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ノモ研 「テープ、フィルム材の活用」【野本憲一モデリング研究所】

2021.11.03

野本憲一モデリング研究所 月刊ホビージャパン2021年12月号(10月25日発売)

ノモ研 「テープ、フィルム材の活用」【野本憲一モデリング研究所】

 今回は輝きや独自の質感を表現できる“テープやフィルム”素材を取り上げる。パーツ表面に貼るので原理は単純だが、素材が活きるような使い方や、貼り込みには注意すべき点がある。用途としては表面に広く使うことは少なく、限られたポイントに塗装やデカールとも違った表現が加わる、といった活かし方になるだろう。

製作・解説/野本憲一


極薄な貼り付け素材

 特徴的な質感を持ちつつ、薄いことでパーツ間や表面に取り入れやすい素材。手軽なテープ類と、凝った使い方ができる粘着フィルムなどがある。

アルミ蒸着シール(テープ)
▲メッキのような輝き、アルミ蒸着シール(テープ)。セメダインの“ラピー”やニチバンの“マイラップ”などがお馴染みで、文具、装飾用として入手もしやすい。便宜上ここでは“メタリックテープ”と呼ぶことにする
ハセガワ “フィニッシュ”シリーズ
▲ハセガワから発売されているの“フィニッシュ”シリーズ。厚みは0.05mmと極薄な粘着フィルムで、曲面にも柔軟に追従するのが大きな特徴。単色や金属調など汎用的なものから、模様付きや偏光タイプなど特定の用途向けなど種類が豊富

ノリ付きアルミ箔

MSS-04 GSRクロームマスター

これもメッキや金属感を表現する素材として古くからあるが、今や店頭では入手難。「MSS-04 GSRクロームマスター」は同社オンラインショップから購入可能(執筆時点)で「在庫がなくなり次第販売終了」とのこと

