【コードギアス 新潔のアルマリア】ep08「隠れるのがお上手なのね」
2025.08.08 フィリンピン海の深海をグラナードの潜水艦が航行している。そのブリッジのモニターにはハクバたちのいる広州辺りの地図が表示されており、廃れた漁村に光点が灯っている。
「ホノルルの次は中華か。奴は一体何を探っているんだ」
グラナードは地図に灯る光点を見つめていた。
オルフェウスに案内されてビルの二階へと赴くと、閑散としたフロアの中央にテーブルやソファが置かれている。ガスコンロや電気ランタンなどを見るに、オルフェウスとマリーベルはここを拠点にしているようだ。
「何もないところで悪いな」
「い、いえ」
ドクとサトリは、促されるままソファに座り、向かいの一人用の椅子にオルフェウスが座る。ハクバは少し離れた暗がりのコンクリ柱の前にイワンを繋ぐと、そのままイワンとオルフェウスが見える位置に立った。
「座らないのか?」
「気に障ったのなら申し訳ないが性分でね。別にあんたを疑っているわけじゃないんだ」
「いいさ。エージェントとしては真っ当な考えだ」
「自己紹介が遅れた。俺はイザヨイという機関のエージェント、宗賀ハクバ。そっちはサトリとドク」
サトリとドクが軽く頭を下げる。
「お前たちがイザヨイか。戦後に噂を聞くようになった組織だ。なんでも争いの火種になりそうな人間や組織を摘発しているとか」
「へえ。じゃあ、あなたたちは正義の味方なのね」
そう言いながら戻ってきたマリーベルが、紅茶と茶菓子をサトリとドクの前に置く。
「へへ~、それほどでも~」
褒められてにへらとだらしなく笑うサトリの脇をドクが小突く。ドクはどうしても、目の前で優しそうな笑みを浮かべるマリーベルのことが気になってしまう。
「それより、この方ってマリーベル皇女殿下ですよね? 獅子蛇戦争の後にマドリードでダモクレスを守っていた。僕、あの時のグリンダ騎士団との戦闘は中継で見ていました。皇女殿下はあの時確かに……」
かつて、マリーベル・メル・ブリタニアは、悪逆皇帝と言われたルルーシュ・ヴィ・ブリタニア側につき、ダモクレス要塞を守る役目を担っていた。しかし、オルドリン・ジヴォン率いるグリンダ騎士団と一部のピースマークの傭兵が協力してマリーベルを討ったのだ。その様子は中継され、多くの人がその結末を目にしていた。だからこそ、ここで生きているマリーベルの存在に驚かされたのだ。ただ、当のマリーベルは他人の話をされているように困惑した顔をしている。
「そう殺された。オルドリン・ジヴォンによってな」
ドクが言いよどんだことをオルフェウスがさらりと言う。
「それに、あんたもそのマドリードの戦いで命を落としたと裏の世界では話題になっていたが?」
ハクバに話を振られ、オルフェウスがマリーベルの顔を見やる。その目はひどく優しくて、ひどく寂しそうだ。
「死んだと思っていたよ。俺もマリー自身も。だが、俺たちはこうして生きている。さまざまな偶然が折り重なったことでな」
「偶然……」
「ああ」
オルフェウスが思い返すように虚空を見る。3年前のマドリードの夜、オルフェウスは妹のオルドリンに親友を手にかけさせまいと、ギアスを用いて妹の姿となり、マリーベルを討とうとした。
「偶然、マリーの胸に刃が届かなかったこと」
マリーベルが胸に忍ばせていたマスクが偶然にもオルフェウスのナイフの刃を止めた。
「偶然、エルファバが受け止めてくれたこと」
マリーベルが乗っていたエルファバが、偶然にも落ちていくオルフェウスとマリーベルを受け止めた。
「ピースマークの頭取が部下を派遣していたことも含めてな」
ピースマークを取り仕切っていた頭取が、もしものことを考えてエージェントを派遣していた。
「頭取? ピースマークのボスがあんたたちを助けたってのか?」
「どうやらそうらしい。理由は聞いてはいないがな。だが、その偶然が折り重なったことで、俺は右目と右腕の感覚を」
