【コードギアス 新潔のアルマリア】ep20「私は……」
2026.08.07 リビングナイツの兵士たちが取り囲む神楽耶邸。そのリビングでは、神楽耶とマシューがテーブルを囲んでいる。
「失礼します」
リビングに入ってきた双葉の手には、茶器を乗せた盆。双葉はテーブルの上に丁寧に茶の用意をすると、ゆっくりと湯吞茶碗に白茶をそそぐ。
「いい香りだ」
目の前に置かれた湯呑茶碗から立ち上る茶の香りにマシューもつい気を取られる。
「どうぞ。お召し上がりください」
神楽耶に促され、湯吞茶碗を手に取るマシュー。ゆっくりと口を付けると、芳醇な香りが口の中に広がる。
「これが先ほど仰っていた白茶ですか」
「ええ。白毫銀針という銘柄のお茶です。春の早い時期に芽吹いた、まだ開いていない新芽のみを丁寧に手摘みして作られるため、生産量が非常に限られているんですよ」
「それは高級品だ」
「さすがはパイレックスの社長。物の価値がわかる御方のようですね」
「超合集国の議長を務められた神楽耶さまにそう言っていただけるなんて光栄ですね」
「そんな方がどうしてこのような真似をなさるのです?」
「このような真似、とは?」
「見ての通り、テロリストのような真似、という意味ですわ」
「テロリストと言われるのは不本意ですね。私はただ自分のものを取り返しに来ただけだというのに」
「自分のもの? 異なことを仰るんですね。あの子は、Mはあなたのものなどではありませんよ」
「なに?」
マシューが湯呑を乱暴にテーブルに置く。
「Mはあなたのものなどではないと言ったのです、マシュー・ブラキストン」
「やはりM-01のことを知っているのか、皇神楽耶」
マシューの口調が荒々しくなる。しかし、神楽耶は冷静さを保ったまま。
「ええ。その素性も、その居所も」
「どこだ!? M-01はどこにいる?」
「このような真似をする人間に教えると思いますか?」
「っ!」
おもむろに立ち上がったマシューが神楽耶の頬に手の甲で平手打ちする。その瞬間、傍に控えていた双葉が懐から拳銃を出してマシューに向ける。すると、まわりの兵が今度は双葉に向かってアサルトライフルの銃口を向ける。
「おやめなさい」
一触即発の状況を崩したのは神楽耶。双葉に銃を下げるように促す。仕方なく銃を下げる双葉だが、マシューは興奮気味に神楽耶を睨みつけている。
「あなたは、お立場がわかっていないようだ。次に今のような態度をとれば、ことはあなただけの命では済まなくなる」
「ほう。そう仰るからには何か交渉のカードをお持ちのようですね」
「ええ。私は顔が広くてですね。私の知り合いにギュスターブ・トゥナンという元ブリタニア貴族がいるんです。彼から面白いものをひとつ、譲り受けたんですよ」
「……」
神楽耶はギュスターブ・トゥナンという名前に聞き覚えがある。フレイヤを所持している可能性が高い人物のリストに連ねられていた名だ。だが、顔には出さない。
「面白いものとは?」
「あなた方イレヴンが何度もその威力を目にしたものですよ。フレイヤ。そう言えば、嫌でもわかるでしょう」
「フ、フレイヤを……?」
「ええ。近くにフレイヤを搭載した機体を待たせてあります」
相模湾が見える滑走路に、フレイヤ発射装置を装備したサザーランド・エアが駐機している。その前に佇むミリガンが手にしているのは、一枚の写真。その写真には、大きなお腹で幸せそうなミリガンに寄り添うマシュー、今よりも少し若いふたりが映っている。
「マシュー……」
写真に目を落とすミリガンの背後の空に二機の飛行体が雲を引いて飛んでいく。その向かう先には神楽耶の屋敷がある。
マシューの言葉を聞いて、ひどく驚いた様子の神楽耶。
「何を馬鹿なことを……。フレイヤを使えば、何万人もの人が死ぬ。それはあなたも例外ではありませんよ」
対するマシューは勝ち誇ったような笑みを見せる。
「そんな些末なこと構いはしない。僕は夢を叶えなきゃいけないんだ。それができないなら、M-01をマリアンヌ様にできないなら、こんな命など意味がない」
「狂っている……」
「狂って……? 確かにそうかもしれない。だけど、それが僕の生きる意味なんだ!」
まるで勝利宣言かのように高らかに言い放つマシュー。それに反するように神楽耶の表情はいつもの冷静なものへと変わる。もはや演技をする必要が無いからだ。
「……聞こえましたね、ハクバ?」
「はい。姫様」
双葉が後ろ手に持った携帯電話がハクバとの通話状態になっている。先ほど、銃を下ろすと同時に携帯電話を袖口から出し、ハクバとの通話をつないでいたのだ。マシューには、そのことが理解できないでいる。
「えっ?」
「エージェント新月に命じます。必ずやマシュー・ブラキストンの蛮行を止めるのです!」
神楽耶の命令と同時に、双葉が照明弾らしきものを起爆させる。すると、一瞬にしてあたりが真っ白な光に包まれた。
「殺せ! 皇神楽耶を殺すんだ!」
目が眩みながらも、マシューが指示を出す。兵たちも即座に銃を構えるが、光で神楽耶たちが見えない。数秒で光は治まったものの、神楽耶と双葉、それどころか数人のSPの姿はすでになくなっている。
「対象をロスト!」
「き、消えた? どこに……」
あたりを見渡すマシュー。すると、庭で待機していたサザーランドの一機が真っ二つにされ、爆発を起こす。爆炎の奥から姿を現したのは、上空から一気に舞い降りた飛翔滑走翼付きの新月、新月可翔だった。その機体にはマシューも見覚えがある。
「あ、あのナイトメアは……」
「ハワイ振りだな」
「宗賀ハクバか!」
突如として現れた敵に対し、リビングナイツのサザーランドが電磁ランスで新月可翔に襲いかかる。しかし、同じく空から舞い降りた赤紫にカラーリングされたサトリの暁可翔が回転刃刀でその腕ごと斬り落とした。
「姫様たちを襲っておいて無事で済むなんて思わないでよね!」
腕を斬り落とした刃を返し、今度はサザーランドの胴体を逆袈裟の要領で切り上げるサトリの暁可翔。ハクバはその隙にマシューを取り押さえようとする。
「大人しくお縄につくことだ、マシュー・ブラキストン!」
「悪いが、そう簡単に夢を諦められないんだ!」
屋敷の奥へと逃げるマシュー。追おうとするハクバとサトリだが、リビングナイツのサザーランドに阻まれる。難なくサザーランドを排除するハクバたちだが、次の瞬間、神楽耶邸の前に停められていた車両のコンテナが吹き飛んだ。
「なんだ!?」
車両の後部コンテナから飛び出したモノを追いかけて見上げるハクバ。そこには、空中でエナジー・ウイングを広げるグロウエレメンツGの姿がある。LDM計画によって建造されたもうひとつの紅蓮聖天八極式の複製機だ。
「M-01を返せ! 宗賀ハクバ!」
ep.20END
【コードギアス 新潔のアルマリア】
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