多彩なフィニッシュシリーズ

 種類が豊富なので、質感や効果別に主なラインナップを紹介。サイズはいずれも90×200mm。価格は660〜1540円。

ミラーフィニッシュ
▲映り込みするミラータイプ。左から「TF1 ミラーフィニッシュ」「TF5 ゴールドミラーフィニッシュ」「TF8 カッパーミラーフィニッシュ」。これら曲面追従タイプのほかに、フィルムが若干厚めで平面貼り向けの「TF927 鏡面用フィニッシュ」もある
(ミラーフィニッシュ) (ゴールドミラーフィニッシュ) (カッパーミラーフィニッシュ) (鏡面用フィニッシュ)
ツヤを抑えた金属色
▲ツヤを抑えた金属色。左から「TF2 ジュラルミン フィニッシュ」「TF3 チタン フィニッシュ」「TF942 シルバーフィニッシュ」「TF943 ステンレスフィニッシュ」。シルバーのみ「半ミラー」で、他はツヤ消し。他に「TF935 ゴールドフィニッシュ」もある
(ジュラルミン フィニッシュ) (チタン フィニッシュ) (ゴールドフィニッシュ)
メタルフィニッシュ
▲同じくツヤを抑えた金属色。左から「TF922 ガンメタルフィニッシュ(ダーク)」「TF923 ガンメタルフィニッシュ (ライト)」。写真では単色に見えそうだったので、サンプルはメッキパイプを反射させている
ソリッドの単色
▲ソリッドの単色。左から「TF4 つや消し黒フィニッシュ」「TF11 ホワイトフィニッシュ」「TF13 橙黄色フィニッシュ」「TF12 赤色フィニッシュ」。黒以外は表面が半ツヤで、裏面がホワイト。橙黄色、赤色は大戦中の日本機に合わせた色調(つや消し黒フィニッシュ) (ホワイトフィニッシュ) (赤色フィニッシュ)
蛍光色のシート
▲蛍光色のシート。左から「TF6 蛍光オレンジフィニッシュ」「TF7 蛍光イエローフィニッシュ」「TF910 蛍光レッドフィニッシュ」。オレンジ、イエローの表面は半ツヤ。レッドはツヤ消しとなっている(蛍光オレンジフィニッシュ)
原色系のクリアーカラー
▲原色系のクリアーカラー。左から「TF20 クリアーグリーンフィニッシュ」「TF21 クリアーブルーフィニッシュ」「TF22 クリアーレッドフィニッシュ」「TF23 クリアーオレンジフィニッシュ」「TF939 クリアーイエローフィニッシュ」。灯火類の色に使いやすい。台紙を剥がした箇所が実際の色(クリアーグリーンフィニッシュ) (クリアーブルーフィニッシュ) (クリアーレッドフィニッシュ) (クリアーオレンジフィニッシュ) (クリアーイエローフィニッシュ)
スモーク系のクリアーカラー
▲スモーク系のクリアーカラー。左から「TF914 クリアーブラウンフィニッシュ」「TF913 クリアーガラスフィニッシュ」「TF915 クリアースモークフィニッシュ」。コーティングされたガラスの再現や、塗装面に濃淡や色味を加えるのにも利用できる(クリアースモークフィニッシュ)
カーボンフィニッシュ
▲カーボンファイバーの編み目が印刷されたシート。左から「TF9 カーボンフィニッシュ20(細目)」「TF10 カーボンフィニッシュ12(粗目)」「TF940 ドライカーボンフィニッシュ(細目)」。数字はスケールと考えると分かりやすい。「ドライ〜」はツヤがないタイプで(粗目)もある(カーボンフィニッシュ20(細目)) (カーボンフィニッシュ12(粗目))
こだわりのカーボン系
▲さらにこだわりのカーボン系4種。左から「TF16 カーボンケブラーフィニッシュ(平織)」「TF17 カーボンケブラーフィニッシュ(朱子織)」「TF19 シルバーカーボンフィニッシュ12(粗目)」「TF18 シルバーカーボンフィニッシュ20(細目)」(カーボンケブラーフィニッシュ(平織)) (カーボンケブラーフィニッシュ(朱子織 ) (シルバーカーボンフィニッシュ12(粗目)) (シルバーカーボンフィニッシュ20(細目))
滑り止め模様
▲カーモデルの装飾やディオラマ用途に便利な滑り止め模様(立体ではない)。左から「TF932 縞板フィニッシュ A (ステンレス)」「TF933 縞板フィニッシュ B (ステンレス)」。スケールは1/20〜24ほどで、他にミラー表面もある。また1/32スケールに適した「(ステンレス)S」では「ウロコ研磨」模様も加わる(縞板フィニッシュ A (ステンレス)) ( 縞板フィニッシュ B (ステンレス))
ホログラムフィニッシュ
▲見る角度によって表面が虹色状に輝くもので、特定の用途というよりも、この効果を活かす演出向けに近い。左の「TF14 ホログラムフィニッシュ」は金属調で不透明。右の「TF15 透明ホログラムフィニッシュ」はフィルムは透明で、透けた色に輝きが重なる(ホログラムフィニッシュ) (透明ホログラムフィニッシュ)
パールフィニッシュ
▲左は「TF901 偏光フィニッシュ コバルトブルー〜イエロー」。暗い面の上ではコバルトブルーに、明るい面では「イエロー」に輝く偏光シート。センサー類や太陽電池などの表現に向く。右は「TF904 パールフィニッシュ(細粒)」「TF905 パールフィニッシュ(大粒)」。マイカを施した光沢シートで、粒子感や輝きを重ねることができる(偏光フィニッシュ コバルトブルー〜イエロー)
艦船向け
▲上は艦船向けで「TF920 リノリウムフィニッシュ350」「TF921 リノリウムフィニッシュ700」。数字は対応スケールで350が幅広。甲板色とは別に金具の金色ラインも入っている。下は木目表面。左から「TF944 木目フィニッシュ(メイプル)」「TF945 同(ウォールナット)」「TF946 同(チーク)」
“遮光用の半透明のボカシ”を再現するもの
▲自動車のウィンドウ上辺にみられる“遮光用の半透明のボカシ”を再現するもの。写真の「TF930 トップシェードフィニッシュ(グリーン)」の他、「TF929 同(ブルー)」「TF931 同(スモーク)もある(トップシェードフィニッシュ(グリーン)) (トップシェードフィニッシュ(スモーク))

