【コードギアス 新潔のアルマリア】最終回 ep.22「私の家族」
2026.10.03『コードギアス 奪還のロゼ』へと続く物語
『コードギアス 復活のルルーシュ』と『奪還のロゼ』をつなぐ『コードギアス』の新たなるストーリー『新潔のアルマリア』。マシュー・ブラキストンが巻き起こした事件は、彼とミリガン・ジョリーンが首謀者として逮捕されるかたちで収束した。アルマリアはハクバの養子となり、学校に通う日々を送るが……。『コードギアス』最新作、ついに最終回!
STAFF
シナリオ 長月文弥
キャラクターデザイン 岩村あおい(サンライズ作画塾)
ナイトメアフレームデザイン アストレイズ
モデル製作 おれんぢえびす、コジマ大隊長
撮影協力 BANDAI SPIRITS コレクター事業部
ep.22|『私の家族』
3年前の光和4年。
私の人生に関わる大きな出来事がいくつもありました。
マシュー・ブラキストンが起こした一連の事件は、彼とその恋人であるミリガン・ジョリーンが首謀者として逮捕されることで幕を閉じました。元々マリアンヌ様を敬愛していたマシューは、自身とミリガンとのお子さんを失ったことが引き金となって、今回の凶行に走ったそうです。けれど、ミリガンはそんなマシューの行動に賛同し切れず、どうにかして止めようとしていた。その最後の手段が、“マシューの意に反してフレイヤを持ち出さない”ことでした。そのおかげで事態は無事に収束し、ミリガンの証言から起動していない状態のフレイヤが無事に回収され、解体されることになったのです。
彼らの犯した罪は決して軽くはありません。それ相応の罰が与えられます。けれど、あのふたりならやり直せる気がするのです。被害者である私が、こんなことを言うのもおかしな話ではあるのですけれど。
それに、この事件は私にとって嫌なことばかりではありませんでした。だって……。
「アルマリアちゃん、先生が呼んでるよ」
突然、声をかけられて思考が遮られる。声のほうを向くとクラスメイトが私の顔を覗き込んでいた。
「なんか難しい顔してたけど、宿題の作文?」
どうも難しい顔で考え込んでいたらしい。
「うん。テーマが『家族』でしょ? でも、ちょっとだけ複雑なんだ、私のうち」
「そうなんだ。相談乗ろうか?」
「ありがとう。でも、自分で書いてみるつもり。その前に先生のところに行ってくるね」
そう笑顔で返して、私は広げていた文房具を鞄に詰め込む。先生が呼んでいるということは、今日は戻ってこられないだろうから。私はクラスメイトたちに軽く挨拶して教室を出て職員室へと向かった。予想通り、担任の女性教諭と話しているあの人の姿を見つける。
「ミスター!」
「こら、アルマリアさん。宗賀さんのことは……」
「あっ……」
「いいんですよ、先生。呼び方なんて些細なことですから」
あの人が私に優しい笑顔を向ける。
「なっ? アルマリア」
そう。私は宗賀アルマリア。かつてMと呼ばれていた少女。今は、あの人……、宗賀ハクバさんに引き取られた養女。つまり、娘なのです。
マシューの一件のあと、アルマリアという名前をくれたハクバさんが、私を養女として迎え入れてくれました。家族というものが元々存在しない私に父親ができる。しかも、その父親が私を救ってくれたハクバさんだなんて夢のようでした。
けれど、引き取られてすぐに私にはひとつの悩みができました。それは、ハクバさんには亡くなった奥様と明日菜さんという娘さんがいたことを知ってしまったからです。ハクバさんは、私を引き取ってくれる際にすべて話してくれました。獅子蛇戦争の際に愛する奥様と明日菜さんを同時に失ったこと、戦いに巻き込まれる子供をひとりでも減らすためにイザヨイのエージェントになったことなど、包み隠さずすべて。それは、ハクバさんが私を想ってくれているからこそ。
きちんとすべてを教えてくれたことが嬉しかった。だからこそ思ってしまった。明日菜さんを差し置いて、私がハクバさんを“お父さん”と呼んでもいいのかと……。その結果、私はハクバさんのことを父と呼ぶことができないまま3年が経ってしまいました。
「どうしたの、アルマリア? 難しい顔して」
迎えに来てくれた車に乗り込むと、運転席のドクが心配そうに声をかけてくれます。ドクは気配り上手で私のお兄さん的存在。時々、科学マニアが暴走しちゃうのが玉に瑕だけど、頼れる存在。
「お腹減ってるんじゃない? チョコバー食べる?」
一方で助手席から能天気にチョコバーを差し出すサトリ。私のお姉ちゃん的存在……、ではありませんね。どちらかというと、年上の妹といった感じです。
「きちんと給食をいただいたので、お腹は減ってません。サトリってば、お昼ご飯食べたのにチョコバー食べてるでしょ。また太るよ」
「うっ……」
「言われてやんの」
「ふ、太ってないもん!」
「うそ。私知ってるんだからね。最近……」
「わーっ! わーっ!」
「こらこら。学校の前で騒ぐなよ。子供たちに示しがつかないだろう」
私のあとから後部座席に乗り込んだハクバさんが私たちを窘める。ふふっ、いつもの日常の風景。でも、これから私が向かうのは、少し日常からは遠ざかった世界。
「で? ミスターがお迎えに来てくれたってことは、何かしらのミッションなんですよね?」
「察しがよくて助かるよ。例のビッシュ生物学研究所の生き残りの足取りが掴めたんだ」
「あの研究所の……」
ビッシュ生物学研究所。それはクローンである私が作り出された場所。3年前に訪れた時にはすでに放棄されて廃墟となっていました。
あの時点では、私にとっての特別な意味を持つ場所だったけれど、この3年で世界にとっても特別な意味を持つ場所になったのです。それは研究所のあったリューネベルクの国王であるノーランド・フォン・リューネベルクが、侵略を図ったから。
マシューの事件から数週間後、突如としてリューネベルクが武装蜂起しました。超合集国や黒の騎士団がその対処に迫られているなか、ノーランドはその隙を突いて北海道ブロックを急襲して占領。ネオ・ブリタニアの建国を宣言して今に至っています。
世界の関心が、フレイヤとシトゥンペの壁を有するネオ・ブリタニアに向くなか、神楽耶さまはネオ・ブリタニアの実質的な権力者であるノーランドの正体を掴むべきだと仰られました。それは、なにもノーランドが仮面で顔を隠しているからではありません。建国以降、その意向を示さないネオ・ブリタニアの真意を確かめるため。神楽耶さまはその真意がノーランドの正体に関わっていると考え、私たちエージェント新月にノーランドの正体を掴むよう命じられたのです。
「それで? 何か悩みごとか、アルマリア?」
「い、いいえ。別に悩みなんか……」
「駄目駄目だね、ハクバ。マリちゃんもお年頃なんだよ。そんなストレートに聞いて答えるワケないでしょ」
「またマリちゃんって呼ぶ。私の名前はアルマリアですよ。何度言っても聞かないんだから、サトリこそ駄目駄目です」
「んなっ!」
「それよりもさっきの話です、ミスター。研究所の生き残りとは誰の……」
「ウィリアム・ビッシュ。とうとう本命だ」
ウィリアム・ビッシュ。ビッシュ生物学研究所の所長。クローン技術の権威。そして、私を作り出した人……。イザヨイが黒の騎士団やレディ・レディたちと協力しても長らく消息の掴めなかったあのビッシュ博士の足取りがようやく掴めた。なんだか胸の奥がざわつく。
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