話題の最新アイテム「ROBOT魂 ズワァース(H.D.)」について開発スタッフ・柳沢 仁にインタビュー!! その魅力とこだわりは?【サンライズロボット研究所 研究報告】
2026.08.05ROBOT魂ズワァースH.D.の魅力とは
柳沢 仁(アーミック)
インタビュー
センセーショナルな話題を呼んでいる、ROBOT魂<SIDE AB> H.D.。今回はその開発スタッフに、最新アイテムであるROBOT魂 ズワァース(H.D.)についてお尋ねした。
柳沢 仁(やなぎさわ・ひとし)
1968 年、東京都出身。有限会社アーミック取締役。ホビーメーカーのコンサルタントや企画~発売までのサポート業務に従事する。
オーラ・バトラーの魅力を集約したスタイルと
最大の可動を盛り込んだズワァースH.D.
──ズワァースH.D.はどのような方向性で進められたのでしょうか。
ダンバインH.D.と違って、「オーラファンタズム」のズワァースには明確な全身画稿がないので、こちらである程度オリジナルで仕上げた部分があります。テレビ版ズワァースは、公式のスペック通りだと案外サイズが小さいんですよ。だからイメージ的にはラスボス級の存在感なのに実際には意外と小さくて(編注:例えばズワァースの全高は7.9メット。レプラカーンは8.8メット)、それでその後OVA版でズワウスになったら一気に大きくなった。僕自身にもズワァースは大きくないと、という気持ちがあったのでH.D.にはそのイメージを盛り込みました。それと、ダンバインが象徴する「正義のイメージ」に対する禍々しさみたいなものをズワァースには取り入れたかったんです。それらの点を加味しつつ、“ズワウス”に寄り過ぎない程度にアレンジを加えた感じですね。
──顔などは、LD BOX用イラストのイメージも感じられます。
ダンバインのカブトムシに対して、ズワァースはクワガタがモチーフと解釈しています。ですからLD BOXのイラストもイメージの参考にしつつ、全身をノコギリクワガタっぽく、トゲトゲした感じを加えました。
──ダンバインH.D.には明確な方向性を示す画稿が存在しましたが、今回のズワァースは今後のH.D.シリーズを世に問う、挑戦的なアイテムになっていると思います。
1990年代のガレージキットのオーラ・バトラーに負けない造形を、マスプロ商品で再現してみたいという思いがあります。『聖戦士ダンバイン』を40年以上追いかけてきた方々に、「昔、オーラ・バトラーはこんなアレンジもあったよね」と感じてもらえることを目指しています。オーラ・バトラーの魅力は他のロボットアニメにはないファンタジーメカ要素や3次曲面のうねりだと思うんですよ。その魅力をズワァースに徹底的に盛り込むことで、「こんなにカッコいいのか!」とストレートに感じ取ってもらいたい。そこをしっかりアピールしないともう一体ズワァースを欲しいと思ってもらえないという懸念もあったので、ズワァースH.D.ではかなり面構成の情報量を増やしていて、同一面に必ず膨らみと凹みが混在する複雑なデザインにしています。
これまでROBOT魂<SIDE AB>は買ってなかったけど、この造形なら買ってみようかなと思わせるような、新規層へのアピールも意識しています。モチーフとしても、「禍々しい黒い敵」という分かりやすいカッコよさがありますしね。
──H.D.シリーズは、現在も手作りのパーツ原型を基にして設計が行われているとのことですが。
デジタル化のご時世なので「データ上で設計してほしい」ということはずっと言われていて、僕が手掛けている他の商品はCADデータ納品になっています。でも、オーラ・バトラーに関してはCAD設計のどの業者さんからも「無理なんですけど」と断られます(笑)。だからズワァースH.D.も手作り原型なんですけど、原型担当をしていただいている原口高陽さんは自分がオーラ・バトラーのガレージキットを作ってる頃からの原型師仲間で、30年来の盟友なんです。その方とはツーカーで、「ここは抑揚が欲しい」等の簡単な単語でこちらのイメージを的確に再現してくれますので原口さんの原型なしでは〈SIDE AB〉は成立しえなかったと思いますね。
