「テーマを一言で言うなら、“テレビで見られなかったゼッツとノクスの相互的な感情”です」『仮面ライダーゼッツ さよならのミッション』上堀内佳寿也監督インタビュー
2026.07.21間もなく公開の映画『仮面ライダーゼッツ さよならのミッション』。テレビ本編ではなかなか見る機会のなかったゼッツとノクスの共闘、CODEのエージェントたちの集結、存在感抜群のゲストキャラクター・玖門宗馬など見どころの多い今作でメガホンをとったのは、『仮面ライダーゼッツ』テレビシリーズでもパイロット監督を務めた上堀内佳寿也監督。今回のインタビューでは、映画の見どころや監督のこだわり、そしてテレビシリーズから映画までを駆け抜けたキャスト陣への思いまで、じっくりと語っていただいた!
――上堀内監督が今回の映画を撮影される上で一番大切にされたテーマは何ですか?
上堀内 一言で言うなら、テレビ本編では見られなかったゼッツとノクスの相互的な感情です。
――映画でゼッツとノクスの共闘が大きな見どころになるくらい、『仮面ライダーゼッツ』は2人、さらにドォーンも加えた3人のライダーたちが一緒に戦うということが極めて少ない作品でした。
上堀内 僕はテレビシリーズでノクスやドォーンのメイン回を撮っていないし、『仮面ライダーゼッツ』の企画を始める時にもゼッツ・ノクス・ドォーンの関係がどうなっていくとかの前に“とにかく「莫をどうするか」”を考えていたので、そのあたりの関係性を上手く築いてくれた企画チームと他の監督さんたちに感謝しています。シリーズ後半に差し掛かってもなかなか共闘しないなとは思ってましたが、それは谷中プロデューサーの狙いですかね。
結果的に共闘のタイミングがここまで引っ張られたことによって、莫がかなりしっかり「仮面ライダー」の原点にいるキャラクターになったと思えました。もちろん周りに助けてくれる人たちはいるけど、同じ意志を持って変身して戦える仲間がずっとはいない、「孤高のヒーロー」という描写がちゃんととできたんじゃないかなと思います。
ライダーのデザインもそうですが、『仮面ライダーゼッツ』では一番最初にみんなで「仮面ライダー」の原点って何だろうっていうことを考えて作っていったので、莫がそういう「孤高のヒーロー」になってくれたのはすごくよかった。
――ノクス、ドォーンもまた自分の信念を貫くという意味ではそれぞれが「孤高」のヒーローに見えました。
上堀内 そうですね。ノクスもドォーンも結局、誰一人統一した意思を持って動いていないんです。己の信念だけで動き続けているからこそ、おのずと明確にお互いを仲間だと言わない人間関係が作り上げられたのかもしれません。
――今回の映画で上堀内監督が一番やりたかったことは何ですか?
上堀内 一番は「スクリーンで観てよかった」と思ってもらえる作品を作りたいということですね。テレビシリーズを観てくださっている方はもちろん、観たことがない方も含め、どんな人が観たとしても映画館に足を運んでよかった、観る価値があったと思える内容とビジュアルを造りたかった。それに尽きます。
――今回の映画の目玉の一つであるバイクアクションもその一つでしょうか?
上堀内 もちろんです。仮面ライダーなので、バイクに乗ってほしいんですよ。僕はやっぱり、そのアイデンティティは大事だとずっと思っているので。その上『仮面ライダーゼッツ』は主人公がエージェントで、スパイ映画のテイストも取り入れている作品なので、そういう意味でもバイクの描写は欠かせないですよね。
――テレビシリーズでも第2話のバイクアクションをはじめ、バイクが例年以上に印象的に登場していると感じています。
上堀内 ありがとうございます。シリーズ通して例年よりはバイクを出せたんじゃないかと思っています。でも、お金を払って映画を観に行くんだったら、やっぱりテレビでは見られないものを見たいですよね。自分だったらそう思います。なので今回の映画では、テレビではないような長尺で、それでも飽きないし「ヒヤッと」「ドキッと」してもらえるものを作りたかった。
撮影もリハーサル込みで5日くらいかけてバイクシーンを撮りました。自分が撮っていてワクワクしないものは、誰が見てもワクワクしないだろうなと思ったので、妥協せずに撮らせてくれた制作会社とスタッフに感謝です。
――今の時代、やはりバイクアクションの撮影は大変ですか?
