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【コードギアス 新潔のアルマリア】ep12「無事でいて」

2025.12.06

コードギアス 新潔のアルマリア●長月文弥 月刊ホビージャパン2026年1月号(11月25日発売)

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 広東省の街はずれにある倉庫。その中に停められたトレーラーの荷台でガナバティによって新月の修理が進む。先の戦闘で失った右腕の代わりに、白炎と同じ七式統合兵装右腕部が取り付けられる様子をサトリが見つめていた。


「よし。これでひとまずは大丈夫だ。ちゃあんと戦えるようになったぜ」

「ありがとう。でも、この腕って……」

コードギアス新潔のアルマリア12話画像

「ああ。白炎と同じ七式統合兵装右腕部って奴だ。予備で持ってきてたものだが、サービスで付けといてやった」

「あのいろいろ出てくる十徳ナイフみたいな腕ね」

「十徳ナイフって……、間違っちゃいないがな。こいつならどんな状況にも対応できる。オズに聞いた話だと、こいつの持ち主は器用な奴らしいじゃねぇか。きっと使いこなせるさ」

「……うん。ハクバなら必ず使いこなせる」

「だからよ。こいつをしっかりと持ち主に届けてくれよな、お嬢ちゃん」

「わかってる。絶対に届けるから安心して。おじさんのサービス、絶対に無駄にしないから」

「おう。その意気だ」


 ガナバティが白い歯を見せる。ハクバが捕らえられて以降、ずっと強張っていたサトリの顔もつられて笑顔を見せた。


「みんな! リビングナイツの位置がわかったよ!」


 トレーラーから飛び出したドクが周りに声をかけつつ、自分のノートパソコンをテーブルの上で開いて見せる。テーブルを取り囲んだオルフェウスたちが画面をのぞき込む。


「よく受信してる奴の位置なんて特定できたな」

「簡単さ。この発信機から出ている信号の周波数を一度変えたんだ。常時監視している奴なら、すぐに周波数を追ってくる。僕はそれをウォッチしてたってワケ」

「へぇ。やるねぇ」


 感心するズィーに得意げに答えるドク。


「この赤い光点が奴らの居場所か?」


 オルフェウスが指さす場所は珠江デルタ沖、無人島群の中にある光点。


「うん」

「うん、ってここ海の上じゃねぇか」

「ホノルルであいつらが襲ってきたのも海からだった。たぶん、戦艦か何かを使ってるんだと思う」


 呆れるズィーにサトリが前回の襲撃の状況を添える。


「参ったな。さすがにフロートは用意できなかったし……」

「かといって、船で向かったんじゃあ目立ちすぎる。すぐに察知されてズドンと撃たれるのが関の山だ」

「空も海も駄目ってこと? じゃあ、どうすれば……」


 不安げな表情を見せるドク。サトリにもその手立てはない。しかし、対するズィーとガナバティはさほど困った様子ではない。それは、オルフェウスなら何とかするという信頼があるから。ふたりが視線を送ると、オルフェウスは当然のように答える。


「空も海も駄目なら、奴らを陸まで来させればいい。ただそれだけだ」




「ようやく吐く気になったらしいな」


 吊るされたハクバの前に椅子を置き、どっかりと座るグラナード。


「あ、ああ。自分の命には代えられないんでな」

「なら、まずはお前が何者か……」

「あんたたちが知りたいのは、あいつの居場所だろう?」


 正体を探ろうとするグラナードに対し、ハクバは遮るように言葉を被せる。それもグラナードが関心を持たざるを得ない言葉を。


「LDM計画によって作られた黒い紅蓮型、ピュアエレメンツGのパイロットの居場所を……」


 ハクバがさらに言葉を重ねる。


「……そうだ。奴はどこにいる?」

「教えてもいい。だが、命の保障が欲しい」

「交渉ができるとでも思っているのか?」


 そう言いつつ、取り出した銃をハクバに向けるグラナード。


「思っちゃいないさ。だが、俺の無事が確認できない場合、あいつがここから逃げ去る算段になっている」

「なに?」

「ホノルルの時もそうだったろう? 俺とあいつは一蓮托生なんだ」

「お前、あそこにいたのか……」


 グラナードの言葉でハクバは確信する。ホノルルでの一件、リビングナイツの構成員はコーネリアの部隊に捕えられた。だから、グラナードは自分の存在を知らない。そこにつけ入る隙がある、と。


「あんたが俺を撃つのは構わない。また追いかけっこをしたいんなら、だがな」

「こいつ……」


 ハクバの言葉の真偽の判断がつかないグラナードはそれ以上の言葉が出ない。しばらく沈黙が続く。その沈黙を破ったのは、艦内電話のベルだった。マテオが慌てて応答すると、ブリッジからです、とだけ添えてグラナードに受話器を渡す。


「なに?」


 受話器を受け取ったグラナードの驚いた様子をハクバは見逃さない。それが、状況を把握するための鍵となる。このタイミングでブリッジから連絡となると、リビングナイツのターゲットに動きがあったとしか考えられない。だが、それは本物のピュアエレメンツGじゃない。ピュアエレメンツGとして追いかけているエージェント新月の誰か。そのことに気付いてくれたオルフェウスが行動に出てくれたんだろう、と。この機会を利用しない手はなかった。


