HOME記事キャラクターモデルプラノサウルス最新作「テリジノサウルス」を「デュオニクス・ツクトバアタリ」に改造!! 最初の復元骨格模型ともいえる作例を見逃すな!!【プラノサウルス復元プロジェクト】

プラノサウルス最新作「テリジノサウルス」を「デュオニクス・ツクトバアタリ」に改造!! 最初の復元骨格模型ともいえる作例を見逃すな!!【プラノサウルス復元プロジェクト】

2025.07.17

プラノサウルス復元プロジェクト/デュオニクス【BANDAI SPIRITS】●ウラベヒロト(アーミック)、G.Masukawa(GET AWAY TRIKE!) 月刊ホビージャパン2025年8月号(6月25日発売)

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■改造

骨格図

テリジノサウルスとデュオニクス骨格図

 テリジノサウルスの最初の化石は1948年に発見されたが、長く復元や分類の混乱が続いた。プラノサウルスで立体化されているような、現代的なテリジノサウルス科の復元が確立されたのは1990年代のこと。しかし、依然としてテリジノサウルスの化石は前肢や後ろ足に限られている。テリジノサウルス科の骨格の復元にあたっては、複数種を組み合わせるほかないのが現状だ。
 デュオニクスのホロタイプが発見されたのは2012年のことである。この標本は部分的な骨格だが、ほとんど変形しておらず、化石化しにくい爪の角質まで保存されていた。2本指という特徴はテリジノサウルス科ではまったく知られていなかったこともあり、命名以前から大きく注目されていた標本である。
 デュオニクスの原記載論文(命名した論文)は図版が非常に豊富で、デュオニクス以外のテリジノサウルス科を作る際の参考にもなる。欠損部については、エルリコサウルスやノトロニクスといった他のテリジノサウルス科を参照することになる。

ウラベヒロト製作「デュオニクス」頭部製作途中
▲キットの頭骨や頸椎は、テリジノサウルス科の雰囲気を非常によくとらえている。今回は骨格図に合わせて下アゴの先端を加工することにしたが、そもそもデュオニクスの頭骨は未発見。そのままでも特に問題はない
ウラベヒロト製作「デュオニクス」背骨製作途中
▲デュオニクスでは保存のよい胴椎が関節状態で発見されている。キットの胴椎体を要所要所で切断し、「猫背」になるよう再接着。棘突起は骨格図をガイドにプラ板で新造し、キットの棘突起と置き換える
ウラベヒロト製作「デュオニクス」上半身製作途中
▲下アゴの先端のみ加工した頭骨と頸椎、改造した胴椎を組み上げてバランスを確認する。キットの頭骨は眼窩の中にある「強膜輪」(眼球を支える薄く小さな骨の集合体)まで再現しており、塗装映えする
ウラベヒロト製作「デュオニクス」前肢製作途中
▲テリジノサウルスとの最大の違い、前肢に取りかかる。デュオニクスは単に2本指というだけでなく、他のテリジノサウルス科と比べると前肢全体がやや短い。骨格図をガイドに、長さを検討する
ウラベヒロト製作「デュオニクス」前肢製作途中2
▲キットパーツをエッチングソーで要所要所切断し、所定の長さまで切り詰める。腕が短くなったぶん肘の可動関節が目立ってしまうので、今回は真鍮線で接続することにした。末節骨(爪の芯の骨)はキットパーツを削り込んで再現する
ウラベヒロト製作「デュオニクス」前肢製作途中3
▲肘頭の突起や中手骨(手の甲の骨)などの形状をパテで整える。指の存在しない第III中手骨(中指の甲の骨)は、細切りにしたプラ板で再現した。肘は構造上深く曲げられないと考えられているため、浅い角度で上腕と接続する
ウラベヒロト製作「デュオニクス」骨盤製作途中
▲キットの骨盤はテリジノサウルス科の側面形をよく表現しているが、恐竜ビルドの都合で左右幅が狭いうえ、デュオニクスとしてはやや小さい。骨格図や論文の写真を参考に、加工すべきポイントを探っていく
ウラベヒロト製作「デュオニクス」骨盤製作途中2
▲キットのままでは腸骨の外側へのカーブが弱いため、めくれあがっている部分をパテで新造する(左)。長い恥骨と大きなブーツ(恥骨先端の前後に伸びた構造)は、同じコエルロサウルス類*で現状一番近縁なキットであるティラノサウルスのものを改造することにした(右)

