アニメ「プラノサウルス ガチコセイブツ部」連動キット「イグアノドン」を現代的な復元へとディテールアップ!【プラノサウルス復元プロジェクト】
2026.10.17
プラノサウルス復元プロジェクト/イグアノドン【BANDAI SPIRITS】●ウラベヒロト(アーミック)、 G.Masukawa(GET AWAY TRIKE!) 月刊ホビージャパン2026年11月号(9月25日発売)
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■改造
骨格図
イグアノドンが命名されたのは1825年のことである。命名したギデオン・マンテルは、発見された部分骨格とその他の標本を組み合わせ、1834年に巨大なトカゲのような姿の復元図を描いた。親指のスパイクを鼻の角として復元するというコンセプトはライバルのリチャード・オーウェンにも踏襲され、1854年にはオーウェン監修の下、ウォーターハウス・ホーキンスによってロンドン郊外の水晶宮公園にクマとイグアナのキメラのような姿で実物大の復元像が建造されている。
アメリカでのハドロサウルスや“ラエラプス”の発見を踏まえてホーキンスは自らの復元に修正を加えたが、その数年後にはベルニサール炭鉱でイグアノドン・ベルニサールテンシスのおびただしい全身骨格が発見され、それ以前の復元は完全に時代遅れのものとなった。1882年には復元骨格がお披露目されたが、このカンガルーのようなスタイルの復元骨格は、まっすぐ伸びた状態で化石化していた尾をわざわざへし折って組み上げられたものでもあった。
キットはこの1882年から1970年代まで広く流布していた復元イメージをうまく表現している。今回は現代的な復元に合わせて姿勢を変更するだけでなく、実際の化石を参考に徹底的なディテールアップを行った。
▲キットは1882年頃の復元スタイルをイメージしているが、骨格の形態そのものの復元は当時と現在で特に変わりはない。キットの改造箇所を見極めるため、骨格図と比較する。今回は頭骨のサイズをそろえて骨格図と並べてみることにした
▲椎骨のディテールアップのため、胴椎はひとつひとつ切り分け、骨格図や論文の図版を参考に間隔を調整する。尾椎も数個ごとに切り分け、金属線を通して可動化させた。仙椎と尾椎の棘突起は恐竜ビルドの都合もあってやや短いので、骨格図をガイドに切り出したプラ板に置き換える
▲加工した胴椎と仙椎、尾椎を組み合わせて骨格図と比較し、全体のバランスを確認する。尾の先端のパーツはキットのものをまっすぐに伸ばしてしまうのもよいが(模型はパワーだぜ)、いかにも折れそうだったのでパラサウロロフスのものと置き換えた
▲キットの胴肋骨は良い雰囲気だが、恐竜ビルドの関係で幅・長さが不足ぎみ。トリケラトプスの肋骨パーツを前後左右入れ替えるとちょうど良さそうだ。1本ずつ切り分け、胴椎に接着していく。腰近くの短い肋骨は、イグアノドンのキットパーツから切り出して使用した
▲肩甲骨・烏口骨は肋骨と一体成型されているため、切り出して使用する。位置関係に注意しながら、先ほど加工した肋骨の上に接着する。ただ切り出しただけでは肩甲骨が厚ぼったくなるので、金ヤスリなどで薄く削り込んでおこう
▲胴椎に肋骨をただ接着しただけでは強度に不安があるため、胴椎の横突起を造形がてらエポパテで基部を補強する。肩甲骨・烏口骨や腸骨もエポパテでボリュームアップさせておこう。座骨の閉鎖孔突起(股関節のすぐ下に伸びた突起)や尾椎の横突起もエポパテで追加しておく
▲頭骨は恐竜ビルドの関係でややのっぺりしているものの、実際のイグアノドン・ベルニサールテンシスでは非常にいかつい顔つきが特徴だ。まずはキットの眼窩と側頭窓(眼窩の後ろにある開口部)をドリルで開口し、全体のバランスを骨格図と比較する
▲エポパテを盛り、必要な部分をボリュームアップ。イグアノドン・ベルニサールテンシスの頭骨はいくつも発見されているが、化石化の過程での変形や個体変異のため、ものによってかなり顔つきが異なって見える。今回は骨格図よりもややいかつい顔の標本を参考とした
▲胸骨はプラ板を芯に、烏口骨と金属線で接続する。エポパテを盛り、復元骨格(日本国内では福井県立恐竜博物館や岐阜県立博物館にレプリカが展示されている)などを参考に形状を追い込んでいこう
▲キットの前肢は可動ギミックの関係で、ヒジ関節が実際の骨格とはかなり異なる構造になっている。思い切って金属線で上腕と前腕を接続し、エポパテで形状を整える。第II指~第IV指(人差し指~薬指)はエッチングソーで切り分け、末節骨(爪の骨)をボリュームアップした