上堀内 そうですね。仮面ライダー以外の作品でもめちゃくちゃ大変なんじゃないかと思います。やっぱりどうしても日本という土地のキャパシティの限界がありますし、法律による昨今の規制もあります。でもだからこそ、みなさんがドラマや映画などのフィクションに求めるものって、『自分たちが生きている枠の外にある規模の出来事』というのもひとつあると思っています。もちろんルールを守った上でですが、今夏の映画ではそれを最大限、表現できたんじゃないかと思っています。
――『仮面ライダーゼッツ』といえば「夢」と「現実」の描写の違いも特徴的ですが、今回の映画では「白昼夢」という新しいシチュエーションが登場します。
上堀内 『仮面ライダーゼッツ』の大きな根幹の要素である「夢」と「エージェント」だと、「夢」の方は比較的テレビシリーズでしっかりと表現できたかなと思っていて、だから映画ではエージェントらしさ、スパイ映画的な要素を強めにやりたいという話が最初に出たんです。そのために物語のフィールドを現実に持ってこられないかという話になりました。なので今回は、夢の中に入って戦うんじゃなくて、現実の世界に夢が侵食してくるという構成で作ることになりました。
テレビシリーズでは夢と現実を区別するために色味などを調整するなど、工夫を凝らしていました。夢ではちょっと変わったトーンの映像にしたり、現実ではないことを表現しているんです。ですが今回は現実に夢が入ってきたことを表現するためにまず、そこが現実であるということを意識してもらいたかった。なので、自分たちの日常に落とし込んだ共感性を持てるビジュアルを作ることを心掛けました。だから渋谷や新宿など、「ここ行ったことある!」と思えるようなロケーションが多いです。知っている場所なんだけど、そこに赤い月が浮かんでいる。本当に自分の生きている世界で起きている出来事なんじゃないかって感じてもらうために、ロケ地にもかなりこだわりました。
――本作のオリジナルキャラクターである玖門宗馬についてお聞かせください。
上堀内 難しい役でしたよね。国家公安委員会のトップなので、貫禄も必要だし、ゼッツの前に立ちはだかる仮面ライダー夢現としては畏怖や迫力、怖さも必要ですし。でも演じる曽野(舜太)くんはもちろん年齢的にはまだ若いので、そのあたりをどう結び付けようかなと考えていました。
衣裳合わせの時に曽野くんには、年齢を重ねないと出ないような貫禄を無理に出すんじゃなくて、今の自分が玖門の立場になったらどうなるかを考えてほしいという話はしました。結果、あまり心配する必要はありませんでしたね。当たり前ですけど普段から人に見られるお仕事をされている方なので、大衆の前に体一つで姿を見せて率いていく、引き込んでいく姿は玖門と曽野くん本人に通ずる部分があるなと思わせてくれました。
――劇中では玖門は刀を振るうアクションも披露しています。
上堀内 さすがでした。もともと刀さばきにすごく慣れていたわけではなかったと思いますが、体幹はしっかりしているし、立ちざまや振りざまの堂々とした姿が玖門にしっかりハマっていて、シンプルな言葉ですけどかっこよかったです。
――変身後にあたる仮面ライダー夢現はどのように演出されましたか?
上堀内 夢現は役としては、玖門以上に難しかったんじゃないかなと思いますね。物語の構成上、変身前の玖門でいる間はあまり感情が表に出ないんです。そんな中でのじっとりとした内に秘めたものは曽野くんが表現してくれたんですけど、夢現に変身してからの戦いではいよいよ玖門の感情が見えてくる。でもそこを演じるのは夢現のスーツアクターの北村海さんなので、そこは僕が間に入って、2人の思いを拾いながら僕のアイデアも入れてバランスをとっていきました。
――今井竜太郎さんをはじめとした『仮面ライダーゼッツ』のレギュラーメンバーについて、撮影で変化を感じるところはありましたか?
