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中国・長春で開催されたホビーイベントに行ってみた! 取材レポート&中国メーカー担当者と主催者インタビューから「中国プラモシーンの今」を見る

2026.07.01

NORTHEAST ASIA DIGITAL CULTUAL&HOBBY ART EXPO アフターレポート 月刊ホビージャパン2026年8月号(6月25日発売)

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中国プラモ市場に何が起きているのか。
メーカー担当者に聞いた

 今回、各メーカーブースで開発や営業担当者に現在の中国プラモ事情を取材。その言葉から見えてきたのは、日本とは異なる独自のプラモ文化だった。

 数年前まで、「中国のプラモメーカー」と聞いて多くの人が思い浮かべたのは、ドラゴン、トランペッター、モンモデルといったスケールモデルメーカーだった。戦車、艦船、航空機──。彼らは中国模型シーンを語るうえで欠かせない存在であり、現在もスケールモデルシーンを支えている。しかし、今中国ホビーシーンの景色は大きく変わっている。今回のような大型ホビーイベントで、会場の中心に立っているのは「キャラクタープラモ」だ。巨大ロボット、美少女メカ、オリジナルSFデザイン。会場を歩けば、そこかしこで“中国発オリジナルキャラクタープラモ”が視界に飛び込んでくる。
 なぜ、ここまでキャラクタープラモが盛り上がっているのか。メーカー担当者によれば、その原動力となっているのは、現在の中国ホビー業界を支える30〜40代のクリエイターたちだという。メーカーの開発者、原型師、デザイナー──。今送り手となっている世代が少年時代に触れたキャラクタープラモは、ほぼ「ガンプラ」だったのだ。
 彼らはガンプラを通して、「ロボットを組み立てる楽しさ」「自分だけの色で仕上げる面白さ」「キャラクターとメカが融合した模型体験」に夢中になった。その原体験が、今中国オリジナルキャラクタープラモという巨大なうねりを生み出している。
 もちろん現在でも、中国におけるガンプラ人気は圧倒的だという。しかし同時に、その熱に憧れて育った世代が、自分たちのキャラクタープラモを作り始めた。その流れは、確実に次の若い世代へ届いている。しかも、そのスケール感が凄まじい。
 メーカー担当者によれば、1アイテムで5万個規模の出荷は珍しくないという。しかもそれらは、中国各都市でしっかり消化されていく。
 「5万個ではまだまだ少ないですよ」
 「○○メーカーのあのキットは12万個売れましたからね」
 そんな会話が、あたりまえのように飛び交う。“スケールモデル新興国”としてみられていた中国はもういない。今“オリジナルキャラクタープラモ大国”への道を、とてつもない熱量を生み出してい歩んでいる最中なのだ。

「NBD-009 ローンシャドウ」のクリアーパーツ
▲塗装まで楽しむユーザーが少ないという市場の動向を反映して、塗装済みや特殊コートを施したパーツが多い。こちらは前ページで紹介している和模線の「NBD-009 ローンシャドウ」のクリアーパーツ。見る角度によってさまざまな色に輝く特殊コーティングが施されている

 日本のプラモメーカー各社も、現在はオリジナルロボットやキャラクタープラモを積極的に展開している。しかし、その中心にあるのは、今なおアニメやゲームといった既存IPを原作としたアイテムだ。この点こそ、中国のキャラクタープラモビジネスとの大きな違いと言える。
 「私たちは、必ずしも作品の世界観や重厚なバックグラウンドを求めているわけではありません。大切なのは、メカやキャラクターそのもののデザインです。カッコイイ、カワイイ──そう感じた時点で、自然と欲しくなるんです」
 この言葉こそ、現在の中国キャラクタープラモ市場を象徴している。中国メーカーは、現地ユーザーの感性に刺さるメカやキャラクターデザインを徹底的に研究し、それを猛烈なスピードで商品化していく。「企画、開発、デザイン、工場」まですべてを社内で完結。各セクションが強固に連携し、生まれたアイデアを一気にプラモとして市場へ放り込んでいく。
 その圧倒的な推進力とスピード感は、日本の模型業界とはまた異なる熱気を生み出していた。