▲後肢も骨格図と比較し、バランスを探っていく。恐竜ビルドの関係でどうしても後肢の骨は左右幅が不足しがちなうえ、趾骨(足の指の骨)も薄くなりがちだ。ヒザの可動部も目立つので、どうするかよく検討する
▲ヒザの可動部をカットし、長さを調整しつつ金属線で大腿部とスネを接続する。足首より先はキットのままではボリューム不足のため、連載第10回のフクイサウルスと同様にティラノサウルスのパーツを加工して使用した。趾にも金属線を通し、可動するようにしておく
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骨格ビルド(素組み)
▲キットの骨格ビルドは1882年の復元骨格の雰囲気をよく表現しているが、恐竜ビルドの都合で本来より細身のスタイルだ。細身であることを逆手に取り、イグアノドン・ベルニサールテンシスと同じボーンベッドから産出したマンテリサウルス(イグアノドンより細身)を製作するのもおもしろい
骨格ビルド(改造後)
▲一通りの加工が終わったところで全身を組み上げ、全体のプロポーションやボリューム感を確認する。各部の長さはキットからあまり変わっていないが、各部のボリュームアップでよりイグアノドン・ベルニサールテンシスらしいスタイルとなった
■塗装
▲イグアノドンをはじめ、ベルニサール炭鉱から産出した化石はどれも黒っぽく、まだらに茶色がかった色を呈している。化石には大量の黄鉄鉱の結晶が含まれており、黄鉄鉱病(連載第17回を参照)による損傷の修復・保護を目的としてさまざまな樹脂で補強された結果、実際の化石標本はかなりツヤのある状態だ。まずは黒のサーフェイサーで下地を塗装する
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▲実物化石のまだらに茶色がかった様子を表現するため、ブラウンの塗料を2色用意し、筆でランダムに色を乗せていく。その後全体にクリアーブラックを吹き付けることで、ブリュッセルの王立自然史博物館で展示されている実際の化石標本らしい色合い・質感が表現できた
▲これで完成! キットをベースに徹底的にディテールアップすることで、実物標本さながらの雰囲気を再現できた。ベルニサール炭鉱産の化石はどれももろく、実物を用いてアクティブなポーズで組み立てることは現代の技術でも不可能だ。机の上だけで許された遊びがここにある
イグアノドンは1825年にマンテルによって命名されたが、マンテルはこの属に種を設けなかった。マンテルが当初イグアノドンと命名した数本の歯の化石はのちにイグアノドン・アングリクスという種名を与えられたものの、歯の形態だけでイグアノドン属の他の種はおろか、近縁の属と区別することは事実上不可能である。1990年代になるとこのことが問題視されるようになり、2000年になるとイグアノドン属の模式種(属の基準となる種)は歯のみに基づくイグアノドン・アングリクスから、多数のほぼ完全な骨格が知られるイグアノドン・ベルニサールテンシスへと変更されたのだった。
イグアノドン属にはイグアノドン・ベルニサールテンシスの他にも多数の種が命名されていたが、近年の再検討でマンテリサウルスをはじめとするさまざまな新属へと分割された。マンテリサウルスはイグアノドンよりもずっと細身で小さいが、餌を食べ分けるなどしてうまく共存していたようだ。
Iguanodon bernissartensis
イグアノドン・ベルニサールテンシス
●鳥脚類 イグアノドン科●全長約9m●白亜紀前期(バレミアン~アプチアン前期)約1億2400万~約1億1900万年前頃?●ベルギー、ドイツ、イギリス、スペイン?
BANDAI SPIRITS ノンスケール プラスチックキット “プラノサウルス”
イグアノドン
製作/ウラベヒロト(アーミック)
骨格図・解説/G. Masukawa(GET AWAY TRIKE!)
プラノサウルス イグアノドン
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン●1925円、発売中●約20cm●プラキット
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G. Masukawa(GET AWAY TRIKE!)