【鋼鉄ジーグ INFINITISM】第2回 天の逆鉾
2022.11.05スーパーロボットINFINITISM 月刊ホビージャパン2021年4月号(2月25日発売)
ダイナミック企画×BANDAI SPIRITS ホビー事業部×月刊ホビージャパンで贈るフォトストーリー『INFINITISM』最新章『鋼鉄ジーグ』編。岩塊の巨人、ハニワ幻神・琉呉羅との死闘を制したジーグ。しかし平穏は長くは続かない。いま1800年の時を経て、邪摩大王国の女王・妃魅禍が目を覚ます!!
原作・企画
ダイナミック企画
ストーリー
早川 正
メカニックデザイン
柳瀬敬之
協力
BANDAI SPIRITS ホビー事業部
ホビージャパン
第2回
天の逆鉾
地球は活きている――。
その奥底より出でしマグマは大地の中を遍く巡り、星の血管の如く永きに亘り、じわじわと活力を滾らせる。
大地の営みに悪意はない――だが、凡そ1800年の時を経て、いにしえの時代に施された〝封印〟が今、破られようとしていた。
阿蘇山の地下深く――。分厚く巨大な円盤の背に岩山を抱き、八本のオロチの首がうねり出たままの姿で、冷えたマグマが作り出した深成岩の大空洞に同化した邪魔大王国の八岐大蛇《幻魔要塞》は瞼を閉じ、彫刻のように固まっていた。
そのさらに下、マグマ溜まりの岩壁。何もかも溶かしてしまいそうな火の河が灼熱の飛沫を撒き散らす。燃える岩肌が波打ち、流動体のように渦巻いた。
「おのれーっ!」
恨みがましい女の叫びと共に揺れる岩壁の中から四体の怪物が姿を現す。
女王・妃魅禍と、知将・壱鬼馬、狂戦士・阿磨疎、剛腕・壬魔使の邪魔大王国の三柱だった。
「憎きは多卦流と美夜受……! どれほどの刻が流れたか……!」
女王・妃魅禍は美しい女性の姿態に肌や爪などに爬虫類や猛禽類を思わせる特徴を備えていた。獰猛さと美しさはあるが、本来、女王が持つべき気品は感じられず、激しい呪詛の念のみが滲み出ていた。
壱鬼馬は自由になった体を解しながら妃魅禍に笑んだ。
「妃魅禍様、ようやく、封印が解けましたな」
「腹が減った~」
阿磨疎がおどけた調子でいうと壬魔使が一瞥して睨み、何もいわずに妃魅禍の前に跪いた。壱鬼馬も阿磨疎もそれに倣い、女王の前に跪いた。半身を溶岩に爛れさせた壬魔使が戦士の瞳で命令を請うた。
「妃魅禍様、ご命令を――」
封印された彼らから見れば、一瞬であり永遠だった。彼らは存在を停止させられたまま意識の檻に閉じ込められた。一歩も動けないが、意識は聡明に恨み言を繰り返す。
だが、その憎しみこそが彼らの生命体としての力の源でもある。いにしえの古代、彼らに施された〝封印〟は地球が持つ活力によりその機能が少しずつ削がれ、遂に解かれた。
「さて、何からやってやろう――。愉しみじゃな……」
妃魅禍は眼を邪悪に見開き、すべての負の情念を妖力に変換し、これから起こす地上の混乱に喜びを馳せた。
▼ ▼ ▼
ハニワ幻神・ 琉呉羅 の出現により邪魔大王国の復活は現実のものとなった。
司馬遷次郎はこうなる可能性を五年前に知り、それ以来準備を進め、数年前から政府にも根回しを続けて来た。
だが、一向に色好い返事は得られず、協力体制を取るどころか遷次郎の進言はマッドサイエンティストの妄言扱いだった。
ところが現金なもので、宙が初めてハニワ幻神と遭遇して戦い勝利して戻った日の昼、政府の名代と名乗る背広姿の面々がビルドベースを訪ねて来た。
男が四人、女が一人の計五人だった。
