HOME記事キャラクターモデル第二次世界大戦で破壊された幻の復元骨格「スピノサウルス1936」を復元!! アニメ『プラノサウルス ガチコセイブツ部』と連動した新シリーズ「プラノサウルス スピノサウルス1915」を改造して、命名当初のホロタイプBSP 1912 VIII 19を化石風に塗装し再現!【プラノサウルス復元プロジェクト】

第二次世界大戦で破壊された幻の復元骨格「スピノサウルス1936」を復元!! アニメ『プラノサウルス ガチコセイブツ部』と連動した新シリーズ「プラノサウルス スピノサウルス1915」を改造して、命名当初のホロタイプBSP 1912 VIII 19を化石風に塗装し再現!【プラノサウルス復元プロジェクト】

2026.07.19

プラノサウルス復元プロジェクト/スピノサウルス1936(BSP 1912 Ⅷ 19)【BANDAI SPIRITS】●ウラベヒロト(アーミック)、G.Masukawa(GET AWAY TRIKE!) 月刊ホビージャパン2026年8月号(6月25日発売)

前ページに戻る

■改造

骨格図

スピノサウルス1936(BSP 1912 VIII 19)骨格図イラスト

 1912年、ドイツの古生物学者エルンスト・シュトローマーの下で働いていた化石ハンターのリヒャルト・マルクグラーフによって、エジプト西部のバハリヤ・オアシスで巨大な獣脚類の部分骨格が発見された。ティラノサウルスに匹敵する巨体の持ち主で、しかも魚食性の動物に似た円錐形の歯や、巨大な「帆」といった既知の獣脚類とはかけ離れた特徴を備えたこの恐竜は、1915年にシュトローマーによってスピノサウルス・エジプティアクスと命名されたのだった。
 マルクグラーフはその後数年にわたってバハリヤ・オアシスで発掘を続けたが、スピノサウルスの骨格はほとんど見つからずじまいだった。このため1936年に出版されたバハリヤ・オアシス産恐竜化石を総括した論文において、シュトローマーはバハリヤ・オアシス産の分類不詳のさまざまな獣脚類化石をも参考にすることでスピノサウルスの骨格図を描き出したのだった。
 新発売の「スピノサウルス1915」はこのシュトローマーによる骨格図の雰囲気をよく表現している。今回はホロタイプの産出部位を中心にディテールアップし、連載第4回で製作した「2025年版復元」と並べられるようにする。

