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1/35ドアンザクをスクラッチしてディオラマ製作!「Fight for The kids」『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』より

2022.07.06

Fight for The kids【BANDAI SPIRITS 1/35】 月刊ホビージャパン2022年8月号(6月24日発売)

1/35ドアンザクをスクラッチしてディオラマ製作!「Fight for The kids」『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』より

ククルス・ドアンと子どもたちが暮らす孤島の風景を1/35スケールでディオラマ化する

『ククルス・ドアンの島』では、ドアンら島の住民と“ドアンのザク”は切っても切れない関係として描かれている。ひとたびザクが起動すれば、子どもたちは無邪気に喝采を上げてそれを送り出す。しかし、操縦桿を握りしめるドアンの胸中は…。そんな脱走兵と戦災孤児たちの“非日常な日常”を表現するべく、今回は島の風景をディオラマ仕立てで表現した。担当したのは実力派モデラーのコジマ大隊長。映画公開の数ヵ月前からの製作着手となるため、苔生す滝に鎮座する古びたザク、それをじっと見上げるドアンと子どもたちという、映画ともTV版とも異なるオリジナル解釈のシチュエーションで製作している。1/35という大スケールでスクラッチビルドされたザクはもちろん、それを囲む豊かな植生や水の表現にもご注目いただきたい。

▲映画版の資料が届く前の製作となったため、今回のディオラマ版「帰らずの島」はTV版寄りの緑豊かな植生となっている。崖を這う根は本物の木の根を貼りつけ、ヤシの木もシュロ縄をほぐした繊維を巻いて幹を作るなど、オーガニックな材料もふんだんに使って実在感を高めるのがコジマ流

▲ベースのサイズは約41×41×29cm。中央には、滝壺に浸かっているという想定で1/35サイズで製作されたザクの上半身が鎮座。その後方には苔生した崖が、手前の岸辺からはククルス・ドアンや子どもたちが物言わぬ巨人を見つめている

▲TV版に登場する戦災孤児タチ、チヨ、クムからイメージを膨らませた子どもたちと、軍服を着崩した出で立ちのドアンは、さまざまなメーカーの1/35人形からチョイス。オリジナルで用意した犬は、マスターボックス製フィギュアセット(MB35159)の犬を改造したもの

▲ザクの頭部は、「U.C.HARD GRAPH ジオン公国軍 ランバ・ラル独立遊撃隊セット」のもの。頭部のみだが1/35ザクが存在するので、それを基準として胴体や肩のサイズを割り出し、スタイロフォームで大まかに胴体の形状を出してから各種ディテールアップを施している。ところがこのU.C.ハードグラフ版ザクヘッド、今回はそのまま使うわけにはいかず…

1/35ドアン専用ザクができるまで

▲当初、頭部はU.C.ハードグラフのものをそのまま使う想定だったが、公開されたドアン専用ザクの設定画は頭部の形状が全く異なっていたため、結局作例の頭部はダクト先端部など一部を除いてスタイロフォームで新造することに。むき身の動力パイプはホームセンターで見つけた、配線をまとめるフレキシブルパイプがちょうどいい直径だったので使用している

▲製作途中のザク上体。胸部や肩といった直線部はスタイロフォームの上に1mmプラ板を貼って面を整え、頭部やコックピットハッチといった曲面はポリパテで整形している
▲右肩シールドのダメージ部は、最初に内部構造材をプラ板で整形しておいてから、その上に破口を切り欠いたプラ板を重ね貼りして積層感を演出
▲左肩スパイク・アーマーの滑らかな三次曲面は、スタイロフォームを芯にポリパテを根気強く盛り削りして整形。スパイクも芯材スタイロフォーム+ポリパテで製作した