「敵の出現が確定してから漸く来たか――。私は、もっと早くから協力体制をだなっ…」
――っと遷次郎は文句をいいたいのを飲み込んだ。自分まで無為な口論に時間を費やす暇はない。
宙は仮眠を取っていた。遷次郎、大利博士、卯月美和、美角美夜、美角鏡が質素な会議室で政府からの五人を迎える形となった。
地味な黒系の背広を着た面々は静かだが暴力の匂いを隠しているように見える。
最後に入って来た二十代後半に見えるクレオパトラのような髪型をした女性が美角鏡と美夜を見て静かに目礼した。
鏡と美夜も目礼を返した。他の者たちが気づかないほどの一瞬の遣り取りだった。
クレオパトラが黒服集団のリーダーのようだった。
「ミサトといいます。公安警察から参りました。職務上、名刺は御座いませんので口頭の挨拶でお許し下さい。他の者の名前を明かすことも出来ません」
「ああ――構わんよ」
遷次郎も素っ気なく応えた。
「先ずは、再三ご連絡を頂いていながら行動が遅れたことをお詫びします」
現れないが、黒服たちがビルドベースと阿蘇周辺を監視していたのには気づいていた。
「その気になってくれたんなら、もう、その件はいい――。ところで、ミサトという名は苗字? それとも下の名前?」
「下の名前です」
大利博士が、その名が本名なのかどうか尋ねようかと迷っていると彼女は微笑み、
「本名です。美剣美里です」と、尋ねられる前に応えた。
その聡明な返しに、遷次郎と大利博士は美里を信じられる相手だと理解した。
遷次郎は本題に入った。
「急ぎは、この特殊な戦争状態の勃発を国としてどう扱うか――。それと、自警団扱いというわけにはいかん、ビルドベースの兵装使用許可、並びに、特殊航空機の使用認可。この二つは大急ぎだ。それから、自衛隊との連携を何処まで実現出来るか――。その辺りだな――」
「送って頂いた司馬博士のプランにはすべて目を通しています。わたくし共に異存はありません」
「――ほう、話が早いな」
「ただ、国民への〝敵の正体〟の開示に関しては、可能な限り、ギリギリまで控えたいと考えています。1800年前の呪術を操る古代王国が現在に蘇り、攻めて来るとは――余りにも突拍子過ぎて、逆に国民の理解を促せないかと思われます」
「まあ、確かにな……」
寧ろ、何処かの隣国が攻めて来るから覚悟しろと呼び掛けた方が遥かに現実味があって人々の足並みも揃うと思われた。
「わかった。そのタイミングと方法については君に任せる」
これを皮切りに密な打ち合わせが始まった。ここに来て、漸く相互確認が為され、邪魔大王国に立ち向かう足並みが揃い始めたのを遷次郎は実感した。
▼ ▼ ▼
邪魔大王国――炎の祭壇。
炎が妖しく揺らめいていた。
女王・妃魅禍はその特殊な呪術で目覚めた世界の状況を探っていた。
「これは……どういうことじゃ――!!」
復活の直前、この地底に満ちた邪悪な力は黄泉軍兵とハニワ幻神・琉呉羅を先兵として地上に放った。封印される直前の、妃魅禍の思念が起こした現象だった。
それが――何者かに斃されている……。
〝分け御霊〟を授けていないハニワ幻神であっても、未開である地上の人間を蹂躙するには十分な力を持っている。
――何故に……!!
妃魅禍は敵の姿を占った。
強力な呪術を操る妃魅禍であってしても、一度も見たことのない未認識の存在は意識の中に浮かべることは出来ない――。
ただ、黒い影の巨人が忌々しくも勇猛に立ち塞がり、琉呉羅に挑む姿が見えるのみだった。
――おのれッ……! 何者じゃっ……?!
