【ARTPLA キングギドラ発売記念連載】ARTPLA怪獣シリーズ、次なる挑戦【第3回】
2026.09.25生物造形の第一人者である松村しのぶが原型制作を手掛け、インジェクションプラスチックキットによる怪獣の立体表現の限界に挑み、そのインパクトで話題のARTPLA SCULPTURE WORKSの最新作「キングギドラRe:イマジネーション」。
先ごろ発売され話題となっている中、海洋堂の怪獣造形の魅力に迫る短期集中連載の第3回となる最終回は、キングギドラの先にあるARTPLA怪獣シリーズの未来について深掘りしていく。
松村しのぶが推した『ガメラ3』のARTPLA化
海洋堂のARTPLA怪獣シリーズのキングギドラに続くラインナップは、2026年5月の第64回静岡ホビーショーで発表された。シリーズ第3弾アイテムは『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』からガメラ、第4弾アイテムは『メカゴジラの逆襲』からメカゴジラ。
初代ゴジラ、キングギドラと続いてきた中で、『ガメラ3』は初の東宝特撮作品以外からの怪獣シリーズとなっている。このラインナップに関しては、原型を担当している松村しのぶからの提案によるものだった。開発担当の塩入翼は、ラインナップの決定に関してこう振り返る。
「松村さんと打ち合わせをして、「怪獣シリーズの次は何をやりましょうか?」という話をするとわりと早いうちから「『ガメラ3』のガメラはどう?」という提案があったんです。松村さんは造形だけではなく、絵も描かれる方なので、ARTPLAで商品化の企画を進めるにあたってアイテムのポージングや台座を含めた構成に関しては、「こんなイメージで」とイメージラフを描いてもらっているんです。流れとしては、それを元に版権元様に申請して、OKが出たら原型の制作がスタートするというのが基本なんですが、今回のガメラに関してはラフデザインをいただく前の段階ですでに試作原型を作りはじめていました。
それくらい、松村さんが実現したがっていた企画なんです。
ただ、そんな話をしていた同時期にエクスプラスさんですでに平成ガメラ関連のアイテムが進んでいたのもあって、(いずれも貼り箱に入っているゴージャスさと素晴らしい商品展開!)少しだけタイミングをずらすようにしました。他社さんからすでにインジェクションキットがでている怪獣ということもあって、ちょっと不安なところもあったんですが、実際にホビーショーで発表になるともの凄い反応がありまして。それは、松村さんの造形というかヴィネット全体の絵力の強さが皆さんに伝わった結果だと思いますね。そういう意味では、ガメラはいい選択だったと思っています」
『ガメラ3』の撮影見学で得た衝撃を造形に込める
松村は、1999年の『ガメラ3』公開当時、海洋堂が発売したガメラと敵怪獣イリスのアクションフィギュアの原型制作を担当。その造形の参考のために、撮影現場の取材に行った経験があり、そこで感じた思いを今回のガメラの造形に盛り込んでいるという。
「結果的に第3弾アイテムになりましたが、原型はわりと早めに手を付けていましたね。ガメラに関しては、『ガメラ3』の撮影現場に行った時、着ぐるみの現物が動いているところを見せてもらったんですが、本物の着ぐるみは人が入って動くと分割されている甲羅がガチャガチャと動いて「凄いな」と思ったんです。身体を前傾させると、甲羅が逆立つような動きをしていて、それが格好良かった。造形的なことを言うと、平成ガメラの1作目と2作目には「優しいな」というような印象を持っていたのですが、『ガメラ3』では、甲羅はシャープ且つ横から見ると翼断面みたいな形状になっていて「空を飛ぶ怪獣」という説得力もあって。そういう感じを出したガメラの造形を作りたいと思ったんです」
そうした松村のガメラ造形への思いがARTPLAに込められ、シリーズ第3弾アイテムとして実現する形となった。怪獣シリーズのフォーマットでもある「情景を描く」という部分で選ばれたシチュエーションは、『ガメラ3』冒頭において渋谷を舞台に展開されるギャオスハイパーとの激闘シーンだった。
「『ガメラ3』の映像の中で、僕は渋谷での戦いが凄いと思ったんです。渋谷の場面は怪獣ファンみんなが好きなシーンで、僕も同じく、この渋谷のシーンが一番だと思っています。特に傷ついたギャオスにトドメの火球を喰らわせるところは印象深いので、そこを立体として表現したいなと。ベースを含めてもちろん制約が出るだろうと思っていたんですが、ギャオスは地面にベタっと倒れているから、パーツ数もそんなに多くならないだろうと思ったので、これは行けると感じて提案させてもらいました。
塩入君の話にもありましたが、提案した時にはすでにわりと造形が進んでいて、スケッチではなく途中まで進めている原型のスクリーンショットをプレゼン用に送りました。その頃には僕の中ではほぼイメージが固まっていて、建物とかの位置関係などを詰めていった感じですね。
シーンとしては、渋谷駅のあたりに着地して、建物の床が落ちていくところがインパクトがあるので、その感じを少しでも伝えたくて、壊れたビルは1990年代の渋谷の雰囲気を少しでも出せればと思って作っています。情景としては、平成ガメラの特撮の密度感を彷彿とさせる雰囲気という感じですね。
『ガメラ3』のガメラは派手にポーズをとるようなキャラクターでもないのでそんなに動きはないですが、劇中では巨大な火球を吐くのが印象的なので、それを再現することができるエフェクトパーツも付けてみました」
松村がお気に入りのシーンを表現すべく作り込んだ造形。開発担当の塩入は、このガメラを含めた情景をどのような意識で製品化していったのか? その思いは細分化されたパーツ分割に現れている。
「松村さんの造形をどのような過程を踏まえて完成形へと持っていく体験をしてもらうかというところの試行錯誤の中で、特に甲羅の縁にあたる部分はいろいろと悩みましたね。
パーツ数を少なくしつつ、縁の筋張っている造形に面白みがあるので綺麗に出したい。そこでいろいろと分割方法を試してみました。最終的に組み立ての手間は増えてしまうんですが、ディテールは損なわず縁の筋を再現できるように別パーツ化する方向を選びました。
組み様で言えば本体のお腹と背中は大きいパーツで構成してありますし、手足も気持ち良く組んでいけると思います。その一方で、甲羅はもの凄く細かい。結果的には、作業工程は増えてしまうんですが、苦労して作ってもらえればその苦労に見合った凄いものができあがると思います」
初代ゴジラやキングギドラとはひと味違う、巨大な甲羅を持つガメラの存在感を味わうことができるキットとなっている。

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