変形を成り立たせるためのデザイン、そして「元のデザインがない」背面を海老川氏はいかに作り上げたか?千値練「GM²I イクスペル」デザインリファイン担当/海老川兼武氏インタビュー【フォーメーションZ】
2026.10.31ハイクオリティアクションフィギュアメーカーの「千値練」が立ち上げたプラキットの新ブランド「GM²I(ジーエムアイ)」。プロデューサーに寺田貴信氏(代表作:『スーパーロボット大戦』シリーズ)、デザインリファインに海老川兼武氏(代表作:『機動戦士ガンダム00』、『フルメタル・パニック!』シリーズ)と柳瀬敬之氏(代表作:『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』、Nintendo Switch『XenobladeX Definitive Edition』)を迎えて往年のゲームメカをリファインしプラスチックキット化するというプロジェクトが始動!
その第1弾アイテムとなるのは1984年にアーケード用ゲームとしてリリースされた名作ゲーム『フォーメーションZ』の自機であり形態可変戦闘メカの「イクスペル」だ。
本記事ではイクスペルのデザインリファインを担当した海老川兼武氏へのインタビューを掲載。
イクスペルを担当することになった経緯からデザインリファインの狙いやポイントについて伺った。
(聞き手:黒峰澄一)
海老川兼武(えびかわ・かねたけ)
1973年12月28日生まれ。メカデザイナーとしてのデビュー作は『青の6号』。代表的な仕事に『フルメタル・パニック!シリーズ『機動戦士ガンダム00』『機動戦士ガンダムAGE』『ガンダムビルドシリーズ』『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』など。バンダイオリジナルブランドのプラモシリーズ『30 MINUTES LABEL』などさまざまな作品にデザインを提供する、第一線で活躍するメカデザイナーである。
――新企画『GM²I』が立ち上がり、その第1弾として『フォーメーション Z 』からこのイクスペルがキット化されるにあたり、海老川さんにオファーがあった経緯を教えていただけますでしょうか。
海老川●約2年位前、本企画をプロデュースすることになる寺田貴信さん、私と一緒にメカデザインをすることになる柳瀬敬之さんとで、お食事をさせて頂く機会がありまして、その場で「昔のゲームロボをリメイクして立体化したら面白そう」という話になったんです。その時点では、具体的なことはまったく決まっていなかったのですが、このほど千値練さんを交えて実現の運びとなりました。
――プライベートな食事会だったんですか?
海老川●仕事とは関係のない普通の楽しい食事会でした(笑)。ゲームロボの話も、あれやりたいこれやりたいと、自分たちの好きなタイトルや機体を言い合っていたくらいです。今回の『フォーメーションZ』もその時話題に上がっていたタイトルの一つです。
――海老川さんは、当時『フォーメーションZ』はプレイしていたんですか?
海老川●小学生の頃に家庭用ハード版をプレイしました。私自身ソフトは持っていなかったので、友達の家で遊ばせてもらっていました。
――『フォーメーションZ』に限らず、当時のジャレコのゲームって、クラスの全員は持っていないけど必ず誰かの家にはある、みたいな作品が多かったですね。
海老川●そうですね。ソフトを持ち寄って遊んだり、ソフトを貸し借りしてクリアしたり、お小遣い持ち寄って駄菓子屋やゲームコーナーに遊びに行ったりと、ゲームにどっぷりハマった幼少期でしたね。
その中でも、巨大ロボットが登場するゲームはいくつか出ていましたが、私にとっては家庭用ハード版の『フォーメーション Z』が一番最初に遊んだロボットゲームでした。今見ると単純なゲームではあるのですが、当時は夢中になって遊んでましたよ。
――『GM²I』版イクスペルのデザインにあたって、心がけたポイントは?