上堀内 今井くんはいい意味で変わらなかったのが素晴らしいと思っているんです。テレビシリーズから映画の撮影まで通して1年半くらい、その期間一度もだらけることなく、現場で一定の緊張感をずっと保ってくれていて。最初はやっぱりあどけなかったし頼りない部分もあって、どっちかというと現実の莫に近い雰囲気だったんですけど、シリーズ後半になっていくとどんどんエージェントの方の莫に近い、頼りがいのある存在になっていきました。だから僕は映画の撮影の時はもうなんにも言ってないんです。テレビシリーズが始まった頃は彼のお芝居に対して「もっとこうしてみようか」という話もしていましたけど、後半はどちらかというと同じ目線で、作品をよくするためにいろいろ語り合えたんじゃないかと思ってます。それぐらい信頼を置ける存在になりました。
堀口さんは伸びしろナンバーワンです! 彼女にはもう可能性しかないので。撮影スタートから終了までで一番伸びた子だと思いますし、きっとこれからもどんどん伸びるので、この先にも期待しています。
八木さんは元々ナチュラルなお芝居が得意な子で、途中でそれに悩むこともあったみたいなんですが、僕はそのナチュラルさをずっと武器にしていってほしいということを伝えさせてもらいました。ご自身と周りの方々のおかげだと思いますが、どこからか吹っ切れた感覚があって、ナチュラルさを残しつつも自分を前に出すお芝居をすることが多くなったと感じました。『仮面ライダーゼッツ』での経験がなにか少しでも彼女にとってプラスになっていたら嬉しいですね。
怪事課2人のお芝居は最初から安定していましたけど、三嶋さんと小貫さん本人の関係性が1年通してよくなっていって、それが役に反映されていたんじゃないかなと思います。友だちみたいだけど友だちとは少し違うし、かといって仕事だけの関係でもない独自の関係を2人で作ってくれたので、それは確実に映像にも出ていたと思います。
――CODEのエージェントについてはいかがですか? 映画でもエージェントたちが一堂に集結するシーンが大きな見どころになっています。
上堀内 CODEのみなさんはそれぞれの個性で作品にいろいろなものをもたらしてくれたと思っています。たとえばザ・レディの美村さんは作品に『深み』を、ジークの天野さんなら作品に『幅』をいただいた。みなさんキャリアのある方ばかりなので、自分の役柄が作品内でなにを求められているのか、その使命みたいなものを台本や現場の空気から読み取ってやってくださるんです。本当に素晴らしい。
映画ではそれまで一度も集結したことがなかった彼らが集まるってことになって、もうどうなるのか僕もわからなかったんですよ。集まったところなんて撮ったことないから(笑)。いざやってみたら、各々のお芝居が確立しすぎていて、撮りながらずっとちょっと笑っちゃってました。あまりにも画が強くて。
――純粋に豪華なメンバーというのもあるんですが、仮面ライダーでこんな画は見たことがなかったと感じるような力がありました。
上堀内 ご本人たちの力が素晴らしいのはもちろんですが、やっぱり谷中(寿成)プロデューサーと脚本の(高橋)悠也さんの力も大きいですね。おふたりがシリーズを通してCODEというものをどういうふうに作品に落とし込んでいくか悩みに悩んだ結果、これだけ素晴らしいメンバーに恵まれたんじゃないかなと思うので、僕はただ感謝です。
――『仮面ライダーゼッツ』といえばアクションも非常に印象的ですが、監督は今回のアクションチームとはどのようにアクションを作り上げていかれましたか?
