【前ページ】ワンフェス40周年連載：第2回「海洋堂と個人ディーラーと会場の光景と」

センム、ワンフェス語り 第2回

---

反ワンフェス

　1990年に、ワンフェスというのが“いかに下等で非道なイベントであるか”というのを訴えて、反ワンフェスキャンペーンが某誌で始まって。
　某ホビージャパンもひどい雑誌でね（笑）。それまでホビージャパンフェスティバルというのを毎年夏に大阪と東京でやってはったんですよ。僕らもどっちも出てましたし、ホビージャパンとも仲良かったんです。でも「全然違いますな、規模が（ワンフェスと）」とか言って、笑ったりとかして（笑）。ジャパンさんとしてはイラッと来てたでしょうし、その後バンダイとホビージャパンで組んで、「ガンダム」と「セーラームーン」を看板にして、ワンフェスを打倒するために作ったJAF-CONというイベントを始めたんです。だから2年くらいでワンフェスでは「ガンダム」（の当日版権）がなくなっちゃって。そういう逆境の時代に僕らはワンフェスを譲ってもらったわけなんですよ。

---

主催の引き受け

　1992年冬ワンフェス当日の朝、岡田斗司夫氏に声を掛けられて主催者控え室に行ったら「宮脇さん、僕らは今日でワンフェスやめるんですよ。あとを引き継いでください」と。当日の朝いきなり決定して、ゼネプロ内でも知らされてなかったらしいんで。何が起こったか分からなくて模型愛の強い人が泣いていたり。ウソやろ、このタヌキみたいな親玉（岡田氏）から言われても信用できないし、何かおまけにとんでもないびっくり箱が付いてくるかと思ったらそんなことは一切なく、それまでゼネプロが作ったガレージキットの原型、金型全部僕らに譲り渡して去っていって。
　当時ゲームの『プリンセスメーカー』が大盛況だったり、これからやっていくアニメもあったり、いよいよ自分たちがワンフェスというイベントをやっても、造形では海洋堂に勝てないから海洋堂でやってくださいと。海洋堂がダメなら他のメーカーがやることになる、それは嫌でしょと。
　社内の反対はそりゃ多かったですよ。うち模型屋さんでイベント屋さんちゃいますからね。海洋堂は一番のディーラーになれるし、一番のものを作れる。でもイベント屋さんじゃないし、できるわけないじゃないですかとうちの社内でも反対されて。1ヵ月くらい逡巡はしましたけど、悩んで結局やっちゃいましたね。
　岡田斗司夫氏は「これ（ワンフェス開催は）儲かりますよ」って。ウソやろと思ったら、引き継いだ1回目は案の定大赤字喰ろうて（笑）。しんどいだけで儲からんかったわってのがありましたけどね。2回目からなんとかトントンぐらいに行きましたが、後はずっと試行錯誤で。

---

福音

　『新世紀エヴァンゲリオン』はガイナックス、いうたらゼネプロからワンフェスを引き継いだ僕ら海洋堂に対する福音（『エヴァ』の中国語タイトルは『新世紀福音戰士』）だったわけですよね。コツコツとじわじわと右肩上がりでいろいろやってきたワンフェスが、96年の『エヴァ』からドッカーンと爆発し、『ときめきメモリアル』や『サクラ大戦』の大ヒットもつながってガレージキットのパイが急に大きくなって売れるようになったんですよ。

---

食玩の大ヒット

　ガレージキットが何千個も売れてくれば、次に行くところは中国で作る塗装済み完成品。『北斗の拳』アクションフィギュアや『チョコエッグ』につながるということに。（ワンフェスで）ボトルキャップ付けたりとかひなあられやったりしたのが3万個、4万個単位で売れて、一番すごかった「ワンダ＆リセットのオシャレ泥棒 コーディネートはこーでないと」（2005年冬発売）はなんと24万個も売れたというね。とはいえ30万個売ったろうと思って作ったので、6万個を捨てることになってしまったけど（笑）。まあ6万個捨てたって大儲けじゃー！あっはっは、と。　 （第3回へ続く）

---

---

▼ 関連記事はこちら

©DAICON FILM