海老川●『フォーメーションZ』は、アーケード版に始まりPC版など、たくさん移植版が出ていますが、 家庭用ハード版のパッケージに描かれているイクスペルの変形シークエンスがとても印象的でした。多くの人の記憶にも残っているだろう、このイラストをベースに進めて行こうという事になりました。
アーケード版のポスターイラストなども存在していますので、その辺りの要素も盛り込みつつアレンジを進めていきました。
――イクスペルといえば、ゲームシステムにも直結した飛行形態への変形が印象的な機体です。変形機構に関しては、かなりこだわったところなのでしょうか。
海老川●はい。当初は完全変形を想定してラフデザイン進めていましたが、家庭用ハード版パッケージに描かれている5段階の変形を再現したいということで、寺田さんのアドバイスもあり、差し替えで変形させる事になりました。
パッケージイラストのイクスペルはかなり無茶な変形をしている箇所があり、詳細な変形シークエンスの設定画も存在していませんので、ある程度こちらで創作で補ってる部分もあります。
脚部はなんとなく想像できるものの、腕や主翼がどこに収納されているのかが特に難題で、それをしっかり再現するにも、差し替え変形にしたほうがいいだろうと。
ただ差し替え変形ではありますが、設定的には一応完全変形できる構造で考えてありますので、その辺りも是非見て貰えると嬉しいですね。無理やり完全変形にしても、強度やプロポーションにシワ寄せが生じた可能性は高かったと思いますし、価格も跳ね上がってしまいますので、差し替え変形にしようと言ってくれた寺田さんのアドバイスが功を奏しました。実際手に取ってもらうと、差し替え変形ゆえの遊びやすさが伝わると思います。ただ、もしプラキットではなく、ダイキャストフレームなどを使用した完成品でリリースするということだったら、もっと変形のしやすさや、トイとしての遊びやすさを重視したデザインにしていたんじゃないかなとは思います。
――『GM²I』版イクスペルには、背中から機首が展開したり、足が横に開いたりして、ロボット形態から飛行形態になるという、この手の変形ロボットにはあまり見られない変形機構が盛り込まれていますね。
海老川●イクスペルは背中のデザインがわかるものが一切存在しないんですよ。背面は完全にオリジナルに創作する事が出来る箇所でしたので、飛行形態での機首をそちらに回したりしました。資料がないからこそできた離れ業です(笑)。
――ロボット形態の肩のノズルが後ろに向いて、戦闘機の推進機になるという機構も面白いなと思ったのですが、そのあたりもこだわりポイントですか?
海老川●パッケージイラストにあった、推進機に見える突起を利用しました。他にもイラストから読み取れる情報は、可能な限り余さずデザインに落とし込み、それを再現する為に不足してる部分をこちらでカバーするというスタンスでした。
我を出し過ぎず、原作へのリスペクトに重きを置いています。
――パッケージイラストの虚構と、立体の整合性を取るために工夫があったんですね。
海老川●そこが、考えていて楽しいところでもありました。
――ほかにデザイン上で、こだわった点はありますか?
海老川●家庭用ハード版パッケージの頭部は、いろいろな解釈ができるデザインなんですよ。なので、別角度で描かれている、アーケード版ポスターイラストのテイストを加味しました。複雑なデザインではないので、単調になってしまうかなとも考えたのですが、いざ仕上がってくると“主人公メカ”の顔になってくれたと思います。
――監修として立体物にも触られているかと思います。手応えはいかがですか?
海老川●イクスペルは“量産型”っぽい記号も多い機体なんです。ところが、いざ立体化されてみると、意外にもかなりヒロイックな印象になりました。シンプルゆえに可動範囲も広いので、すごくいいキットに仕上がったなと思っています。特に『フォーメーションZ』の家庭用ハード版パッケージを知っている方には、興味を持っていただけるのではないかなと。現時点ではまだテストショットは上がってきていないのですが、CADや試作原型の段階から監修して触らせて頂いているので、かなり良い商品になりそうな予感がしています。今から発売がとても楽しみです。
監修といえば、寺田さんのこだわりもすごかったんですよ。とにかく立体物について造詣が深いので、こちらが思いもよらないことを、意外な角度からフォローしてくれるんです。本当に頼もしかったですね。
――今後の『GM²I』への期待や展望を教えてください。
海老川●今後もさまざまなゲームのロボットをリメイクし、キット化できたらなと思っています。これをやってみたい、という候補はたくさんありますよ。結構ハードルが高いので、すべてが実現できるわけではありませんが……。昔の作品なので、版権元でも資料が全然ないとか、イラストを誰が描いたかわからない、みたいなことが多々あるんですよ(苦笑)。でも、シューティングゲームに限らず、みんなの思い出のゲームメカを良い方向にアップデートして現代に蘇らせることができたら、とても面白いだろうなって思っています。
イクスペルに限っても、ハードごとのバージョン違いがたくさんある機体なので、カラバリやパーツ追加による展開ができそうですね。アーケード版には大気圏突破用のブースターパックが登場していたりするので、そちらもいつかチャレンジしてみたいですね。
© CITY CONNECTION CO., LTD.



















