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『重戦機エルガイム』「バルブド」をキットの良好なパーツ形状を最大限に活かしながら製作【サンライズ・メカニック列伝】

2022.03.17

サンライズ・メカニック列伝 第39回 バルブド【BANDAI SPIRITS 1/144】 月刊ホビージャパン2022年4月号(2月25日発売)

『重戦機エルガイム』「バルブド」をキットの良好なパーツ形状を最大限に活かしながら製作【サンライズ・メカニック列伝】

 サンライズ作品に登場する数多のメカを模型作例で再現し、改めてその魅力を探る連載企画「サンライズ・メカニック列伝」。今回は『重戦機エルガイム』より、ヘビーメタル(HM)「バルブド」の1/144作例をお届けしよう!
 バルブドはポセイダルの近衛師団によって開発が行われた地上・宇宙両用のB級HMである。A級HMと比べ材料の質で劣るはずのB級HMでありながら、本機はA級に匹敵する高い性能を有している。エルガイム級の強力なパワーランチャーが使用可能で、劇中ではポセイダル13人衆のチャイ・チャーとギャブレット・ギャブレーが緑色に塗装された機体に搭乗し、いずれもファンの記憶に残る戦いぶりを見せている。
 作例は田仲正樹が私物を4セット投入して製作。キットの良好なパーツ形状を最大限に活かしながら全身のバランス調整と可動部の刷新を行い、「当時キット製作の参考になる作例」とすることを目標に製作している。

製作途中状態

 キットは良好なフォルムと、38年前の製品としては充分にシャープなモールドが嬉しい秀作。ただ2022年現在の目で見ると、さすがに古い可動機構によってポーズが硬くなってしまう点と、ややスマートさに欠けるフォルムが気になる。作例はキットのパーツ形状を可能な限り活かしながら可動部の刷新とフォルムの調整を行い、より自然な立ちポーズで飾ることを主目的として製作したもの。改造箇所が比較的絞り込まれており、キットの素性の良さもあって(普段よりは)真似のしやすい作例となっている。キットをお持ちの読者諸氏にはぜひ本記事を参考に、バルブド製作に挑戦していただきたい

頭部

 基本的な形状はほぼキットのまま。キットは頭部を横に傾ける動きしかできないので、部品18をボールジョイントの受けに交換し、あごを引く・上を見る動きができるようにした。また、首を延長したのに伴い、襟もプラ材を貼り足して大型化している。「顔の横のパイプを胴体と繋げたくなりますが、頭の可動範囲がかなり制限されてしまうのでキットのままにしておいたほうが無難です」とは田仲氏の弁

胴体

 胸部、腰部、背部ブースターの3つに分割。首周り、肩関節、腰関節、股関節を30MINUTES MISSIONS(以下30MM)アルトの各可動部と交換して可動範囲を拡大させている。胸部側面の蛇腹状のモールドはHGリック・ディアスの同位置の部品に交換し、胸部全体の形状を設定画に近付けた。腹部はプラ材で延長。腰部前面の装甲は中央で分割して横幅を詰めている。背部ブースターは各ノズル内を市販パーツなどでデコレート。ポージングの際に左右アーム状のノズルが破損しないよう、本体はネオジム磁石で接続し、着脱を容易にしている

腕部/武装

 腕の基本形状はキットのまま、各関節に30MMアルトの可動部を移植し、後ハメ化しつつ保持力を上げた。肩装甲はエポパテで裏面をふさぎ、部品5~8の可動軸をポリランナーに交換。パワー伝導パイプはスプリングに交換し、上腕がロールできるようにパイプの位置を変更した。キットの指は設定画の先端が鋭いものとは異なるが、田仲氏曰く「このような形に描かれているカットもある」とのことで、1本ずつ切り離し、表情を付けながらHGガンダム(No.191)の手のひらに移植して使用。他にも指が細めで丸指の手を用意した。パワーランチャーはネオジム磁石で前腕と接続。強い力がかかると外れて作例の破損を防ぐよう配慮した。作例ではランチャー後部にパイプを繋ぎ、「本体のパワーを直接供給して強力なランチャーを稼動させている」という表現にアレンジ。砲口は市販のボルトパーツでディテールアップした。セイバーはHGガルバルディβのビーム・サーベルを加工した発振部とクリアーピンクの刃を用意し大型化。「15話のチャイ・チャー機のセイバーの刃はなぜか反乱軍側と同じ黄色ですが、これを再現しても面白いと思います」とのこと

