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明日から使える?!プロモデラーに学ぶスジ彫りテクニック[後編]

2022.04.19

模型表現の幅を広げる「ディテールアップ」の世界 月刊ホビージャパン2022年5月号(3月25日発売)

明日から使える?!プロモデラーに学ぶスジ彫りテクニック[後編]

「ディテールアップ」コーナーの実演はコボパンダが担当。精密なスジ彫り工作を得意としており、さまざまなツールを駆使して解像度を高めるとともに、立体物として説得力を持たせるディテールアップを行います。本記事では、スジ彫りカーバイトとBMCタガネを使用してさまざまなスジ彫り方法を解説します。

[前編]の記事はこちら


❶段差やパネルラインを彫り直す

BMCタガネ
▲ここからはBMCタガネを使用します。コボがスジ彫りのメインアイテムとして使っている工具で、切れ味や視認性が抜群によく、研ぎ直しによってある程度の刃の欠けにも対応できるため、長く愛用している工具です。彫り直しでよく使う刃幅は0.1mmと0.125mmです
▲ガンプラでは成型技術が高いため、大きい段差でも1パーツで成型されているものが多々あります。この段差を彫り込むことで立体感、別パーツ感を出してキットの密度をさらに上げていきます
▲段差部分の直角に対して斜め45度の角度で彫っていきます。使用した刃幅は0.125mmです。刃が強く、切れ味があるためこのような斜めの角度でもまっすぐに刃が入り、均一に彫れます。細かい糸くずのような削りカスがチリチリと出るのが理想の力加減です
▲パネルラインディテールは少し細く感じたので0.1mmで彫り直しました。スジ彫りの太さでディテールに差を出すことで、より密度感を出すのが狙いです。新たなディテールを彫るときも、太めのディテールで分割されたパーツの中に細かいディテールが入ってるというイメージで作業しています
▲つながっている面を彫り込んで分割されているように見せます。距離が短いので、刃幅の太いタガネをVの字に押し当てて下彫りし、その上から0.125mmでスジ彫りを入れていきます。小技ですがよく使う手法です
▲彫り直しが完了しました。パッと見はあまり変わらない印象ですが、塗装→スミ入れを行うことで彫ったディテールが良い感じに影となり、パーツが分割しているように見せることができます
▲試しにスミ入れをしてディテールがよく見えるようにしてみました。これだけでもかなり印象は変わりますが、側面の長方形ディテールを彫り直したり、新たなディテールを彫ることで、より密度感を高めたり、オリジナリティを出すことができます

❷ダクトモールドを彫り直し

▲ダクトなど奥まったパーツは、ダクト底部の縁を彫り込むことで、スミ入れ、筆塗り、マスキングがとても楽になります。筆塗りは段差があるため塗料の塗りミスを防ぐことができ、マスキングもテープを剥がした時、段差があると塗料の染み出しが防げます
▲彫り直しは非常に手軽で、モールドに対して垂直にタガネで彫り込むだけです。段差の彫りには細い箇所や奥まった部分にも刃が届く0.125mmあたりが使い勝手がよいです

❸フラットな面にディテールを追加する

▲ここからはより実践的に各種ツールを使用してフラットな面にオリジナルのディテールを彫っていきます。ディテールを彫る前に、まずは入念に下書きをします。彫る順番や、角度、他のパーツと合わせて違和感がないかどうかを確認するためです。今回は1パーツに直線、円形、段落ちディテールを入れてみます
▲パーツの縁に沿ってディテールを彫る場合、とても重宝するのがディバイダーです。両方が針になっているコンパスで、ディテールの距離や角度を手軽に測ることができます。ディテールを左右転写する際もよく使用する工具です
▲今回のパーツではダクトに沿って平行に伸びるディテールを彫るのに使用しました。ダクトと平行にディテールを彫ることで既存パーツの延長上のディテールに見せるのが狙いです。ディバイダーでなぞることで下彫りし、その上からBMCタガネで彫って好みの幅にします

❹ガイドテープを活用する

▲まっすぐなディテールを彫るために必須のガイドテープを使用します。しっかりした直線を出したいときは、テープが硬めで粘着力があるハイキューパーツのガイドテープを使用。曲面に直線を彫る場合や、曲がったスジ彫りを彫るときは、ハセガワのアプリケーションシートを使用しています(アプリケーションシート)
▲ゴッドハンド製のガラスカッターマットにテープを貼り付け、短めに切って使用します。ハイキューパーツのガイドテープは3mmと6mmの幅があるので、ガラスカッターマットに貼り付けて、長さを調整してカット。ディテールを彫るたびに切る手間を省いています
▲ガイドテープを使うと、写真のように縁のギリギリの部分にもきれいにスジ彫りを彫ることができます。用途によって使い分けるとかなり幅が広がるので、自分の好みにあった硬さ、接着力のテープを見つけておくのがよいでしょう

