セイラマスオの気まぐれガンプラ製作記 成型成型色を活かしたプロポーション変更[前編]
2021.12.20
気まぐれガンプラ製作記 月刊ホビージャパン2022年1月号(11月25日発売)
個性的なテクニックで月刊ホビージャパンモデラーの中でも一線を画する存在のセイラマスオ。その代名詞である“マスオディテール”やオリジナルアレンジ、淡い塗装表現がどのような考えで行われているか気になりませんか? そんな知られざる“マスオ理論”に迫るのが本連載「セイラマスオの気まぐれガンプラ製作記」です。お題だけ決めて、あとは自由にいつも通り製作していく様子をゆるくお届け。第5回は、HG Hi-νガンダムを題材に成型色を活かしたプロポーション変更を解説します。
製作・解説/セイラマスオ
ウマく作るためのHow toじゃありません
これから紹介していく私の製作法は、自分なりに上手い人のやり方を参考にしつつ、そこから手を抜いたり道具的な問題から妥協した結果たどり着いたものです。この方法が正解とかオススメとか言うつもりは毛頭なく、いい意味での“これくらい力を抜いてもいいんだ”と思ってもらえる機会になれば、くらいに考えています。

theme:成型色を活かしたプロポーション変更[前編]
use kit:HG Hi-νガンダム
キットのよさを活かしつつアップデート
非常に優れた出来のRG発売に沸くHi-νガンダムですが、今回はプロポーション変更のお題としてHG版を用意。RGを見慣れた目で見ると細身でやや頼りない印象もありますが、ここはRGのズッシリとしたバランスに寄せずにHG版なりのプロポーションを追求してみたいと思います。同時に色数の少ないHi-νの特徴を活かして、全身成型色を活かした仕上げに挑戦してみます。
▲公式設定化された後に発売されたキットで、放射状にマウントされたフィン・ファンネルによるシルエットが特徴。シールドの独特な色分けも成型色で再現されている
HG Hi-νガンダム
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン クリエイション部●2420円、2009年6月発売●1/144、約14cm●プラキット
1. まずはキットのプロポーションを検証
▲キットのプロポーションを検証します。プロポーションの確認はキットを真正面から見ると問題点が分かりやすくなります。この時点で改修ポイントをすべて決めてしまう必要はありません。とりあえず気になったところが見つかれば、そこから手を付けていけばよいのです
2. 上半身のバランスを変更
▲まず気になったのは首の位置(高い)。ここから始めていきます。首パーツを切断して短縮します
▲首はやや後方にずらして再接着し、頭部が干渉するようになる内部フレームまわりを削ります
▲外装の襟周辺も合わせて削り取ります
▲腕が胴体から離れ過ぎているように感じたので、これを解消していきます
▲接続ピン根元のストッパー部を削り取って腕を寄せる簡単工作です。ですが、このキットは上腕に肩アーマーが連動する構成なので、この方法では肩アーマーも胴体に寄って干渉してしまいます
▲対処法として肩アーマーが干渉する箇所を削りました! 当然肩アーマーの形状は変わりますし、強引ではありますが、うまく誤魔化せればこのほうが非常に簡単です!
