HOME記事キャラクターモデル【ARTPLA キングギドラ発売記念連載】ARTPLA怪獣シリーズのこだわりが息づくキングギドラの造形【第2回】

【ARTPLA キングギドラ発売記念連載】ARTPLA怪獣シリーズのこだわりが息づくキングギドラの造形【第2回】

2026.09.11

さらなる表皮表現に挑戦したキングギドラのウロコ

 これまでのARTPLA開発のノウハウとインジェクションキットとしての試行錯誤の末に発売された「ゴジラRe:イマジネーション」は、ベースを含めた空間的表現とその完成度の高さが評価された。そして、第2弾アイテムとして選ばれたのが、怪獣としてはさらなるインパクトを持つ存在である『三大怪獣 地球最大の決戦』に登場するキングギドラだった。しかし、ARTPLA怪獣シリーズの原型を手掛ける松村は、キングギドラの制作の依頼を受けた当初は大きな不安を抱えていたという。

「造形物のキット化は、ソフビでもレジンキットでも制約があるんですよね。中でもインジェクションキットは、金型の抜き方向を含めてさらに制約が多い印象があるんです。だから、最初に怪獣をインジェクションキットで出すと聞いた時は「どうなのかなぁ」とは思いましたね。それが、「ゴジラRe:イマジネーション」の開発が進む中で、データとして見せてもらった芯の部分に皮膚を被せていく感じがすごくいいなと思ったんです。実際にキットとして出来上がったものも凄く良かったんですが、次にキングギドラをやるとなった時には、ゴジラとはまったく異なる表現になるので、再び「大丈夫かなぁ?」とは思いましたね」

 松村が難しいと感じたのは、体表の表現の違いにあった。ゴジラの皮膚とキングギドラのウロコでは、ウロコの方が金型で表現する難易度が高くなってしまうからだ。そこから、キングギドラのウロコの表現方法で試行錯誤が繰り返されていくことになる。

「ゴジラの皮膚は凹凸が連なっている形なので、開発がすすむうちに形状的には誤魔化しが効くので何とかなったんだろうと思っていたんです。でも、キングギドラのウロコは綺麗に並んでいるし、それぞれが山型になっている。これを金型化して抜くとなると、ゴジラのようには上手くいかず、悲惨なものになるんじゃないかと思いながら作業をしていました。

ただ、ウロコに関しては造形を進めていくうちに、金型で抜く際に引っかかってしまうアンダーカットができない形で植えることができたんです。全方向を完璧にというのは無理かもしれないけど、できるところはやっておこうと配置するようにしました。

僕は現在、原型はデジタルで作っているんですが、キングギドラのウロコは本体のラインに合わせた流れを気にしながら1枚ずつ貼り付けています。作業としては、10枚とか20枚をブロックにして貼り付けることもできるんですが、それでやってみるとどうしても不自然な形になってしまってそれを後から修正する方が面倒でした。特にウロコは首から背中にかけてや、腿からの膨らみにかけての部分は筋肉に沿った流れが大事なので、まとめて貼る形だと綺麗に表現できない。だから、時間がかかっても1枚ずつ貼るのが正解でした」

本物の怪獣としての存在感を際立たせるヴィネットの造形

 キングギドラを造形すると決まった時に、松村を悩ませたのはウロコの表現だけではない。台座を含めた全体の構成に関しても試行錯誤の末に、現在の形にまとまったそうだ。

「ゴジラと比べると、キングギドラはどのシーンを表現するかが難しかったです。基本的には空を飛んでいる怪獣ということもあって、着地した状態だとなかなかポーズが決まらなくて。最初は、劇中でキングギドラが入った隕石が落下するのは黒部ダムの近くなので、その直後をイメージしてダムに舞い降りて壊しているような感じにしようと考えていました。ただ、ダムの上に乗った巨体をどう支えるかという技術的な問題も出て来てしまったんです。そこで、それならば劇中に登場する鉄橋が壊れているシチュエーションはどうかと提案して、今の形に落ち着きました。

とは言え、開発の塩入君からはベースはできるだけ小さくしたい、アンダーカットが出ないようにして欲しいという要望があって現在の形になるまで苦労しました。今回もベースや鉄橋の橋桁もすべて自分で造形しているんですが、足下の川の部分は、上流にあった黒部ダムを壊して濁流が流れてきているような雰囲気を付け足すなど、いろいろとアレンジを加えています。あとは、橋桁のすぐ横の落石。怪獣の戦いの影響で岩がゴロゴロと落ちているシーンが劇中にもあるので、そういう表現を入れると面白いかなと。その他にも神社の鳥居と参道を付け足すとか余計なことをいろいろとやっています」

 では、メインであるキングギドラ本体のシルエットや形状の表現に関してはどのようなイメージで形作られたのだろうか?

「改めてキングギドラのデザイン画を見ると、尻尾がすごく大きいんです。特に背中側から見ると、首の付け根のすぐ後ろ位から尻尾を背負っているような感じのラインになっていて、そこから両足が生えている。それくらい2本の尻尾の存在感があるので、その辺りを出したら面白いかなと思いましたね。歩くというよりは、尻尾も使って移動しているような雰囲気をイメージしました。形状としても、「着ぐるみに人が入って歩いています」という感じはしたくなかったので。

首に関しても、撮影では糸で吊られて動かしていたんですが、そういう操演している感じではなく、中に骨があって、筋肉を使って動いている感じにしようと思いました。翼に関しては、胴体からいきなり生えている感じなんですが、そこは「そういう生き物だ」ということで特に変えはしませんでした。とは言え、2mの着ぐるみからイメージした形状ではななく、100mの生物の翼を表現した形状で表現したかったという思いはあります。翼自体はわりと単純な形状をしているんだけど、皮膜の翼を持つ生物は指の力で膜を張っているんです。指先に力を入れないと皮膜は広がらない。だから、今回のキングギドラは造形表現として翼の先の部分に小さい関節を追加して、そこがグッと力が入って曲がって羽根自体を支えている。そういう感じにみえるようにしています。

キングギドラは、僕にとっては昔からよく知っている怪獣で、形状やデザインのいい面や悪い面、そして格好いいところも判っているつもりです。その辺りの良さも悪さも活かしてバランスを取った結果、自然と今回のような造形になった感じです。怪獣の着ぐるみに忠実に「ここはこんな形で繋がっていた」とか「釣った時にはここに支点がある」みたいに造形するアプローチもありますが、それは実物を分析しているわりと大人の視線だと思っているんです。僕は子供の目線で「怪獣はこういう形のまま生物として存在しています」ということを大事にしていて、自分の中にある実在するイメージで作っているだけなんです」

次ページ:ARTPLA怪獣シリーズから見えた造形的手応え

TM &© TOHO

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石井誠

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