(いささ)か信じ難い――博士がそう思うのは当然です」


 犬神は弓弥之助がこの一瞬で想像したすべてを先回りして言葉にしていた。


「だが――グレイス財団は現実に存在している」


 犬神が釘を刺すようにそういうと、ガリプ・オルハンがそれに続いた。


「現在は名を変えて受け継がれ、〝非公式科学者協会〟として運営されています」


 弓弥之助には、突然の訪問者たちによるこの話題の行き着く先が読めなかった。


「弓所長、お考えになっていることは分かりますよ」


 戸惑う弥之助の表情を見て犬神がいった。


「お世辞にも、あまり評判がよろしくはない謎の財団と、どうして国連がつるんでいるのかと――そういうことでしょ?」

「――ああ」

「要は危機管理の照準をどこに合わせているかという違いです。地球外からの敵を想定して準備する。それを公表しても、話が馬鹿馬鹿し過ぎて、誰も信じない――」

「ええ――昨日まではそういう状況でしたからね」と、ガリプ・オルハンが続けた。

「こちらのように、兜十蔵博士以来の実績と研究成果による財源に恵まれた研究施設は僅かなものです。個人の研究施設でも優れた研究者が大勢居ます。彼らを影から支援し、来るべき日のために地球の防衛力を整備するのが〝非公式科学者協会〟の使命なのです。そして、その使命を受け継いで来たのが、代々のグレイス家の末裔なのです」

「昨日から今日にかけてのこの事態を、予見していたと……? 一体、いつから――?」

「ずっと昔です。こちらの記録にあるのは18世紀からですが、それ以前の15世紀、大航海時代の頃から、既に世界を照準にした動きはあったようです」

「デュルゼル公が財団を創設する遥か以前から、ということかね……?!」

「教科書的な歴史というより、(むし)ろ、地球に間借りした人類の文明史と捉えて頂いた方が適切なのかも知れません」


 途方もない話だった。
 紀元前から存在したギルドが今も世界の経済を支配しているという都市伝説に匹敵する告白だった。


「我々の視点から見れば、古代文明の黎明期(れいめいき)から起こった人類の大移動も、当時のそれぞれの国家の占領政策から来た偶然の産物ではなく、今日のための土台造りだったという訳です。その結果、現在の地球規模の防衛を束ねる〝国連〟と〝グレイス財団〟が結び付いているのは至極当然といえます」


 それを聞き、弓弥之助は5年前、北海道の摩周湖がGCR(グランドコントロール)の建設地に決定した時のことを思い出した。
 摩周湖への建設を強く推し、国連と交渉して決定させたのもグレイス博士だった。


「あの時はフォトン・アルファーとの連携を考えて、私もグレイス博士の申し出に同意したが、今、君のいったことが本当なら、彼女は未来を知っていて、(あらかじ)めその準備となる行動をとっていたことになる。そんな奇妙な話に、そうそう尻馬に乗ることなど出来はしない……!」


 弓弥之助は頑固者の表情になっていた。


「賢明です。私だってそう思いますよ」


 ()もありなん――と犬神が笑んだ。
 ガリプ・オルハンは落ち着いた声で続けた。


(おっしゃ)る通りです。グレイス博士は遥か以前から昨日のデューク・フリードの到来を予見し、そればかりか、未明の南極海での新たなる敵の出現も予見していました」


 犬神が弥之助の心の内を代弁するかのように口を開いた。


「6カ国語を流暢(りゅうちょう)に操り、20代そこそこで天文学や地球物理学を始めとする幾つもの博士号を取得し、おまけに国連に顔が効く――。祖先は本当に存在したかもどうかも分からない謎の没落貴族で、それでいて当人は未だ少女のような面影を残す美しい女性。そして彼女には、未来に起こる出来事を正確に予見する力がある。まあ、常識で考えれば、怪しさのオンパレードだ」

「……信じられん。グレイス博士がプロフェット《予言者》だとでもいうのか……」

「彼女を知る者は、半ば冗談でそう呼ぶ者も居ます。(もっと)も、彼女に言わせればプロフェット《予言者》ではなく、先祖が残した情報を読み解き先を示す、ナービー《預言者》が適切だということですが」


 その時、犬神のハンドモバイルに着信があった。


「失礼」


 犬神は弓に軽く会釈してモバイルに出た。
 相手からの報告を聞き、「わかった。作戦開始だ。後はそちらで判断しろ――」。そう応えるとモバイルを切り、弓に向き直った。


「グレートとグレンダイザーが南極海で再び敵との戦闘状態に入った。敵は事前の予測通り、凡そ百体の巨神獣。国連軍はグレートとグレンダイザーの後方支援をするため国際連合安全保障理事会により王立オーストラリア海軍と王立ニュージーランド海軍を既に展開済みだ。万が一、グレートとグレンダイザーが敵を討ち漏らしても、オセアニアエリアへの上陸を阻止してくれるだろう」