▲この時点でバランスを確認。首が短くなり過ぎて猪首状態ですが、今後の加工次第では印象が変わったりするので、とりあえずこのまま進めます
▲首を詰めて縮んだ上半身を胴体部の延長で相殺していきます。加工はここも簡単にポリパーツの位置を下にずらして対応。ポリパーツ受けの長穴のすぐ下に同様に穴を開けてポリパーツの位置を下にずらします
▲ポリパーツが下に移動したぶん、隙間ができて胴体が伸びました
▲全体を見てバランスを確認。まだなんとも言えませんが、やり直すのが大変なのでこのまま進めていきます(笑)
▲胸部脇下のパーツは削り込んでボリュームを減らします。穴が開きそうなのでゼリー状瞬間接着剤で裏打ちしておきました
▲こんな感じで段差がなくなりスリムになりました。次に宙に浮いたままの胴体が情けないので埋めていきます
▲この胴体部の成型色はランナープラ板にすると中央にスジが現れるヤッカイなやつ(泣)。一応成型色で進めますが、ここは後で塗装ということになりますね
▲ここの隙間は大きいので、ランナープラ板でふさぐためには2段重ねにしたり、縦に貼ってみたりしながら一生懸命埋めていきます(笑)
▲しっかり接着できたらヤスリで削って整形します(やっぱり塗らないとダメみたいです)
▲それでもまだ少し隙間が残ったのでもう一段貼りましたが、ついでにあえて馴染ませずフレーム色のプラ板でディテールとして貼ってみました
▲中央の白成型色部分も別途隙間埋め。これでやっと胴体の隙間がふさがりました
▲胸部天面の面構成を削り込んで変更します
▲角度が付いてメリハリが出ました。プラの肉厚の範囲内ですが、少しのことでも意外と印象が変わります
▲中央の白い部分は逆にタグプラ板を盛って高くしました(これもメリハリ)
3. ここから下半身!
▲ここからは下半身です。キットで一番気になったのが伸びきらないヒザ関節! もう少し前に傾いてくれれば立ち姿がサマになるのにぃ〜!
▲そこで関節内側の干渉している箇所を削ります
▲可動範囲が広がりやや前傾できるようになりました。ちょっとしたことですが、これで立ち姿がグッと力強くなります
▲ヒザ関節の可動範囲が広がったことで太モモの裏が腰部リアアーマーに干渉するようになってしまいました(HGはアーマーが固定なので)ので、左右のアーマーを切り取って…
▲太モモと干渉しない位置に移動して再接着♪(可動化なんて大変なことはしませんw)
▲腰部フロントアーマーは思い切って大型化します。アーマー自体に鋸を入れたり手間のかかることはせずに、側面に箱組み的にランナープラ板を貼り付けるだけの簡単工作で対応します
▲部位ごとに細かく追加していくことで広い面のないランナープラ板の弱点を補いつつ、結果的にディテールも増えるので一石二鳥です♪
▲股間パーツもランナープラ板を使用して大型化、まず壁になる部分を積み上げて…
▲その上からタグプラ板でしっかりフタをして接着しました。乾いたらはみ出たところを整形します
▲これで腰部フロントアーマーと股間パーツを大型化できました
▲腰部サイドアーマーは胴体を延長して空いたスペースを埋めたいので上方にボリュームを持たせます。ここはお手軽にいい感じの流用パーツを使います
▲唐突な流用パーツを馴染ませるため側面にタグプラ板を貼り付け。形状的にはかなりオリジナル要素が出てしまいましたが、これくらいは許してもらいましょう(誰に?)
▲靴部はお手軽小改造。足甲の高さの緩和とボリュームダウンを狙って天面をヤスリで削るだけです。念のためゼリー状瞬間接着剤で裏打ちはしておきます
▲というわけで全身のプロポーション変更は終了となります。もっと切断しまくり、延長しまくりの改修になるかと思っていたのですが、気がつけば大幅に手を入れたのは胴体延長くらいで、後は微調整くらいで済んでいますね(意外)♪
今回はここまで!
▲キット素組み(左)と比較すると、上半身は首を短くしたことで頭部が胴体に埋まり気味になったぶん、腹部を長くすることでバランスを保ち、下半身はヒザ関節の加工で脚がすっと長くなったような印象になっている。さらに腰周りの大型化で下半身の比重が大きく見えるようになった
最初は長さが気になって短縮するつもりだった腕部も胴体の延長で気にならなくなり、延長を考えていた脚部もヒザ関節の可動範囲の拡大で必要ないと感じるようになるなど、明確なビジョンの基に進めた改修ではなくその都度バランスを見ながら少しずつ進めた結果、最小限の加工で済んだ形となりました。まさに「考える前に手を動かせ!」ですね(成り行きまかせとも言うw)。
©創通・サンライズ
セイラマスオ
独特の視点と考察によるディテーリング“マスオディテール”と、作品問わずパーツを使いこなすミキシングテクニックを持ち、成型色を活かした淡い塗装仕上げを得意とするガンプラLOVEの先導者。
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