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ザク降下シーンを再現!ディオラマ製作の基礎テクニックを学ぼう!!【週末でつくる ガンプラ凄技テクニック】

2023.06.15

週末でつくる ガンプラ凄技テクニック 懐かしのディオラマ編 月刊ホビージャパン2023年7月号(5月25日発売)

ザク降下シーン ディオラマ イメージカット

ディオラマの基礎テクニック(前編)

 休日のゆったりとした時間に、じっくりとプラモデルを作る楽しみを体感しよう! がモットーの連載企画「ガンプラ凄技テクニック」。懐かしのディオラマ編第2回のテーマは「ディオラマの基礎テクニック」。『機動戦士ガンダム』第1話のザク降下シーンをモチーフに、基本的な地形の作り方やポーズ変更の方法を学んでみましょう。なお、ディオラマは作業工程が多い模型ジャンルです。これまでと同様に詳しい製作法を解説できるよう、前後編に分けてお届けします。

講師/林哲平


キットとベースを選ぼう

土台の上に仮組状態のザク2体が乗っている画像
▲今回は『機動戦士ガンダム』第1話「ガンダム大地に立つ!!」より、2機のザクが降下し、崖を下る名場面の再現にチャレンジします。使用するのはもちろん当時ものキットの1/144のザク。成型色が違うのは、それぞれ再販時期の違うキットを使用しているため。さながらベテランのデニム、新兵のジーンとシチュエーション的にもベストマッチです
側面、上面を塗装した土台
▲ベースはある程度高さのある、100円ショップの木箱を使用しています。MSは巨大な兵器。ベースに高さがあれば下から仰って見やすくなり、完成時に巨大感をより強調して演出できるためです。あらかじめ全体にMr.サーフェイサーマホガニーサーフェイサーを塗装し、質感を高めておきましょう

崖を作ってみよう

スタイロフォームを金属定規とカッターナイフで切り出している画像
▲それでは崖を作っていきましょう。立体的な地形を作るときはスタイロフォームを使います。ベースのサイズを採寸し、マーカーなどで描き込んでから金属定規とカッターナイフで切り出しましょう。うっかり定規を押さえる左手を怪我してしまいやすいので、革手袋をつけて保護しておくと安心です
切り出したスタイロフォームの画像
▲切り出したスタイロフォーム。アニメで崖を滑り降りるシーンを見るとしゃがんだザク以上の高低差があるので、ザクの全高13cmに対し、3cmのスタイロフォームを3つ切り出して9cmぐらいの高さを目指します
スタイロフォームに水曜接着剤を塗っている画像
▲スタイロフォームは有機溶剤系の接着剤を使うと溶けてしまうので、水溶性の接着剤で接着します。今回はディオラマ用接着剤として欠かせない、速乾タイプの木工用ボンドで接着しています。剥がれないようにたっぷりと塗っておきましょう

ベースの上に切り出したスタイロフォームを乗せている画像
▲接着したスタイロフォームをベースに乗せて高さをチェック。削るなど崖を造形するとどうしてもこの段階よりも高さは低くなるため、ある程度削り代を考えて余裕を持った高さにしておきましょう
スタイロフォームをカッターで削っている画像
▲スタイロフォームをおおまかに削るときは大型のカッターナイフを使います。ただ、急速に切れ味が鈍るため、刃が引っかかるなど切れないと感じたときはすぐに刃を変えましょう。もし入手できるのであれば、熱伝導タイプの発泡スチロールカッターを使うと引っ掛かりなくキレイにカットできるのでオススメです
スタイロフォームを指でちぎっている画像
▲カッターナイフだけでカットすると表面が平面的になりすぎて、岩として不自然な印象となってしまいます。ここは指で表面をちぎって凹凸をつけましょう。スタイロフォームはある程度柔らかい素材なので、指でも余裕で加工できますよ
筆でMr.ツールクリーナーを塗っている画像
▲最後にMr.ツールクリーナーを塗ります。表面が溶け、より岩石らしいランダムな凹凸を表現することができます。ただし、塗ると思った以上に溶けることがあるので、あらかじめディオラマに使って余ったスタイロフォームに塗って溶け具合をテストしておきましょう。※正しい使用方法ではないのでご注意ください

