「防じん」と「防毒」エアブラシ塗装のマスクどう選ぶ? 呼吸用保護具の専門メーカー「重松製作所」に、模型塗装におけるマスク選びの考え方を聞いてみた!【エアブラシ特集】
2026.05.05エアブラシ塗装のマスクはどう選ぶ? 重松製作所インタビュー 月刊ホビージャパン2026年6月号(4月24日発売)
「防じん」と「防毒」、まずは役割を知る
ー防じんマスクと防毒マスクは、機能がかなり違うのでしょうか。
名前の通り、防じんは粉じん等の細かい粒子を防ぐもの、防毒はガスや蒸気に対応するものです。産業の現場では、作業内容ごとに求められる性能が違うので、そこを分けて考えています。模型塗装の際にも、この考え方はそのまま使えます。
ーということは、エアブラシ塗装では防毒だけでなく、防じんも関係してくると。
そうですね。溶剤臭や有機ガスを問題にするなら、防毒の考え方が必要です。一方で、防毒用吸収缶でもミスト(細かい粒子)自体はある程度受け止められるのですが、あとで原理は説明しますが、消耗が早くなることがあります。なので、主にミストを吸いたくないのであれば、防じん機能付きの考え方も重要です。理想を言えば、その両方を意識するのがいいと思います。
ーでは、まず防毒マスクを選ぶときは何を見ればよいのでしょうか。
模型用途であれば、まず「有機ガス用」と書かれたものを選ぶのが基本です。防毒マスクには、アンモニア用、ハロゲン用、亜硫酸ガス用などさまざまな種類がありますが、模型塗装であれば「有機ガス用」で十分だと思います。加えて、国家検定やJIS適合の表示があるものを選ぶと安心です。
ー一方、防じんマスクは、模型製作ではどんな場面に向いているのでしょう。
エアブラシ塗装で飛んでいるミストも捕集できますが、そのミストから発生したガスは除去できません。主にプラやレジンの切削、研磨作業に向いています。切削作業で出た細かな粉じんは、吸っていても気付きにくい、体への影響もすぐに出ないため、見落とされやすい部分かもしれません。
ー確かに、モーターツールなどを使って出た削り粉の吸い込みもかなり気になる部分ですね。
そうですね。健康被害がどの程度出るかは簡単に断言できませんが、そういった細かい粒子を防ぐという意味では、防じんマスクには明確な役割があります。塗装だけでなく、工作を多くする模型ユーザーにも関係する話だと思います。
ー差し支えなければ、防毒マスクの仕組みも教えてください。
どのメーカーの有機ガス用吸収缶も、基本的には吸収缶の中に入っている活性炭などが、有害なガスを吸着していく仕組みです。表面に細かな凹凸がたくさんあり、そこにガス成分が吸着するイメージですね。ただし、活性炭は水分も吸着するので、放っておいても徐々に性能は落ちていきます。さらに、大きな飛沫が付着したり、高湿度の環境に長く置かれたりすると、その凹凸が埋まりやすくなるため、機能が低下しやすくなります。
ーなるほど。では交換時期はどのように判断すればいいのでしょうか。塗装はプラモデル完成前の最後のほうの工程なので、たまにしか本格的に塗装しないモデラーも多いと思います。交換のタイミングはかなり気になるところです。
本来、産業の分野ではガス濃度や使用時間に応じて管理するのが基本です。ただ、模型用途のように使用頻度が高くない場合は、そこまで厳密な管理は難しいと思います。一般家庭で使うレベルであれば、使用時に少しにおいを感じるようになったら交換を考える、というのがひとつの目安です。
ーなるほど。ただ、「少しにおうな」と思う感覚も結構人それぞれな気がするので、難しいですよね。
そうですね。においの感じ方自体にも個人差がありますし、鼻が慣れてしまってわかりにくくなることもあります。それこそ、毎日のように塗装する人なら1か月くらいで気になってくるかもしれませんし、年に1回くらいしか使わない人なら、もっと長く持つかもしれません。なので、一概には言えませんが、迷ったら早めに交換したほうが安心です。
ーちなみに、長持ちさせるコツはありますか。
密封できる袋などに入れて保管するだけでも違います。使い終わったあと、そのまま置きっぱなしにするよりは、寿命を延ばしやすいです。ただし、これはあくまで長持ちさせる工夫であって、性能を保証するものではありません。
防じんと防毒の違い
防じんマスク/防じんフィルタ
粉じん、削り粉などの粒子状物質を、フィルタで捕集するタイプ。フィルタが目詰まりして息苦しくなってきたら交換する。
防毒マスク/防毒フィルタ
有機溶剤などのガスや蒸気を、吸収缶によって吸着するタイプ。破過時間という使用限度の目安があり、においを感じるようになったら交換する。
プラモの塗装に有効な吸収缶の種類
左上(防毒):X/OV 吸収缶 薄型 有機ガス用
有機ガスに対応した吸収缶。ミストや粉じんが発生しない作業に向いているため、エアブラシ塗装よりも、むしろ飛沫が出にくいが有機溶剤(ラッカー塗料など)を使用した筆塗りなどで効果を発揮する
左下(防じん):T2 防じんフィルタ
防じん機能を持つフィルター。0.1㎛(1万分の1ミリ)というかなり細かい粒子も捕集することができる。切削・研磨作業に最適
右上’(防毒+防じん):XL/OV 吸収缶 薄型 有機ガス用 防じん機能付き
有機ガス用吸収缶にフィルターを組み合わせた、ふたつの機能をあわせ持つ。フィルタが長寿命タイプで、吸収缶側の寿命に交換時期が左右されるため、取り換え時にフィルター部分がまだ使える状態でも交換が必要になることがある
右下(防毒+防じん):XS/OV 吸収缶 薄型 有機ガス用 防じん機能付き
ふたつの機能をあわせ持つ吸缶のスリムタイプ。手元が見やすく、ミストを捕集しながら、においも抑えられるのが強みだ














