HOME記事工具・マテリアル【昨今のプラモ“塗料・溶剤”事情】日本を代表する模型用塗料「Mr.カラー」やツールメーカーである「GSIクレオス」が語るラッカー塗料の未来とは?

【昨今のプラモ“塗料・溶剤”事情】日本を代表する模型用塗料「Mr.カラー」やツールメーカーである「GSIクレオス」が語るラッカー塗料の未来とは?

2026.08.04

GSIクレオスが語るラッカー塗料の未来 月刊ホビージャパン2026年9月号(7月24日発売)

GSIクレオスが語るラッカー塗料の未来

 昨今の国際情勢にともなう材料供給の懸念や、水性塗料の普及などの状況の変化に照らし合わせて、果たしてラッカー塗料の未来はどうなるのか? 日本を代表する模型用塗料・ツールメーカーであるGSIクレオスの片山氏、荒木氏に伺った。(聞き手/HJ編集部)

GSIクレオス ホビー部 国内事業課

荒木太歩(Tafu ARAKI)

片山雄一(Yuichi KATAYAMA)


   2026年の現状と安定供給への道  

――近年のホビーシーンでは水性塗料の進化が目覚ましいですが、一方でアンケートを取ると、依然として8 割から9割の方がラッカー塗料を使っています。そんななか、中東情勢の影響を受けて店頭から塗料溶剤が品薄になるという現象が起きました。現在の供給状況はいかがでしょうか?


GSIクレオス(以下、クレオス) 結論から申し上げますと、ようやく「なんとかなりそう」という段階まで漕ぎ着けました。確かに6月までは原料調達に駆け回りましたが、7月~8月にかけて平年並の生産体制に戻る見通しです。一般的に、ラッカーの溶剤は1本あれば通常なら半年~1年は持ちます。現在は順調に材料調達できていますので、必要な時に必要な分だけを買っていただける「安定供給」の状態にすぐ戻ります。どうかご安心ください。


   次世代の旗手「Mr.カラーGGX」に込められた意味  

――そんな最中にラインナップを拡大しているのが「Mr.カラーGGX(ダブルジーエックス)」です。これは従来のGXシリーズをさらに進化させたものという位置付けですか?

クレオス はい。実はこれには大きな開発目的がふたつあります。ひとつは純粋な「性能の強化」。そしてもうひとつが、世界的に厳しくなっている「溶剤規制への対応」です。現在、海外(特に台湾やヨーロッパ)では、従来のラッカー塗料に含まれる一部の溶剤に対する規制が強化されています。GGXは、それらの規制対象となる成分を排除しながら、従来以上の性能を出すためにゼロから設計した塗料なんです。

――「GGX」というネーミングも気になります。

クレオス 従来の「GX」を超えたという意味でGを重ねました。実は開発担当者がロボットアニメ作品が好きなので、GGXと名乗るのならば、読みは「ダブルGXだ!」となりまして(一同笑)。


   「GGX」がもたらす圧倒的な光沢と、意外なメリット  

――GGXを実際に使ってみると、驚くほどの光沢感と隠蔽力があります。

クレオス ありがとうございます。特に「黒」と「白」の性能にはこだわりました。GGXの光沢は非常に強力で、例えばGGXのホワイトを塗装したものを3Dスキャンしようとすると、光を反射しすぎてエラーが出るほどです。これまでのメソッドでは、グロス仕上げにするなら「クリアーを重ねて研ぎ出し」が必須でしたが、GGXなら吹きっぱなしでも充分な鏡面が得られます。また、規制に対応するために溶剤の組成を変えた副産物として、従来のラッカー特有のツンとする匂いの拡散力が抑えられています。「これなら家族に怒られない」という声もいただいており、マンション等の住環境による制約でラッカーを諦めていた方にもぜひ試していただきたいですね。

――ちなみに、GGX専用のうすめ液は従来のMr.カラーにも使えるのでしょうか?

クレオス 使えます。むしろMr.カラーにGGX専用うすめ液を使うと、光沢が向上する「上位互換」のような使い方が可能です。逆にGGXの塗料に従来のうすめ液を使うこともできますが、その場合はGGX本来の性能が100%発揮できず、50%程度になってしまうので、性能をフルに引き出すなら専用液をおすすめします。

――溶剤といえば、「ラピッド」「レベリング」「通常」の3種類をどう使い分けるのが正解なのですか?

クレオス 基本的には「ツヤ消し・メタリックはラピッド」、「光沢はレベリング」です。ラピッド(速乾)は粒子が表面に届いた瞬間に固定されるので、メタリック粒子がきれいに並び、ツヤ消し剤も均一に定着します。逆にレベリング(遅乾)は、乾燥を遅らせることで塗膜が平滑になじむため、光沢がより美しく出ます。

――「ツヤ消しなのにしっとり吹く」のがコツだとか。

クレオス ラッカー塗料は、いわゆる「砂吹き」でカサカサにするのは正解ではありません。表面が濡れた状態(ウェット)になるように吹き、それが乾く過程で成膜するのが本来の設計です。ツヤ消しの場合でも、一瞬しっとりするまで吹いてみてください。乾いた瞬間にきれいなフラットになりますから。


   ラッカー塗料の未来は「共存」にある  

――今後、キャラクターモデルの指定色などは水性ホビーカラーへ移行していくのでしょうか?

クレオス 安全性の面から「水性」を推奨する流れは変わりませんし、我々も水性のラインナップは強化していきます。ただ、作業スピードや塗膜の強さ、そしてメタリックの質感など、ラッカーでなければ出せない表現があるのも事実です。「下地はラッカー、塗り分けは水性」といったハイブリッドな使い方が順当だと思います。GGXの開発によって、世界的な環境規制をクリアしながらラッカーの表現を守る準備は整いました。我々はラッカーの供給を絶やすつもりはありません。これからも「水性・アクリジョン・ラッカー」の三本柱で、皆さんのホビーライフを支えていきたいと考えています。

――ありがとうございました。(2026年6月中旬に取材)


これからのラッカー塗料― Mr.カラーGGX

 従来ラッカー塗料の設計を見直し、臭気低減や隠蔽力向上、発色にさらなる磨きがかかったMr.カラーGGX。これまではホワイト、ブラック、クリアーが60mlビンで発売されていたが、7月より18mlビンでハーマンレッド、キアライエロー、スージーブルー、モウリーグリーンなどの基本色7色が発売された。ぜひ専用うすめ液/ラピッドうすめ液と合わせて用意しておきたい

GGXうすめ液は従来塗料の希釈にも有効!

 これ、ホント。試しにMr.カラーのうすめ液と、Mr.カラーGGXラピッドうすめ液それぞれでMr.カラー8番シルバーを希釈して塗装。どちらも1:1で希釈している。

Mr.カラーうすめ液

Mr.カラーGGX ラピッドうすめ液

▲Mr.カラーうすめ液で希釈したシルバーはやや黒ずんで見える。これは顔料の粒子が乾燥中に動いて塗膜が不均一になったため。Mr.カラーGGX ラピッドうすめ液で希釈したシルバーは、粒子が均一で明るく輝いている

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