HOME記事ガンダムお手軽ウェザリングのすべてがわかる! HGドアン専用ザクを使ってプロモデラーが徹底解説!

お手軽ウェザリングのすべてがわかる! HGドアン専用ザクを使ってプロモデラーが徹底解説!

2022.11.26

HGドアン専用ザクをお手軽にウェザリング/ドアン専用ザク【BANDAI SPIRITS 1/144】 月刊ホビージャパン2023年1月号(11月25日発売)

[特別企画] 講師/斎藤仁孝

HGドアン専用ザクをお手軽にウェザリング!!

 数多くのウェザリング専用マテリアルが並ぶ模型店。試しにいくつか買ってみたものの、それらの効果的な使用法については知らないことも多いという方もいるのでは。そこで、お手軽ウェザリング表現を得意とする斎藤仁孝を招聘。最近発売されたガンプラの中でいちばん汚しが似合うキット=HGドアン専用ザクを題材に、「少ないマテリアルと手数でガンプラを効果的に汚すワザ」を披露してもらった。難しい理屈やテクニックは極力ナシ! ぜひ写真を参考に、お手元のドアン専用ザクを汚してみてほしい。

▲月刊ホビージャパン2022年10月号では1/72 F/A-18E スーパーホーネットを製作。入手しやすいマテリアルのみで、リアルでくたびれた風合いの現用機を汚し塗装しています

POINT1 ウェザリングカラーは専用うすめ液で希釈し、筆にとって少しずつ塗る
POINT2 数色のフィルタリングでパネルラインごとにランダムな色合いを作る
POINT3 クリアーがけの前にデカール貼りとチッピングを済ませておく
POINT4 割れる可能性があるので、関節部にはピンウォッシュ(スミ入れ)をしない

 上記の4つがウェザリング塗装時の覚えておくべきルール。詳細はその都度説明しますが、とくに3番については、デカールやチッピングといった繊細なテクスチャは上からウェザリングカラーを塗ると剥がれて台無しになる可能性があるため、その前にいったんクリアーで表面を保護しておくことが重要です。


まずはラッカー塗料で本体塗装

▲キットは設定画から読み取れるドアン専用ザクのダメージや色分けを意欲的に再現していますが、そのまま組んだだけではもちろん汚し表現はありません。成型色のまま汚し塗装を始めても問題ないのですが、キットパーツよりも設定画はややカーキがかった薄い緑だと感じたので、表面処理後、ラッカー塗料の筆塗りで基本塗装を済ませました

▲基本塗装はGSIクレオスのMr.カラーを使用。航空機や艦船用の色を使い塗り分けています

用意したウェザリング塗料

▲ウェザリングにはエナメル塗料を使用します。エナメル塗料はラッカー塗料の塗膜を侵しにくく、また希釈して薄く伸ばしたり専用の薄め液を使うことで拭き取りが容易と使いやすい塗料です。今回使ったのはMr.ウェザリングカラー マットアンバー/ホワイトダスト/グランドブラウン/サンディウォッシュと、同フィルタ・リキッド フェイスグリーン/シェードブルー。チッピング用にタミヤエナメルカラー ジャーマングレイ/レッドブラウン。金属質の再現にアモ・バイ・ミゲルヒメネスのピグメントも用意します

フィルタリング

▲フィルタリングとは、エナメル塗料を薄く重ねて色合いを変える塗装法のこと。本機のようにボロボロの機体らしさを表現するには最適な技法です。まずはMr.ウェザリングカラーの専用うすめ液で薄めたフェイスグリーンを筆に取り、全体に塗るのではなく部分的に色合いを変えていきます。少量の塗料を筆で少しずつ伸ばし広げていくといい塩梅になります

パネルラインごとにさまざまな色でフィルタリング

▲次は、Mr.ウェザリングカラーのマットアンバーで色合いを変えていきます。パーツを交換せずにずっと使い続けて汚れが蓄積し、色がくすんだ状態を表現してみます
▲ホワイトダストで、経年劣化で表面塗装が白化した状態を表現。フィルタリングはあまり深く考えず「ここを白くしたら印象が変わるかな? 面白いかな?」ぐらいが丁度良いです

▲同系色で色合いを変化させます。基本色のブルーグレーの上にシェードブルーを足しました。薄く色が乗る程度で充分なので、ウェザリングカラーはある程度希釈しましょう
▲本機は複数体のザクのパーツを継ぎ接ぎして修理しているので、隣り合ったパネルラインごとに色味を変えたほうがむしろそれらしくなります。全体のバランスを見ながら、これまで使用した複数色のカラーでランダムに塗り分けていきましょう

