日本を代表する水溶性アクリル塗料「タミヤカラー アクリル塗料ミニ」の3色迷彩塗装の解説をお届け。タミヤカラー アクリル塗料ミニとは、タミヤのプラモをかっこ良く塗れる公式塗料。数々のスケールモデルの色として、タミヤが研究・検討の末に導き出した“正解の色”を、瓶から直接塗れるのが最大のメリットです。
そんなタミヤカラーから、ドイツ軍の代表的な3色迷彩色をピックアップして「光と影迷彩」をHGサザビーに塗っていきます。この迷彩色は、近藤和久氏の漫画に登場する陸戦型サザビーに施されていたもの。偉大な先人のカラースキームを参考に、エアブラシ迷彩塗装の例としてご紹介します。
迷彩塗装自体は、実はそれほど難易度が高くありません。そして塗り上がるととってもカッコよく見えちゃうお得な塗装方法なので、ぜひこの記事を読んで真似してみてくださいね。
製作・解説/けんたろう
・全身を組んだ状態で塗ろう!
・迷彩の主な描き方2種を覚えよう
・迷彩塗装はレタッチが大事!
\ 教えてくれる人 /
けんたろう
▲HJのHow to番長とも言える活躍を見せるけんたろう。今回はいつもよりキリリと真面目。それもそのはず! 今回はHJの工作室を飛び出し、製作スペースを借りて塗装をしたのです!
タミヤカラー アクリルって何?
▲スケールモデルを楽しむ人はメイン塗料として使っている人も多い、世界中で愛される塗料。刺激臭もなく、アクリル塗料ならではの隠蔽力の高さも魅力的。また多くの模型店・量販店で取り扱いされているので、すぐに補充できるのも利点です
▲水でも希釈できる水溶性塗料の部類ですが、エアブラシ塗装の時は専用のアクリル溶剤を使用することをオススメします。塗料1:アクリル溶剤1の割合で塗料を薄めて塗装するのがベター
「光と影迷彩」って何?
▲第二次世界大戦末期にドイツ軍が投入したヤークトタイガー(写真)やキングタイガー、パンターといった第二次世界大戦の欧州戦線のクライマックスで、連合軍と激戦を繰り広げた独軍車両に施されていた迷彩のひとつ。3色迷彩の中に小さな点々があり、これが木々の“木漏れ日”を表現していると言われています
使用する色は「この3色」!
▲タミヤが2018年に発売したダークイエロー2、ダークグリーン2、レッドブラウン2の3色を使用します。これは2018年時点での考証を基に、独軍の大戦後期の車両に施された色をイメージして作られた塗料。大戦後期の光と影迷彩のパターンにもぴったりの色味です。これを混色なしでそのまま塗っていきます!
迷彩塗装の準備をしよう
塗装をするのはけんたろう。戦車模型にでも下地に塗られるオキサイドレッドのサーフェイサーを吹いてから、エアブラシ塗装しようと思います。
製作スペース「クラフトネスト」
で塗装しました!
▲昨今話題の製作スペース。僕らも実際に足を運んで、その場でガンプラの塗装をしてみました。結果は大正解。もし、塗装してみたくても自宅の環境的に難しいと悩んでいる方は、訪れてみることをオススメします! 楽しい模型体験があなたを待っていますよ
お店の詳細は月刊ホビージャパン2023年5月号P.59でご紹介!
エアブラシ特集ですが…
▲いきなり缶スプレー「タミヤ ファインサーフェイサー オキサイドレッド」を吹きまくるけんたろう。エアブラシ特集だぞ! と制止すると、「タミヤのファインサーフェイサー オキサイドレッドは、タミヤアクリルと相性抜群でとても塗りやすくなりマス。あと3色迷彩の下地といえばオキサイドレッドでしょ」と反論。まぁいいでしょう。下地塗装だから許す!
持ち手と塗装ベース
▲エアブラシ塗装、缶スプレー塗装の際は持ち手と塗装ベースはぜひ準備してください。塗装する時も、乾燥させる時も必須!
お腹周りをマスキング
▲3色迷彩は、全体を組んだ状態で塗って、迷彩のラインをつなげていきます。そのために別記事でもご紹介しているマスキングのテクニックが役に立ちます。お腹のグレーはグレーのままにしたいので、マスキングしておきましょう
web記事はコチラ
ダークイエロー2を塗装
▲こちらはダークイエロー2を塗装している様子。塗料1:うすめ液1、エア圧0.1MPaに設定して塗装しています
下地のオキサイドレッドを活かしましょう
▲完全に塗りつぶしてしまうと下地のオキサイドレッドの意味がなくなってしまいます。少し透けるくらいで留めておきます
迷彩塗装スタート!