瞼を閉じ集中すると、封印される前、古代の大地に散布したハニワ幻神の器の胎動が感じられた。
妃魅禍は後ろで跪いて控える壱鬼馬、阿磨疎、壬魔使にいった。
「地上の様子がおかしい……。ハニワ幻神・暴迂羅と迦楼羅を授ける。我らの目覚めを地上の人間共に知らしめよ。歯向かう者を燻り出すのじゃ……! 銅鐸の在処と関係あるやも知れぬ――。我らがすべてを手にするには、銅鐸の力が必要じゃ。邪魔者を斃し、探索に取り掛かるのじゃ」
「承知致しました、妃魅禍様――!」
壱鬼馬が慇懃に答えると妃魅禍は口を大きく開き、喉の奥から胎内で蓄えた邪悪に輝くエネルギーの塊を二つ取り出した。
〝分け御霊〟が無くてもハニワ幻神はそれなりの力を発揮するが、妃魅禍の〝分け御霊〟を宿らせたハニワ幻神の戦闘能力は飛躍的に上昇する。それが二体居れば、如何なる敵にも敗北は有り得ない――。
妃魅禍の〝分け御霊〟を両の掌で受け取った壱鬼馬は、阿磨疎と壬魔使にそれぞれ渡し、
「阿磨疎は暴迂羅、壬魔使は迦楼羅を――! さあ、行くがいい――。邪魔大王国の復活を知らしめるのだッ――!!」
不気味に笑んだ阿磨疎と壬魔使の体は、硬い地面に沈み込むように消えていった。
「妃魅禍様、ご心配には及びません。地上が如何に変わっていようと、我らに歯向かえるだけの力を持つ者は、最早、この世界には居りません――」
壱鬼馬の気遣い通り、妃魅禍はあの瞬間のことを思い出していた。
▼ ▼ ▼
遥かなる古代――高千穂。
強風に波打つ草原に覚悟を決めた表情の多卦流と美夜受は立っていた。
妃魅禍の前に立ちはだかったのは、たった二人と、一匹の虎に似た魔獣神だった。
魔獣神・破瑠覇は二人を守るように控えていた。対するは妃魅禍と、壱鬼馬、阿磨疎、壬魔使。無数の黄泉軍兵たちだった。
妃魅禍は襲い掛かる大蛇の如く、目を吊り上げ、多卦流と美夜受に宣言した。
「訊くがいい! この大地に降り立った時より、わらわは、わらわを縛るすべての忌まわしき絆を断ち切った。幾星霜を経ようとも、必ずや成し遂げる――! これより、この大地は我ら邪魔大王国のものだ!!!」
美夜受は悲痛な表情をしていた。妃魅禍をこの強行に追い込んだのも、元を辿れば自分たちにも非はあった。妃魅禍たち〝呪いの戦士〟を創り出した〝業〟の深さは自分たちにある。
だが、妃魅禍の行動は何としても阻止せねばならない。
「そうはさせません! 妃魅禍、私はこの地の人々と共に生きることを決めました。この大地に仇なすつもりならば、我が命を懸けて、阻んでみせましょう!」
両者は互いに一歩も引かなかった。
頑なな情念に支配された妃魅禍は負の力の権化となり、自らの逃げ場を無くすかのように、かつての支配者である多卦流と美夜受を笑い飛ばして挑発した。
「ははははは……!!! 下界に降りて堕落した其方に、まだ、わらわに歯向かう力が残っておるかな……?! あはははは……!!!」
戦が始まった――。大剣が唸りを上げ、火球が飛び、雷撃が迸る。魔獣神・破瑠覇も多卦流と美夜受を守護し高千穂を駆け巡って戦った。
やがて戦域は狭まり、多卦流と美夜受は妃魅禍たちを高台に追い詰めた。二人は妃魅禍以上に覚悟を決めていた。
高天原が地上から遥か遠い場所にある今、妃魅禍の野望を食い止める手段は一つだけ。
二つの銅鐸と〝天の逆鉾〟による〝封印〟しかない――!
「多卦流、封印を!!!」
姉の美夜受が叫ぶと弟の多卦流が応えた。
「美夜受!!!」
しかし、その手段を使うことは多卦流と美夜受にとっても大きな危険が伴う賭けだった。
自らの力を極限まで消耗させ、その上で〝封印〟の外へと転位出来なければ、彼ら自身も妃魅禍たちと共に〝永遠〟の檻に閉じ込められることになる……!
天に掲げた二人の掌から二つの銅鐸が出現して天空に昇り、周囲にエネルギーが広がった。
「妃魅禍!」
多卦流が叫ぶと、妃魅禍はその覚悟が本物だと悟り、狼狽えた。
「馬鹿なッ……貴様らも一緒に……!!」
多卦流の手に〝天の逆鉾〟が現れた。
「眠るがいい!!!」
渾身の力で多卦流が〝天の逆鉾〟を大地に突き刺すと、銅鐸のエネルギーに囲まれた空間が激しく放電し〝封印〟が始まった。
「おのれーッ……!!!!!」
途端に眩い光が包み、自分が何処に居るのかわからなくなった。
妃魅禍の記憶にあるのはそこまでだった。壱鬼馬も阿磨疎も壬魔使も同時に消えた。
意識を持たない黄泉軍兵は存在そのものが消失した。
妃魅禍たちはそれっきり意識の檻に封じ込められた。多卦流と美夜受がどうなったかはわからない。
だが、〝封印〟から解かれた今、この大地の何処かに存在するであろう銅鐸を手にする機会を得た――という幸運だけは確かだった。
――そうじゃ、銅鐸じゃ。銅鐸さえ、手に入れば……!