今は人形とか曲線が難しいものでもCG系ソフトで作れるんですけど、それだと可動機構が入れ難いんですよ。だから関節部の追い込みをかけるにはCADデータに置き換えてから再度検証することになり、ものすごい手間と費用と時間がかかるんですよ。METAL BUILDのサーバインはそれに近いやり方で作っていますが、でもさすがにROBOT魂でそれは無理だということで、いまだに手原型を許していただいている現状で、原型時点で商品とほぼ変わらない外観と構造を再現してそれをBANDAI SPIRITSさん側でスキャンしてCADデータ化してもらっています。ただこれも手原型でキッチリ寸法が出る可動構造まで追い込める原口さんの技術あってのことですね。
──造形やディテールにこだわりつつ、可動モデルとしてのこだわりもすごそうですね。
これまでの蓄積でアクションポーズに必要な節々の長さ、曲げ角度の深さは把握しているので、そのオーラ・バトラーで特徴的な形状をスポイルすることなく可動機構を組み込めるかが課題となります。特に大きなオーラ・コンバーターは全体シルエットに影響するので、開閉に加えて根元が3軸可動で上下左右に動き、角度を調整して表情を付けることができます。一番悩ましかったのがズワァースの胸部と一体化した肩装甲で腕部可動が非常にし難い形状だったことです。デザインを変えることも考えましたが、ここはズワァースの特徴として残したく、前側だけを開くアレンジとしました。また首の可動にも気を遣っていて、襟に埋まった感じから伸ばして鎌首のように前へ動くようにしました。ポーズを付けるときに、前方へ向かう勢いのニュアンスを出すこともオーラ・バトラーのポイントだと思っていますから。あと腹部コクピットハッチは4枚構成で開きます。ハッチ開閉は地味に軸位置設計が難しいのですが、このシリーズのお家芸ですので今回は特に頑張って派手に開かせました(笑)。
──H.D.シリーズの特色として効果的な関節機構がありますが、ズワァースH.D.にもこだわりの関節機構が入っているんですね。
オーラ・バトラーには腰の回転が難しそうなデザインが多く、今回は前後屈させ横回転も入れていますが、隙間が目立たないようにニュートラル状態で隠れている腹部ケーブル形状で違和感のない可動アウトラインを実現しています。
──引き出した関節部にも有機的なディテールが施されていて、見た目を崩さないようになっていますね。
H.D.シリーズに関しては単純なコードの束ではなく、オーラファンタズムのデザイン画で描くような「骨や筋肉繊維」を参考に、より複雑なデザインにしています。
造形と可動を両立したオーラ・バトラーは、個人的にも夢だったんですよね。1983年のリアルタイムの頃はその先駆的なデザインに頭が追いつけなくて、受け手側だった僕もプラモデルをどう作ればカッコよくなるか分からなかったんです。でも「これは違う」ということだけは分かっていた。だから「何とかしたいのに、どうすればいいのか分からない」という模索をずっと続けていて40数年といったところでしょうか?(笑)
──テレビ放送当時に出ていたオーラ・バトラーのプラモデルはパーツ単体で見ると出来が良いのに、組み立てると「おや?」となった印象がありますね。
例えば1/72ダンバインは宮武(一貴)さんが描いた三面図に結構似ているんですよ。当時はその三面図に疑問はなかったんでしょうけど、正面や側面図だけでは面の張り具合などの微妙なニュアンスは金型や木型を作る人のセンス任せになってしまう。図面の線にない複雑な三次曲面を求められる時代ではないですし、僕らはアニメになった湖川氏やスタジオビーボォーが描く作画によってイメージを膨らませていったわけなので、数枚の設定画からしか情報を得られない状況ではそこが当時のプラモデルの限界であり、違和感の原因だと思います。でもそれがあったからこそ「もっとこうするべきじゃない?」という思いが増えていったわけで、ガレージキットの原型師たちのトライ&エラーがあり、それを含めてメーカーが商品を作る……という繰り返しがあったからこそ、今の造形に到達できたんだと思います。将来〈SIDE AB〉に影響を受けたという人たちから新しいオーラ・バトラー像が出現してくれれば嬉しいですね。
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