【コードギアス 新潔のアルマリア】ep03「この再会はきっと運命」
2025.03.07 一方、日本から遠く離れたハワイ近郊の海中深くを、一隻の潜水艦が進んでいる。そのブリッジの席を埋めるのは、今はなきブリタニア軍の軍服に身を包んだ者たち。艦長席に座る体格の良い男も将軍用の軍衣を身に着けている。ジョゼフ・グラナード。かつてブリタニア軍で“大佐”を務めていた男だ。
「グラナード“将軍”、首尾はどうなっている? “エリア11”での作戦は失敗したと報告が入っているが?」
通信は開かれているが、グラナードの視線の先のモニターは黒いまま。しかし、グラナードは構わず会話を続ける。
「問題ない。襲撃は失敗したが、目標はここハワイに向かっている」
グラナードが目線を移すと、別のモニターに表示されている地図の光点が日本からハワイへと移動しているのが見える。
「向こうから来てくれるなら好都合だ」
と、不敵に笑むグラナード。
美しい海に夕日が沈もうとするハワイ。オレンジ色に輝く海に面したレストランのテラスでハクバたちがテーブルを囲んでいる。テーブルには溢れんばかりのハワイ料理。念願のご当地料理にサトリが目を輝かせている。
「わあっ! 念願のハワイ料理! いただきまーす!」
「しかし、すごい量だね。三人でも食べきれるか……」
「何言ってるの。ドクはもっと食べたほうがいいって。大きくなれないよ」
「これ以上背が伸びたらナイトメアの整備がしづらくなるから大きくならなくていい」
「まあまあ。無理して食べる必要はないが、飯は食える時に食っといたほうがいいぞ、ドク」
「ハクバがそう言うなら……。いただきます」
「もう。ハクバには素直なんだから」
束の間の休息。任務のことをしばし忘れ、他愛のない話をしながら食事を楽しむハクバたち。
「それでね。事務所の裏で黒猫が……、きゃっ」
夜になろうとする海から強めの潮風が吹く。
「夜になって少し風が出てきたな……、うん?」
ハクバの視界に風に乗った小さな白い帽子がふわりと浮いている。
「よっ、と」
その帽子が地面に落ちる前にすっと手に取る。
「これはまた可愛らしい帽子だ」
と、飛んできた方向を見やるとそこには、驚いた表情を浮かべる少女が立っている。ハクバには、その少女に見覚えがあった。
「あれ? お嬢さんは香港の?」
「ミスター? もしかしてあのときのミスターですの?」
可愛らしい足取りでハクバのもとにやってくる少女。ひとりだけ面識のないドクは、「あの子は?」とサトリに耳打ち。サトリも「ほら、香港のミッションで助けた子」と小声で返す。
「まさか、もういちどお会いできるとは思っていませんでした。ミスター・ハクバ」
「俺もさ。お嬢さんはどうしてここに?」
「それは……」
「あら、お知り合い?」
少女の後ろからやってきたのは、長い髪で片目の隠れた美しい女性。ピースマークのエージェント、レディ・レディ。しかし、彼女の正体をこの時のハクバは知らない。
「ええ。いぜん、あぶないところを助けてもらったんです」
「レディ。あなたはこのお嬢さんの?」
「はい。身のお世話をしている者です。その節はお世話になりました」
レディ・レディはにこやかに答える。
「そうか。あのあと、無事に帰れたんだな。どうだろう? よかったら一緒に食事でも」
手にした帽子を差し出すハクバ。サトリとドクもにこやかに笑顔を浮かべるが、対する少女のほうは残念そうな顔をしている。
「すてきなお誘いですわ。でも、これからどうしてもやらないといけないことがありまして……」
と、しょんぼりしながら帽子を受け取る。
「申し訳ありません。せっかくのお申し出なのに」
レディ・レディも少女の隣で頭を下げる。
「いや、用事があるなら仕方ないさ」
「ですが、つぎにお会いしたときはかならず!」
「ああ。約束だ」
にこやかに返すハクバにとびきりの笑顔を見せる少女。ハクバたちは、手を振りつつ去る少女たちを見送る。
「あの子、無事に戻れたんだね。よかった」
「お付きの人がいるってことは、良いところの子なんだね。話し方も丁寧だし」
「かもな。そう言えばあの子の名前、聞き忘れたな」
ハクバの視線の先のふたりの姿は、夜の闇の中に消えていった。
夜が明けて超合集国の本部へと赴いたハクバたちは、広いロビーで受付を済ませると、ラクシャータの執務室のあるフロアへと向かう。
「しかし、すごいね。昨日の今日で、あのラクシャータ・チャウラー博士のアポが取れるなんて。多分、世界で忙しい人トップ5に入る人だよ」
「そんなに?」
「そりゃそうさ。超合集国の世界科学委員会会長に国際保険機関相談役。超合集国大学名誉学長でありながら、超合集国ボランティア事務局顧問や世界公共安全調査庁非常勤委員、合衆国インド厚生大臣相談役までやってる人だよ」
珍しく興奮気味に話すドクの言葉にサトリが目を丸くする。
「それだけ姫の影響力が強いってことだな。超合集国の議長を退き、日本の代表を辞任したあとでも顔が利く」
「姫さまのおかげで仕事はスムーズに進むし、美味しいものも食べられるってわけだ」
「サトリ……」
「ははっ。まあ、そういうこった」
ラクシャータの執務室を目指してアラ・モアナ・ビーチを臨む大きな窓のある廊下を進んでいると、目的の執務室から一組の男女が出てくる。
「では、良いお返事が聞けることを期待しています、チャウラー博士」
男のほうが軽やかに挨拶する一方で、女のほうが深々と頭を下げる。その対比が印象的なふたりもハクバたちに気づき、軽い会釈をして立ち去る。
「先客がいたのか」
去っていくふたりの背を見るハクバ。
「パイレックスの社長のマシュー・ブラキストンだね。大物だ」
と、サトリがぽつりと呟く。サトリの言う通り、男のほうは、製薬会社パイレックスの若き社長マシュー・ブラキストン。女はその秘書であるミリガン・ジョリーンだった。
「パイレックスって大手製薬会社じゃないか。社長ってあんなに若いんだ。でも、よくわかったね、サトリ」
「私、人の顔と名前は忘れないから」
「そうだった。普段はバカっぽいから忘れがちなんだよな」
「なっ! シンプルに悪口!」
「こらこら。こんなところでケンカするんじゃない」
相変わらずの口ゲンカをハクバがなだめようとしていると、荒々しく扉が開いて、部屋の主であるラクシャータが顔を出す。
「なんだい! 人の部屋の前で騒々しい……、ってアンタたちかい? 神楽耶の言っていた……」
ラクシャータがハクバたちの姿を認めるや否や、フロア中に警告音が鳴り響く。
「何だってんだい!?」
「……あれか!」
素早やく周りを見渡したハクバが、窓から見えるママラ湾沖に、数機のナイトメアを乗せた揚陸艇がビーチを目指しているのを発見する。
ハワイ沖の海中。潜水艦のブリッジでモニターしているグラナードが不敵に微笑む。
「さあ、出てきてもらうぞ」
ep03 END
【コードギアス 新潔のアルマリア】
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