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ノモ研 「ソフビキットの製作(後編)」【野本憲一モデリング研究所】

2022.03.03

野本憲一モデリング研究所 月刊ホビージャパン2022年4月号(2月25日発売)

ノモ研 「ソフビキットの製作(後編)」【野本憲一モデリング研究所】

 前回は組み立て前の洗浄や切り出し、接着や展示を見据えた工夫などを紹介した。後編では組み立てた後の合わせ目の整え、そして本格塗装を施す。具体的な工程に入るとソフビキットに限らない“怪獣”というモチーフでの加工、塗装方法になっていく。これも一例として、段階を踏んで仕上げていく様子をご覧いただこう。

製作・解説/野本憲一

ノモ研 「ソフビキットの製作(前編)」【野本憲一モデリング研究所】

前編もチェックする!


題材と今回のポイント

 使用するキットは海洋堂「Sci-Fi MONSTER soft vinyl model kit collection ゴジラ1994」7590円。映画『ゴジラvs スペースゴジラ』に登場したゴジラだ。

▲前回までで組み上げた状態。主要パーツを接着し、長い尻尾も浮かせたままの姿勢が取れるようにしている。下アゴは口内の塗装をしてから接着するので、これは仮固定した姿
▲パーツを繋ぎ合わせた箇所は隙間や段差がある。こうした“製品の都合”で生じた箇所を整えて、より仕上がりを向上させるのはソフビに限らず、プラモデルやレジンキットなどでも同じことだ。ただし素材や周辺の形状などによって取り得る方法が変わってくる
▲ソフビの合わせ目を埋め、形状を整えるには、エポパテが便利。今回使っているのはタミヤの速硬化タイプ。5〜6時間で硬化するもので、使い勝手や入手性もいい。水分は練りやすくしたり、道具に密着させないため。ヘラ(スパチュラ)は塗り込んだり模様をつける際に使う(エポキシ造形パテ(速硬化タイプ)) (スパチュラ)

合わせ目を整える

 組み立ての前に行っておくこと。箱から出したパーツが曲がっていても心配なく、簡単に修正できる。

▲細く伸ばしたエポパテを合わせ目に沿わせ、埋めていく。ヘラを使ってV字の隙間に入れ込み、密着させている
▲周囲にハミ出したパテを濡らした爪楊枝などで削ぎ取っているところ。この例では“硬化後にヤスリ掛けして整形”というのはしづらいので、硬化前にこうしてヘラなどで整えてやるほうがいい
▲隙間を塞ぐだけでは埋めた箇所が完成後に分かりやすい。より自然なシワに見えるよう、さらに手を加えてみよう。腕の前側はそのまま凹み状にしておくが、後方側は幅広に埋め、シワが上側にズレたように変化させた。これで分割位置が目立ちづらくなる。ヒダ模様も周囲との流れに合わせて補完していく
▲太モモの合わせ目も場所に応じて埋め方を変化させた。上辺側は広めにパテ盛りし、張りのある状態とし、「く」の字のスパチュラで跡を繋いだ。後方はシワ状の凹みなので、奥が角張らない程度の埋め方とし、ヒダの補完範囲も狭めにしている
▲手首の合わせ目。ここは段差状で埋めるというより、模様を合わせて繋ぐようにしたいところ。そこで「ヒートペン」を使って整えてみた。ヒートペンは熱加工をする道具で“先端近くを持てるようになった半田ゴテ”のようなもの。温度調整もでき、先端を任意の形状に変えられる(ヒートペン)
▲ヒートペンの先端は斜めカットされた細めの円筒型を使用。触れた箇所が軟化するのを活かして、合わせ目を跨ぐように動かし、段差の高い側からならしつつヒダ模様を付けていく。温度は210°〜230°で行った。凹ませ過ぎると修正が難しいので温度は低めから試すといいだろう

なだらかに繋ぐ場合

 合わせ目をスムーズに繋ぎたい場合の例と、その注意点。

▲人型のモデルによくある合わせ目(例はソフビトイ)。ミゾだけでなく、段差状になっている。これを整える方法はいくつかあるが、行いやすいのはやはりエポパテでならす方法
▲合わせ目は瞬間接着剤で接着しておき、その後に凹みを埋めつつならすようにパテ盛りしている。パテを盛る面は紙ヤスリ(#240程度)で荒らして食い付きをよくしておく
▲パテが硬化したらヤスリで整える。なだらかにしたいのでスポンジヤスリ(#320)で水研ぎした状態。埋めた所の上辺は境目が明確、下側はパテが徐々に薄く重なっている状態。これで整っているように見えるが…(タミヤ研磨スポンジシート 320)
▲サーフェイサーを吹いて仕上がりを確認。埋めた上辺はパテのほうが削れすぎて滑らかさに欠ける。下辺ははなだらか繋がっている。このことから、上側に向けてもパテがソフビ面に重なるように盛り付けた整え方をするのがいい、というのがわかる