脚部

 太モモは股関節の球体周辺と後面の面構成をエポパテで変更。ヒザ装甲と足首前面の装甲はいったん切り取り、スネ下部のボリュームアップをした後に再接着している。ヒザ関節は設定画形状に直すと完成しない、と考えHG(FC)シャイニングガンダムのものを移植し後ハメ化。「パイプの干渉で可動範囲が狭いので、キットパーツのまま固定しても良いと思います」とのこと。ふくらはぎはエポパテで面構成を変更。足首関節はアルトのものを移植しボールジョイント化。つま先は先端にプラ板を貼ってシャープ化し、かかとと靴左右のブロックは裏の隙間を埋めている。スタビライザーは「100人中100人が展開させた状態で飾るはず」ということで展開状態で固定した

■3機作りたい
 チャイ・チャー機がエルガイムに撃たれるカットを見て動体視力を鍛えているサンライズメカファンのみなさんは、「1/144バル・ブド」の出来の良さをご存知のはず。B級HMキットはどれも秀作ですが、バル・ブドは各部のシャープなモールドが心地良く、腕が胴体からやや離れた独特のフォルムも見事に再現されたシリーズトップクラスの好キットです。となれば、作例はキットを最大限に活かし、なるべく簡単に3機(3色)完成させられるようなものとするべきでしょう。
 まずは立ち姿をより自然にするため、関節を近年のキットのものに置き換えます。特に頭部は「あれっ?」(←「潮来笠」のものまね)という動きしかできないので、首のボールジョイント化は必須です。作例は全身の関節を30MMアルト1機分の可動部に交換。ヒザのみHGガンプラの関節を移植していますが、ここは立ちポーズに限定するならキットのまま固定しても良いでしょう。部品29(31)の固定位置を後退させ、太モモがスネに対してもう少し前に出るようにしておくと、立ちポーズを決めやすくなります。
 加えて、首、腰関節、股関節、足首関節の位置を調整して、全体のフォルムを少しだけ縦長にします。個々の部位にプラ板を挟み込んで…とやっていると完成しなくなるので、股関節の軸位置や足首関節の高さなど、調整しやすいところで長さを変えるわけです。完成しなくなるといえば、頭部と襟の別パーツ化、フェイス両脇のパイプを胴体に繫ぐ、背部ブースターのアームにスリットを彫る、脚部の面構成を設定画通りに変更、指を設定画通りの形状で自作、などの工作もその一因となります。いずれも想像以上に難しいのでやめておいた方が無難でしょう。…と、こうして作ったものを横に置いて見ながらもうひとつ作った2機目が、今回掲載されている作例です。参考になりそうな作り方をした作例を参考にした作例なので、参考にしやすいと思います(?)。

■13人衆カラーなのかしら
 一迅社刊「重戦機エルガイム ヘビーメタル完全設定資料集」掲載の劇中画像を参考に、チャイ・チャーとギャブレーが使った機体の色に塗装。本編映像(レーザーディスク)をコマ送りして塗り分け方を確認しましたが、カットごとに少しずつ異なっています。特に背部については個人の好みで塗り分けて良いと思います。
本体緑=純色グリーン+インディーブルーにハーマンレッド、純色バイオレット、コバルトブルー、ウイノーブラックを各少量
関節=自作の赤紫系グレー
胸部等=クールホワイトにビビッドオレンジ、本体緑、関節の色を各少量
顔=クールホワイトに本体緑と関節の色を各少量
赤=ハーマンレッドにピンク少量、本体緑微量
パワーランチャー=自作の紫系グレー
 ノズル内は黒の下地に焼鉄色。パワー伝導パイプの赤茶色はグレーサーフェイサーの下地にシャインレッド。劇中では肩ブロック内の蛇腹状の部分もパイプの色で塗られていますが、ここはムーバブル・フレームと解釈してグレーにしました。キットの塗装説明図ではツヤ消し仕上げが推奨されていますが、作例は半光沢とツヤ消しを混ぜたクリアーで塗膜をコートしています。
 次回は真っ黒なメカの作例でお会いしましょう。

BANDAI SPIRITS 1/144スケール プラスチックキット

重戦機(ライトタイプ) バル・ブド

製作・文/田仲正樹

©創通・サンライズ

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田仲正樹(タナカマサキ)

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