HOME記事ガンダムエアブラシ塗装の基本!(後編) EGストライクを全塗装してみた ~地の影響やメタリック塗装のコツ、メンテナンスまで~

エアブラシ塗装の基本!(後編) EGストライクを全塗装してみた ~地の影響やメタリック塗装のコツ、メンテナンスまで~

2023.04.10

ENTRY GRADE ストライクガンダム製作指南 エアブラシを使用した基本的な塗装方法(後編)/GAT-X105 ストライクガンダム【BANDAI SPIRITS 1/144】 月刊ホビージャパン2023年1月号(11月25日発売)

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 前編に続いて、誰でも簡単に組み立てができるガンプラの新スタンダード“ENTRY GRADE”ストライクガンダムを使用して素組みからステップアップするための製作法を解説。後編ではエアブラシ塗装を紹介していきます。


①下地に影響される色の塗装

▲サーフェイサーを吹き終えたシールド中央部分のパーツにイエローを塗装していきます。吹き終えましたが、濁った色になってしまいました…

▲明るい色や鮮やかな色は隠蔽力が弱く、下地の色に影響され塗り重ねてもきれいに発色しません。写真はプラ板にサーフェイサーの上から塗装した状態とホワイトを吹いてから塗装した状態です。ホワイトを吹いたほう(右)はサーフェイサーのグレーを隠蔽しているのできれいに発色しています。また赤や青もサーフェイサーの上から塗装すると影響を受けて本来の色になりませんでした

▲今度はサーフェイサーの後にGXクールホワイトを塗装して真っ白の状態にします。GXシリーズは隠蔽力が高く発色もよいので通常塗装はもちろん、下地作りにもおすすめです
▲ホワイトの上からイエローを塗装していきます。イエローは特に隠蔽力の弱い色なので、GXキアライエローと黄橙色を調色して塗料の隠蔽力を上げて塗装していきます
▲今度は鮮やかなイエローに塗装できました。面倒に感じますが隠蔽力の低い色を塗装する際は下地の影響を抑えてから塗装する必要があります(今回はホワイトを下地にしましたが、同系色の下地色やサーフェイサーを吹くといったやり方もあるので自分に合ったやり方をみつけるとよいでしょう)

②調色して塗装

▲ひとつの色でもたくさんの同系色がありますが、自分のイメージする色がない場合などは塗料を混ぜ合わせて好みの色を作っていきます。赤パーツは調色して塗装していきます
▲モンザレッドとMSレッドを1:1の割合で調色してみました。塗料は混ぜれば混ぜるほど色が濁っていってしまうため、たくさんの色を混ぜ過ぎないようにします
▲調色した色は必ず多めに作っておきます。単調な調色であっても作り足すと微妙に色味がズレます。また調色した塗料は揮発やホコリなどが入らないよう塗料の空き瓶や市販のスペアボトルに移して調色レシピを書いておくと便利です
▲先ほどの黄色同様に赤も下地の影響を受けやすい色なので、まずクールホワイトで下地を作ります
▲頭部の細かいパーツは塗料が乗りにくいので、一度に吹き過ぎてしまわないよう少しずつ塗り重ねていきましょう
▲成型色よりも少し赤みをおさえた色合いになりました。調色は難しく考え過ぎず自分好みの色で塗装すればよいのです。調色に慣れるまでは作例の塗装レシピなどを参考にするとよいでしょう

③マスキング塗装

▲一体成型で色分けが再現されていないパーツは、塗り分けが必要になるのでマスキング塗装をしていきます
▲靴パーツはかなり細かいマスキングが必要なので、極細のマスキングテープを使用すると便利です
▲靴裏はマスキングテープだけではわずかな隙間が空いてしまいがちなので、マスキングゾルを併用するとよいでしょう。またシールドは塗装面積が小さいですが、塗料が付着しないようすべてマスキングします

▲塗料がマスキングテープの下に回り込まないように、希釈は少し濃いめにして少しずつ塗り重ねていきます。エア圧は下げてニードルストッパーは閉めて細吹きにします。マスキングテープは塗料が完全に乾いてから剥がすとパーツとテープの境目が荒れてしまうことがあるので、乾き切る前に慎重に剥がしていきます