ウラベヒロト製作「スピノサウルス1936(BSP 1912 VIII 19)」製作中頭骨
▲まずは頭骨から。1936年の論文の図を参考にリライトした骨格図と比較する。連載第4回で製作したスピノサウルス(2025年版)とホロタイプの産出部が同じサイズで仕上がるよう、「スピノサウルス1915」に「スピノサウルス」のパーツを組み込んでいくことにする
ウラベヒロト製作「スピノサウルス1936(BSP 1912 VIII 19)」製作中歯骨下顎
▲1936年に描かれた骨格図には、ケラトサウルスを参考にしたと思しき頭蓋が描かれている。ホロタイプで発見されている歯骨(下アゴの前半部)は、先に発売されているスピノサウルスのものを使うことにした
ウラベヒロト製作「スピノサウルス1936(BSP 1912 VIII 19)」製作中頭骨調整後
▲カットした歯骨を接着し、歯骨先端などにエポパテを盛って整形する。第2・第6頸椎の棘突起にもパテを盛り、骨格図を参考に実際のホロタイプの形状に寄せておこう。頭蓋は歯をシャープになるよう削り込んだ他はキットのままだ
ウラベヒロト製作「スピノサウルス1936(BSP 1912 VIII 19)」製作中胴椎
▲スピノサウルスの胴椎が関節した状態で発見されたことはなく、胴椎の正しい並び順はわかっていない。シュトローマー自身、ホロタイプの胴椎の配置には最後まで悩んでいたようだ。キットと骨格図を比較し、改造ポイントを探っていく
ウラベヒロト製作「スピノサウルス1936(BSP 1912 VIII 19)」製作中仙椎
▲第4回の作例と産出部のサイズを揃えて作ろうとすると、キットのままでは棘突起の長さが足りなくなることが判明。仙椎の棘突起はキットのままとし、胴椎の棘突起はプラ板を切り出して新造することにした
ウラベヒロト製作「スピノサウルス1936(BSP 1912 VIII 19)」製作中椎体
▲椎体(背骨のうち、下半分をなす円柱形の部分)はキットパーツをそのまま活かすこととし、骨格図を貼り付けて切り出したプラ板を接着する。骨格図とはややバランスが変わったが、キットパーツとのなじみ具合は良好だ
ウラベヒロト製作「スピノサウルス1936(BSP 1912 VIII 19)」製作中肋骨と肩帯
▲続いて肋骨と肩帯、腰帯(骨盤)を接着する。1936年の骨格図では、肩帯はバハリアサウルス、骨盤はカルカロドントサウルスとされる標本が参考にされていた。一体成型されている肋骨は1本ずつ切り分け、肋骨籠の作るアウトラインに注意しながら接着する。肩帯・腰帯はキットのままだ
ウラベヒロト製作「スピノサウルス1936(BSP 1912 VIII 19)」製作中尻尾
▲尻尾は基部のボールジョイントに加え、2ヵ所で上下方向にスイングする。尻尾を接地させる「旧復元」のステレオタイプなスタイルにもよく追従する構造だ。ただし尾の先端近くの関節はかなり目立ってしまうため、対処法を考える
ウラベヒロト製作「スピノサウルス1936(BSP 1912 VIII 19)」製作中尻椎
▲1936年の骨格図のように尻尾を大きく上にしならせられるよう、金属線を通して可動化。エッチングソーで尾椎をひとつひとつ切り分け、ピンバイスでΦ0.7mmの穴を2つ開口する。金属線を2本通すことで、関節の強度が高まるだけでなく、尾のねじれも防止できる
ウラベヒロト製作「スピノサウルス1936(BSP 1912 VIII 19)」製作中尻尾調整後
▲さすがにすべての尾椎をバラバラに切り分けるわけにもいかないので、途中から数個おきで切り分けるようにする。ついでに可動関節の部分を切り詰めておこう。一連の工作により、自然なしなり具合で可動するようになった
ウラベヒロト製作「スピノサウルス1936(BSP 1912 VIII 19)」製作中後肢
▲1936年の復元における後肢は「スピノサウルスB」と呼ばれる標本に基づいているらしく、現代の復元なみに短足だ。基本的にキットの後肢をそのまま使うが、恐竜ビルドの関係で股関節のボールジョイントの柄が長い。ここを切り詰めるだけで骨格ビルドの見映えがぐっとよくなる
ウラベヒロト製作「スピノサウルス1936(BSP 1912 VIII 19)」製作中後肢爪先
▲後肢だけで自立できるよう、趾(足の指)に金属線を仕込んで可動化させ、接地性を高める。第I趾(足の親指)は向きを変えて再接着し、「旧復元」にありがちな、鳥のように対向した趾とする。大腿骨のボールジョイント受けが目立つため、パテを盛ってなだらかに見えるよう整形しよう
ウラベヒロト製作「スピノサウルス1936(BSP 1912 VIII 19)」製作中前肢
▲前肢・後肢とも骨格図よりはやや大きいが、1936年に描かれた骨格図の雰囲気はよく出ている。前肢はキットの肘関節を活かしつつギリギリまで削り込み、尺骨はパテを盛ってボリュームアップ。手は指をエッチングソーで切り分け、末節骨(爪の骨)を整形する
ウラベヒロト製作「スピノサウルス1936(BSP 1912 VIII 19)」製作中工作完了
▲各部を組み上げ、バランスを確認したら工作は完了だ。趾が可動するため、大きめの前半身でもしっかりと自立する

