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「当時ものキットのガンダム」を筆塗りで仕上げる【週末でつくる ガンプラ凄技テクニック 懐かしのキット編】

2022.05.12

週末でつくる ガンプラ凄技テクニック 懐かしのキット編 月刊ホビージャパン2022年6月号(4月25日発売)

「当時ものキットのガンダム」を筆塗りで仕上げる【週末でつくる ガンプラ凄技テクニック 懐かしのキット編】

 休日の空いた時間、誰でもできる簡単なテクニックで、お手軽にカッコいいガンプラを楽しんで作ってみよう! がモットーの連載企画「ガンプラ凄技テクニック」。懐かしのキット編第3回は「当時ものキットのガンダムの筆塗り」。ラッカー、アクリル、エナメル、3種の塗料を使い分け、真っ白なガンダムを筆塗りで仕上げる方法を解説します。

講師/林哲平


溶剤を用意しよう

▲筆塗りで絶対必要となる各種塗料に対応した溶剤です。ラッカー系塗料やエナメル系塗料は水では落とせないため、筆を洗うときはそれぞれの溶剤で洗いましょう。アクリル系塗料は乾燥前なら水洗いできますが、専用溶剤で洗ったほうがキレイに落ちます

ガンダムのフェイスを塗ろう

▲なんの色分けもない当時ものキットのガンダムの顔。ガンプラブーム当時、多くの小学生を「こんなの塗れない…」と打ちのめした白い悪魔の最難関ポイントです。ここを3種の塗料を使って塗り分け、筆塗りの基本を学んでみましょう
▲まず最初に使うのはラッカー系塗料。ツインアイと頭部バルカン砲はMr.カラーGXのキアライエローで塗装します。Mr.カラーGXは通常のMr.カラーより価格が高いぶん、隠蔽力が高いので、重ね塗りをせずともキレイに発色します
▲ラッカー系塗料は乾燥が早いですが、そのまま筆塗りすると塗っているそばから乾いて筆ムラが出やすいのが欠点です。ここはMr.リターダーマイルドを使いましょう。リターダーを混ぜると乾燥が遅くなり、塗料の伸びもよくなり筆ムラが出にくいです。筆塗りでの適量は塗料に対して10%くらいです。入れすぎに注意です
▲筆塗り初心者がツインアイのような小さい面積を面相筆で塗り分けるのは結構難しいもの。ここは先を少し削った爪楊枝に塗料を染み込ませ、ちょんと載せていきましょう

▲塗り分けた状態。爪楊枝で塗料を置いて塗りつぶすのに筆さばきはまったく必要ありません。ムラなく、一瞬で塗ることができます。はみ出しは後でいくらでも修正できます
▲続いてアゴのレッドを塗り分けます。アゴのような尖った部分は手に触れることが多く、擦れて色がハゲやすいので塗膜の強いラッカー系塗料であるMr.カラーのモンザレッドを使います。後で使う水性ホビーカラーのレッドもセットで用意しておいてください
▲先程と同様に爪楊枝を使って塗り分けます。はみ出した部分はデザインナイフの刃先で削り落としましょう。成型色を活かした仕上げであれば、少しのはみ出しは溶剤で拭き取るより、削り取ったほうが楽にキレイにリカバリーできます
▲ツインアイ、バルカン砲、センサー、アゴを塗り分けた状態。爪楊枝は手に入りやすく、一番手頃な“細筆”です。爪楊枝から初めてみると楽ですよ
▲ガンダム顔の最大の難所は目の下のクマドリです。ディテールが大らかで、塗り分け部がわかりにくく、ツインアイにはみ出すと修正が大変なことに…。ここは水性ホビーカラーのレッドで塗り分けていきましょう
▲おおっと! 頑張って塗り分けていたのですが、ツインアイにはみ出してしまいました…。イエローにレッドがはみ出すと、リタッチしても透けてしまうので修正は困難のように思えますが…?
▲水性ホビーカラーなどのアクリル系塗料は台所用中性洗剤などで溶かせるので、綿棒に染み込ませて拭き取ります。ラッカー系塗料の塗膜にはなにも影響しないので、ツインアイのイエロー部分が溶けることはありません
▲クマドリを塗り分けた状態。塗り分けが複雑で、はみ出すと修正が難しい部分はラッカー系塗料とアクリル系塗料を使い分けましょう。頑張って塗り分けるよりも、はみ出してリカバリーする前提で作業するほうがキレイかつ楽に仕上がりますよ
▲ガンダム顔最後のポイントはツインアイの縁取り、マスクのへの字と頬のダクトです。ここはタミヤエナメルカラーのフラットブラックで塗り分けてみましょう
▲細筆で描き込んでいきます。エナメル系塗料は溶剤をつけすぎるとプラスチックに浸透し、割ってしまうのですが、普通に塗料を筆塗りするぶんには問題ありません。今回は楽するため、瓶を振って、内蓋に残った塗料で塗っています
▲塗った状態。だいぶはみ出していますが、問題ありません。ここはクッキリと塗り分けたほうが完成見本や当時の雰囲気に近づきます。スミ入れするというより、スジ彫りやディテール部分を塗る、ということを意識してください
▲ツインアイやクマドリなど、塗装した部分にはみ出した塗料はエナメル溶剤を染み込ませた綿棒で拭き取ります。エナメル溶剤はエナメル塗料のみを落とすため、下地に塗装したラッカー系塗料やアクリル系塗料で塗った部分はそのままキレイに残ります
▲頬のダクト部分はディテールが大らかなので、拭き取りだと内側の塗料まで落としてしまいます。ここはデザインナイフの刃先ではみ出した部分を削り落としたほうがキレイに仕上がります
▲ガンダムの顔、塗り分け完了です! 複雑かつ込み入った部分ですが、ラッカー系塗料→アクリル系塗料→エナメル系塗料の順番に拭き取り前提で塗装すれば問題なし! 初心者でも簡単に仕上げることができるのです