▲サビ表現として、各部にMr.ウェザリングカラーのマルチホワイトやラストオレンジを塗ることで、装甲板のヤレた感じを表現している

1/35スケール版 滝や植生の表現法

▲ザク背後の崖は、コルクバーク(建築用コルク材)を複数横につなぎ合わせたものに、モーリンのクラフトサンドやカントリーグラスなどを貼り付けて地面や苔を表現した

▲崖を流れる滝は、サランラップを敷いて、その上に珪石をジェルメディウムで溶いたものをランダムに塗りつけ、空気の泡を含んだような水流を用意。それを立体感を出すために2、3層重ねることで自然な滝を作っている

▲崖を這う木の根は本物を使用。崖に生える濃い緑の植物はファインターフ

▲ドアンたちが立つ滝壺の岸べりには、ライケン(乾燥苔)やプリザーブドフラワーのソフトヒムロスギ、シッポゴケ、アラハゴケなど複数の植物をランダムに植え込んでいる。自然由来の植物も(サイズ感に気を使いつつ)使いこなせればより自然な風景を演出することができる

▲水面はクリアーブルーのアクリル板。滝が落ちる場所や岸べりなど、水の流れがある場所は表面にメディウムを塗って波の表現を加えている。またザクの周りにも水槽用のフィルターをほぐした繊維を貼って飛沫感を演出

 みなさんこんにちは! 今回は『ククルス・ドアンの島』にインスパイアされた情景作品をお届けします。
「ドアンの島をディオラマで」という企画自体は2021年の秋頃から編集部よりお話をいただいていたもので、アニメ設定の詳細が届く前からの構想となります。その時は映画の設定資料などはまだ何もない段階だったので、TVアニメ第15話のエピソードをイメージソースとしています。あれこれ悩みながら、「戦災孤児と出会ったドアンが、子どもたちを守るために己の人生を賭ける決意を固めた」シーンを作ろうと、自分なりにディオラマのシチュエーションを固めました。
 そうした登場人物らの感情を表現するとなると、1/144や1/100では人物サイズが小さすぎて却って大変なので、自ずと1/35スケールでチャレンジすることに。1/35では樹木などのストラクチャーもごまかしが効かず、しっかりしたものを用意しなければなりませんが、妥協せずに手を入れたおかげで思い描いていた完成形を上回る結果が出せたかと思います(自画自賛)。というわけで、映画とはシチュエーションなどだいぶ異なるとは思いますが、コジマ流「帰らずの島」です。豊かな自然とザク、子どもたちの表情などをご鑑賞いただけますと幸いです。

■1/35スケールのザク!?
 しかし困った、1/35のザクなんてあるはずが…いえ、ありました。U.C.ハードグラフの「ジオン公国軍 ランバ・ラル独立遊撃隊セット」で、頭部だけですが1/35ザクがプラキット化されていました。あとはこのザクヘッドを基に体のサイズを割り出して、スタイロフォームで上半身の原型を作れば解決します。直線部分は1mmプラ板を表面に貼り込んで面を整え、また肩アーマーなどの曲面部分はGM-1508という発砲材の表面を保護する樹脂を塗布してから、ポリパテなどで形状を出しています。これを塗らずにいきなりポリパテを使うと、スタイロフォームがパテと反応して溶けてしまうので要注意。
 ところが、ある程度形ができた段階で編集部より届いたアニメ設定画を見てみると…今回のドアンザク、ボロボロな上にダクトの部分が長くなっています!(笑)。作りかけの1/35ヘッドとはシルエットがまったく異なっているので、どうしたものかと思案の末、現状のザクヘッドを改造するよりはいっそ作り直したほうが早いという結論に。ダクト先端部と動力パイプカバー、モノアイ内部のメカのみキットの流用で、頭部の大部分はスタイロフォームで新造し、ダクトが伸びた異形のフォルムを再現してみました。こうしてみると、結局ほとんどの部分がスクラッチですね(苦笑)。塗装はマホガニーのサーフェイサーの上からタミヤ水性アクリル系塗料で着色し、油彩やウェザリングカラーで派手めに汚しを加えています。