上堀内 最初にアクション監督の(渡辺)淳さんと話したのは、昨今の作品は時間の都合などもあり、少しCG、合成比率高めのアクションが増えてきているように感じるということです。なので『仮面ライダーゼッツ』では思いっきり肉弾戦をやりたい、合成に頼りすぎないアクションを作ろうと。レギュラーの仮面ライダーのスーツアクターを担当した新田(健太)さん、永徳さん、高田(将司)さんも、そういうアクションをやりきってくれるであろうメンバーにお願いしました。
僕が今までやってきた中で、『仮面ライダーゼッツ』は一番アクションチームと密にやりとりをして作った作品でした。それができたのは、『ゼッツ』のアクションチーム全員が全員にちゃんと改善点を指摘し合える方々だったからだと思います。全然慣れ合わないんですよ。僕はそれが大好きで。相手がアクション監督だろうと監督だろうと、演出的なこと、人間的なことも含めしっかり指摘してくれて、プレイヤー側がそういうふうにやってくれるとこっちも遠慮なしにぶつかっていけるんですよね。みんなアクションを作っている時は鬼みたいな形相をしているんですけど(笑)、ちゃんと全員が同じ方向を向いて、作品のクオリティを高めることを目指していけた素晴らしいチームだと思っています。
――映画のアクション的な見どころも教えてください。
上堀内 まず仮面ライダードォーンはテレビシリーズの時よりぶっ壊れています! ドォーンにはドォーンを貫いてほしかったので、僕たち作り手側がドォーンというキャラクターに突き抜けた解釈をしきった結果のアクションになっています。期待してほしいです。
あとはゼッツとノクスの共闘なんですけど……この2人がいい意味で共闘していないように作りたかったんです。テレビシリーズと同じように各々が信念を貫いていて、それが合致したから今一緒にいるんだというニュアンスを、アクションの中にも最大限盛り込んだつもりです。ド派手なアクションというよりは心にくるアクションを目指したので、それを体感してもらえたら嬉しいです。
――最後に映画を楽しみにしているみなさんにメッセージをお願いします。
上堀内 ずっと『仮面ライダーゼッツ』を観てくれている方、少し離れている方、触れていない方、どなたが観ても劇場に来てよかった、面白かったと言ってもらえる映画になっている自信があります。まずはそれを体感しにきていただきたいです。あとは仮面ライダーシリーズが今後も続いていけるように、テレビシリーズ含め『仮面ライダーゼッツ』という作品では新たなチャレンジをいろいろやっていますので、これからも引き続き『ゼッツ』を愛してくれたら嬉しいです。よろしくお願いします!
上堀内佳寿也
かみほりうち・かずや
1986年10月21日生まれ、鹿児島県出身。『劇場版 さらば仮面ライダー電王 ファイナル・カウントダウン』への参加をきっかけに、『仮面ライダーキバ』から仮面ライダーシリーズの助監督を務める。『仮面ライダーゴースト アラン英雄伝』『ゴーストRE:BIRTH 仮面ライダースペクター』など数々のスピンオフ作品やVシネマの監督を務めた後、映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FINAL ビルド&エグゼイド with レジェンドライダー』を監督。『騎士竜戦隊リュウソウジャー』『王様戦隊キングオージャー』ではメイン監督を担当した。近年は『特捜9』シリーズなど幅広いジャンルの作品を手がけている。
『仮面ライダーゼッツ さよならのミッション』は7月24日(金)より全国劇場公開!
仮面ライダーゼッツ さよならのミッション
[キャスト]今井竜太郎●古川雄輝●堀口真帆●三嶋健太●小貫莉奈●八木美樹●玉城裕規●小柳心●平川結月●曽野舜太●川平慈英●天野浩成●美村里江
[スタッフ]原作:石ノ森章太郎●脚本:高橋悠也●音楽:高木洋 坂部剛●アクション監督:渡辺淳●特撮監督:佛田洋●監督:上堀内佳寿也
主題歌:『Dreams Never Sleep』YUTA(avex trax)
「宇宙船 vol.193」は夏映画を大特集!
現在好評発売中の「宇宙船vol.193」では、『仮面ライダーゼッツ さよならのミッション』と『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ 太陽が泣いた日』を大特集!
映画『仮面ライダーゼッツ』からは今井竜太郎さん(万津莫役)×古川雄輝さん(小鷹賢政/ノクス役)の対談と谷中寿成プロデューサー×上堀内佳寿也監督の対談を掲載。さらに仮面ライダー夢現の特写も!
そして同時上映の映画『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』からは長田光平さん(弩城怜慈役)×赤羽流河さん(哀哭院刹那役)×角心菜さん(祝喜輝役)の鼎談と福沢博文監督インタビューを掲載!!
その他テレビシリーズのインタビューも満載な「宇宙船vol.193」を、今年の夏のお供にぜひ!
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