デカール貼り付け

▲次はデカール貼り。付属マーキングデカールは欠け有り/無しが選べますが、マーキングの欠けた部分に印刷された緑の色味が今回の下地の緑色と異なるので、欠け無しを貼ります
▲使用する部分を切り出し、水に浸して1分ほど待ち、パーツに貼る…前に、Mr.マークセッター(デカール軟化材兼糊)をパーツ表面に塗布。デカールがよりパーツに密着します

▲水につけて柔らかくなったデカールを台紙からずらして貼り付け。位置を確認して、問題ないならデカールの中央から外側に向かって綿棒を転がし、パーツとデカールの間の水分を追い出していきます。綿棒は先端をコロコロ回してローラーのように動かします。回さずに擦ってしまうとデカールの位置がずれたり、酷い場合は裂けるので気をつけましょう

デカールを部分的に剥がす

▲デカールは1日置いてしっかり乾燥させます。乾いたらダメージによるマーキングの剥がれを再現していきましょう。ナイフなどでカリカリと引っ掻いて少しずつ剥がします
▲デカールの上から基本塗装で使用した塗料で塗り潰す方法もありますが、物理的に剥がすほうがコントロールは難しいもののより自然に仕上がります。塗膜まで剥がさないよう、慎重に
▲調子に乗ってデカールをカリカリ削っていたら、一気に剥がれすぎてしまいました。そんなときは剥がれた部分にマークセッターを少量塗ってから、ちぎれたデカールをそっと元の場所に戻します。余分なセッターを慎重に拭き取れたら、リカバリー成功!
▲盾のマーキングを剥がした状態。マーキングデカールを剥がすときは、ちまちま端っこを削るよりも、多少大胆に削ったほうが印象に残るダメージ表現に仕上がります。次からは塗装の剥がれ(チッピング)やピンウォッシュでサビ垂れなどを追加していきます

チッピング(塗膜の剥がれ)

▲ぶつけたりすることで塗膜が剥がれて下地の金属が出てきた状態を再現するのがチッピング。エナメル塗料のジャーマングレイとフラットブラウンを混ぜてこげ茶色を作り、スポンジで塗りつけます。スポンジの目の細かさによってチッピングの印象が変わるので、スケールに合った表現ができるようにできるだけ目の細かいスポンジを用意しましょう

▲スポンジに塗料を取ったら、ティッシュなどに何度か叩きつけて塗料をあらかた落とします。塗料が残りすぎていると上手くいきません。うっすら塗料がつく程度に調整しましょう
▲塗料の量を調整したらいよいよチッピング。方法は簡単、スポンジをエッジの角やダメージ部位の周囲などにポンポンと軽くスタンプを押す要領で当てていくだけです
▲スタンプしても色がつかなくなったら塗料を補充して繰り返し。最初は様子を見ながら目立たないところから始め、徐々に大きな場所やスタンプの回数を増やすと上手くいきます

▲クドいチッピングになってしまったら、エナメル塗料の薄め液をつけた綿棒で拭き取ります。また、狙ったところ以外についてしまった塗料も薄め液で拭き取り、適度に間引きします
▲繊細な塗装剥がれを描き込みたい場合は、その部分だけ筆を使ってていねいに描いていきます。スポンジでのスタンプは非常に楽ですが、場所によって筆と使い分けましょう
▲チッピングが完了したら、デカール保護も兼ねてツヤ消しクリアーを全体に吹き付けておきます。触ると落ちやすいチッピングも、クリアーでコートすれば触っても安心です

ピンウォッシュ(スミ入れ)

▲Mr.ウェザリングカラーのグランドブラウンでピンウォッシュ(スミ入れ)をします。モールドの上にそっと筆先を当てれば、毛細管現象で塗料が流れます。Mr.ウェザリングカラーの薄め液はプラスチックを侵しにくいように調整されていますが、それでも割れるときは割れるので、なるべくハメ合わせの部分や関節には塗料がつかないようにしましょう

▲10分ほど放置してグランドブラウンが乾き始めたところで、Mr.ウェザリングカラー専用薄め液を含ませた綿棒で余分な塗料を拭き取ります

ストレーキング(サビ垂れ/雨垂れ)

▲サビ垂れや雨垂れを表現するのが、ストレーキング。専用薄め液で希釈したグランドブラウンを用意し、面相筆で垂れ跡をつけたい部分に塗ります。重力の方向を意識しながら、筋状にスッと描き入れます
▲筆で塗った状態のままではやや不自然なので、少しボカしましょう。綿棒に専用薄め液を含ませて筋を伸ばすように動かし、サビが垂れた跡がうっすらと残る程度に調整します
▲クッキリと残る薄い筋や細い筋を面相筆で描き込みます。綿棒を使いボケた状態と若干クッキリと残った状態の両方を表現することで、垂れ方にも表情をつけることができます

▲フィルタリング、チッピング、ピンウォッシュ、ストレーキングと、ひと通りのウェザリング塗装を施した状態。あとは陸戦の機体らしさを強調するためにホコリ汚れを付けていきます!