■「帰らずの島」の住人たち
 1/35では民間人や子どもといった非戦闘員フィギュアの選択肢が極端に少なく、なかなかいいものに巡り会えず苦労したのですが、あれこれ探してみた結果、ドアン役はミニアートのイスラエル戦車兵から無帽長髪の兵士をチョイス。子どもたちはマスターボックスのものを幾つか組み合わせています。服装も国籍もバラバラな感じが、逆に戦災孤児感が出るかなと。いちばん小さな男の子とドアンはしっかりと手を繋がせることで、ドアンの決意が感じられるようなポーズに変更してみました。
 これも余談ですが、製作中に順次公開されていった映画の情報を見て「島で暮らす子どもは20人!? こんなに大勢いたの?」と、ずいぶん驚かされました(笑)。今回のディオラマベースは40cm四方程度、ザクとドアンたち4人でちょうどいいサイズにしているので、映画版の21人では少々手狭ですね(苦笑)。

■ベースの製作
 さてこの「帰らずの島」、いったいどのあたりの島を指しているのか。じつはTV版では明言されていません。自分も明確な答えは出さずに、アニメ登場人物たちの服装から比較的温暖な気候であると想像しつつ、勝手にミクロネシアあたりのマイナーな島の観光写真などを参考にして製作しています。苔生した崖と滝壺というシチュエーションについては、滝壺にザクを隠匿できる、自然を生かしたハンガーデッキというつもり。冷静に考えると相当に深い滝壺ですが…(汗)。
 崖や地面の岩肌を作る場合、スタイロフォームの削り出しで形作るよりも、コルクバーク(建築用コルク材)を使えば、楽にゴツゴツした自然なカンジの凹凸を表現することができます。今回はコルクバークを5、6ピース組み合わせてグルーガンで強引に接着し、100円ショップの軽量粘土(黒)を隙間に充填。その形から成り行き任せで崖から流れ落ちる滝の流路も決めています。地面の下地はモーリンのクラフトサンドやカントリーグラスなどで造形。また、岩肌には天然の木の根っこを乾燥させた繊維状のものやファインターフなどを這わせることで、立体的な植物表現を加えています。
 ドアンたちが乗っている崖べりには、ライケンやプリザーブドフラワーのソフトヒムロスギを追加、さらにカスミソウやスターチス、カスピアなどを使って草花類をふんだんにあしらって南国の温暖な気候下の植生を表現してみました。
 ヤシの木は紙創りの「ヤシの葉」を束ねた葉っぱと、針金を芯にしてシュロ縄をほぐした繊維でぐるぐる巻きにして作った幹とを組み合わせたもの。崖側の立木は天然の根っこに細かく裁断した水苔とシュロ縄の繊維を纏わせたものにグリーンのパウダーをかけて作ったものです。
 滝の水の表現はまずサランラップを敷いて、その上に珪石をジェルメディウムで溶いたものを塗りつけ、空気の泡を含んだ水流に見立てています。それを2、3層重ねてから岩肌に貼り付け。また、水面にはクリアーブルーのアクリル板を敷いたものにメディウムを塗って波の表現を加えています、ザクの周りには水槽用のフィルターをほぐしたもので(水煙)水しぶきを足し、マイナスイオンがふんだんに放出されていそうな雰囲気を表現してみました。
 さてさて、そんなこんなで完成です。果たして、帰らずの島でドアンは地球連邦軍や追っ手のジオン軍とどのような戦いを繰り広げるのか? TV版と結末は異なるのか? この原稿の執筆時にはまだ私も観ていない映画『ククルス・ドアンの島』。今から楽しみで仕方ありません!

BANDAI SPIRITS 1/35スケール プラスチックキット “U.C.HARD GRAPH” 1/35 ジオン公国軍 ランバ・ラル独立遊撃隊セット 使用

Fight for The kids

ディオラマ製作・文/コジマ大隊長

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©創通・サンライズ

コジマ大隊長(コジマダイタイチョウ)

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