アジア最大級の竜脚類「シンジャンティタン」を復元!! 福井県立恐竜博物館の特別展「竜脚類 ~大地を揺るがした地上最大の生き物~」の目玉展示を「プラノサウルス ブラキオサウルス」を改造して再現!【プラノサウルス復元プロジェクト】
2026.08.20
プラノサウルス復元プロジェクト/シンジャンティタン【BANDAI SPIRITS】●ウラベヒロト(アーミック)、G.Masukawa(GET AWAY TRIKE!) 月刊ホビージャパン2026年9月号(7月24日発売)
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■改造
骨格図
竜脚類は長い首と尾からなるその独特のシルエットにより、しばしば恐竜のシンボルとして扱われる。竜脚類が出現したのはジュラ紀前期初頭(約2億年前頃)と考えられており、白亜紀末(約6600万年前)に絶滅するまで、サイズも体型もさまざまなものが世界中で栄えることとなった。
こうした竜脚類のなかでも、ジュラ紀中期というかなり早い時期に大型化したのがマメンチサウルス科である。竜脚類としては原始的な特徴を数多く備え、骨格のつくりもそれほど洗練されていないマメンチサウルス科だが、特にアジアでジュラ紀中期から白亜紀前期にかけて大繁栄したことが知られている。また、ヨーロッパやアフリカでもマメンチサウルス科の化石が知られており、分布も非常に広かったことがわかっている。古いタイプの竜脚類であるにもかかわらず、多くのもので全長は20mを超え、相対的な首の長さでは他のグループの追随を許さない。
中国・新疆ウイグル族自治区は四川省に次いでマメンチサウルス科の化石が豊富に産出している。なかでも、2013年に命名されたシンジャンティタンはマメンチサウルス科、ひいてはアジア産の竜脚類のなかで最良の化石が知られている。今回は福井県立恐竜博物館の特別展「竜脚類」に合わせ、ブラキオサウルスをベースにシンジャンティタンの骨格にチャレンジした。
▲これまでさまざまな古生物の骨格にチャレンジしてきた本連載だが、今回はそのなかでも相当に厳しい戦いになることは火を見るより明らかだ。シンジャンティタンや“マメンチサウルス”・ヤンギの骨格はかなり詳しく研究されており、参考資料が豊富なことだけが救いである
▲ブラキオサウルス(というよりギラファティタン)の首はかなり長いほうだが、シンジャンティタンをはじめとするマメンチサウルス科と比べて頸椎の長さも数も足らない。ブラキオサウルスを2セット使用して、軽量化のため頸椎はできるだけプラ板の箱組みで延長し、内部を空洞にしておく
▲頸椎の棘突起(神経弓の上方/背側に伸びる突起)や関節突起(神経弓の前後に伸び、頸椎同士をつなぐ突起)、横突起(神経弓から側方に伸びた突起;頚肋骨と癒合する)はやむなくパテで造形する。椎体の凹凸はできるだけプラ板の彫刻で対応し、軽量化を図る
▲竜脚類の頚肋骨の形態はさまざまで、マメンチサウルス科ではとにかく非常に細長い。頚肋骨が極めてよく保存されているシンジャンティタン第2標本を参考に、椎体から金属線を伸ばし、頚肋骨の付け根部分はシアノンで造形する。デザインナイフと金ヤスリで形状を整えていこう
▲マメンチサウルス科の尾の保存のよい化石は比較的珍しいが、シンジャンティタンではホロタイプ、第2標本とも非常によく保存されている。ブラキオサウルスの尾を椎骨ごとに切り分け、全体を切り詰めつつ金属線を通す。付け根の跳ね上がり具合がポイントだ
▲マメンチサウルス科の胴体の長さはさまざまで、シンジャンティタンの胴体は究極に短い。キットはブラキオサウルスのやや胴長な様子をうまく表現しており、シンジャンティタンを作るには単に胴椎をいくつか取り除くだけでなく、椎体そのものを相当に切り詰める必要がある
▲シンジャンティタンの首は長く、尾は短い。どう考えても骨格のままでは自立が困難だ。胴体をできるだけ重く作りたいところだが、その短さゆえにパテを盛るだけでは到底足りないだろう。これでもかと鉛玉を埋め込み、その上からパテを盛って整形する
▲胴椎の形がある程度出来上がってきたら、続いて骨盤の作業に移る。形状を追い込む前に、まずはできる限り鉛玉を仕込んでおこう。さまざまなサイズのものを使い分けると作業がスムーズだ
▲胴椎と同様、キットパーツの骨盤と追加した鉛玉を覆うようにパテを盛る。骨盤があらかた出来上がったら、続いて胴肋骨の製作に移ろう。キットの肋骨を丁寧に切り分け、胴椎の椎体に接着していく。マメンチサウルス科の胴体は、竜脚類としては比較的幅が狭いようだ
