1989 ザウバー・メルセデスC9 復活のシルバーアロウ
2021.08.04連覇を狙うジャガー、ワークスからは撤退したものの、プライベーターへの積極的なサポート体制でいまだ強い存在感を示すポルシェ、そしてマツダをはじめ着実に力をつけつつある日本車勢。そんな強力なライバルがひしめく1989年のル・マンを制し、メルセデスに37年ぶりの勝利をもたらした、ザウバー・メルセデス C9がエッチングパーツとカルトグラフ社製デカールとともに帰ってきた。とはいえ、本キットが初めて発売されたのは1990年。少々時代を感じさせる部分があるのも事実。しかし今回はそんな気になるポイントの改修法を畠中浩が解説。ぜひ皆さんも本記事を参考に、シルバーカラーをまとったその雄姿を作り上げていただきたい。
■カウルの修正
今から32年ほど前のキットですから現在の目で見るとそれなりに修正したい部分があります。まずフロントカウルですが、ノーズ部のエアダクトが別パーツになっているところを実車に合わせてカウル本体と一体化しました。実車は通常の開口部にこのダクトを後付けしているのでエポパテを使用して大げさな感じもありますが段差を作ってあります。ダクトの後部は内部で若干干渉するようなので、外から見えない部分を大胆にカットし、接着してあります。次にフロントのボンネット部分。ここは今なら分割を工夫して一体で成型できるでしょうが、この当時は致し方なし。上部のエッジを薄く削り込んだ後に本体へ接着し、合わせ目はエポパテを詰め込んで隙間を埋めつつ滑らかな段差を作っておきました。実車には分割ラインはないので注意です。ちなみにこのフロントカウル、ル・マンの中でもいくつか仕様違いが使われているようで、作例はゴール時の写真を参考にしています。ボンネット部分の上部が水平な物もあったり、左のヘッドライトだけがオレンジだったり、いろいろと調べてみると面白いですよ。フロントタイヤ後部は自分の組み方がよくなかったのか、カウルとアンダーパネル垂直部に段差ができてしまったのでエポパテで段差をなくしました。メーターパネルの左右を使った内部の隔壁はそのままでも良かったのですが、ここも段差ができそうだったので新たにプラ板を追加して事前に埋めておきました。リアカウルの合わせは悪くはないですが見映えに影響するのでしっかりすり合わせをしましょう。作例では確実に収めなければいけないと考え、サイドの角部分に爪を付け足して収まりをよくしています。車体後部のNACAダクトは裏からパーツを接着して形を作る構造ですが、合いがよくないのでパテを使って整形します。皆さんの使いやすいパテで構いませんが、自分は盛り付け時間を確保できて完成時に近い整形ができることからここもエポパテを使っています。他はドアのヒンジやサイドのナンバー灯など、研ぎ出しで邪魔になりそうな部品は削り落として塗装後に自作した部品を装着しています。
■エンジン部
作例は製作時間の都合からプラグコードを追加した以外、基本的に手を加えていませんが、比較的資料は手に入りやすいと思いますので、徹底ディテールアップに挑戦してみるのも面白いと思います。組み立てに関しては特に問題はないですが、パーツ同士の遊びが少々大きいので時間をかけて仮組みをして確実に組んでいきましょう。
■塗装
まずはカウル類の塗装から。シルバーは下地が命なので、サフの塗装は極力薄く仕上げておきましょう。下地の塗装が厚いとシルバー塗装の際のシンナー分を吸った下地が凸凹になり、シルバーの粒子が荒い感じの塗膜になってしまいます。なので、欲をいえば下地塗装はないほうが確実ですね。塗料は誌面でグレーにならないようキラキラ感が強いガイアのEX-07シルバーを使いました。シルバー塗装が終わったら痛みやすいシルバーの保護とデカールを貼りやすくするため一度軽くクリアーを塗装します。クリアーが乾燥したらデカールを貼り。このキット付属のデカールはカルトグラフ製で非常に貼りやすかったですね。
■最後に
個人的には現代のマシンよりもこの頃のマシンにロマンを感じるので、再販もよいのですが、今の技術でキット化した当時のマシンも欲しいなと切に思います(笑)。
タミヤ 1/24スケール プラスチックキット
1989 ザウバー・メルセデス C9
製作・文/畠中浩(ももふく模形舎)
1989 ザウバー・メルセデス C9
●発売元/タミヤ●3960円、発売中●1/24、約19.7cm●プラキット
畠中浩(ハタナカヒロシ)
26年連れ添った相棒とお別れしました。部品を乾かしてくれた食器乾燥機、今までありがとう。