塗料について

 ソフビキットに適した塗料の特性と、サーフェイサーについても確認しておこう。

▲水性、ラッカー系、ソフビ用塗料(Vカラー)のそれぞれをソフビ表面に塗って、食い付きなどを確認してみた。水性、ラッカー系も食い付きは良く、直接着色しても悪くはない。なお、エナメル系はソフビ面に適さず、製作例の説明書でも「エナメル系は使用不可」と明記されている
▲塗装した面を折り曲げて、ちょっと意地の悪いテストをしてみた。少し曲げたくらいではどれもダメージはなかったが、何度も繰り返すとこのように細かくヒビが入った。水性やラッカー系は部分的に剥がれたが、Vカラーはヒビは入ってもほとんど剥がれず、食い付きや塗膜の強さがうかがえた
▲ソフビキットでは塗装の食い付きをよくする目的ではサーフェイサーは特に必要がないが、仕上がりの確認に使いたいこともある。ソフビ面へのサフはプラ用(Mr.サーフェイサー1000等)が定着しやすく、レジン用やプラサフは剥がれやすくて適さない。この製作例ではエポパテを使った周辺に、仕上がりの確認も兼ねてビン入りタイプを筆塗りしている(Mr.サーフェイサー1000)

細部の塗装

 再び題材に戻って、塗装の開始。先に細部を塗装し、マスキング〜ボディ色塗装という流れ。そのための下塗りから開始!

▲目、口、ツメなど細部の下地色として、Vカラーのアイボリーを塗装した。成型色を抑えて発色を助けると同時に、塗膜の食い付きも確保することができる(アイボリー)

▲口内の塗装はラッカー系塗料で、クリアーのオレンジやレッド、純色マゼンタ等を使い、モールドに沿わせて明暗を付けていく。明るめなところはホワイトを足し、深みを表現したいところは染料のクリアーカラーを厚めに重ねる方法とした
▲歯先は周辺を塗った後に再びアイボリーを重ね、歯茎側にクリアーイエローを重ねるなどして境目を馴染ませるようにした。舌のパーツも肉感が出るよう、先端に透明感を、中央部は密な印象となるよう、変化を付けている
▲瞳の塗装は重要ポイント。面相筆を使って始めに黒目(瞳孔)を描き込み、さらに周囲の虹彩の輪郭をクリアーのブラウンで描いたところ。塗料はここもラッカー系を使っているが、そこは使い慣れているからの選択。リターダーを加えてムラを出にくくしている(面相筆)
▲虹彩の外フチをブラウンで濃いめに、中心側はホワイトにクリアーオレンジ、イエローを加えた色で明るくするよう変化をつけている。白目の周辺部も影色を足している。描き込みが済んだら全体にエナメル系のクリアーを塗って表層の透明感や光沢感を加えるといい
▲ツメ部の根元側にクリアーイエロー+オレンジで色味を加えているところ。小径ノズルのエアブラシ(この例は0.18mm)で細吹きしているが、手のツメは吹き付けにくい箇所もあり、そこは筆塗りで補った
▲口内を塗装したら下アゴをボディ側に接着。事前にフィット感を確認し、ドライヤーで温めて密着させてから瞬間接着剤の流し込みで固定。接着については前回も参照のこと(前回の記事)
▲合わせ目を埋め、繋ぎ合わせるのは先の例と同じ。エポパテで凹みを埋めつつ、周囲に沿ったシワをつけて整える
▲口内の赤い範囲を整えるため、体表の色(下段で説明)でハミ出し部分を修正しておく。塗り分け線などのモールドがあるわけでないので、歯の周囲のパーツ形状(凸部)の頂点を目安にしている

