シルバーの上からクリアーカラーを塗り重ねることで深みのあるメタリック表現を行う技法が「キャンディ塗装」です。“複数の色を塗り重ねる”ということはひとつひとつの色を薄くしっかり乗せることが必要になりますので、こういった作業にはやはりエアブラシ塗装が最適です。月刊ホビージャパンモデラーの中でも塗装仕上げのきれいさには定評のあるurahana3が、SDW HEROES スペリオルストライク フリーダムドラゴンを題材として、キャンディ塗装も含めたメタリック塗装の重ね塗りを解説します。
製作・解説/urahana3
・メタリック塗装は表面処理で完成度が決まる
・仕上がりの方向性は下地の色に左右される
・金は下地→金の2段階塗装
・赤は下地→反射層金→表面層赤の3段階塗装
メタリック塗装の第1歩は表面処理から
メタリック塗装は光の反射の影響を受けやすいので、表面処理がしっかりしていないと角度によって粗が見えてしまいます。
▲キットはタッチゲート方式を採用しています。最初にこちらのタッチゲートの跡を、800番の紙ヤスリできれいにします
▲次に1200〜1500番相当のスポンジヤスリで全体をヤスリがけします。パーツの形状が非常に複雑なので普通の方法では難しいのですが、番手の高いスポンジヤスリならエッジを落とさずにヤスリがけできます
▲最後は3000番相当のスポンジヤスリで仕上げます。形状が複雑なお陰でヒケも特に見つからないですし、パーツの仕上がり自体も元からきれいなので、さらっと当てるだけで充分だと思います
塗装するパーツの確認と使用する塗料
▲塗装するパーツを確認していきます。まずは全体の金ですが、成型色では2色の金色を使用しています。ですが、今回は金塗装がメインではないので単色で仕上げます
▲今回のメインとなるのはこちらのパーツです。全体的には金色ですが、部分的に赤で塗り分けられています。この赤部分をキャンディ塗装で仕上げます
▲こちらが使用する塗料です。①は赤塗装で表面層になる「GXクリアルージュ」、②は赤塗装で反射層になる「スターブライトシャンパンゴールド」、③は共通の下地になる「AT-16ブラッドレッド+CB-23ブラウン」、④は金塗装の表面層になる「ブライトゴールド+スターブライトゴールド+エルドランゴールド」。②のスターブライトシャンパンゴールドは淡いシルバーに近いゴールドになっており、シルバーの代わりにチョイスしました
下地大事です
▲まずは下地塗装を行います。スペリオルストライク フリーダムドラゴンの金は赤みを帯びているので、混色した赤を下地として吹いていきます
▲下地の赤を吹き終わった状態です。この赤が次の項目で上掛けする金の土台になって赤みを帯びた金になります。下地を活かして重ね塗りをするときは、下地によって表面層の見え具合が変わってくるので、先にテストピースで塗装しておくとよいかもしれません
まずは金塗装から
▲下地塗装が完了したら、まずは全体を構成する金を塗装していきます。先に塗装した下地によって赤みを帯びた金になりました
反射層金
▲ここからがキャンディ塗装のメインとなる反射層と表面層の塗装になります。まずは反射層になる「スターブライトシャンパンゴールド」を塗装します。「塗装するパーツの確認と使用する塗料」でも紹介しましたが、かなりシルバーに近い印象です
表面層赤を塗装
▲表面層になる「GXクリアルージュ」を塗装します。下地層→反射層→表面層の3段階塗装になっています。一見すると下地塗装の意味がなくなっているように感じますが、下地を統一することで、金塗装と赤塗装ともに仕上がりに違和感がないようにしています
▲表面層の塗装が終わった状態です。塗料が乾燥したら赤を残す部分をマスキングして、金塗装を行います
▲金の印象が強いので確認しづらいのですが、額飾り、頬当てや肩アーマー、腰アーマーの段落ち面が赤くなっているのをご確認ください
完成!
キャンディ塗装でメタリック塗装の幅が広がる
キャンディ塗装を含めたメタリック塗装の重ね塗りで製作したスペリオルストライク フリーダムドラゴンが完成しました。全体を構成する金塗装のきれいな仕上がりが目を惹きますが、キャンディ塗装による赤が金とは異なるキラリと光るアクセントになっています。全体をスタンダードなメタリック塗装にするよりも、塗装法を変えたことで赤が金の中に埋もれることなく存在感を主張しています。キャンディ塗装をマスターすればメタリック塗装の幅がさらに広がりますよ。
▲作例はこれまで解説した塗装後にスミ入れを行って仕上げています。スミ入れによって各モールドの形状がよりくっきりと認識できるようになりました
BANDAI SPIRITS プラスチックキット“SDW HEROES”
スペリオルストライク フリーダムドラゴン
製作/urahana3
© 創通・サンライズ