「君が、国連軍の指揮を――?」

「そんな大げさなものじゃありませんよ。私は特殊戦略室の責任者として彼女が示した危険予測に対し、今、具体的に対応出来る手段を講じているに過ぎない。いってみれば〝魔女の使いっぱしり〟のようなものです」


 ――魔女の使いっばしりか……。
 そのフレーズが妙に可笑しくて、弥之助の警戒心が科学者としての興味に変わった。
 ガリプ・オルハンはそのタイミングを見逃さなかった。


「弓所長、今、御理解して頂きたいのは、本当の危機は、これから訪れるということです――。そして、その為に、何人かの方々には、とても複雑で信じ難い真実を知って頂く必要があります。その筆頭が貴方なのです」


 もし、ガリプ・オルハンが詐欺師なら、弓弥之助はすっかり術中に嵌まっていた。
 弥之助はガリプから発せられるであろう複雑で信じ難い真実を固唾を呑んで待っていた。
 
 
 

 ▼     ▼      ▼

 目的地を光子力研究所に変更した兜甲児は未だ太平洋上空を飛行していた。
 漸く水平線から射した朝日がまばらな雲間に朝焼けを映し、おぼろげな朝の景色へと変わりつつあった。
 異星人との会見に呼び出されたかと思ったら、今度は謎の敵勢力の出現だった。少なくともこの四年、アメリカで過ごした平和な日常が終わりを告げたことだけは確かだった。 
 コース変更で短縮された時間はせいぜい1時間。予定通りなら2時間後には光子力研究所に到着する。
 ――待っていろよ、鉄也さん。すぐに俺も追い着くからな……!
 光子力研究所でマジンガーZに乗り換えてジェットスクランダーでグレートたちの掩護に向かう。それしか頭になかった。
 甲児を乗せた日本政府のチャーター機《ボンバルディアCRJ》の副操縦士がレーダーの機影に気付いた。


「んっ……?!」

「どうした?」

 訊ねた機長がその返事を聞くまでもなく、それは目視出来る距離に突然現れた。
 巨大な円形の飛行物体が2時の方向に現れ、一瞬で11時の方向に移動した。


UFO(ユーフォー)……?!」


 不思議な残像を残し、素早く動き、消えては現れ、正確に形を捉える時間すらなかった。
 パイロットたちは残像を脳内で補正し、その姿を組み立てた。
 巨大な円盤で垂直尾翼らしきものがあり、後部左右から斜めに伸びた翼の先にもそれぞれ円盤状の物体が付いていた。その姿を知っている者ならそれがスペイザーであると理解出来ただろうが、初めて見る彼らには、文字通り、未知の未確認飛行物体だった。
 スペイザーは飛行するボンバルディアの相対速度に合わせその上空に留まると、金色の光線を発射した。


「ん? 何だッ……!?」


 突然、眩い金色の輝きに包まれた兜甲児は殆ど驚く暇すらなかった。
 ――おいおいおい…、マジかよ……?!
 日常の色が黄金の輝きのグラディエーションに書き換わり、光粒子が炭酸の気泡のように上昇して意識そのものが吸い上げられる感覚がした。
 シュン!――と、光のトンネルが弾けた。
 光が収まり、ほんの数席離れた場所に居た日本政府の案内人たちが慌てて駆け付けた時には、甲児が座っていた席には、もう誰も居なかった。
 
 
 

▼     ▼      ▼

 主任管制官の炎ジュンは静止衛星フォトン・アルファーから南極海で交戦状態にあるグレートマジンガーたちのサポートを行っていた。


「艦隊はタスマニア・ニュージーランド防衛ラインに到達――」

「国連軍太平洋艦隊、展開完了――」

「犬神大佐から参戦許可が下りました!」

「了解――全管制官に告ぐ、敵の動きを一体たりとも見逃さないで! オートサーチに頼らず、可能な限り目で追って! ノーダメージで初戦を乗り切れるかどうかは、私たちの精度に掛かっているわよ!」


 炎ジュンが檄を飛ばした。
 国連の衛星による通信連携システムはフォトン・アルファーを中心に計画されていた。 
 有事の際にはフォトン・アルファーが基地局となり、地上のGCR《摩周湖国際宇宙観測センター》や光子力研究所等の施設、展開した味方を連携させて地球を守る。それこそが〝地球防衛構想〟だった。
 現状の友軍はグレートマジンガーとグレンダイザー。それにオーストラリアとニュージーランドの王立海軍を併せた国連軍太平洋艦隊が有するアンザック級及び同系のテ・カハ級フリゲート艦10隻だけだった。
 フリゲート艦には54口径127mmの単装高射砲を始めとし、12.7mmのブローニングM2機関銃やファランクス、ハープーン、シースパローも装備されているが、装甲強度の高い巨神獣に対し、どこまで有効なのかは怪しいところだった。