■塗装

ウラベヒロト製作「スピノサウルス1936(BSP 1912 VIII 19)」製作中塗装途中
▲古い時代の復元骨格でよくある、化石の産出部と未産出部(=アーティファクトで補填された部分)がはっきりわかるカラーリングで仕上げる。ホロタイプの産出部は第4回のスピノサウルスと、アーティファクト部は第6回のチラノサウルスと同じ色で塗り分けていく
第4回web記事はコチラ
第6回web記事はコチラ
ウラベヒロト製作「スピノサウルス1936(BSP 1912 VIII 19)」製作中ウォッシング
▲塗り分けが終わったら、産出部は第4回と同じ色でウォッシングし、パステルでアクセントを入れていく。ツヤ消しクリアーでコートしたら、ウェザリングで曖昧になった色の境界を筆塗りでレタッチしよう
ウラベヒロト製作「スピノサウルス1936(BSP 1912 VIII 19)」
▲これで完成! 復元骨格が組み立てられることなく戦火に消えたスピノサウルス・エジプティアクスのホロタイプの、幻となった復元骨格を机の上に再現することができた。新たな展開を迎えたプラノサウルスシリーズの最新キットで、幻の光景を目に焼き付けよう
スピノサウルス・エジプティアクス(BSP 1912 VIII 19)骨格図イラスト
▲バハリヤ層*の恐竜化石は、しばしば他のさまざまな動物化石と混ざりあった状態で産出する。これに気づいたシュトローマーは、手元に届いた恐竜の部分骨格が少なからずキメラ(複数個体・複数種が意図せず混入した状態)ではないかと疑心暗鬼になっていった。スピノサウルス・エジプティアクスのホロタイプBSP 1912 VIII 19の尾椎は体の他の部位と比べて小さすぎ、「スピノサウルスB」の通称で呼んでいた標本BSP 1922 X 45の後肢は椎骨と比べて明らかに小さな個体のもののように思われたのである。
 こうしたバハリヤ・オアシス産のスピノサウルスの標本は、イギリス空軍によるミュンヘン空襲ですべて破壊された。この10年余りでモロッコ産新標本の研究が進み、BSP 1912 VIII 19の尾椎やBSP 1922 X 45の後肢がそれ以外の要素と同一個体であること、それらが示す通りスピノサウルスが独特のプロポーションの持ち主であることが明らかになっている。

*バハリヤ層:エジプトの西部砂漠(リビア砂漠)のバハリヤ・オアシスに露出する、白亜紀後期初頭(セノマニアン前期:約1億50万~9620万年前頃)に河川や河口域で堆積した地層。マルクグラーフ以降の化石調査では、あまり成果は上がっていない。

Spinosaurus aegyptiacus BSP 1912 VIII 19

スピノサウルス・エジプティアクス(BSP 1912 VIII 19)
●獣脚類 スピノサウルス科●全長約11m●白亜紀後期(セノマニアン前期)約1億年前頃?●エジプト西部 バハリヤ・オアシス部

ウラベヒロト製作「スピノサウルス1936(BSP 1912 VIII 19)」

BANDAI SPIRITS プラスチックキット “プラノサウルス” スピノサウルス1915使用

スピノサウルス1936(BSP 1912 VIII 19)

製作/ウラベヒロト(アーミック)
骨格図・解説/G. Masukawa(GET AWAY TRIKE!)

プラノサウルス スピノサウルス1915
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン●1870円、7月予定●約23cm●プラキット


\この記事が気に入った方はこちらもチェック!!/

 まるで本物! 

北海道で発掘された大型恐竜「カムイサウルス」を復元!!「プラノサウルス パラサウロロフス」を改造して日本最大級の全身骨格を再現!【プラノサウルス復元プロジェクト】

▲カムイサウルスやパラサウロロフスといったハドロサウルス科の恐竜は、そのくちばしの形状から「カモノハシ竜」と通称される。恐竜図鑑で「やられ役」にされがちなハドロサウルス科[…]

 恐竜の骨を塗ってみよう 

【ドライブラシのお供】「Mr.ウェザリングブラシ」×「水性ホビーカラー」で“恐竜”を塗装!技法特化型の筆で塗装表現を楽しもう【月刊工具】

「ウェザリングブラシ」で“恐竜”塗ってみよう 今月は『ジュラシック・ワールド』特集ということもあり、恐竜の塗装にピッタリ? な筆をGSIクレオスからピックアップ!紹介するのは[…]

\オススメブック!!/

ホビージャパンエクストラ30恐竜表紙

ホビージャパンエクストラ vol.30

●発行元/ホビージャパン●1540円、発売中

詳細はこちら

ホビージャパンエクストラ30恐竜表紙

粘土で作る! いきもの造形 恐竜編

●発行元/ホビージャパン●3080円、発売中

詳細はこちら

© BANDAI SPIRITS

1 2
この記事が気に入ったらシェアしてください!

G. Masukawa

オススメの書籍

月刊ホビージャパン2026年8月号

ご購入はこちら

ホビージャパンエクストラ vol.30

ご購入はこちら

粘土で作る! いきもの造形 恐竜編

ご購入はこちら
PAGE TOP
メニュー