凹凸部のマスク

歯の周辺のマスキングには練り消しなど粘土状の素材を使うと密着させやすく、範囲も整えやすい。この例では仮固定でも使った粘着ラバー「ブル・タック」を使っている


ボディ色の塗装

 ここでは力強い造形や細かなヒダ模様が強調されるように、塗り重ねて濃淡をつけていく。塗りにくい箇所ではソフビならではの対処も。

▲ボディの全体色を塗る前の準備。先に塗装した目や口、ツメなどをマスクし、尻尾パーツは間着側を小ビンに固定して持ち手とした。ボディ本体は頭部に入れたオモリのためバランスが取りにくかったので、持ち手は付けずにそのまま持って塗ることに
▲ボディの全体色は3段階に重ねて濃淡をつけることにした。下地となる最初の色は食い付きや塗膜の強さからVカラーを使用。ブラック+モンスターグレーの混色(ブラック)
▲下地色となる濃いグレーを全体に塗装。これは満遍なく全体に塗っていく。パテ埋めした所も色が揃って仕上がりが確認できる
▲続いて2色目。下地よりも明るめ、青味を足した色合いで、ボディ形状の盛り上がった箇所を中心にボカシながら重ねている。お腹や太モモ表面に変化が付いているのがわかるだろう。凹みや影になる箇所は濃い色を残し、抑揚を強調していく
▲3色目は明るめのグレー。これはハイライトの役割で、大きなシワの頂点付近にアクセントを付けるようにしている。また、背部のヒレ部では白く塗る箇所の下地塗装としても使っている
▲3段階の塗装を終えたところ、ここまでは大きな抑揚、シワに合わせた強調。塗料の2色目からは模型用のラッカー系を混色したものを使っている

塗りにくい箇所は…

背面のヒレが重なって塗りにくい箇所は、ドライヤーで温めて軟らかくしてから、ヒレを傾けながら塗装した。ヒレの接着部も剥がれるようなことはなかった

▲取り回しやすいよう胴体と尻尾を分けて塗装すると、グラデーションや色の濃さに違いが生じやすい。そこで最終的には尻尾を取り付けた状態でも確認し、差があれば整うように修正の塗装もする
▲さらにより細かく表皮のヒダに沿った階調を加えるのに、筆塗り(乾かし気味で撫でるようにして)でハイライトを入れている。エアブラシとは違って、より細かな凹凸に沿った表現を加えるわけだ
▲体表のグレー塗装の完了。3段階のエアブラシ塗装+ドライブラシで階調を付けたわけだが、そこは各々が仕上げたいイメージでアプローチが変わるところだろう。この例ではハイライト部が白っぽく見えすぎないことと、ツヤを消しすぎないことに注意した
▲背部のヒレ状パーツの塗装。ここは凹凸やパーツの重なりもあるので筆塗り。ホワイトにクリアーイエローを少し足した色を使って、先端側の白色部分を塗っている
▲白色部と体表グレーの境は中間のグレーを足してぼかす感じに。先に明るい部分を塗っておき中間を調整するほうが最終的な仕上がりが安定しやすく、ボカシ具合、範囲の目処もつけやすい
▲体表部の色味調整と、凹みの強調にエナメル系のスミ入れ塗料を流すように塗り込み。エナメル塗料はソフビに直接塗るとベタ付きが残る場合もあり適さないが、他の塗料の上に重ねたり、スミ入れ的に使うことは可能だ(スミ入れ塗料(ブラック))

最終仕上げ

 塗装後のパーツ接着、そして気になる箇所を整えて完成度を高める。

▲塗装後の接着とした上顎パーツ。ここの接着は流し込みではなく、高粘度の瞬間接着剤を点付けして貼り合わせる。事前に密着具合を確認し、やはり温めた状態で行っている
▲マスキングした境界がクッキリしすぎないように微調整。この表皮と口内の境目ではクリアーカラーを重ね、狭い幅でぼかしている
▲眼球の光沢感、透明度を増すため、エナメル塗料のクリアーを塗り足す。目の塗装段階でもクリアーを塗ってはいるが、マスクしたフチの微調整とともに、最後にあらためて行った(クリヤ―)

完成

 各工程の効果とその仕上がりを確認しよう。

▲力強い姿が再現されたゴジラ1994(通称、モゲゴジ)。フォルムやヒダ模様が伝わるよう明暗を付けた塗装はオーソドックスな仕上がりといえるだろう。下地塗装的に塗り重ねの始めにVカラーを使い、その後はラッカー系塗料を使っている。目や口、ツメといった細部は深みが出るように、丁寧に塗り重ねている。これらの資料として、小社刊「ゴジラvsスペースゴジラ コンプリーション」掲載のゴジラスーツ写真を参考にした(ゴジラvsスペースゴジラ コンプリーションの書籍情報をチェック!)
▲腕部、脚部の合わせ目があった箇所は、凹みを埋めるだけでなく、表皮の模様を繋げて違和感をなくしている。埋める前や塗装前の状態と比べてみよう
▲尻尾が長く伸びているが、浮かせた姿勢を保てている。これは頭や胸部内にオモリを入れることでバランスをとっている

完成後の取り外し

間着を活かして尻尾は外せるようにしておいた。取り付け、取り外しはドライヤーなどで温めて行う。塗装への影響がでないよう、変形は最小限にとどめたい

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©TM & TOHO CO.,LTD.

野本憲一(ノモトケンイチ)

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