サンディウォッシュでホコリ色を乗せる

▲地上で戦う機体にはホコリ汚れがつきもの。そこで、Mr.ウェザリングカラーのサンディウォッシュを専用薄め液で希釈したものを足周りなど下半身を中心に塗っていきます。後ほど調整しますので、まずはたっぷりと塗ってOK
▲少し置いたら、薄め液だけをつけた筆で撫でるようにして余分を落とします。先述のようにパーツの隙間から薄め液が浸透するとパーツが割れる可能性があるので、関節やパーツの隙間には薄め液がつかないようにしましょう
▲塗料が半分乾いた状態になったら、専用の薄め液を含ませた綿棒で拭き取って調子を整えます。重力に従って筋が残るようにします。拭き取りすぎたり、仕上がりが気に入らない場合は何度か繰り返します

こんなところにもホコリ色

▲肩や盾の上部といった、上半身の上側にもサンディウォッシュを塗ります。爆発などによって巻き上げられたホコリが溜まったというイメージです。重力に対して水平面で、とくに平らな部分にホコリ色を塗布します。筆先を使い、ポンポンと上下に動かすことで濃淡のムラをつけるとそれらしく仕上がります

▲「当然地面にヒザをつくこともあるだろうし、手も地面や障害物と接することはあるだろう」などと、活躍する場所や使用状況などを考えながら各所にホコリ色を追加。もちろんすべては想像ですが、どんなところが汚れるのか、じっくり考察しながら汚していくこともウェザリングの醍醐味です

スパッタリング(泥はね表現)

▲簡単ながら土埃で汚れている感じが高まる方法を紹介します。それがスパッタリングです。少しコシの強い筆に塗料を含ませたら、筆先を弾くことで飛沫を飛ばします。上手くいくと泥跳ねの水滴のようになるのです。使用した塗料は、先ほどと同じMr.ウェザリングカラーのサンディウォッシュです

▲スパッタリングの難点というほどではありませんが、飛沫を弾き飛ばしているため、コントロールには慣れが必要です。飛沫を付け過ぎた…そんな場合は専用薄め液を含ませた綿棒で拭き取ります。拭き取り(トリミング)では、とくにスケール感を損なうような大きめの飛沫だけを消すことを意識して行っています

ピグメントで金属光沢を追加

▲最後に金属の質感を高めます。アモ・バイ・ミゲルヒメネスのグラファイトを使いました。製品は粉末状で、筆や綿棒に取り、パーツに擦りつけて使います。市販のピグメントを使用していますが、鉛筆の芯を削って粉末にしても同じような効果が得られます。そちらのほうが入手しやすく、またHB〜2Bと変えることで輝き具合を変えることもできます

▲ホコリ汚れの際と同様、どんな部分が金属の地肌むき出しになるのか? を想像しながら擦ります。先程までプラスチックだったパーツがまるで金属のように! でもやり過ぎは厳禁
▲チッピングを多めに施した部分への金属色の追加はとても効果的。公園や学校の鉄棒をイメージするとよいかもしれません。塗装剥がれの効果を金属色がより引き立ててくれるのです

完成! HGドアン専用ザク!!

 ついに完成した、汚れマシマシのドアン専用ザク。これまで紹介してきたひとつひとつのマテリアルとテクニックはどれも非常にありふれたものだが、順序立てて攻略していくことで見事な風合いに仕上がったことがわかる。特にスポンジによるチッピングや、ホコリ色の塗布はカンタンに雰囲気が出るのでオススメだ。ぜひ挑戦してみてほしい。

▲太モモに注意。さまざまなパーツで補修しているというドアン専用ザクの設定を鑑み、パネルラインごとにウェザリング塗料を塗布し、色の調子を変えている。スカートアーマーの縁の、チッピングや油汚れで凸凹になった部分も雰囲気タップリ

▲構造材むき出しのボロボロの盾も、縁にグラファイトで金属の輝きを足すことでよりそれらしくなった。マーキングデカールの思い切り良い剥がしっぷりにも注目。ヒート・ホークは納刀/抜刀状態の2種類が付属。抜刀状態の刃は、ナイフで削ってくたびれた風合いを出してみた

BANDAI SPIRITS 1/144スケール プラスチックキット “ハイグレード”

MS-06F ドアン専用ザク

製作・文/斎藤仁孝

HG ドアン専用ザク
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン クリエイション部●2200円、受注中、2023年1月〜発送予定(4次)●1/144、約13cm●プラキット●プレミアムバンダイ販売アイテム

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斎藤仁孝(サイトウヨシタカ)

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