「NBD-009 ローンシャドウ」ハンドパーツランナー
▲関節やハンドパーツなどには金属色を塗装。組むだけでよりメカニカルな雰囲気を楽しめる

 各メーカーは、中国キャラクタープラモユーザーの嗜好もダイレクトに反映している。多くのプラモがオリジナルメカ・キャラクターなので、IP作品のように「元デザインのイメージ」に左右されにくいことも大きい。現在の中国ユーザーが好むのは、大型の翼や武装を備えた派手なシルエット。装甲には大量のスジ彫りが刻まれ、パーツは細かく分割される。さらに塗装を前提としないため、美しい成型色や塗装済みパーツも重要視されている。全体的にカラフルで情報量の多いデザインが人気だという。
 また、中国のキャラクタープラモ市場は比較的ライト層が多く、組み立てて飾ることを楽しむユーザーが中心だという。一方で、塗装や改造を徹底的に楽しむ層は、「ガンプラビルダーズワールドカップ」を目指すようなハイレベルなモデラーたちだと話していた。
 完成した模型はSNS「小紅書(レッドノート)」で共有されることが多く、日本メーカーの新商品情報もレッドノート上で盛んに拡散されている。取材時は静岡ホビーショー開催期間中だったこともあり、現地では静岡発の新作情報が猛烈なスピードで共有されていた。

「NBD-009 ローンシャドウ」軟質素材
▲塗装だけでなく、パーツの質感にもこだわる。関節の一部に軟質素材を使用して、広い可動範囲を誇る関節とともに「柔らかい素材によってより柔軟に動いているように見せる」という見掛けの演出まで盛り込んでいる

 「やはりガンダム人気は非常に強いです。幅広い世代に支持されていますし、特に30~40代のモデラーは、ガンプラを通して模型趣味に入った人がとても多いです。しかし、今は中国オリジナルのプラモシリーズが非常に増えています。それらは、中国ユーザーが好むデザイン、ギミック、仕様に徹底的に振り切って作られているんです。そのため若い世代は、最初から中国オリジナルプラキットを手に取り、そこから模型趣味へ入っていくケースも増えています」
 さらに、中国メーカーならではの強みもある。
 「価格面でもガンプラより手に取りやすいものが多いですし、サイズも大きい。中国国内では、価格競争とクオリティ競争が非常に激しく、“そのなかでどう勝つか”を各社が本気で考えています。その競争環境そのものが、中国プラモの強さになっています」
 そして、こんな言葉も飛び出した。
 「若いモデラーのなかには、“ガンプラを作ったことがない”という人もいます」
 もちろん現在も、ガンプラは中国市場で圧倒的な存在感を放っている。しかし、中国オリジナルキャラクタープラモが若年層へ浸透し続けた先には、確実に“もうひとつの模型シーン”が生まれるだろう。中国から生まれた独自の価値観による巨大なキャラクタープラモ文化は、もはや未来の話ではない。その巨大なうねりは、すでに目の前で動き始めている。

「NBD-009 ローンシャドウ」の布製マント
▲こちらは布製のマントパーツ。このようなアクセサリーパーツもキットに同梱されているものが増えてきている

官民一体で動き始めた、中国ホビー&プラモイベント

 中国・長春で開催された模型イベント。その主催を務めたのは、映像制作やIPプロデュース、イベント運営まで手掛ける企業「UKA(長春知行合一動漫)」だ。UKAは、ホビージャパンの中国語翻訳版「模工房」も展開している。今回の取材ではイベント会場だけでなく、UKA本社にも訪問。社長の李氏に、中国ホビー市場の現在地、そして“IPに頼らないプラモビジネス”について話を聞いた。

李岩松(リー・ヤンソン)社長

 2016年にUKAを立ち上げ、そのCEOを務めている。行政とのつながりが深く、大学で講義を行うこともある。

李社長:もともとUKAは動画制作会社なんです。ただ、単なる映像会社ではなく、サプライチェーンもしっかり持っていて、各模型メーカーともかなり早い時期から付き合いがありました。さらに、航空や工業系の仕事にも関わっていたので、工具や立体物に触れる機会が多かったんです。そうした経験を活かして、「今勢いのあるホビー・プラモ市場でイベントをやろう」と考えました。