「わかった。捕捉し続けろ」


 それだけを通信先に伝えて受話器をマテオに返すグラナード。その顔は無表情に見えるが、ハクバには思案を続けていることが読み取れた。


「なっ? このままだとあいつの行方は俺にもわからなくなる。どうする?」

「くっ……」


 グラナードの表情には困惑の色が浮かんでいる。



 広東省の街はずれにある倉庫。2台あったトレーラーの1台が消えている。サトリたちがハクバ救出に向かったのだ。トレーラーが向かった先を見つめているマリーベルとレディ・レディのふたり。


「レディは行かなくてよかったの?」

「あなたをひとりにするわけにはいかないでしょ。それにイワンの身柄も何とかしないといけないし。それに……」

「オズが行ったのなら心配するは必要ない、よね?」

「あっ……」

「よく知ってるのね、オズのこと」

「それは……、昔一緒に仕事をしていたからで……」

「それだけ?」

「それだけって、嫌な聞き方するのね」

「うん。だって私、嫉妬してるもの。あなたに」

「今はあなたがオズのそばにいるんだから嫉妬する必要なんてないでしょ」

「あら。レディも私に嫉妬してるのね」

「意地悪……。それに私が心配していないのは、あの子もいるからよ」

「あの子って?」

「ミスター・ハクバのことが大好きな子」


 そう言ってレディ・レディが見上げた夜空に一筋の赤い光の帯が走る。



 なおも思案している様子のグラナードを見つめるハクバ。


「なあ、グラナード将軍。判断がつかないんなら、クライアントに聞いてみたらどうだ?」

「……なんの話だ?」

「騎士や兵っていうのは、誰かの指示で動くものだ。あんたがあいつの居場所を知りたいのは、その誰かの指示だろう? 優秀な将軍は独断では行動しない。指示をやり遂げることこそが最重要だからな」


 その言葉を聞いて、はっとするグラナード。


「……もう少し生かしといてやる」


 それだけ言って、部屋から出て行ってしまう。




 ブリタニア共和国にある製薬会社パイレックスの社長室。全面ガラス張りの窓からすっかり明るくなった街並みを見下ろしつつ、マシューがグラナードの連絡を受けている。


「その男を殺したら、Mが逃げるだと? なら、Mのもとへ案内させるんだ。何よりも彼女を連れ戻すことを優先しろ。彼女がいなければ何も始まらないってことをあんたもわかっているだろう。ああ、それで構わない。健闘を祈るよ、グラナード将軍」


 マシューは矢継ぎ早に用件だけ伝えて通話を切る。


「Mの消息が掴めたのですね」

「ああ。もう少しだ。もう少しで彼女が私のもとに帰ってくる……」


 興奮気味のマシューをミリガンは冷ややかな目で見つめていた。



 自室でマシューとの連絡を終えたグラナードがブリッジへとやって来る。


「ターゲットは?」

「九海港付近で止まっています」

「こちらの出方を見ているのか……。よし、ターゲットのもとへ迎え」

「イエス、マイロード」




 ゆっくりと動き出す潜水艦。その影響でハクバが吊るされている尋問室もぐらりと揺れる。


「艦を出すのか……」


 思わず口走ってしまったマテオの言葉を聞き逃さないハクバ。グラナードが指示を出している人物に判断を仰ぎ、自分の提案に乗ったことを悟る。



 無人島を離れた潜水艦が浮上した状態で珠江デルタ沖を進んでいく。そのブリッジでは、グラナードが苦々しい表情を浮かべていた。


「あの若造め。金を出しているからといって偉そうに。だが、それも帝国の復興までだ。帝国が復興すれば、あのような商人まがいのガキに……」


 その時、大きな音と衝撃がグラナードたちを襲う。


「な、何事だ!?」

「砲撃です。何者かから砲撃を受けました!」

「砲撃だと!? どこからだ?」

「わ、わかりません。右舷方向からとしか……」


 先の戦闘で業火白炎に狙撃されたことを思い出すグラナード。


「まさか、あの時の……」




 九海港に近づく潜水艦が遠くに見える陸地、その高台に七式超電磁砲を構える業火白炎の姿がある。


「どうやら誘いに乗ってくれたらしい。さあ……」


 オルフェウスが見渡すと、サトリ、ドク、ズィー、ガナバティがそれぞれの配置についている。


「救出ミッション、スタートだ!」

ep.12 END


【コードギアス 新潔のアルマリア】

 -特別エピソード- 

『黒の閃光』前編

『黒の閃光』後編

 -本編- 

プロローグ『世界の明日の前に』前編

プロローグ『世界の明日の前に』後編

ep.01『出会いはいつも突然に』

ep.02『あなたはイイモノなのかもしれない』

ep.03『この再会はきっと運命』

ep.04『無関係のひとを巻き込むなんて許せない』

ep.05『あなたの目的は?』

ep.06『まずは先にすませることがあるみたい』

ep.07『どこにいるか見つけださないと』

ep.08『隠れるのがお上手なのね』

ep.09『今度こそにがしはしない』

ep.10『なんだかいやな予感がする』

ep.11『いま助けにいきます』

ep.12『無事でいて』 new ←いまココ


オズやマリー、業火白炎について詳しくは…

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