塗り終わったベースの画像
▲崖の基本が出来ました。切って貼って溶かすだけなので、作業的にはまったく難しくありません。なお、ディオラマなど模型でアニメのシーンを再現するときは、崖は高めにしておくなどある程度シーンの特徴をディフォルメして強調しておいたほうが立体映えしますよ

ザクのポージングを決めよう

ベースにザク2体を乗せて位置確認をしている画像
▲崖の基本ができたらザクを置いてみましょう。ザク・マシンガンを両手で構えることはできますが、足首が固定だったり、胴体がまっすぐであるなど、そのままではさすがにポージングには限界があります。ここからはキットの形状を最大限に活かしつつ、最小限の改造でアニメのシーンに近づけてみましょう
ザクの足パーツ
▲当時から数多くのモデラーにも指摘されている、このザク最大のウイークポイントが固定された足首です。個人的にはキットの持ち味として結構好きな部分なのですが、さすがにポーズをつけるとなるとこのままでは難しいので、別パーツに分割してみましょう
足パーツに切り込みを入れている画像
▲まずは足首の後ろ側、スネの下のフレア部分に切り込みを入れます。今回はエッチングソーを使っていますが、ポージングで角度をつけると切った部分はほとんど目立たなくなるためレザーソーなど刃が厚めの模型用ノコギリを使っても全然OKです

デザインナイフで切り込みを入れている画像
▲ノコギリが入らない、スネと足首が接続されている真ん中の局面部分はデザインナイフで切り込みを入れます。ここは無理にナイフで切り離そうとするのではなく、あくまで切り込みを入れるだけでOK。何回かなぞって切り込みをある程度深くしておいてください
切り取った足とスネ部分1
▲切り込みを入れたら、足首とスネを持ってねじると…! パキツ! とした音とともにパーツがふたつに別れます。プラ板をカットするのと同じ要領です
切り取った足とスネ部分2
▲あとはそれぞれのパーツを接着し、荒れたフチの部分をナイフやヤスリで整えれば分割完了です
口のダクトパーツら
口のダクトパーツをはめ込んだ画像

▲1/144の当時ものキットのザク系MS製作において、多くのモデラーが頭を悩ませるのが口のダクト。内部のスリット真ん中に合わせ目ができるため、ディテールを活かしなら合わせ目を消すのは大変難しい部分なのです。ここはスリットディテールをすべてカットし、コトブキヤのM.S.G P-116ダクトノズルIIのスリット部分を切り抜いてはめ込みましょう。これで複雑な合わせ目に煩わされることなく、目立つ口ダクトを簡単かつキレイに仕上げることができるのです

各ブロックごとに分けたザクのパーツ
▲ディオラマは固定ポーズで仕上げるため、パーツははめ込まず、各ブロックごとにそれぞれ分けて接着します。「懐かしのキット編」掲載のリアルタイプガンダムや1/100シャア専用ゲルググと基本は同じですので、より詳しくはそちらの記事を参考にしてみてください
胴体を切り込みを入れている画像
▲胴体は劇中降下シーンでは腹部が曲がり、横から見ると体がくの字になっています。キットはそのままだと崖で寝転びながらひなたぼっこをしているザクになってしまうので、最小限の加工で胴体に角度をつけてみましょう。まずは背中から腹部にかけて、ノコギリで切り込みを入れます
切り込みを入れた胴体を曲げている画像
▲動力パイプ受け口の直前まで切り込みを入れたら、胴体をふたつにちぎってしまわないように注意しながら、少しずつ曲げて角度をつけていきます
切り込んだ隙間に角帽を挟んでいる画像
▲角度が決まったら、5mm角棒を隙間に挟み込んでガッチリと接着し、角度を固定しておきます。プラ棒で角度をつけずにエポパテで隙間を埋めると、胴体とスカートが慣性で元に戻ってしまい、思ったように胴体が曲がらないことがあるのです
隙間にエポパテを入れ込んでいる画像
はみ出たエポパテを整形した後の画像

▲角度が決まったらエポパテを詰め込み、ナイフとヤスリで整形すれば胴体の曲げ加工完了です。パテでの改造とは言っても、新しいパーツを自作するのではなく、隙間を埋めて繋げるだけ。ちょっと大きい合わせ目を消すようなものなので、気軽に挑戦してみてください

