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【コードギアス 新潔のアルマリア】ep19「新しい名前をつけてほしいです」

2026.07.10

コードギアス 新潔のアルマリア●長月文弥 月刊ホビージャパン2026年8月号(6月25日発売)

コードギアス新潔のアルマリア19話top画像

『コードギアス 奪還のロゼ』へと続く物語

 『コードギアス 復活のルルーシュ』と『奪還のロゼ』をつなぐ『コードギアス』の新たなるストーリー『新潔のアルマリア』。マリアンヌ・ヴィ・ブリタニアの遺伝子的クローン人間だと自らの出自を明かすMだが、ハクバたちは彼女を優しく受け入れる。一方、黒の騎士団の追っ手を逃れたマシューは、神楽耶とハクバたちへの報復の準備を進める……。

STAFF
シナリオ 長月文弥
キャラクターデザイン 岩村あおい(サンライズ作画塾)
ナイトメアフレームデザイン アストレイズ
モデル製作 おれんぢえびす、コジマ大隊長
撮影協力 BANDAI SPIRITS コレクター事業部


ep.019『新しい名前をつけてほしいです』

「わたしは、マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア。その人の遺伝子的クローン人間です」


 いくつもの「M-01」と記された調整槽の前で、Mは自分が何者であるか、その事実を確かめるに至った。幼い顔には何の感情も浮かんでいない。


「マリアンヌは、ブリタニア98代皇帝シャルルの皇妃の1人。悪逆皇帝と言われたルルーシュの母おやです。その人の遺伝子をもちいて作られたのが、わたしという人間です」


 そう言いつつ、俯くM。


「いえ、人間ではありませんね」


 ハクバたちから逸らした顔には、初めて陰りが見える。そんなMの前に屈んだハクバは自分の本心がきっちりと伝わるように、Mの瞳を真っ直ぐ見据えた。


「人間だろう。出自がどうであろうと、この世に生を受けた時点でMは人間だ。他の誰とも変わりはしない」

「ミスター……」

「ここにいる他の奴らだって同じように考えてるさ。なあ?」


 水を向けられたドクたちの誰もMに奇異な目を向けてなどいない。


「うん。驚いたのは驚いたけど、それはMの出自というよりは、リューネベルクがクローン研究を行っていたほうだしね」

「ってか、クローンとかそうじゃないとか、あんまし関係ないよ。私たちのチームだって人種も性別も年齢もみんなバラバラだもん。ハクバなんてひとりオッサンだし」

「オッサンなのは事実だけど言葉を選んでくれ。格好がつかないだろう?」

「あら? あなたも格好なんて気にするのね、エージェント新月」


 サトリの隣にいたレディ・レディが苦笑する。


「どうも女性陣は手厳しいな。とはいえ、みんな君のことを奇異な目でなんて見ていない。君は君だ、M。たとえ、遺伝子が誰かのものだったとしても、自分の出自を確かめるために、こんなところまで来た勇気あるレディは君という人間なんだ。悔やむことも、恥じることも、悩むことも必要ない」

「ミスター!」


 その言葉を聞いて、思わず抱きつくM。その瞳からは大粒の涙がとめどなく溢れている。言葉にならないMの嗚咽をハクバはすべて受け止めていた。


「M、君は君の本質がここにあると言った。その本質は見つかったのかい?」

「わかりません……。ミスターたちにはなすまでは確かにクローンであることが、わたしの本質だとおもっていました。でも、ミスターがクローンであることは関係ないといってくれて、わからなくなりました。わたしは……、わたしの本質は……」

「わからなくていいんだよ」

「えっ……?」

「Mはまだ6歳だ。たった6年しか生きていないのに、自分の本質が何であるかなんて知らなくて当然なんだよ」

「そうそう。僕たちだって自分が何者か、なんてハッキリはわからない」

「でも、その分、可能性があるの。私たちは何にだってなれる!」

「ふふっ。ポジティブね、サトリは」

「それが私の長所だもん」


 ドク、サトリ、レディ・レディもMがMであることを肯定する。


「いいんでしょうか? わたしがわたしとして生きていても」

「あたりまえだろう。君はこの世に生を受けた。なら、生きる権利を持っている。そして、その権利を守るのが俺たち大人の役目だ」

「ありがとうございます、ミスター」

「ようやく笑ってくれた。これなら前へ進めそうだな」

「前へ? それはどういう意味でしょうか?」

「ああ。M、君はこれから1つ、決断しなければならない」

「それは、何を……?」

「マシューの処遇についてだ」

「マシュー・ブラキストンの?」

「君はマシューから被害を受けた。だから、マシューに対して処遇を決める権利がある。選択肢は2つ」


 ハクバが人差し指を立てる。


「1つは、マシューへの復讐。ここにいる俺たちは警察じゃない。君がマシューへの復讐を望むなら手を貸すこともできる」

「復讐……」


 ハクバがもう一本、指を立てる。


「もう1つは、マシューの処遇を黒の騎士団や警察、司法に委ねること」

「わたし以外の誰かにマシューへの制裁をゆだねるということですね?」

「そうだ。マシューは幼い君を連れ去り、マカオの金羊館で育てようとした。M、君としてではなく、おそらくマリアンヌとして育てようとしたのだろう。だから、多くの知識を与え、マリアンヌであるよう振る舞うことを強いた」

「そして、Mが逃げ出したあとは、ピースマークを使って、その所在を追った」

「Mが持っていた認識票に仕込んだ発信機を頼りに……」

「グラナードたちを使って……」


 レディ・レディやドク、サトリもMの足跡を思い返す。それは6年しか生きていない少女が辿るにはあまりに過酷な足跡。その原因であるマシューを憎み、恨むことは当然。


「わたしは……」


 Mがゆっくりとハクバを含めた周囲の人間を見渡す。


「わたしは、マシューというひとをしりません。確かに、そのひとのせいでつらい目にもあいました。でも……」


 皆がMの言葉を聞いている。


「ミスターやレディ、サトリやドクと出会うことができました。すてきなみんなに」

「M……」

「だから、わたしは復讐をのぞみません。おとなのみなさんにゆだねます」

「わかった。その依頼、確かに引き受けた」


 Mの小さな手をハクバの大きな手が優しく包み込んだ。

ⒸSUNRISE/PROJECT L-GEASS Character Design Ⓒ2006-2017 CLAMP・ST

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