HOME記事キャラクターモデル『機神幻想ルーンマスカー』誕生秘話!【第3回】 造形師 “谷 明” と開発陣に聞く「ARTPLA スレイプニール」開発の裏側

『機神幻想ルーンマスカー』誕生秘話!【第3回】 造形師 “谷 明” と開発陣に聞く「ARTPLA スレイプニール」開発の裏側

2023.11.26

 こうした経過を経て完成した原型をもとに、金型製作に入り、インジェクションキット化が進められていった。開発陣を悩ませたのは、谷が手掛けた原型の良さをそのままに、インジェクション成形するためにどのような金型設計を行うかということだった。その結果、一部には大胆なパーツ分割を行う“モナカ構造”を取り入れた。海洋堂のARTPLA開発担当の塩入翼は、その判断について次のように語っている。
「谷明の真骨頂である繊細なメカ表現とそれを覆う曲面、これを限られた金型面数でどうやって構築するかはとても悩みました。そして、結果としては胴体部分は“モナカ構造”にしています。胴体の段差などのディテール部分で分割線を目立たなくすうるようなパーツの割り方や、細かいパーツでバラバラになりすぎないよう金型から抜ける角度を試行錯誤していく中で、結論として谷が造形した曲面を綺麗に表現することができるのは、モナカ構造であることがわかったという形です。
 今回は、大胆なパーツと谷造形の真骨頂である繊細なパーツが混在しているので、キットを組み立てる際には、レジンガレージキットとプラモの良いとこ取りをした緩急のついた組み立て工程が楽しんでもらえると思います」

スレイプニールのランナーの画像
▲ 本体部分は曲面の美しさを優先した結果、大きなパーツを左右から組み上げる“モナカ構造”を採用。この大胆なパーツ分割は、プラモを組む楽しさを味合わせてくれる

 インジェクションキットを世に送り出すにあたって、もうひとつ重要な要素となるのが成型色だ。ARTPLAスレイプニールは、海洋堂を代表する造形師であり、フィニッシャーとしても高い評価を受けているBOMEが塗装見本を製作している。そして、成型色もBOMEによる塗装見本に近い色味となっているが、そこに至るまでも試行錯誤があったという。
「商品のリリース案内時には、原型の立体出力品にBOMEが塗装を施したものをお見せしました。この色味は、まさに“神々しい”という言葉がピッタリな色合いです。最終的にはこの色味を成型色に採用したわけですが、その前には青寄りのグレー、紫寄りのグレー、ギラギラのシルバーなど、何種類ものカラーサンプルを作って調整しました。最初のテストショットの段階では、青だったんですが、狙った色では無かったので変更しています。
 最終的には、BOMEの塗装作例の色合いである、少しパール粒子が入ったグレーを採用しました。光の当たり方や影の入り方で、谷の造形の面が映えるようになっていてとてもいい仕上がりになったと思います。組み立て終わったら、机の上に置いて、立体物としての迫力を感じて欲しいですね。成形色のまま組み立てて置くだけでオーメントになるようなプラモになっています」

複数のカラーチップがならべられた画像
▲ 成形色決定のために作られたカラーチップ。この中から、組み上げるだけでイメージに近いものになるよう検討が重ねられた
塗装されたレイプニールとランナーの画像

 こうして、デザインと監修を行った出渕、原型を担当した谷、そして海洋堂の開発部が一丸となることで、ARTPLAのフラグシップともなるキットとしてスレイプニールは完成。思わず見とれてしまうような美しい曲面で構成された体躯と存在感は、出渕デザインの造型物の中で、現時点での最高峰と言える仕上がりとなっているだろう。
 4月の発売には、ぜひその手に取っていただき、『機神幻想ルーンマスカー』の世界の雰囲気をぜひ立体として味わってみてほしい。


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Ⓒ出渕裕/徳間書店

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TEXT/構成:石井 誠

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