「チーフ、光子力研究所からホットラインです!」


 呼ばれたジュンが専用回線を開くと、弓さやかの顔がディスプレイに映し出された。


「どうしたの?」

〝ジュンさん、今、こちらに来ている犬神大佐と、うちのお父様からの監視依頼です〟

「国連軍の犬神大佐がそちらに……?」

〝――ええ、フォトン・アルファーのあらゆる観測設備を使い、至急、月の監視を始めるようにと――〟

「月を――?」

〝ええ――映像、音声、電波、重力、集められる限りのデータを収集し、偏重あり次第、大小漏らさず報告して欲しいとのことです〟

「了解――わかったわ」


 ジュンはゼスチャーで監視班のリーダーを呼ぶと、南極海での戦闘エリアの監視とは別チームを立て、月の監視とデータ解析を徹底的に行うようにと命じた。


「オッケー、監視体制に入ったわ」

〝さすがジュンさん。頼りになる~〟


 さやかは笑顔でいったが、すぐに不安がもたげた表情になった。


「何かあったの?」

〝……実は、甲児くんがこっちに向かっている途中で、太平洋上の飛行機の中から消えたらしいんだけど……〟

「消えたって……?」

〝――あっ、でも、これは心配しなくてもいい失踪らしいから、気にしなくっていいって大佐にいわれたんだけど、そんなこと――あると思う?〟

「うーん、今、聞いた内容だけじゃよく分からないけど、有り得ないことが続いているのが現状だから、そこは割り切って、今は気持ちを切り替えるしかないのかもね」

〝ですよねー〟


 さやかは強がりの笑顔を見せて通信を切った。
 Dr.ヘルと戦っていた時も常に甲児の身を案じる毎日だった。慣れているといえばそうだが、もう、そんな日々は来ないものだと何処かで思っていた。いや、思おうとしていた。炎ジュンもそうだった。ミケーネとの戦いで剣鉄也が生命の危険に晒される場面を一番近くで何度も見て来た。人としての彼らを知り、使命を共有するパートナーであるからこそ、次の戦いに備えながらも、誰かが「戦いは、もう完全に終わった」のだと宣言してくれるのを千秋の思いで待ち焦がれている。
 だが、まだ暫くは、その日が訪れないことを覚悟するしかなかった。
 
 
 

 ▼     ▼      ▼

 鳴沢芳平がGCR《摩周湖国際宇宙観測センター》のプレスルームで代表取材を受けているあいだ、牧葉ひかるはグレイス博士に連絡を付けようと、摩周湖を臨む窓が並ぶ廊下の隅で、思いつく限りの連絡先を当たっていた。
 鳴沢は〝地球防衛構想〟の基本理念の考案者の一人としてグレイス博士を認識しており、未知の異星人に応対するための専門家の意見を欲していた。無論、いち広報官である牧葉ひかるの認識はそれ以下であり、先刻、光子力研究所でオルハンと犬神大佐によって明かされた〝グレイス財団〟の成り立ちも、彼女のナービー《預言者》としての役割りも知ろうはずはない。
 関係しているアカデミーや学会に提出されているスケジュールをチェックし、予定では〝アジアを遊説中〟というところまで突き止めた。
 デューク・フリードの到来も南極海での敵の出現も報道管制で一般には公表されていない。TV報道を視て、彼女が自分でやって来てくれる可能性はなかった。
 ――そうだ……。航空チケットなら!
 いいアイデアが浮かんだと思ったが、国連のアドバイザーでもあるグレイス博士は国連パスポートを所持しており、チャーター機の可能性もあった。それにチャーター機であれば、初めから国連が把握しているようにも思えた。試しに両方調べたが、旅客機のチケットを買った形跡はなく、稼働中の国連チャーター機にも彼女の名前は見付けられなかった。
 ――まさか、船で……?
 そこまで考えた時、牧葉ひかるは違和感を覚えた。携帯電話やインターネットが整備されているこのご時世で、国連の追跡網を駆使しても消息が掴めないのは不思議だった。
 国連にも国際(イン)刑事(ター)警察(ポー)機構()やCIAに及ばないまでも諜報のノウハウはある。まして、国連主導の防衛軍としての旗揚げを目指している自分の立場からの問い合わせにも(かか)わらずだった。
 ――身内が隠している……!
 ひかるは直感した。さて、どうしたものかと顎に手を当てた時、ハンドモバイルにコールがあった。


「こちら、牧葉――」

〝牧葉三尉だな――〟


 初めて聴く男の声だった。


「――はい。そちらは?」

〝国連軍特殊戦略室の犬神だ〟


 ――国連軍の犬神……?