右目を眼帯で覆ったオルフェウスが右肩に残る大きな傷をさする。
「マリーは記憶を代償に生き残ったらしい」
「記憶を?」
サトリやドクが一斉にマリーベルの顔を見る。
「ごめんなさい。私、本当は生きていてはいけないはずの人間なのに、その記憶すらなくて……」
申し訳なさそうな顔をするマリーベルにかける言葉が見つからないサトリとドク。
「オルフェウス、あんたたちが生き残っていた理由は何となくわかった。しかし……」
と、うな垂れるイワンを示すハクバ。ハクバたちの目的は、オルフェウスたちの生死の確認ではない。
「あんたたちがイワンの身柄を欲する理由はなんだ?」
「その質問を答える前にミスター・ハクバに聞いておきたい」
あらためてハクバを見据えるオルフェウス。
「お前たちがイワンに聞きたい話というのは黒いグレン型のナイトメアフレーム、ピュアエレメンツGについてか?」
「っ!? あんたも奴さんを知っているのか」
「ああ。ピュアエレメンツGをイワンの元から奪ったのは俺だからな」
「あんたがあのナイトメアを……」
「そう言えば、さっきスヴォロフ博士も言ってたよ。ファントムに盗まれたって」
イワンが業火白炎を見た時に呟いた言葉を思い出すドク。
「俺はある人物からの依頼でイワン・スヴォロフの元からピュアエレメンツGを盗み出した」
「その依頼人がピュアエレメンツGのパイロットってワケか。そいつの正体を教えてもらうわけには……」
「いかないな」
「だろうと思ったよ」
「だが、それ以外のことは教えてやる。その依頼人は追われている身でな。その追手に対抗する手段としてピュアエレメンツGが必要だった。そして、俺は依頼人の意志に賛同した。だから、協力したんだ」
「その意志ってのは?」
「自分が自分であるために戦うこと」
「自分が自分であるために? そんな難しいことを考えて戦ってたんだな。ますます奴さんのことがわからなくなってきたよ」
「それに、それならどうしてスヴォロフ博士の身柄が必要なんです?」
盗み出した相手をさらう理由がどうしてもつながらないドク。
「ピュアエレメンツGを返すため、ってワケでもないですよね?」
サトリもその理由が知りたい。
「まさかLDM計画と何か関係あるのか?」
「正解だ、ミスター・ハクバ。そこの男はLDM計画のもとで製造したナイトメアをリビングナイツという武装組織に供給していたんだ」
「リビングナイツ? 聞いたことのない組織だが?」
「ああ。俺もその存在を知ったのは、ピュアエレメンツGの奪取を依頼された時だ」
「つまりピュアエレメンツGを追っている奴らがそのリビングナイツ。そして、その供給を止めるためにイワンを捕える必要があったってことか」
「ああ。ただ、そいつは最近リビングナイツを抜けたみたいだがな」
オルフェウスがイワンに水を向ける。
「あ、あそこは金払いが悪かったんだ。グラナードの奴め……」
「グラナード……?」
イワンが苦々しげに吐いたグラナードという言葉に反応するサトリ。
「サトリ?」
不思議に思うドクも気にも留めず、サトリはイワンのほうに駆け寄る。
「そのグラナードって、ジョゼフ・グラナードのこと?」
珍しくイワンの胸倉を荒々しく掴み、顔を覗き込む。その怪しく光る左目を見た者は、自分の意思に反して真実しか答えることしかできない。
「あ、ああ。ジョゼフ・グラナードだ。もうブリタニアはないのに将軍を名乗っている変な奴だ」
従順に答えるイワンの言葉に嘘はない。その答えを聞いて、サトリの手が力なくイワンから離れる。普段と様子の違うサトリを支えるハクバ。
「どうした、サトリ? そのグラナードを知っているのか?」
「うん……、知ってる。グラナードは……」
いつも穏やかなサトリの顔が怒りと憎しみに満ちている。
「4年前にパパを殺した仇だから……!」
ep.08 END
【コードギアス 新潔のアルマリア】
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