“情景王”が魅せる砂漠ウェザリング
チッピング液でチッピング表現はもう怖くない!
砂漠での運用を想定した汚し方は王道なウェザリングテクニックとして古くから確立されており、ガンプラウェザリングを語る上で避けては通れません。ということで、砂漠をテーマとしたディオラマもご用意しました。ディオラマの第一人者である山田卓司が製作を担当し、こちらはチャレンジしやすいコンパクトな“ヴィネット仕上げ”。モビルスーツ2機と地形のみで情景を演出。使用キットは渋い仕上げと相性抜群のグフ・カスタムとザクIIF2型をチョイス。難しいと思われがちなチッピング表現は、2023年11月にタミヤから新たに発売されたチッピング液を活用することで簡単にできますので、ここではそのやり方をお教えします! また、グフは控えめ、ザクは濃いめにウェザリングを施しているので、その対比にもご注目ください。
ディオラマ製作・解説/山田卓司
▲キットは「HG グフカスタム」と「HG MS-06F-2 ザクII(ジオン軍仕様)」を使用。プロポーション変更はせず、砂漠戦線の機体ということでサンドカラーにリペイントした
山田卓司(ヤマダタクジ)
情景王の異名を持つ、月刊ホビージャパン読者なら説明不要のレジェンドディオラマビルダー。キャラクターからAFVまでさまざまなジャンルを手掛ける。
▲月刊ホビージャパン2023年9月号の特集で掲載された「スコア6の領域」。『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第9話でのグラスレー寮との決闘をモチーフにヴィネット化。ガンビットのエフェクトの立体化に挑戦した意欲作である
©創通・サンライズ・MBS
今回はこの“チッピング液”がキーアイテム!
チッピング液
●発売元/タミヤ●495円、発売中●40ml

❶チッピング液を使用する前にラッカー塗料で下地色を作る
❷チッピング液塗布後はアクリル塗料で上塗り
❸ヴィネット仕上げでも物語性を持たせよう
①ベース塗装
▲まず、2機ともにラッカーの下地色を塗装する。チッピング塗装はベースカラーの色調が最重要ポイント。今回は情景王独自調合の、マホガニーよりは薄く、ニュートラルグレーよりは濃いブラウン寄りのグレーで塗装を行った
②チッピング液投入!
▲ここで一度タミヤメイクアップ材シリーズのチッピング液を塗布。下地塗装がツヤ消しでないとチッピングが弾かれてしまう場合もあるが、焦らずに薄く、何回かに分けて塗装しよう
③ザクの場合
▲続いて、アクリル塗料のライトシーグレイと呉海軍工廠グレイ(日本海軍)を塗装。光が当たる想定の箇所はフラットホワイトを混ぜ、カラーモジュレーション塗装をした
▲水やぬるま湯で湿らせて数分後、筆で軽く撫でたり竹串の先で突くと、アクリル塗料のグレー部分のみが剥がれ、ラッカーの下地が露出し自然かつリアルなダメージ表現になる。まだ上塗りしていくので、やり過ぎないよう程々にしておく
▲再度チッピング液を塗布してから、砂漠らしいサンドカラーに塗装していく。アクリル塗料のデザートイエローをベースにイエローブラウン、水性ホビーカラーのオレンジイエローを混ぜて、熱帯地域用のダークイエローを調色。そして元々緑色の機体をデザートカラーに塗ったという設定にしたいので、一部のパーツはオリーブグリーンで塗装。ここももちろんアクリル塗料を使用した
▲先ほどと同様、上塗りした塗料を剥がす。塗膜が厚くなりすぎて剥がれない場合は水やぬるま湯の代わりに燃料用アルコールで湿らせる。パーツのエッジや角など摩耗しやすいところを中心に、粗密に気を付けながら行いつつ、満足いく具合になったらラッカー系のツヤ消しクリアーを吹き付け塗膜を保護する
④グフの場合
▲グフ本体も基本ザクと同じような塗装&チッピングを行うが、こちらはザクと比べて傷は少なめにすることで、差別化を図った
▲グフの武装などはスーパーステンレス2やガンダムマーカーでシルバーを下地にし、その上にツヤ消しブラックを重ね塗りすることで、鈍い金属感を演出
▲さらにガトリング砲身やバーニアノズルは、クリアーブルーやクリアーレッドなどで薄く上塗りし、焼けた金属の質感に
⑤土汚れ表現
▲砂漠に欠かせない土汚れは、タミヤのウェザリングマスターとウェザリングスティックを水で溶かして塗りつけた。汚し過ぎたら水で湿らせてからウェスなどで拭き取ればOK。ウェザリングマスターは本来、付属のスポンジやブラシで擦り込むのが王道な使用法だが、ここでは固形絵の具として水で溶いて活用した。完成後見えないところだが、靴の裏にも“土”を入れ込んだ
撤退
渋〜い仕上げとなったグフとザクを配置し、風紋がある砂丘地帯のイメージで地形を形成させてヴィネットとして完成させました。グフ・カスタムが先の戦闘で脚部を破損したザクIIF2型を回収するものの、運悪く地球連邦軍に見つかってしまい、ザクを引き連れて撤退しつつガトリング・シールドで応戦する…というシチュエーションを想定しています。チッピングはウェザリングの定番テクニックであり、描き込む手法でも再現できます。しかし、今回お届けしたチッピング液を活用する手法では実際に塗料を剥がすことになり、描き込むよりも簡単にリアルに見せることができます。“チッピング液を塗る前の下地はラッカー塗料、塗布後の上塗りはアクリル塗料”というポイントを忘れず、気軽にチャレンジしてみてください!