あの日、いにしえの大地で誓った野望が達成出来るかどうかは、二つの銅鐸が手に入るかどうかに掛かっている。
妃魅禍は改めて自身の目的を胸に刻み込んだ。
▼ ▼ ▼
突然、警報が研究室から鳴り響いた。ビルドベースが阿蘇周辺に設置した無人センサーが異状を感知した。急いで会議室から研究室に移動した美和がレーダーを確認した。
「内輪山より北北東のくじゅう連山の山中です」
「ハニワ幻神……!?」
同じく移動して来た美角鏡がレーダーの影を見ていった。
「我々も、あちらに――」
遷次郎が先導し、残りの者たちも隣の研究室に移動した。
「町までの距離は?」
遷次郎が聞くと美和が応えた。
「この大きさでこの距離なら、20分もあれば市街地に――」
美剣美里と四人の黒服たちも居合わせていたので話は早かった。遷次郎は、再度、美里に確認した。
「ビッグシューターを飛ばしていいんだな?」
「ジーグ回りの指揮系統はすべて司馬博士にお任せします」
「よし、卯月くん、宙を乗せてすぐに出動だ――」
「はい」
インターホンで連絡を受けた宙は身支度を整えて格納庫で待っていた。
「ミッチー、運転、大丈夫なのか?」
「宙さん、こう見えても私、司馬博士にいわれて訓練を積んでいたのよ。ヘリコプターやセスナくらいなら目隠ししてたって飛ばせるわ」
「おいおい、お手柔らかに頼むぜ」
ジーグパーツを運ぶビッグシューターは双胴船型の特殊航空機で、近寄ると見た目の印象より大きい。垂直離着陸も可能で積載能力も高く、頭部以外のパーツを2セット分に加え、追加武装のジーグバズーカとマッハドリルを積んでいた。
宙を予備シートに座らせると美和はエンジンのスタートスイッチを押した。
「発進します!」
美和と宙を乗せたビッグシューターは誘導レールのコースをジェットコースターのように滑り、急激に加速を付けて地下トンネルを抜けビルドベースから東南に離れた場所にある出撃ハッチから大空へと舞い上がった。
▼ ▼ ▼
くじゅう連山の上空に到着した。
「――この辺りよ」
「あそこだッ!」
東側の斜面が崩れ、土煙が昇っていた。
渇いた山肌と疎らな緑の中に三十メートルは有りそうな岩の巨人が見える。
「……ハニワ幻神ってのは、あんな奴ばかりなのか?」
明け方に戦った琉呉羅も巨岩の塊だったが、今、見えているのはもっと人間に近い、巨大な岩の肌を持つプロレスラーといった雰囲気だった。その手に持った武器も岩塊で出来た二つの棍棒をチェーンで繋げたヌンチャクのようなものだった。
すると、コクピットの通信装置から美角鏡の声がした。
〝――宙さん、ハニワ幻神は呪いを込めた土で作られた土偶です〟
「土偶? ああ、だから埴輪か……」
〝――その器に呪術的なエネルギーを吹き込み、戦闘兵器にしたものです〟
「なるほど――相手が土人形なら手加減する必要もないってことだな……! よし、ミッチー、降ろしてくれ――!」
「了解ッ!」
ビッグシューターは最短のコースで地上数メートルまで接近し、宙はそのタイミングでキャノピーを開け勢いよく飛び降りた。サイボーグだからこそ出来る芸当だった。
「チェンジ、サイボーグ!!! 鋼鉄ジーグ!!!」
宙が叫ぶと、旋回して軌道を再修正させた美和がハンドレバーを押し出した。
「ジーグパーツ、シュート!!!」
サイボーグ宙となり前転してジーグの頭部に変形仕掛けた宙に向け、バラバラのジーグの部位が射出された。
「ビルド、アーップ!!!」
くじゅう連山の中ほどにある高原で鋼鉄ジーグはハニワ幻神・暴迂羅と対峙した。
繁みの横から人知れずその光景を見ている眼がある。妃魅禍の〝分け御霊〟を暴迂羅に宿らせた張本人、阿磨疎だった。
「くかっかっかっか…、なんだぁ…、アイツは……?」
阿磨疎にとっても鋼鉄ジーグは初見で正体の分からないモノだった。
「アイツが先兵隊の琉呉羅を斃したのか~? へへへ…、奴を斃せば妃魅禍様に褒めてもらえる~う。行けッ、暴迂羅! 手始めに、アイツから血祭にあげてやれッ!!!」
ハニワ幻神・暴迂羅は手に持った巨大なヌンチャクを器用に回転させ、ゆっくりとジーグに迫り始める。
――なんだッ……?! 動きが違う……!