▲上手く塗り分けができました。マスキング塗装で重要なのはマスキング工程です。どんなに上手く塗装してもしっかりマスキングができていないと失敗してしまいます。特にテープの重なり部分や曲面などは注意して手間を惜しまず作業しましょう

④メタリック塗装

▲「びっくらたまご ドラマチックお風呂シリーズ ENTRY GRADE ストライクガンダム」に付属しているグランドスラムを使用します。刃をメタリック塗装で仕上げていきます

▲プラ板に600番までヤスリがけ→サフ1000→光沢ブラック→メタリック塗装したものですが、見る角度によって傷が目立ちます。メタリック塗装は通常塗装ではわからない傷も目立ってしまう特性があります。グランドスラムは1200番手まで表面処理をし、サーフェイサーを吹いたあと、キムワイプで表面を磨きました

▲下地をサフ・光沢白・光沢黒の上からメタリック塗装したものです。サフの上から吹いたものは光沢感や金属感があまり感じられません。光沢白の上から吹いたものはスッキリした色味になりました。光沢黒の上から吹いたものは重みのある質感になりました
▲メタリック塗装の場合、下地は発色もよいことから光沢黒が定番ですが、黒でなくてはダメというわけではありません。自分の狙った色や質感をイメージして下地を選択するとよいでしょう。今回は武器パーツなので重厚感のある輝きを放つよう光沢黒を下地にして塗装していきます

▲メタリック塗料は通常塗料と違い金属粒子が入っています。エアブラシを吹く前に先端のノズルキャップを緩めてレバーを引くとエアが逆流してブクブクします。これを「うがい」と呼びます。メタリック塗装ではその都度、沈殿している粒子を攪拌させてから吹きつけていきます

▲下地にウイノーブラックを吹きつけたらメタリック塗装をしていきます。通常塗装よりエアブラシの距離を離して、少しずつ塗料を吹き重ねていきます。感覚的には吹きつけるというよりも柔らかく塗料を乗せていく感じです
▲強く吹きつけたり距離が近いと塗料の粒子が泳いでまだらになってしまうので注意しましょう
▲発色のよいきれいな質感に塗装できました。メタリック塗装は少し手間がかかりますが、そのぶん通常の塗料にはない質感を表現できます。慣れてきたら関節パーツなど武器以外のパーツに使用してみるのもよいでしょう

⑤トップコート

▲塗装・スミ入れ工程まで終了したのでトップコートを吹いていきます。トップコートは全体のツヤを均一に整える工程です
▲トップコートは光沢・半光沢・ツヤ消しの3種に分類されます。同じ色でもコート剤を吹くと質感と印象が変わってきます。キャラクターモデルでは半光沢とツヤ消しが多いですが、どれを選ぶかは自由なので自分のイメージに合ったコート剤を選びましょう
▲今回はツヤ消しでコートしていきます。ツヤ消しにしたくないツインアイとグランドスラムの刃は外しておきました。組み上げた状態でコートしづらいときは、全体にコート剤がかかるようにある程度パーツ分割するとよいです
▲通常塗装と同様に表面が濡れた状態になる程度に吹いていきます。コート剤は無色のためどれくらい吹きつけたか分かりにくいので、光の反射を見ながら吹いていくとよいでしょう。一度乾いたらツヤの状態をチェックして、足りなければ再度吹きます

⑥エアブラシのメンテナンス

▲キットが完成したらエアブラシのメンテナンスを行います。今回はGSIクレオスのエアブラシとメンテナンスセットを使用します
▲塗装が終わったらカップ内の余った塗料を塗料瓶やスペアボトルに戻して空の状態にします
▲キッチンタオルやキムワイプなど拭いてもホコリやチリが出にくいものに軽くMr.ツールクリーナー改を浸み込ませて、ざっと拭き取ります。その際塗料が付着することもあるので手袋をするとよいでしょう

▲ツールクリーナーをカップに1/3ほど入れうがいをします。たくさん入れてしまうと溶剤が外に跳ねてくるので注意してください。エアが逆流することで内部に残っている塗料が溶けていきます。20〜30秒うがいをしたらツールクリーナーを新しいものに入れ替え、これを色がつかなくなるまで繰り返します