“フィニッシュ”フィルムの特徴

 フィニッシュシリーズ共通の特性と、貼る前の注意点。

台紙から剥がしたフィルム
▲台紙から剥がしたフィルム。柔軟性と粘着力があるので、余分なところにつけて剥がすとフィルムが伸びたり、シワになりやすい。ビンセットや指で摘まむ際の注意はこの後のCHECK POINTを参照
球面のパーツに貼った例
▲球面のパーツに貼った例。左はそのまま重ねたもので表面に馴染みきらない。右はフィルムを引っ張るように伸ばしつつ貼ったもので、シワなく密着している。この追従性の良さが大きな特徴
事前にチェックし取り除いておく
▲貼り付け面にホコリや汚れがあるとフィルム越しに浮き出て、目立ってしまうことがある。事前にチェックし取り除いておくようにする

水貼りの準備

水貼りの準備

一時的に粘着力を弱めたり、気泡が入るのを防ぐための“水”を用意する。そこには中性洗剤を極少量足しておく。フィルムを指で摘まんだり、ピンセットで掴む際にもこれで濡らしておくと付きすぎが防げる

平面的な貼り付け

 貼り方の基本も兼ねて、パネル面で質感を変える例で手順を追っていこう。

“チタン”や“ジュラルミン”を貼った例
▲パネル単位で色味を変えるため“チタン”や“ジュラルミン”を貼った例。下地のシルバー塗装との粒子感の違いもみられる。このシルバーはMr.カラーの8番で、フィルムの余白を剥がす影響を考えてクリアーを重ねている(Mr.カラー シルバー)
フィルムは糊面を水に浸し、粘着力を弱めてからパーツ上に置く
▲手頃な大きさに切り出したフィルムは糊面を水に浸し、粘着力を弱めてからパーツ上に置く。直接貼ってしまうと位置の調整がしづらく、濡らすことはフィルムの下に空気が入るのを防ぐことにもなる
中心から外に向けて押さえながら表面に馴染ませる
▲位置が決まったら中心から外に向けて押さえながら表面に馴染ませる。ここではフィルムに傷を付けないよう、濡らした綿棒を転がすようにしている。水分が押し出されると粘着力が回復する
爪楊枝の先端で、周辺のモールドをなぞっていく
▲ホコリや空気が入らずに概ね密着している。次に切り分けるところをハッキリさせつつ密着させるため、爪楊枝の先端(先を斜めに切って濡らしたもの)で、周辺のモールドをなぞっていく
モールドに沿ってナイフ等で切り込みを入れる
▲モールドに沿ってナイフ等で切り込みを入れる。切れ味が鈍かったり欠けがあるとフィルムが刃先に引っかかり、千切れることもあるので、良い状態の刃を使う
切り分けた余白を剥がす
▲切り分けた余白を剥がす。クランクしている箇所では残すほうに千切れたりしないように注意。粘着力は強いが、糊が残るようなことはない
ニードルの先で慎重に押さえるようになぞり、フィルムがスジ彫りに沿って凹むようにしている
▲フィルムを貼った面のスジ彫りへの馴染ませ。ニードルの先で慎重に押さえるようになぞり、フィルムがスジ彫りに沿って凹むようにしている。こうした対処はミゾの太さ次第ではある。小さな円や楕円では切り分けるのは難しい

凸モールドへの貼り付け

 フィルムの伸びる特性を活かして、立体的な箇所に貼ってみる。

メッキバンパーを“ミラー”で仕上げ
▲旧車のメッキバンパーを“ミラー”で仕上げてみる。厚みのある帯状で左右にまで回り込んでいるので、窓枠やモールに施すよりも条件は厳しい。果たして上手くいくか?
フィルムを乗せ、片側に引っ張りつつ横方向に密着させていく
▲バンパーの正面側にフィルムを乗せ、片側に引っ張りつつ横方向に密着させていく。指には先に説明した水分を付けた状態でフィルムが貼り付かないようにしている
さらに横方向に巻き込む
▲さらに横方向に巻き込む。凸の表面側は端までシワなく巻けているが、厚み部分の密着が難しい。アプローチとしては良さそうだが、余白が広いと余計にくっ付いて邪魔になる。引っ張り具合を見極めるためにも、やり直すことに