ダークイエロー2を塗って組んだ状態
▲迷彩塗装は模様がパーツをまたぐので、全身を組んだ状態で塗ります。関節部は塗り直せばいいので、マスキングも最低限です
方法1:細い線を描いて〜
▲基本塗装とは異なり重ねる色は細く吹くので、濃度も1:1.5、空気圧も0.05MPaに下げます。まずは吹き方について見ていきましょう
少しずつ太くしていきます
▲迷彩塗装は波をうったような模様が基本。そのため波の線を1本引いてから、それを少しずつ太くするように模様を拡大していくと迷彩模様の出来上がり。これがひとつめの方法
方法2:縁取りまして
▲もうひとつは模様を決め打ちにして、縁取ってから塗りつぶす方法。まず薄く吹きつつ、縁をぐるっと取っていきます
中を塗りつぶしていきます
▲縁取りできたら、中を塗りつぶし。この方法なら先の尖った模様も描きやすいです。ほとんどはこの2パターンで迷彩を描いています
隣の装甲にラインを繋げよう
▲ラインを描いた際に飛沫がついてしまった箇所を、そのまま迷彩のラインに取り込んでリカバー。ここも線を描いてから、同じ箇所に吹き続けて線を太らせます
ダークグリーンの余地を残しておく
▲ダークブラウンをまんべんなく吹きすぎると、後で塗装するダークグリーンのスペースがなくなります。注意!
光と影迷彩は迷彩が太め
▲ダークブラウン内に2色のドットを配置する必要があるので、幅を拡大。ダークグリーンもそうですが、おぼろげでも、完成形のイメージをつねに意識します
足元を塗る時は紙を敷きましょう!
▲左足のつま先がブラウンなら、右足をグリーンのラインを入れるとカッコいいです。不要な紙を敷けば机を汚さずに足元が塗りやすくなります
塗り残し注意!
▲太モモにも迷彩。周りの迷彩ラインの入れ具合を見ながら、ここにも後からグリーンが同程度入ることを意識して、まずブラウンで塗っていきます
ヒザ裏も意外な盲点
▲可動部分を動かして、塗り残しが出ないように塗ります。太モモとヒザアーマーが重なる部分などはよく見落としがち
シールドにもレッドブラウンを塗装
▲シールドも後からダークグリーンが入ることを考慮しながら、ブラウンで少しずつ迷彩を配置していきます
2色迷彩完成!
▲ブラウンの塗装が終わり、2色迷彩になりました。右足首などはグリーンを入れる関係でほとんど塗らずに残しています。ここからグリーンを塗りましょう
ダークグリーン2の塗装…あれれ!?
▲ダークグリーンを吹こうとしたら、吹きこぼしで汚れてしまいました。迷彩塗装の濃度調整やエア圧調整はタイトなので、できればテストピースで試し吹きをしましょう
修正はとっても簡単!
▲汚れたら、そこをカバーするように塗装すればよいだけ。ダークグリーンも少しずつ線を太らせながら、失敗部分を塗り重ねてカバーします
シールドの色数が増えてきました
▲シールドは2色目の迷彩のちょうどよい実験台。緑と茶色は接してもOKとして、イエロー1.5、グリーン1、ブラウン1ぐらいの気持ちで塗りました
本体にダークグリーン2を塗っていきます
▲ブラウンとのバランスを見て、イエローの上からグリーンを重ねていきます。ブラウンは横の迷彩でしたが、グリーンは縦にもその動きを伸ばしていきました
色同士がぶつかる箇所を確認
▲ブラウンはグリーンより濃い色なので、先に塗っておくとグリーンの飛沫がついて色の濃さを薄めることができます。だからブラウンを先に塗っておきました
3色塗り終わりました!
▲ブラウンの迷彩を引き継いだもの、あえて細く曲げたところと、迷彩のラインがパーツをまたいだ流れを全体に構築しました。組んで塗るからこそのパーツまたぎですね
光と影迷彩が塗れました!
▲左腕だけですが光と影迷彩が完成しました。このドットを全身に打っていきます。もしドットを失敗したら、また上からベース色をリタッチすればOK
もう1周迷彩塗装しよう
▲ここでもう一回全体を見て、足りない部分やグリーンに塗られた部分に塗っていきます。幅や色の割合のバランスをもう一回調整するのが大事なんです
奥まった部分もしっかり確認
▲グリーンやダークイエローも全体を見て迷彩を配置しすぎたところや他の2色に塗り込められた部分に塗り直します。接近して細部を、離れて全体を見ます
点は筆で描きます
▲迷彩が整ったら、最後にドットを描き入れ。ダークイエローならブラウンとグリーンをそれぞれ筆で描きます。筆先のタッチもまた迷彩の味になるので、ドット形状は筆のなるように任せましょう
▲シールドなどの濃い黒の部分は黒サーフェイサーの上からジャーマングレーでグラデーション塗装。マーキングデカールなどはナイチンゲール用のものを使いました
▲スミ入れはMr.ウェザリングカラー シェイドブラウン。フィルタリング用途だけでなく、こうしたアクリル系塗料には塗膜を侵しにくいスミ入れ塗料としても活用できます
▲迷彩の模様はブラウンを配してから、その間を縫ってグリーンを走らせて最初の塗りとしました。ドットを描き足す余地を作るためラインを太くしていった結果、ラインが隣り合う箇所が生じて自然と迷彩が整いました
\ まとめ /
迷彩塗装は細かく塗装すればシルエットを判別不可にする程の力があるので、逆説的に模型においては細かすぎない程度の描き込みが丁度よいと思います。自分は気楽に、迷彩塗装を命じられた整備兵になったつもりで、ある程度いい加減に、でもパイロットには気に入ってもらえるようにそこそこかっこよくするつもりで塗りました。
光と影迷彩は、迷彩塗装のなかでは手順が多いほうですが、やってみると案外それっぽくなりますし、失敗しても基本色の塗り重ねでリカバーできます。まずは気楽にチャレンジしてみてください!!
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MSN-04 サザビー
製作/けんたろう
©創通・サンライズ