▲うがいでは落ちにくい底面ニードルの下や側面についた塗料は洗浄用筆を使うとよいでしょう
▲5回目のうがいになると色がなくなりました。このようにツールクリーナーに色がつかなくなれば内部洗浄は完了です
▲次にカップのフタ、ノズルキャップとニードルキャップを外し、ツールクリーナーと洗浄用筆で付着している塗料を落としていきます。ノズルキャップは内側も洗浄するとよいでしょう
▲外側の汚れを掃除用クロスで拭き取り通常メンテナンス終了です。分解掃除は塗料が内部で固まったり、押しボタンの戻りが悪いときなどに行う程度で大丈夫です。不必要に分解すると故障の原因になるので注意しましょう

完成! ENTRY GRADEストライクガンダム!!

 エアブラシ塗装によるENTRY GRADE ストライクガンダムが完成しました。エアブラシ塗装は塗装面を均一なものとし、マスキングすることで細部の塗り分けも精度高く仕上げることができます。また、今回は基本的な塗装法を解説しましたが、使用する塗料や手法によってさまざまな塗装表現ができるのもエアブラシ塗装の強みです。

▲今回は塗装がメインなので、工作面では頭部アンテナのシャープ化、背中のアタッチメント用フタパーツ製作、ハンドパーツの握り拳化、気になる肉抜き埋めくらいにとどめています

▲腰、アンクルアーマーの裏側、腹部の隙間などは黒で塗り分けています。立ちポーズのときでもちらりとアーマー裏や内部が見えますが、アクションポーズを取らせたときにより露出するので塗りつぶしておくことで重厚感を高めることができます
▲びっくらたまごとのコラボキットからコンバートしたグランドスラムもメタリック塗装を施したことでワンランク上の完成度に仕上がっています。現状、一般の店頭で入手できる唯一の1/144スケールのグランドスラムなので、お持ちの方はもちろん、お持ちでない方もぜひお試しください
▲キット素組み(左)との比較。キットのままでも充分なくらい色分けが施されており、成型色も透けがないきれいなものですが、エアブラシ塗装で全塗装を行うことで全体的な質感やツヤ感が統一されて、より完成度を高めることができます

■エアブラシ塗装
 今回はエアブラシ塗装の基本的な解説になります。塗料の希釈や吹き方などはどういう仕上がりにしたいのかによっても変わってきますし、感覚的なところも多々あります。これらを身につけていくには、やはり実際に塗装することです。失敗することもありますが、そこから学ぶことで失敗に対する対応力も身についていきます。臆することなく挑戦してみてください。近年では最初から色分けされたキットも増えてきていますが、ぜひエアブラシを手に取って使う楽しさや自分だけのオリジナルカラーで仕上げるなど、新たな模型作りの楽しさを味わってみてください。

■塗装
白=MSホワイト
赤=クールホワイト→シャインレッド(50%)+MSレッド(50%)
青=クールホワイト→コバルトブルー(80%)+MSブルー(20%)
黄=クールホワイト→キアライエロー(60%)+黄橙色(40%)
灰=エクストラダークシーグレーBS381C/640
グランドスラム=ウイノーブラック→スーパークロームシルバー2
トップコート=スーパースムースクリアーつや消し

BANDAI SPIRITS 1/144スケール プラスチックキット“エントリーグレード”

GAT-X105 ストライクガンダム

製作・文/哀川和彦

ENTRY GRADE ストライクガンダム
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン クリエイション部●770円、発売中●1/144、約13cm●プラキット


びっくらたまご ドラマチックお風呂シリーズ ENTRY GRADE 1/144 ストライクガンダム(グランドスラム装備)&miniガンプラ モビルグーン(ブラウン)/モビルゾノ(グリーン)
●発売元/バンダイ ライフ事業部●1540円、発売中●1/144、約13cm(ストライクガンダム)、約3cm(グーン/ゾノ)●プラキット

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©創通・サンライズ

哀川和彦(アイカワカズヒコ)

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