❺スピンモールドで丸凹モールドを彫る

▲下書きでは、丸モールドを避けるようにラインが円を描き、また直線に繋がるという形になっています。一見複雑そうに見えますが、実はかなり簡単に彫ることができます。まずは丸モールドをスピンモールドで彫っていきます(スピンモールド)
▲使用したのはセンターピン付きのもので、決まった位置にかなり正確に丸モールドを彫ることができます。切れ味がよいので、パーツが貫通しないように面に対して垂直に立てて丸モールドを彫ります
▲丸モールドがある程度彫れたら、センターピン跡を起点として、ディバイダーで円のディテールを下彫りします。一気に彫ろうとせず、何回かに分けて彫っていくときれいに彫れます。その後、0.125mmのBMCタガネでダクトの上に彫った直線と繋げて完成です

❻ディテールの終点を作る

▲ディテールの終点が装甲の途中で切れていると違和感が出てしまうので、装甲の際まできちんと彫っていきます。距離の短い面や、小さなC面はガイドテープを上手く貼ることができない場合があるので、刃幅が広いBMCタガネを押し当ててVの字に彫り込み、その上から彫り込んで幅を合わせます

❼凹ディテールはスジ彫りカーバイトで

▲スジ彫りカーバイトでやや広い(0.5mm)幅のディテールを彫ります。彫りたい距離にBMCタガネを押し当てて下彫りしておき、それを起点にして彫り下げていきます。下彫りした部分にスジ彫りカーバイトの刃の角を当てて、徐々に面に対して平行になるように彫るときれいに仕上がります(スジ彫りカーバイト0.5)

❽段落ち面を作る

▲削り込みで段落ち面を作っていきます。まずは落としたい面の輪郭をBMCタガネの0.125mmで彫り込んでいきます。これは彫刻刀や幅の広いタガネで彫った時、刃が滑って他の面を傷つけないためのストッパーにするためです。輪郭部分は面を落とす不可さよりもさらに深く彫っておきます
▲刃幅の広いBMCタガネを彫刻刀のように使い、押し切りしていきます。深く彫るのではなく、なるべく平らに薄皮一枚をスライスするように彫るときれいにできます。彫ったあとは細かく切った紙ヤスリで丁寧に落とした面を処理します

❾オリジナルディテール完成!

▲オリジナルディテールが完成しました。残った反対側のパーツはディバイダーを使って、モールドの起点と終点を点打ちすることでディテールの左右転写が可能です。地道な作業ですが、慣れてくると彫るのがどんどん楽しくなり、また作業時間も短くなっていきます
▲スミ入れをすることで、追加したディテールが塗装後にどのようになるのかをイメージしやすくなります。ディテールを追加することでマスキングがしやすくなるので、パネルラインで色分けなどをしてさらに密度感を高めることもできます

これまでの作例を見てみよう

 ガンダム・端白星

 実際にディテールアップを行った作例がどのようなものなのか、過去に掲載された作例を参考に見てみましょう。まず1体目は、ホビージャパンMOOK「ガンダムフォワードVol.3」に掲載された「HG ガンダム・端白星」です。本作例では、“意味のあるディテールアップ”と“多重装甲感”をテーマにさまざまなディテールを追加しています。

HG ガンダム・端白星

素組み

HG ガンダム・端白星 素組み上半身

作例

HG ガンダム・端白星 作例上半身

素組み

HG ガンダム・端白星 素組み下半身

作例

HG ガンダム・端白星 作例下半身

▲重工な鎧騎士のようなフォルムを持つ機体なので、各部装甲が多重装甲に見えるようにスジ彫りを追加しています。胸部装甲は上面と側面の組み合わせで構成されているように、肩装甲やヒザ装甲はエッジのすぐ側にスジ彫りディテールを追加することで、多重装甲のように見せつつエッジも強調しています

BANDAI SPIRITS 1/144スケール プラスチックキット “ハイグレード”

ガンダム・端白星

製作/コボパンダ

 ORX-013 ガンダムMk-V

 続いては月刊ホビージャパン2021年6月号掲載の「MGガンダムMk-V」です。MGキットの中でも大型アイテムの部類に入りますが、キットはやや面があっさりしている印象です。作例ではパネルラインやメカディテールを追加することで、巨大兵器感を高めるように作り込んでいます。

MGガンダムMk-V

素組み

MGガンダムMk-V 素組み上半身

作例

MGガンダムMk-V 作例上半身

素組み

MGガンダムMk-V 素組み下半身

作例

MGガンダムMk-V 作例下半身

▲頭部はトサカ上部側面や後頭部左右など一体成型されている丸モールドを彫り込み、胸部はパネルラインとメカディテールを追加。腰部は白いラインの周囲に段落ちモールド、元のディテールの流れを意識したパネルラインを追加しています

BANDAI SPIRITS 1/100スケール プラスチックキット “マスターグレード”

ORX-013 ガンダムMk-V

製作/コボパンダ

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