〝辞令を通達する。明日(みょうにち)1300(ひとさんまるまる)、市ヶ谷のオフィスに出頭しろ――〟

「――移動で、ありますか?」

 突然のことで動揺したが、努めて落ち着いた声で応えた。
 国連軍の出先機関が市ヶ谷にあることは知っていて協力もしているが、広報局の自分には無縁のものだと思っていた。


〝陸自からの出向として新設する国連防衛軍のメンバーに加わってもらう。それから、グレイス博士を捜す必要はない。すぐに顔を拝めるはずだ――〟


 ――え?
 それだけいうと電話は切れた。


「どういうこと……?」


 牧葉ひかるは状況を理解出来ず、暫くの間立ち尽くし、窓から見える摩周湖をただ見詰めていた。
 
 
 

▼     ▼      ▼

 白い聖殿のような場所だった。
 朦朧(もうろう)としていて、始めは現実なのか、夢なのかも定かではなかった。
 甲児に語り掛ける女性の声がした。


「手荒な招き方をしてしまったことを、お詫びします」


 やけに丁寧な言葉遣いだった。
 この感覚に覚えがある。異星人デューク・フリードとの会話で感じた〝誠実さ〟と〝優しさ〟だった。
 声のした方向を見ると、まるで、ヨーロッパの御伽(おとぎ)(ばなし)に出て来るような老剣士と姫が並んで居た。その姿は先刻のデュークの出で立ちに似ている。


「兜甲児殿。どうか無礼を許されよ。貴殿が来るのを待っている〝魔神〟が居る。ご案内申し上げたい」


 老剣士は矍鑠(かくしゃく)としていた。


「魔神? 敵が攻めて来てるんだ。折角だが、俺は、すぐにでも行かなきゃならない……! さっさと元の場所に戻してもらえれば、嬉しいんだが――」

「存じています。ですから、ここに――」

「何をわかってるっていうんだ?」


 少しの間を置き、姫は答えた。


「マジンガーZは兜十蔵博士が造り上げた地球の守護神。そしてグレートマジンガーは貴方のお父上である兜剣造博士が造り上げた(いくさ)(がみ)であり、第二の守護神。貴方の力になる第三の魔神が、もし、居るとしたら――?」


 甲児は口を真一文字に結んだ。
 それは質問者が思う以上に、深く、難解な問い掛けだった。甲児にとって〝マジンガーZ〟は兵器ではない。祖父が孫である甲児にレギュレーションを合わせ、光子力エネルギーと超合金の技術を駆使した特別なプレゼントだった。
 パイロットとして成長した今の甲児から見れば、高校生当時の自分に合わせたレギュレーションが兵器としての強さの(かせ)になっている部分があることも否めない。だが、〝マジンガーZ〟の強さの本質はそこにはない。祖父・兜十蔵の、自分や弟の志郎への思いが満ちている存在であればこそ、数々の苦難を共に乗り越えられたのだ。
 グレートも同じだった。父・兜剣造はミケーネ帝国との戦いを見越し、あえて、家族から離れ、戦闘に特化した〝グレートマジンガー〟の完成を急いだ。その決断が如何に苦しいものだったのか、今の甲児には痛いほどわかった。
 守るべきものを守るために受け継がれる〝魂〟。それを無くして、真の守護神たる、本当の強さは生まれない。


「この世界にはZとグレート以外、マジンガーは居やしない。居たとしたら、そいつは、とんだまがい物さ」


 姫は頷いた。


「ええ。この世界には――と、いう意味であればその通りです。ですが、第三の守護神は存在します」

マジンカイザー 1-2 第三の魔神

「一体、誰が造ったっていうんだ? 爺ちゃんも親父も、もう居ない――。新しいマジンガーを造れる者なんて、何処にも、居やしないんだ……!」


 姫は優しく微笑んだ。


「貴方は、肝心な人を忘れている。まがい物でなく、祖父、父、子と、その〝魂〟を受け継ぎ、新たなるマジンガーを造ることの出来る人物が居ることを――」

「えっ……?!」


 まるで、預言者にからかわれているようだった。
 姫は澄んだ瞳で甲児を見た。


「貴方自身が造り上げたのです。第三の、地球の守護神を――!」

第1回 預言者  完

【グレンダイザーINFINITISM】

PROLOGUE  漂泊ひょうはくの王子

第1回 守護神

第2回 方舟

第3回 アガルタ

第4回 友星

【マジンカイザーINFINITISM】

第1回 預言者

第2回 時の女神

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©ダイナミック企画・東映アニメーション

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