ベースにザクを1体配置した画像
▲曲げた胴体で改めて崖にザクを配置してみます。先程よりもずっと雰囲気はよくなりましたが、劇中だと手前のザクの左足は太モモを立てた状態で深く曲がっています。ここからは脚部のポーズを調整していきましょう
スカートを一部削った後の胴体画像
▲キットのままではスカートが干渉するため、左足太モモを立てることができません。ここはスカートを大きく削って曲がる範囲を広げましょう。初代ガンダムの劇中でMSが動くとき、手足や胴体は大きく湾曲します。無理に左右対称にこだわるよりも、作画的なイメージを尊重するのも当時ものキットの製作では有効な手段です
真鍮線を打ち込んだザクの胴体
▲しっかりと位置を決めるためにも、地面に固定するための軸を真鍮線で打っておきましょう。軸は長めに取り、必ず地面を貫通し、台座まで突き刺して固定できるようにしておいてください。固定が甘いと、完成後少しの衝撃でガンプラが転げ落ち、破損してしまうことも…
削る部分を着色したヒザ裏
曲げたザクの足パーツ

▲ザクのヒザはキットのままでもかなり深く曲がりますが、写真の赤く着色した部分を削ることでより深く曲がり、劇中のシーンの角度に近づけることができます。曲がった部分は見えなくなるので、ナイフで削りっぱなしでも全然OKです

脚部の動力パイプをライターの火で温めている画像
温めたパイプを指で折り曲げている画像

▲ヒザを深く曲げると、当然ながら脚部の動力パイプが入らなくなります。ここはライターなどの火で炙り、曲げて角度をつけましょう。いきなりすると失敗しやすいので、ランナーで練習しておくと安心です。また、プラを燃やすと有毒ガスが発生するため、吸い込まないようにマスクをつけて換気をし、やけどしないように、充分注意して作業してくださいね

足に詰めたエポパテにアルミ線をさしている画像
▲分割した足首は中にエポパテを詰め込み、アルミ線を差し込んで接続します。アルミ線は柔らかく、角度を微調整可能なため、一発で固定するよりもはるかに簡単に当時ものキットを劇中のポーズに近づけることができるのです
太ももにアルミ線を差し込んでいる画像
▲劇中ではザクの太モモは大きく外側に露出しています。ここはキットの股間軸を使わず、太モモの下にアルミ線を突き刺して、地面に脚部を直接固定するようにしましょう。これでキットの可動軸に捉われない、ダイナミックなポージングを当時ものキットでも再現可能となるのです
組み立てた脚部パーツ
両脚部と胴体をベースに設置し画像

▲左足が完成したら、ベースにセットして位置を調整します。左足の位置さえ決まれば、伸ばした右足の位置も自然に決まります。うまくベースに収まらないときは、ベースを再度削れば問題ありません。ただ、ベースに埋まるほどピッタリとフィットしすぎると降下するザクではなく、マウンテンサイクルから出てくるボルジャーノンになってしまうので、あくまで上を滑っている感じを忘れないようにしてくださいね

ザク・マシンガンのストック部分を赤く着色している画像
▲次はザク・マシンガンをより自然に構えさせてみましょう。ここで問題となるのは長すぎるストック部分です。ここは短くカットしましょう。これで胸と干渉しなくなるため、より劇中イメージに近い形で持たせることができるのです。そもそもアニメの降下シーンでストックは一切見えません
ザク・マシンガンのグリップは開口してアルミ線を差し込んでいる画像
▲ザク・マシンガンのグリップは開口してアルミ線を差し込んで作ります。これでグリップを持つ左手の位置を微調整できるようになるので、よりマシンガンの位置をカッコよく決めやすくなるのです。もちろん、グリップもアニメの降下シーンでは見えないので、外見的にもまずわかりません
胴体の両肩部分にアルミ線を差し込んだ画像
マシンガンを構えた両腕を胴体に組み込んだ画像