胴体を塗り分けよう

▲真っ白な胴体。白い面積の多さにそっと箱を閉じがちなパーツですが、頭部で学んだ拭き取りテクニックを使えば問題ありません。大面積の筆塗りにチャレンジしてみましょう
▲頭部同様、最初はMr.カラーGXのキアライエローで胸ダクトやヘリウム・コアを塗っていきます。大面積を塗るときはまずエッジ部分から。エッジは塗料が乗りにくいので、先に塗っておくと角から下地が透けるのを防げるのです

▲大面積を濃い塗料で1回で塗ろうとすると、大量の塗料で表面がボテボテになってしまいます。均一に塗るポイントは交互に塗ること。平筆を使い、Mr.カラー薄め液を足して薄めた塗料を縦に塗っては乾かし、横に塗っては乾かす。これを繰り返しましょう。乾燥していない状態で上塗りしたり、塗料を塗り拡げようと一度塗った筆を返したりすると下地の塗料が溶け出してムラになってしまうので、早く塗りたい気持ちをグッと抑えて気長に構えるのが筆塗りのコツです

▲腹部のレッドはMr.カラーのモンザレッドで塗り分けます。他の部分と同様、エッジを塗ってから内側を塗りつぶせばOKです
▲ラッカー系塗料での塗装が終わった状態。明るく鮮やかな色をラッカー系塗料で塗装しておくことで、色が濃く同系塗料ではみ出すと修正困難な部分をアクリル塗料の中性洗剤落としで簡単にリカバリーできるのです
▲胸のブルーを水性ホビーカラーで塗り分けます。設定画やアニメではスカイブルーですが、説明書ではインディブルーに塗られており、このイメージが強かったため後に続く多くのガンダムキットの胸がインディブルーのものも多いです。好きなほうを選んでください
▲今回はキットの説明書に合わせ、よりガンプラらしいインディブルーで塗装します。水性ホビーカラーの筆塗りでも、まずは塗料が乗りにくいエッジ部分から塗っていきましょう
▲水性ホビーカラーで大面積を塗る最大のポイントは、最初にごく薄めた塗料を全体に塗っておくことです。これをしておくことで表面に水性ホビーカラーの膜が形成されるため、筆塗り2回目以降の塗料のノリが抜群によくなるのです
▲下地を作ったら、塗料を塗り重ねていきます。これもコツはラッカー系塗料と同じで、縦、横と交互に塗り重ねていくのがポイントです
▲難所である腰のVマーク。ここはVマークをラッカー系、赤い部分を水性ホビーカラーのレッドで塗りましょう。イエロー部分にはみ出しても、マジックリンを染み込ませた綿棒で拭きとり、納得いくまで何回でも修正できます
▲胴体の塗り分けが終わりました! 筆ムラは残っていますが、筆とは本来タッチを楽しむもの。多少の凹凸や跡は筆塗りの「味」です。缶スプレーやエアブラシで塗ったような完璧さを求めるのではなく、真っ白なキャンバスに色がついていくことを純粋に楽しんでください