UKAが入るオフィスビル
▲UKAが入るオフィスビル。デザイン、サイズともに迫力があり圧倒される

李社長:以前、私たちが関わったイベントで、5日間で製作した宇宙戦艦系のオリジナル作品が大きな注目を集めたことがありました。そこで強く感じたのが、「中国ではアニメやゲームが先になくても、ビジネスは成立する」ということです。アニメ制作会社の人間が言うのも不思議かもしれませんが、中国のプラモビジネスでは、必ずしもアニメ作品やゲーム作品のような既存IPが必要ではないんです。

李社長:ぜひ今回の記事で書いてほしいんですが、中国にはまだまだ“舞台”が残っています。動画を作らなくても、プラモビジネスが成立する。日本の常識とは違う商売のやり方が、まだたくさんあるんです。そして日本には、優れたメカ&キャラクターデザイナー、クリエイター、モデラーが本当に多い。そこに私は大きな可能性を感じています。日本は、今でも“IPありき”な部分が強いですよね。アニメ化やゲーム化、コミック展開がないと広がりにくい。でも中国は違います。背景設定がなくても、立体物として魅力があれば、多くの人が手に取る。さらに、中国人は購買欲が強いので、待たないし待てないんです。だから市場のスピードがとても速い。もし模型化に興味がある日本のクリエイターがいたら、ぜひ私たちに声をかけてほしい。私たちには、その作品を広げる“舞台”を用意する力があります。

李社長:行政との関係、業界で培った信頼、経験。私たちにはさまざまなリソースがあります。だから良いデザインがあれば、まず立体物として世に出して、そのあとから世界観を肉付けしていくこともできる。もしキット化したいなら、今回出展しているメーカーとも連携できます。今の中国は、まだ“春秋戦国時代”みたいな群雄割拠の状態なんです。だから今なら参入できる。でも市場のスピードが速いので、来年以降には勢力図が固まってしまうかもしれない。日本のような状況になる可能性もあります。日本ではロボットジャンルへ新規参入するのはかなり難しいですよね。だから日本のクリエイターには、完成品ではなく、イラスト段階から持ってきてほしいんです。イラストから圧倒的スピードで立体化することが可能です。私の仕事は、まだ流行っていないもの、知られていないものを広めることです。まさに、メディアのような仕事とも言えますね。

李社長:これは行政側からの要請でもあるんですが、「スマホを触るより、プラモを作ろう」というスローガンがあります。
中国では、子供たちのスマホ依存が大きな問題になっています。だからこそ、「模型を作ろう」というテーマが重要視されているんです。今回のイベントもブックフェアが併催されていて、青少年向けの教育書籍なども並べていました。これも「スマホより本を」というテーマがあり、私たちのイベントとつながっています。

「NORTHEAST ASIA DIGITAL CULTURAL & HOBBY ART EXPO AFTER REPORT」学生も招待
▲イベントに学生も招待。多数の学生が会場を訪れ、展示とともにイベント内で行われていたスタンプラリーなども楽しんでいた

李社長:今回のイベントの特徴は、「本当に模型を欲しがっている人」をピンポイントで呼び込めていることです。中国のSNSやコミュニティデータを活用して、“欲しい人”へ直接情報を届けています。普通の展示会だと、100人来ても10人しか商品を買わないことも多い。でも今回のイベントでは、100人来たら30~40人が購入しています。購買意欲がかなり強いんです。中国のインターネットは、ターゲティング精度が非常に高い。模型コミュニティやグループデータも豊富なので、欲しい人へしっかり情報を届けられる。そこが強みですね。中国の模型市場は、まだ完成された世界ではありません。だからこそ、今はとても面白い時期なんです。まだ知られていないデザイン、まだ形になっていないアイデアにも、大きな可能性がある。中国には、それを受け止め、立体物として世に送り出せる“舞台”があります。そして今回のイベントで、もうひとつ強く感じたのは、「プラモを作りたい」と思っている若い世代が、確実に増えていることです。スマホを触る時間を、少しだけでも“手を動かして何かを作る時間”へ変えていく。そのきっかけとして、プラモにはまだまだ大きな力があると思っています。だからこそ、これからも中国の模型文化を盛り上げていきたいですね。


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