*コエルロサウルス類:獣脚類の中でも進化したグループで、鳥に近い特徴を多く備えている。
プラノサウルスのラインナップではティラノサウルスやテリジノサウルス、ヴェロキラプトル(組立体験会ver.)が該当。
ウラベヒロト製作「デュオニクス」尾製作途中
▲キットの尾はテリジノサウルス科の短い尾をよく表現しているが、可動や恐竜ビルドの都合で横突起(尾の左右に伸びた突起)が短い。尾の前半部の横突起はそれなりに長いため、真鍮線を芯にしてパテで新造する
ウラベヒロト製作「デュオニクス」後肢製作途中
▲テリジノサウルス科の後肢(左)は獣脚類の中でもずば抜けて太い。キットの後肢(中央)は恐竜ビルドの都合上かなり細くなってしまっているため、ティラノサウルスの後肢(右)をベースに製作することにした
ウラベヒロト製作「デュオニクス」後肢製作途中2
▲デュオニクスの後肢は未発見だが、他のテリジノサウルス科と同様にかなり長かったはず。テリジノサウルス科の大きな特徴である後ろ足の鉤爪状の大きな末節骨は、骨格図を参考にプラ板を金ヤスリなどで削り新造する
ウラベヒロト製作「デュオニクス」後肢製作途中3
▲大腿骨の幅を出すために一度切断後ずらして接着し、パテで整形する。テリジノサウルス科の中足骨(足の甲の骨)はアークトメタターサル化*していないので、彫刻刀を用いて忘れずに修正しておこう。テリジノサウルス科らしい、太くて長くて巨大な脚の完成だ

*アークトメタターサル:ティラノサウルス科をはじめ、いくつかの獣脚類や鳥類で見られる特殊化した中足骨(足の甲の骨)の構造。前方から見ると、第III中足骨(中指の甲)が左右から挟み潰され、上端が消失しているように見える。
ウラベヒロト製作「デュオニクス」胴体製作途中
▲恐竜ビルドの都合上、キットの胴体はテリジノサウルス科としてはかなり幅が狭くなってしまっている。ティラノサウルスの胴体はかなり幅が広く、テリジノサウルスの肋骨にも使えそうだ。
ティラノサウルスの肋骨パーツをエッチングソーで切断・ヤスリで整形し、先に製作した胴椎に接着する。肩甲骨・烏口骨は、テリジノサウルスの肋骨パーツから肩関節ごと切り出して使用する
ウラベヒロト製作「デュオニクス」製作途中
▲全身を組み上げ、足の指がきれいに接地するよう調整する。これで加工は完了だ

■塗装

ウラベヒロト製作「デュオニクス」ウォッシング塗装途中
▲デュオニクスに限らず、モンゴル産の恐竜化石は白茶けた色になっていることが多い。白で塗装後、Mr. ウェザリングカラー「サンディウォッシュ」でウォッシングする
ウラベヒロト製作「デュオニクス」ウォッシング塗装途中2
▲デュオニクスの化石はところどころに酸化鉄などによる茶色っぽいシミがみられる。ブラウン系塗料を乗せたスポンジで表面を軽く叩くとよい雰囲気になる
ウラベヒロト製作「デュオニクス」完成
▲これで完成!
前肢だけでなく全身に手を加えることになったが、世界のどこへ行っても見られないデュオニクスの全身骨格を、卓上サイズで復元することができた。
前肢を除くと、デュオニクスの骨格は他のテリジノサウルス科とそれほど違いはない。テリジノサウルスの骨格ビルドを作り込む時も、今回の記事をぜひ参考にしてほしい
デュオニクス・ツクトバアタリ骨格図解
▲バヤンシレ層ではこれまで、セグノサウルスやエルリコサウルス、エニグモサウルスと3属ものテリジノサウルス科が産出してきた。しかし、セグノサウルスやエニグモサウルスは首なしの部分骨格、エルリコサウルスは頭骨こそ完全だが他には上腕骨と足が知られているだけである。
2025年3月に命名されたデュオニクスはバヤンシレ層第4のテリジノサウルス科で、保存のよい骨盤と完全な前肢がセットで保存されている。このため、バヤンシレ層産の他のテリジノサウルス科とは容易に区別可能であった。
テリジノサウルス科の長い前肢や巨大な末節骨の役割についてさまざまな議論があるが、長さの割に可動範囲が狭く、テリジノサウルスでは手の指があまり曲がらなかったようだ。デュオニクスは特に肘関節の可動範囲が狭いようだが、指先はむしろ比較的よく曲がる構造だったと考えられている。
「2本指の手」といえばティラノサウルス科が有名だが、実際にはデュオニクスをはじめ、獣脚類のさまざまなグループで独立して2本指の手が生じている。なぜそうした進化が起きたのか、今後も研究は続いていく。

Duonychus tsogtbaatari

デュオニクス・ツクトバアタリ
●獣脚類 テリジノサウルス科●全長約3.5m●白亜紀後期(セノマニアン?~サントニアン?)約1億50万?~8365万年前?●モンゴル南部

ウラベヒロト製作「デュオニクス」

BANDAI SPIRITS プラスチックキット “プラノサウルス”

デュオニクス

製作/ウラベヒロト(アーミック)
骨格図・解説/ G. Masukawa(GET AWAY TRIKE!)

プラノサウルス テリジノサウルス
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン●1540円、発売中●約18cm●プラキット


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G. Masukawa

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