【コードギアス 新潔のアルマリア】ep19「新しい名前をつけてほしいです」
2026.07.10『コードギアス 奪還のロゼ』へと続く物語
『コードギアス 復活のルルーシュ』と『奪還のロゼ』をつなぐ『コードギアス』の新たなるストーリー『新潔のアルマリア』。マリアンヌ・ヴィ・ブリタニアの遺伝子的クローン人間だと自らの出自を明かすMだが、ハクバたちは彼女を優しく受け入れる。一方、黒の騎士団の追っ手を逃れたマシューは、神楽耶とハクバたちへの報復の準備を進める……。
STAFF
シナリオ 長月文弥
キャラクターデザイン 岩村あおい(サンライズ作画塾)
ナイトメアフレームデザイン アストレイズ
モデル製作 おれんぢえびす、コジマ大隊長
撮影協力 BANDAI SPIRITS コレクター事業部
ep.019|『新しい名前をつけてほしいです』
「わたしは、マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア。その人の遺伝子的クローン人間です」
いくつもの「M-01」と記された調整槽の前で、Mは自分が何者であるか、その事実を確かめるに至った。幼い顔には何の感情も浮かんでいない。
「マリアンヌは、ブリタニア98代皇帝シャルルの皇妃の1人。悪逆皇帝と言われたルルーシュの母おやです。その人の遺伝子をもちいて作られたのが、わたしという人間です」
そう言いつつ、俯くM。
「いえ、人間ではありませんね」
ハクバたちから逸らした顔には、初めて陰りが見える。そんなMの前に屈んだハクバは自分の本心がきっちりと伝わるように、Mの瞳を真っ直ぐ見据えた。
「人間だろう。出自がどうであろうと、この世に生を受けた時点でMは人間だ。他の誰とも変わりはしない」
「ミスター……」
「ここにいる他の奴らだって同じように考えてるさ。なあ?」
水を向けられたドクたちの誰もMに奇異な目を向けてなどいない。
「うん。驚いたのは驚いたけど、それはMの出自というよりは、リューネベルクがクローン研究を行っていたほうだしね」
「ってか、クローンとかそうじゃないとか、あんまし関係ないよ。私たちのチームだって人種も性別も年齢もみんなバラバラだもん。ハクバなんてひとりオッサンだし」
「オッサンなのは事実だけど言葉を選んでくれ。格好がつかないだろう?」
「あら? あなたも格好なんて気にするのね、エージェント新月」
サトリの隣にいたレディ・レディが苦笑する。
「どうも女性陣は手厳しいな。とはいえ、みんな君のことを奇異な目でなんて見ていない。君は君だ、M。たとえ、遺伝子が誰かのものだったとしても、自分の出自を確かめるために、こんなところまで来た勇気あるレディは君という人間なんだ。悔やむことも、恥じることも、悩むことも必要ない」
「ミスター!」
その言葉を聞いて、思わず抱きつくM。その瞳からは大粒の涙がとめどなく溢れている。言葉にならないMの嗚咽をハクバはすべて受け止めていた。
「M、君は君の本質がここにあると言った。その本質は見つかったのかい?」
「わかりません……。ミスターたちにはなすまでは確かにクローンであることが、わたしの本質だとおもっていました。でも、ミスターがクローンであることは関係ないといってくれて、わからなくなりました。わたしは……、わたしの本質は……」
「わからなくていいんだよ」
「えっ……?」
「Mはまだ6歳だ。たった6年しか生きていないのに、自分の本質が何であるかなんて知らなくて当然なんだよ」
「そうそう。僕たちだって自分が何者か、なんてハッキリはわからない」
「でも、その分、可能性があるの。私たちは何にだってなれる!」
「ふふっ。ポジティブね、サトリは」
「それが私の長所だもん」
ドク、サトリ、レディ・レディもMがMであることを肯定する。
「いいんでしょうか? わたしがわたしとして生きていても」
「あたりまえだろう。君はこの世に生を受けた。なら、生きる権利を持っている。そして、その権利を守るのが俺たち大人の役目だ」
「ありがとうございます、ミスター」
「ようやく笑ってくれた。これなら前へ進めそうだな」
「前へ? それはどういう意味でしょうか?」
「ああ。M、君はこれから1つ、決断しなければならない」
「それは、何を……?」
「マシューの処遇についてだ」
「マシュー・ブラキストンの?」
「君はマシューから被害を受けた。だから、マシューに対して処遇を決める権利がある。選択肢は2つ」
ハクバが人差し指を立てる。
「1つは、マシューへの復讐。ここにいる俺たちは警察じゃない。君がマシューへの復讐を望むなら手を貸すこともできる」
「復讐……」
ハクバがもう一本、指を立てる。
「もう1つは、マシューの処遇を黒の騎士団や警察、司法に委ねること」
「わたし以外の誰かにマシューへの制裁をゆだねるということですね?」
「そうだ。マシューは幼い君を連れ去り、マカオの金羊館で育てようとした。M、君としてではなく、おそらくマリアンヌとして育てようとしたのだろう。だから、多くの知識を与え、マリアンヌであるよう振る舞うことを強いた」
「そして、Mが逃げ出したあとは、ピースマークを使って、その所在を追った」
「Mが持っていた認識票に仕込んだ発信機を頼りに……」
「グラナードたちを使って……」
レディ・レディやドク、サトリもMの足跡を思い返す。それは6年しか生きていない少女が辿るにはあまりに過酷な足跡。その原因であるマシューを憎み、恨むことは当然。
「わたしは……」
Mがゆっくりとハクバを含めた周囲の人間を見渡す。
「わたしは、マシューというひとをしりません。確かに、そのひとのせいでつらい目にもあいました。でも……」
皆がMの言葉を聞いている。
「ミスターやレディ、サトリやドクと出会うことができました。すてきなみんなに」
「M……」
「だから、わたしは復讐をのぞみません。おとなのみなさんにゆだねます」
「わかった。その依頼、確かに引き受けた」
Mの小さな手をハクバの大きな手が優しく包み込んだ。
ⒸSUNRISE/PROJECT L-GEASS Character Design Ⓒ2006-2017 CLAMP・ST













