工作解説/nikh
工夫次第で作品の見映えを大幅に底上げさせることができるのが「仕上げ」工程です。ガンプラのパーツすべてにツヤ消しクリアーを吹いて仕上げるよりも、大部分をツヤ消しや半ツヤ状態にしつつ、クリアーパーツやセンサーなどの発光部は光沢を残したり、関節部フレームや武器といった部分も、あえてグロス調のメタリックカラーで塗り分けることで「さまざまな異素材の複合」感を強調したほうが“らしく”見せることができます。そこで本記事では、上記のようなパーツが多いMGガンダムアストレア TYPE-F(フルウェポンセット)をチョイス。清潔な仕上げ方を得意とするnikhは、どのような方法論でパーツを塗り分けているのでしょうか。その考え方と「塗膜をキレイに発色させるために必要な表面処理方法」などのtipsを紹介していきます。
●プロモデラーQ&A
Q 今回の作例製作に欠かせないツールorマテリアルを1点教えてください。
A 表面処理の基礎の基礎であるペーパーがけを支えてくれている、ハイキューパーツさんの『リタックスティック』です。ポリカーボネートの当て板に再利用可能な粘着シートがセットになっている商品で、紙ヤスリを貼って使うのですが、貼る部分の粘着シートが程よいクッションになっており使い勝手がとてもよいです。わかりやすいカラフルな番手ステッカーも付いていてこれも便利。ずいぶん長く愛用しているおすすめツールです。
Q 作例製作時に意識していることは?
A 元々のキットの良いところ・持ち味を活かして、小さい労力で大きな効果が出せる工作を心がけています。製作記事を読んでくださった人に「これくらいなら自分もちょっとやってみようかな…?」と思っていただけたら嬉しいですし、なにより自分自身ができるだけプラモを低カロリーにカッコよく作りたいものぐさ人間ですので…!
カラーリングも同様で、誰でも簡単に同じ色で塗装できるように塗料を瓶のまま使用したり、なるべくシンプルな調色を心がけています。今は各メーカーが素敵な色をたくさんラインナップしてくれているので、ジャストフィットな色の組み合わせを探すのも楽しいですよね。あとは破損しにくいようにしっかり頑丈に作る!…くらいでしょうか?
Q ついついやってしまうこだわりポイントを教えてください。
A こだわりというよりはここ数年ハマっていることなのですが、追加ディテールや色の塗り分け・デカールの枚数などを抑えて、スッキリキレイな仕上げを目指すことです。最近は情報量を足す方向で凄い作品を作るモデラーさんがたくさんいらっしゃいますので、それなら自分はあえて違う方向で遊んでみようかな…というちょっと天邪鬼な理由だったりします。
もちろん高密度な作品作りにも興味がありますので、今後もいろいろな表現に挑戦して行きたいと思っています。
❶表面処理の際に用意するもの
▲ここでの“表面処理”とは、「平らであるべきところを平らにならす作業」を指します。キットパーツを確認すると、表面の荒れた部分や凹み(ヒケ)が見つかる場合があり、完成時の見映えに影響するので、当て板をした紙ヤスリでヤスることでキレイにならしていきます。当て板に使うのはハイキューパーツのリタックスティック。紙ヤスリの番手は320、400、600番を用意、粗い番手から細かいものへ順番にパーツに当てていきます
❷ヒケた部分の処理
▲切削性の高いタイプの瞬間接着剤を塗ってヒケを埋め、硬化後に再度平坦になるようヤスリで整えればOKです。今回は切削のしやすいタミヤ瞬間接着剤(イージーサンディング)を少量塗布しました
❸奥まった部分のヤスリがけは…
▲通常のヤスリがけがやりにくい奥まった場所には、当て板を当てた紙ヤスリではどうしても届きません。この場合は、爪楊枝や細いランナーの先に、ハサミで細く切り出したスポンジヤスリを瞬着で固定したものを用意します
▲このように、パーツの奥まった部分に合わせたサイズの“ミニヤスリ”を都度用意してヤスれば、楽に整面処理が行えます。このミニヤスリならば、場所によって形状や角度などを自由に調節することができますのでお試しあれ
▲複雑な形状が入り組んだパーツは、デザインナイフを使用してのカンナがけや、タガネを使用したモールドの彫り直しなども併用します。写真のような細かい溝が刻まれているパーツは、溝をナイフで、表面は当て板を当てた紙ヤスリで整えます
▲ヤスリなどで表面処理をしていくと、モールドがケバ立ってしまうことも。その場合は流し込み接着剤を少量流し込むと、ケバや溝のガタツキがほんのり溶けて滑らかになります。もちろんつけ過ぎは全体が溶けてしまいディテールが台無しになるので厳禁ですが、覚えておくと有効なテクニックです
❹キズの確認と修正
▲ひと通りのヤスリがけが終わった後、全パーツにサーフェイサーを吹き、キズのチェックを行います。気になる部分があれば再度ヤスリがけや、必要ならばヒケ処理、サフに巻き込んだホコリの処理などを行い、可能な限りフラットな表面を作っていきます。浅いキズの補修にはラッカーパテをツールクリーナーで溶いたもの、深めの傷には瞬間接着剤と、場合によって補修に使うマテリアルを使い分けます
▲瞬間接着剤を少量塗布する場合、チューブから直接塗るのではなく、ひっくり返した塗料皿に弁当用のアルミカップを装着したものに必要分だけ出します。瞬間接着剤は乾燥して固まると除去が大変なのですが、アルミカップの上に出せばすぐに交換できるので扱いやすいです
▲瞬間接着剤を爪楊枝などで少量すくい取り、ヒケが残っている部分に塗布します。硬化後に紙ヤスリなどを使って再度表面を整えるのは、これまでのヒケ処理と同様です
▲写真の黄色い板はスジボリ堂の「マジックヤスリ」で、通常の耐水性サンドペーパーよりも頑丈で、表面の研磨剤が摩耗しにくいなどの特徴を持っています。マジックヤスリの細かい番手(写真は800番相当)を広い面に軽くかけると、簡単に滑らかな表面を作り出せるのでオススメです
▲整面作業を終えた、塗装直前の状態です。全体にグレーのサーフェイサーを吹いた時点で一度全体を仮組みして、可動部に擦れが発生しないかを念入りに確認しておきましょう。私の場合はここでサフ一色の写真を撮り、画像編集ソフトで塗り絵してカラーリングの検討をします
❺メタリック塗装と光沢表現
❻メタリック部分の研ぎ出し
▲さらに、腹部や関節部などの目立つ部分はクリアーの層に軽く磨き処理を行います。使用したのはゴッドハンドの神ヤス!#8000および#10000、タミヤコンパウンドの細目と仕上げ目。研磨クロスや綿棒を使用して、とくに光沢が欲しい部分を中心に丁寧に研磨しました
❼配置と対比
▲メタリックについては、塗装技術と同じくらい「配置と対比」が重要かと思います。今回は設定の配色から関節部を濃いグレー寄りにアレンジし、フレームのメタル色が映えるように配慮してみました。また、外装に露出する部分のフレームに最も光沢があるように調整し、それを囲む外装をツヤ消しにすることでメタリックカラーの存在感を演出しています
完成した作例の詳細はこちら!
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GNY-001F ガンダムアストレア TYPE-F(フルウェポンセット)
製作・文/nikh
MG ガンダムアストレア TYPE-F(フルウェポンセット)
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン クリエイション部●6820円、受注終了●1/100、約18cm●プラキット●プレミアムバンダイ販売アイテム
ⓒ創通・サンライズ