『機神幻想ルーンマスカー』誕生秘話!【第2回】「月刊ドラゴンマガジン」の創刊と海洋堂との立体連動企画
2023.01.26『機神幻想ルーンマスカー』が本格始動した「月刊ドラゴンマガジン」の創刊と海洋堂との立体連動企画
海洋堂が贈るARTPLAブランドにて『機神幻想ルーンマスカー』から機械神 スレイプニールのインジェクションキット化が決定。これを記念した短期集中連載の第2回は、海洋堂と『機神幻想ルーンマスカー』の関わりを掘り下げるにあたって、避けることができないのが作品として本格始動することになる富士見書房から発行された月刊雑誌「ドラゴンマガジン」の創刊にスポットを当てる。連載第1回で紹介した、出渕裕の個展『Masquerade-出渕裕の世界-』以降に、どのようにして『機神幻想ルーンマスカー』という作品が世に出ていったのか? そして、海洋堂がプロデュースした立体物はどのように関係していったのか? 企画が作品として成り立っていくまでの流れを追っていこう。
※本記事は月刊ドラゴンマガジン創刊号および月刊ドラゴンマガジン創刊2号の誌面の一部を転載させていただいております。
出渕裕が紡ぐ、ファンタジー大作『機神幻想ルーンマスカー』は、海洋堂が主催した個展『Masquerade-出渕裕の世界-』(1987年7月開催)にて先行する形で企画発表が行われた。それから6ヶ月後の1988年1月30日に「月刊ドラゴンマガジン」(富士見書房)が創刊され、『機神幻想ルーンマスカー』は、雑誌創刊の目玉企画として大々的に発表された。
創刊号である月刊ドラゴンマガジン3月号では、『Masquerade-出渕裕の世界-』で展示されていた、海洋堂所属の造形家 今池芳章が制作した機械神ネレードの撮り下ろし写真とともに作品の概要が紹介され、さらに出渕裕描き下ろしによるセルワークでのキャラクターイラストもカラーページにて合わせて掲載。
まだ作品の全容が伝わりきらない中で、出渕裕の描く、ファンタジックな世界観と機械と生物が融合したような有機的な機械神のイメージをよりリアリティ溢れる形で伝える手段として、今池芳章の造型の存在感と説得力は、『機神幻想ルーンマスカー』が本格的に動き出す直前の状態において、イメージボード的な存在として大きな牽引力となっていた。
さらに、モノクロページでは、展開予定の作品の概要やこちらも出渕裕が描き下ろしたキャラクターのイラスト、そしてインタビューも掲載されており間もなくスタートする大型企画を盛り上げるページ作りが行われていた。
そして、続く月刊ドラゴンマガジン4月号では、新たな機械神であるスレイプニールの造型が誌面を飾ることになる。発表段階では、スレイプニールのデザインはまだ完成しておらず、出渕裕が描いたラフデザインをもとに、引き続き今池芳章が造型を担当。そのため、その後に発表された完成版のデザインとは細部の形状こそ異なるものの、人魚型のネレードと人馬型のスレイプニールが立体として発表されることで、機械神の存在感がより明確となり、作品世界のイメージの拡大に貢献したと言えるだろう。
モノクロページでは、作品世界に大きな影響を与えることになる、鉄の騎士 ナイトマスカーの登場を示唆する予告的な記事も掲載されており、創刊号に加えてさならう作品世界の拡大が示唆され、連載開始前の期待を大きく盛り上げてくれた。
そして、35年前に誌面を飾ったこのスレイプニールの造形物は、今も現存している。
滋賀県長浜市にある「海洋堂フィギュアミュージアム黒壁 龍遊館」内の海洋堂の歴史を知ることができる「海洋堂ヒストリー」のコーナーにて、一部破損はしてしまっているがほぼ当時のままの姿を見ることができる。
造型は撮影に使用することを前提に前方のみが完成した状態で、背中側は細部まで作り込まれておらず、商品としてではなく、誌面展開用の素材として造型されていることを実物を見ることで味わうことができるだろう。
こうした立体物と連動したページ企画を経て、月刊ドラゴンマガジン6月号より出渕裕自身が描いたコミックス『機神幻想ルーンマスカー』の連載がスタート。こうして、『Masquerade-出渕裕の世界-』での企画発表から約1年後に、物語は待ちわびていた読者に無事披露され、作品世界はさらに広がっていった。そして、そこに至るまで海洋堂がプロデュースした造型物が読者のイメージを広げるきっかけとなり、『機神幻想ルーンマスカー』の盛り上げに大きく貢献したことは間違いない。

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Ⓒ出渕裕/徳間書店
Ⓒ出渕裕/富士見書房 1988
出典
月刊ドラゴンマガジン創刊号 昭和63年3月1日発行
月刊ドラゴンマガジン創刊2号 昭和63年4月1日発行