シールドを塗ろう

▲シールドも真っ白なパーツです。細く真っ直ぐな地球連邦軍マークや大面積のレッドなど、このガンダム最後の難関です。塗るのが面倒なときは「シールドは破壊された」と割り切ってしまうのもOKですよ(笑)
▲シールドのイエローも頭部や胴体同様、アクリル系塗料の中性洗剤落としで仕上げていきます。まずは地球連邦軍マークをキアライエローで塗り分け。ここははみ出してもまったく問題ありません
▲便利なテクニックですが、はみ出した部分をディテールに沿って真っ直ぐに拭き取るのは意外と大変。ここはマスキングテープを地球連邦軍マークに貼り、水性ホビーカラーのレッドで塗り分けていきましょう
▲地球連邦軍マークの周りを塗り分けた状態。長い直線を筆使いや拭き取りだけでキレイに塗るのは難しいですが、マスキングテープを使えば簡単に塗り分け可能です。筆塗りのときもマスキングテープは積極的に活用すると便利ですよ
▲おおっと! もう大丈夫だろうと触ったら塗料が乾いておらず、グニュッと塗膜が歪んでデッカイ指紋がついてしまった…
▲塗料が完全に乾くまで待ち、400〜600番紙ヤスリで表面を整えます。水性ホビーカラーはラッカー系塗料よりも乾燥に時間がかかるので、より確実に修正するなら1日ぐらい時間を置いたほうが安全です
▲修正して改めて塗り直したシールド。筆塗りをしていると、指紋がついたり、塗膜が厚くなりすぎたり、表面に泡が出たりすることはよくあります。そんなときは焦らずに、紙ヤスリで表面を整えてリカバリーすれば大丈夫ですよ

ガンダム塗装完了

▲すべての塗装が終わった状態。グレーは水性ホビーカラーのミディアムブルー、ピンクはMr.カラーのピンクで塗り分けています。接着剤がはみ出さないように組み立てれば筆塗りガンダムの完成です!
▲素組み(左)との比較。色のムラなど多少のアラはあるが、当時ものキットならではの“味”を出している

 私が初めてこのガンダムを塗ったのは9歳のときです。当時もののガンプラにはカタログを兼任したパンフレットがよく入っており、その中で成型色を活かして赤・青・黄だけで塗られた1/144ガンダムが紹介されていたのです。「これならできるかも!」と近所の文房具屋(当時はいろんなお店にキットが売ってました)の片隅にあったガンダムと塗料を買ってきて、塗ってみたのですが…。全然ダメでした! 顔は色がはみ出してぐちゃぐちゃ、胸とシールドはムラがすごくてペンキをぶっかけた現代アート状態。「連邦のMSは化け物か!」と苦手意識だけが胸に残りましたね(苦笑)。大人になっていろんなモデラーさんと話をしてみると、実に多くの人がこのガンダムで私と同じ経験をしていたのです! 今回は見ての通りすべて筆塗りで、ムラもアラも残っています。でも、あえてツヤ消しのスプレーは吹かず、ありのままです。変にツヤ消ししてカッコをつけるより、ありのままのほうが「より当時のガンプラらしい」と強く感じたからです。不思議と、合わせ目も剥き出しでアラだらけなのに、全塗装でガッツリ作ったガンプラよりも愛おしく感じるのです。現代は優れた塗料が数多く出揃い、技法も、そして我々モデラーも大いに成長しました。今こそ、幼い頃に敗れた、あの真っ白いガンダムとの戦いに決着をつけるときではないでしょうか♪

BANDAI SPIRITS 1/144スケール プラスチックキット

ガンダム

製作・文/林哲平

© 創通・サンライズ

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林哲平(ハヤシテッペイ)

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