隙のない動きを見て、宙は明け方に戦ったハニワ幻神とは比べものにならない敵であることを見抜いた。
――そういうことなら、こっちにも試したい戦術がある……! 喧嘩じゃない。接近戦に持ち込むのは、最後の手段だ……!
たった一度の実戦で宙はレーサーの分析眼を応用することを覚えた。バトルはレーサーがカーブを攻めるのと同じだ。
――先ずは相手の攻撃パターンを分析し、中距離攻撃で小手調べだ――!
暴迂羅が繰り出した巨大ヌンチャクの初手を躱すとジーグは間合いを取り直す。次にどう相手が動くかで、こちらの動きも決まる。
ザクン、ザクン、とハニワ幻神はさらに二歩踏み込み、巨大ヌンチャクを鋭くスイングさせた。手にした打撃武器に執着し、敵の頭蓋を砕こうと狙っている。
――チッ…、カンフー映画じゃあるまいし……。いくら鋼鉄のジーグでも、あんなので頭を殴られたら、生身の脳が持たねえってんだ……!
宙は相手を見たまま後ろに飛び退いて距離を取り、ハニワ幻神の手元に向けて眼からビームを放った。
「ジーグビィィィーム!!!」
ビシュシュッ、バシャ―――ン!!!
眼から発射した二本の光線が巨大ヌンチャクを弾き飛ばした。
――よし、こっちが攻める番だぜ!
駆け込んだジーグは走り幅跳びの要領で大きくジャンプし、暴迂羅の喉元に飛び蹴りをお見舞いした。
「ダイナマイト、キィィィック!!!」
ズドーン!と重い衝撃が掛かり、ハニワ幻神・暴迂羅はそのまま仰向けに倒れた。かなりのダメージを与えたが、まだ立ち上がろうともがいている。明け方に戦った琉呉羅より、比べものにならないほど硬かった。
〝――粉々にして下さい。形を残していると、また器に使われる恐れがあります……!〟
脳波通信に美角美夜の声がした。
――ん? ああ、わかった。
それにしても、相変わらず不思議な姉弟だった。まるでここに居て、同じ戦場を見ているかのようなアドバイスだった。
続いて、美和の声がした。
〝――宙さん、ジーグバズーカを出します!〟
「よし来た――。頼んだぜ、ミッチー!」
上空のビッグシューターがトランスポジションを取った。
〝――ジーグバズーカ、セットアップ! スイッチ、オン! 発射!!!〟
ビッグシューターの腹部ハッチが開き、巨大なジーグバズーカが射出された。
〝――受け取って!〟
「おう!」
ミサイルのように飛んで来たジーグバズーカはジーグの手前で逆噴射し、キャッチ可能な速度に制御される。
ガシリ!とそれを受け取り、ジーグは巨大バズーカ構え、暴迂羅を狙った。
ピピピッピッ…、ターゲットのクロスゲージが合わさり、爆音と共に特大の弾丸が発射した。
ドバババ―――ン!!!
ハニワ幻神・暴迂羅は跡形もなく粉塵の中に砕け散った。
第2回 天の逆鉾 完
【グレンダイザーINFINITISM】
【マジンカイザーINFINITISM】
【ゲッタードラゴンINFINITISM】
【鋼鉄ジークINFINITISM】
第2回 天の逆鉾
新たなる「INFINITISM」
【マジンガーZERO INFINITISM】
第5回 永劫因果 (終)
©ダイナミック企画・東映アニメーション