成層圏を舞う黒髪赤眼の龍夫人(ドラゴンレディ)
ロッキード U-2D ドラゴンレディ 赤外線検出システム搭載型
2021.06.24
1950年代から活動するアメリカ空軍高高度偵察機U-2。2019年にAFVクラブから1/48スケールの秀作キットがリリースされたのも記憶に新しいが、このほど発売のU-2Dはコクピット後部の偵察カメラを下ろしIR(赤外線)センサーとその操作員を乗せた複座型となる。当初はソビエトの核ミサイル発射を監視する目的だったが、実際にはX-15ロケット実験機の航跡追尾や各種センサー類のテスト用として運用された。新金型で再現されたクリアーパーツのIRセンサーや後部座席など、ブラックとシルバーに塗られたシックなフォルムに新たな魅力を加えている。
■“ドラゴンレディ”のマイナーバリエーション
U-2Dはミサイル探知センサー搭載の複座型で、U-2Aから4機(5機?)のみ改造された超マイナーなバリエーションですが、AFVクラブから単座型U-2A、エンジン強化型U-2C(前期型/後期型)に続くバリエーションとして1/48スケールで発売されました。全体としてはパーツの合いも良好ですが、あちこちに軽いヒケが見られるので、ていねいに処理しましょう。
前席やシートの繊細なモールドをドライブラシで強調し、エッチングのシートベルトを調達して付けました。キャノピー内面は白の指定ですが、D型の写真を見る限り黒と判断。後席やセンサーに関する資料はマイナー過ぎてまったく見当たりません。キットの後席もモールドがいっさいなくツルツルですが、風防を開状態に改造しない限りほとんど見えないので、シートベルトを付けただけです。
前脚は最後に着けられるように加工します。ドリフトサイト(パーツH13)も機外に出る部分を切り取っておき、最後に付けます。インテークだけは合わせ目が目立つのでパテ埋めし白で塗装。エアブレーキは断面形状が若干異なる印象だったので閉状態にしました。バックミラーはD型には見当たらないので付けていません。
追加工作として、主翼と垂直尾翼の燃料放出口を開口、胴体下面の黒いブレードアンテナと上面の赤いナビライトを追加、後席キャノピーの開閉ヒンジのスジ彫りを追加しました。
■塗装とマーキング
マーキングは塗装図Aの66722号機にしました。ツヤ消し黒と無塗装シルバーのツートンカラー。資料によればブルーブラックですが、カラー写真で青味はほとんど感じられないので単純な黒で塗装しています。
無塗装のジュラルミンは、工場完成直後や磨きあげた直後はピカピカですが、1回でも高速飛行すると摩擦熱でツヤ消しになるそうです。写真でも両方の状態が確認できます。ツヤ消しシルバーのほうが作業は楽なのですが、見映えを狙ってグロス仕上げにしました。
塗料はガイアノーツのプレミアムミラークロームを使用しました。塗装面は下塗りなしのツルツルのプラ地が理想とのことですが、キットは全面ツヤ消し黒のU-2Aがデフォルトらしく梨地の表面仕上げなので、表面をひと皮むく感じで磨き上げてから塗布しています。
デカールを貼っても余白部分の輝きは落ちませんが、余白の段差が目立ちクリアーコートが必要なようです。いろいろ考えて、まず木工用ボンドを薄く吹き付けて1層目コート、ラッカー系クリアーで2層目コート、デカールを貼り3層目クリアーコートを行い、段差を目立たなくさせました。輝きはわずかに低下しますが、今のところこれが最善のようです。
マルチセンサー部は箱絵では黒ですが、塗装図では銀の指定。写真では明るく写っているので銀にしました。機首先端は箱絵を参考に黒に塗りましたが、66722号機の写真をよく見ると、塗装図の上下塗り分けが正しいようです。
■タラップのスクラッチ
大昔の航空雑誌を見ていたら、U-2用の屋根付きタラップを見つけました。写真から大きさを割り出しプラ棒細工で作りました。プラ棒の組み上げは強度は出ませんがお手軽です。キャンバス部分はキットのデカール保護紙を塗装して使用、組み上げて塗装したフレームにミシン糸で取り付けました。
AFVクラブ 1/48スケール プラスチックキット
U-2D 高高度偵察機 ドラゴンレディ 赤外線検出システム搭載型
製作・文/竹内尚志
U-2D 高高度偵察機 ドラゴンレディ 赤外線検出システム搭載型
●発売元/AFVクラブ、販売元/GSIクレオス●10560円、発売中●1/48、約40.0cm●プラキット
竹内尚志(タケウチタカシ)
コロナ禍のステイホームのお陰なのか、我がサークルでも例年以上のペースで続々と新作が完成している。今年の作品展は新作限定で開催できるかな!?