伸ばしすぎると…

伸ばすのは“張り気味する”程度

伸ばすのは“張り気味する”程度で、極端にすると表面が曇ったり、色味が薄くなってしまうこともある。そして限度を超えると切れてしまう

余白を減らして貼り直したもの
▲余白を減らして貼り直したもの。バンパー表面は概ね良好。ボディとの境界近くの密着はまだ不充分にみえるのでさらに馴染ませる
密着させるため、濡らした爪楊枝の先で少しずつ押さえて馴染ませているところ
▲密着させるため、濡らした爪楊枝の先で少しずつ押さえて馴染ませているところ。鋭いものを使ったり、強く抑えると切れるので、じんわりと抑える感じ
フチに切り込みを入れる
▲余白を切り取るため、フチに切り込みを入れる。パーツ上で切るので、ズレないように慎重に。また二度切りしないで済むよう、スムーズ動かせるように構えよう
仕上がりを表と裏から
▲仕上がりを表と裏から。向かって左側はシワや隅へ密着が甘いところがある。右側はそれぞれ上手くいった状態だ。難易度が高い例だが、やり方次第でこんな形状まで貼れることが分かる

カーボンパターンの貼り込み

 凹凸のある面での手順と模様を揃え、効率良く素材を使う方法。例はカーモデルのボディパーツ。

エンジンフード内にカーボン模様を施した状態
▲エンジンフード内にカーボン模様を施した状態。凹凸面に沿っていること、模様の方向が揃っていることがポイント。デカールの利用も考えられるが、角や開口部の馴染ませにはフィルムが伸びる特性が効果的と考えた
まずは“型紙”を準備
▲まずは“型紙”を準備する。マスキングテープを貼り込みつつ、どの範囲ごとに貼るかを検討。折れや開口部の位置、模様の方向を描き込んでいる
テープを剥がして平らな板に貼る
▲テープを剥がして平らな板に貼る。切り分けが必要な箇所、伸ばしつつ馴染ませるようなところも見当が付いてくる。これをスキャナーで読み取り、PC上でなぞるようにして清書する
切り出す形状を配置した型紙をプリント
▲切り出す形状を配置した型紙をプリント。模様の方向を揃えつつ、効率良く切りぬけるようレイアウトしている。こうした型紙作りはデカールなどの場合も同様だ
先に霧吹きで水分を吹いている
▲この例は作業面が大きめなこともあり、先に霧吹きで水分を吹いている。もちろんフィルムを水に浸すのも行っている。作業中に周囲の塗装面を傷めないよう、ビニールで覆っている
平面部はヘラを使い、中心部から外で撫でていく
▲フィルムを載せ、位置決めしたら水分も押し出す。平面部はヘラを使い、中心部から外で撫でていく。開口部分は引っかけないように注意
凹みや開口部のフチへ馴染ませたところ
▲凹みや開口部のフチへ馴染ませたところ。開口部の切りぬきでは、フチの厚み側に巻き込めるよう少しフィルム面を押さえ込み、その後に切り込むようにしている
別途切り出したシートを貼っている
▲四角い凹みは底の面までつなげて貼るのは無理なので、フチまで切りぬき、別途切り出したシートを貼っている。囲み部分はフィルムの継ぎ目があるが、模様を合わせているので目立ちづらくなっている

その他の効果

 クリアーカラーや偏光など透けるフィルムの効果を見てみよう。

クリアーパーツの着色に“クリアーオレンジ”を使った例
▲クリアーパーツの着色に“クリアーオレンジ”を使った例。塗料だと塗り重ねで濃くなることがあるが、フィルムでは一定の濃度に仕上がる。右は余白を切った仕上がり
金属色の色分けに“スモーク(ブラウン)”を使った例
▲金属色の色分けに“スモーク(ブラウン)”を使った例。十字の部分がそれで、シルバー(塗装)の上に重ねることで金属感を持たせつつ、色味を変えている。隣の細い帯は“カッパーミラー”を使っている
黒塗装に“偏光”を重ねた例
▲黒塗装に“偏光”を重ねた例(戦車のレンジファインダー=測遠機)。青み掛かった反射が生じ、奥行きのあるガラス面の雰囲気となった

マスキングにも便利

マスキングにも便利

フィニッシュシリーズの表面に密着する特性は、塗り分けのマスク材としても有効だ。例は細切りしたものを緩いカーブに利用。整った境界となっている

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野本憲一(ノモトケンイチ)

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