▲そのままでも両手でザク・マシンガンを構えることは可能ですが、固定ポーズ仕上げのディオラマとなると、もう少し肩の位置を前に張り出してより劇中シーンのように持たせたいですよね。ここもキットの関節は使わず、アルミ線で接続してみましょう。アルミ線は柔軟で微調整が効き、特に接着剤が固まる時間などを気にする必要がないため、もっとも重要なポイントであるポージングの角度を考えることに注力できるのです。これで手前のザクのポーズが決まったので、次は上のザクに移ります

2体目のザクをベースに仮配置した画像
▲上のザクを配置する上で困ったのがベースの面積。狭いので設置する場所がないんですよね…。悩みに悩んで、脚を伸ばして地面の一点に着地する瞬間をイメージしてみたのですが、これを見た妻に「このシーンはザクの脚が曲がって降りてきているのがカッコいいのにありえない。これだと脚の骨が折れる」と厳しい指摘を受けました
ベースに片足を固定した画像
土台と片足を棒で固定した画像

▲確かに、試しに階段からジャンプして着地してみると、ヒザを伸ばしているとダイレクトに関節にダメージが来ます! ここは妻のアドバイスに従い作り直しました。脚部をアニメに合わせて曲げ、かかとから真鍮線を突き出し、崖の上ギリギリのポイントに設地。降下して接地する瞬間を改めてイメージして配置してみました。上にザクが乗っかるため極めて重量がかかる部分なので、脚の内部に長い真鍮線を2本仕込み、崖の上からベースまで貫通するように構成しています

組み立てた2体目のザク
▲ポーズが決まった上のザク。妻も「こっちのほうが圧倒的にカッコいい!」と納得してくれましたし、最初よりも格段にアニメイメージに近づきました。いろいろ悩んで煮詰まっているときは、他の誰かの客観的な意見を聞くのがすごく大事だと改めて学びました
関節の隙間をエポパテで埋めている画像
▲2体のザクのポーズが固まったので、アルミ線で繋げた関節の隙間をエポパテで埋めていきます。爪楊枝で刷り込んでいくと作業しやすいですよ
肩の隙間をエポパテで埋めた画像
▲肩も隙間を埋めていきますが、ここは位置がズレやすく、ズレたままエポパテが固まってしまうとせっかく調整したポーズが台無しになってしまいます。パテを詰め込んだら、改めて台座にセットして位置を調整するぐらいの慎重さで作業しましょう
肩のエポパテが乾いた後に整形した画像
▲エポパテが硬化したらナイフと紙ヤスリで整形しておきましょう。ここは厳密に精度を出さなくても、パテを盛ったときの不自然な凹凸がなくなり、それなりに関節がしっかりと繋がっているぐらいでOKです。アニメ作画で湾曲している関節の繋ぎ目だと思ってください
ザクの首のエポパテをナイフで整形している画像
▲首は前に少し倒して角度をつけると劇中イメージに近づきますが、注意点がひとつ。キットの首の太さで角度をつけると首が細長く見えて貧弱に見えるため、首をエポパテで繋げるときはキットよりもひと周り太めに造形しておくと力強い印象を保つことができますよ
ザク・マシンガンのマガジン裏側
▲ザク・マシンガンのマガジン裏側は大きな肉抜き穴があるので、関節をエポパテで繋げるついでに埋めておきましょう。ザクの降下はやはり下から見上げたいシーンなので、この部分はどうしても目に入りやすいのです
ハンドの下の穴をエポパテで埋めた画像
▲ハンドの穴は上はグリップを持つので問題ないのですが、下の穴は非常に目立つためエポパテで埋めておきましょう。必ずグリップを差し込んでからパテを詰めてください。そうしないと、パテでハンドの中が埋まってザク・マシンガンが持てなくなってしまうのです
ベースにザク2体を仮配置した画像
▲関節をエポパテで繋げ、パーツの整形が終わり、ベースに設置して最後の調整が終わった塗装前の状態。ディオラマはほんの少しのポージング角度や地面の形で印象が大きく変わるため、この段階で納得いくまで位置関係をチェックしておきましょう

今回はここまで!

 今回は大まかな構成を決めることができました。次回の後編ではアニメイメージを尊重したザクの塗装や、水性ホビーカラーを使った地面の仕上げなど塗装を中心とした解説をお送りいたします。ぜひ、楽しみにしておいてくださいね! 次回もよろしくお願いいたします!


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© 創通・サンライズ

林哲平

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