▲幅約25cm×奥行18cmと、控えめなヴィネットサイズでありながら、撤退中であることが分かるように構成されている
▲グフは高性能&エース機のイメージから、チッピングと土汚れは抑えめに
▲逆にザクは運用期間が長く、以前はヨーロッパなど温帯地域向けの塗装だったものの、上から砂漠地域向けの塗装を重ね塗りした機体という設定としたため、派手めに汚しを入れている
▲ザクの右脚の破損した部分の表現として、ジャンクパーツを組み込んでいる。動力パイプは一度切断しドリルで穴を開け、リード線を挿し込むことでちぎれた様子を再現
▲今回の作品でもっとも物語性をもたらしている要素がこの足跡。機体の前に配置することで、後ずさりながら撤退していくさまを演出している
▲ベースはスタイロフォームで大まかな造形をしたあとに、1mm厚のスチレンボードにヘラで風紋を付けてから貼り付けた。地表は砂漠なので、テクスチャーペイントのライトサンドをペインティングナイフで塗り付けた
▲胸部などの色の濃い部分はフラットアースで塗装することで、メリハリを付けている
■砂漠
今回の特集で私の担当は「砂漠」とのこと。強烈な陽射し。日中は高温、夜半は低温という激しい気温差。水気がなく極端に乾燥した過酷な地域で運用されるモビルスーツとはどんなものでしょうか? 私は実際に砂漠地域に行ったことはありませんので、大戦中や戦後の軍用車両の画像からイメージをふくらませました。今回、最初に編集部より渡されたのはグフ・カスタムのみ。1体だけだとドラマが作りにくいと感じたので、F2ザクを1体だけ追加させていただきました。今回はコンパクトなヴィネット仕上げで情報量も限られており、2体並んで静かに行軍中とかの構成で砂漠が舞台だと殺風景(それはそれで面白そうではあるのですけど(笑))な印象になりそうなので、戦闘中の場面を構想。モビルスーツは人型なので、人間同様のドラマが作りやすい。今回互いに助け合う兵士たちのイメージで作ることにしました。現実の戦争では装輪車両を運用することから比較的平坦な地域で行われていることが多いのですが、モビルスーツならさまざまな地域での運用も可能なはずで、より起伏の激しい地形でも問題ないはずです。今回は誰もがイメージするであろう風紋がある砂丘地帯を舞台にしました。
■グフとザク
グフは高い荷重に耐えるヒート・ロッドを備えているので、機体を運ぶのなら理屈上ではザクに巻き付けたほうがそれらしいのかも知れませんが、緊縛しているみたいになって作品としての焦点がぼやけると感じました。人間らしさの演出もしたかったので、ザクを引き連れている風にしました。基本的にはどちらのキットもそのままのストレート組みですが、ザクのみ破損した右脚の表現を加えてあります。ジオン系モビルスーツの命とも言えるモノアイは、蛍光ピンクで塗装しています。
BANDAI SPIRITS 1/144スケール プラスチックキット“ハイグレードユニバーサルセンチュリー”グフカスタム+ザクII F2型(ジオン軍仕様) 使用
撤退
ディオラマ製作・解説/山田卓司
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