▲胴体周りが出来上がったところで、キットの肩甲骨・烏口骨を肋骨に接着。パテを盛り、肩甲烏口骨に加えて胴椎・尾椎の横突起や棘突起も一気に造形していこう。仮組みを繰り返すなかで自立が厳しいという現実を突き付けられ、恥骨に鉛玉を追加する
▲自立に向けて、今までの獣脚類・竜脚類の作例ではあえて省略していた腹肋骨を、金属線で新造。胸骨は鉛板を切り出し、プラ板で補強したものを取り付ける。これでもなお厳しいため、恥骨・座骨の開口部(内臓が収まる部分)も鉛板で埋めてしまった
▲シンジャンティタンの四肢はかなり不完全(第2標本ではある程度産出しているようだ)だが、その形態はマメンチサウルス科の典型的なものだ。骨格図でアタリをとって長さを調整し、ロマレオパクスや“マメンチサウルス”・ヤンギの論文の図版や写真を参考に形状を追い込む
▲①頭骨はキットをベースに、シンジャンティタン第2標本や“マメンチサウルス”・ヤンギを参考に改造する。②左右に薄く、口先が先細りになるよう、合わせ目になる部分を削り込んで幅を詰める。③頭蓋は前上アゴ骨・上アゴ骨・口蓋と脳函を残してカットし、プラ板で下アゴを延長する。④プラ材や金属線で鼻骨や頭蓋天井、眼窩周りの芯を作り、シアノンを盛って整形すれば頭骨の完成だ
▲調整の末、どうにか自立するようになった。全身の作り込みにも満足がいったら、塗装に移ろう
■塗装
▲シンジャンティタンのホロタイプはオレンジがかった茶色から茶色がかったグレー、第2標本は紫がかった茶色を呈する。今回は第2標本をイメージした塗装とした。まずは下地処理として、金属線のむき出しになった部分をメタルプライマーでコートし、プラスチックやパテの部分に溶きパテを塗って化石らしい質感を表現する。それから全体にサーフェイサーを吹き、ベース色となるあずき色で全体を塗装する
▲乾燥したところで陰影を付けるため、エナメル系のダークブラウンでウォッシングする。ある程度乾燥したところで余分な部分を拭き取り、ツヤ消しクリアーでコート。仕上げにサンド系のウェザリングマスターでハイライトを追加し、再びツヤ消しクリアーでコートすれば完成だ
▲これで完成! アジア最良の竜脚類化石として保存された、シンジャンティタンの美しくも異様な骨格を机の上に再現することができた。福井県立恐竜博物館の特別展「竜脚類」でシンジャンティタン第2標本の産状*レプリカの美しさを目に焼き付け、ぜひ三次元的な復元骨格にもチャレンジしてみてほしい
*産状:化石を取り巻く地層・堆積物の特徴や、堆積物中における化石の配列・保存状態といった情報のことで、研究上きわめて重要。化石を完全に堆積物から取り出さず、産状がわかる状態でプレパレーションを終えて展示されるものを俗に「産状化石」と呼ぶことがある。
▲中国での恐竜研究の歴史は1902年までさかのぼることができるが、中国人研究者による研究はもう少しあとのことである。その先鞭をつけたのがC.C.ヤングことドイツ帰りの楊鍾健で、若かりし日の1928年に今日の新疆ウイグル族自治区で地質調査に従事することとなった。ヤングはここで発見された竜脚類の部分骨格に基づき1937年にティエンシャノサウルスを命名したが、これは初めて発見されたマメンチサウルス科の恐竜であった。
新疆ウイグル族自治区は1980年代後半から90年代初頭にかけて行われた中国-カナダ恐竜プロジェクト(両国による大規模な共同調査事業)の重要な調査地域となり、多数の恐竜化石が発見されることとなった。また、福井県立恐竜博物館の礎となった日中の共同調査もそれに続いた。これらの調査で発見されたマメンチサウルス科の化石は断片的なものが多かったが、近年ではシンジャンティタンをはじめ、保存状態のよい骨格が新疆ウイグル族自治区でいくつも発見されるようになっている。
Xinjiangtitan shanshanesis
シンジャンティタン・シャンシャネシス
●竜脚類 マメンチサウルス科●全長約29m●ジュラ紀中期?(カロビアン?)約1億6200万年前頃?●中国・新疆ウイグル族自治区東部
BANDAI SPIRITS ノンスケール プラスチックキット “プラノサウルス” ブラキオサウルス使用
シンジャンティタン
製作/ウラベヒロト(アーミック)
骨格図・解説/G. Masukawa(GET AWAY TRIKE!)
プラノサウルス ブラキオサウルス
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン●1870円、発売中●約27cm●プラキット
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