ディオラママイスターに訊く! 模型テクニック【コジマ大隊長】
2021.06.25ディオラママイスター/コジマ大隊長 (ゴジラvsコング【BANDAI SPIRITS】) 月刊ホビージャパン2021年8月号(6月24日発売)
Diorama Meister
ディオラママイスター
コジマ大隊長
ディオラママイスターは、月刊ホビージャパンで多くのディオラマをコンスタントに製作しているコジマ大隊長。今回製作したのは『ゴジラvsコング』。今回は艦船部分の仕上げについては記事後半で解説しているのでそちらも要チェックだ。
ディオラマ製作のポイント
ディオラマとは時間と空間を切り取ることで成立するもの。さまざまな角度から見たときの役者と余白のバランスや角度、流れゆく時間軸の中のどの瞬間を切り取るのかを、「コレ!」という発見に出会えるまで根気よく探すことに尽きるのではないでしょうか。
今回は空母の長い船体をやや斜めに配置することで、進行方向の暗示とこれまでの軌跡を象徴する引き波を対角線上に配置し、動きと奥行きを感じさせるシーンを切り取ることができました。
可動モデルを固定する
キャラクターを用いたディオラマ製作においては、可動モデルを使用する機会も多くなります。少しもったいないですが、見映え重視のためにポーズを決めたら関節を埋めましょう。
水面の表現
今回は海上というシチュエーションのため、水面の表現をメインに解説していきます。
破壊神(ゴジラ)と守護神(コング)の闘いをディオラマ化!!
Here we go!
『ゴジラvsコング』より、予告編でもおなじみの名場面、甲板上での激突をイメージしたディオラマをコジマ大隊長が製作。二大怪獣は現在発売中のS.H.MonsterArtsを使用し、ステージとなる空母には劇中スチールのサイズ感に合うようにイタレリの1/720カールビンソンをチョイスしている。海面表現、艦船の仕上げ、そして生物表現とマイスターの腕が存分に発揮されたディオラマとなっており、映画公開に向けてボルテージが高まること間違いナシな作例だ。
■初めに
今回の特集ではモデリングライター10年目の節目に「ディオラママイスター」に選出していただきましたので、僭越ながら話題の映画『ゴジラvsコング』の名場面を再現した作例で華を添えたいと思います。
■いきなりピンチ!
編集部で企画の打ち合わせを行ったのがGW直前ということもあってか、いきなりニミッツ級空母がどこも欠品という大ピンチに遭遇! 連休の引きこもり特需の影響か量販店やネットでも軒並み品切れという状況。困り果てた末にとある個人営業のお店で相談したところ、「イタレリの1/720カールビンソンなら在庫がある」と返事が…。この機を逃したら企画自体が成り立たないので、すかさずGET! ただし付属の艦載機がF-14とFA-18だったため、ピットロード製の最新ステルス機セットも購入し、怪獣になぎ倒されるF-35Cも無事確保。なんとか準備ができました。
■シチュエーションについて
残念ながら映画の公開が延期されてしまい製作段階では本編を見られていないのですが、YouTubeで予告編を繰り返し確認してイメージを構築。艦番号が写っておらず空母の特定ができなかったため、今回は忠実な再現というよりは「らしさ」重視の方向性で、艦橋や艦尾のレドーム追加など予告編で見える角度からの解像度を上げていく工作を加えていきました。
艦船模型のスケール感をアピールする上で欠かせないエッチングパーツですが、1/720というイレギュラーなスケールのものは入手できなかったため1/700ワスプ級用のものを活用しています。手摺りや落下防止ネット、レーダーなど手の入れがいのある部分にエッチングパーツを使い、さらに伸ばしランナーでマスト周りの張り線を丁寧に追加しました。こうするとディテールがグッと鮮明になりますね。
そしてこのディオラマを語る上で欠かせないのが海面の表現。いくつかの試作を経て1/700前後のスケールにおいての最適解を模索した結果、石粉粘土で大きな波のうねりを造形して水性アクリルで着色し、ツヤ出しニスで光沢感を出しています。
■洋上対決!
今回の主役であるゴジラとコングはS.H.MonsterArtsを使用しています。どちらも細密なモールドと良好な可動性を備えているので、それらを活かしつつ進めていきます。
両者を空母甲板に配置し、激突寸前のポーズを決めたら関節を瞬間接着剤で固定。隙間にマジックスカルプを充填して周囲のディテールと馴染ませるように彫刻していきます。一気にやると硬化して作業できなくなるので、数回に分けて丹念にモールディング。最終的にサフを吹いたときに元の皮膚との境目が分からなくなる仕上げを目指しました。
■塗装
塗装では、ゴジラは寒色系に振ってドライブラシでコントラスト強めのハイライトを入れることで硬質感のある皮膚を表現。一方のコングは獣毛を暖色系の数色で塗装、毛並みを細筆で描き込んで両者の対比が明確に出るように調整しています。
■終わりに
コロナ禍という未曾有のアクシデントにより映画の公開が延期されるなどさまざまな影響が出ているこの頃ですが、外出自粛を機にプラモデルやディオラマの楽しさを再発見された読者も少なくないはずです。我々モデラーはこれからも皆様の知的好奇心をくすぐる作例を作り続けて参りますので、ぜひ今後も楽しみにしていてください!
BANDAI SPIRITS ノンスケールPVCモデル“S.H.MonsterArts”
GODZILLA FROM GODZILLA VS. KONG(2021)、
KONG FROM GODZILLA VS. KONG(2021)使用
ゴジラvsコング
ディオラマ製作・文/コジマ大隊長
S.H.MonsterArts GODZILLA FROM GODZILLA VS. KONG(2021)
●発売元/BANDAI SPIRITS コレクターズ事業部●6600円、発売中●約16cm
S.H.MonsterArts KONG FROM GODZILLA VS. KONG(2021)
●発売元/BANDAI SPIRITS コレクターズ事業部●6600円、発売中●約14.5cm
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コジマ大隊長 (コジマダイタイチョウ)
ライター歴10年のベテラン。セミスクラッチやディテールアップ、ウェザリング塗装など、あらゆる技術に精通しており、月刊ホビージャパンではその技術を活かして『OBSOLETE』のヴィネットや大型のディオラマを多く手掛ける。