HOME記事キャラクターモデル塗りたいイメージを表現できる! ライター・フミテシが作例とともに筆塗りに大切なことを紹介!【特集 ラッカー塗料から水性塗料までいま筆塗りが楽しい!】

塗りたいイメージを表現できる! ライター・フミテシが作例とともに筆塗りに大切なことを紹介!【特集 ラッカー塗料から水性塗料までいま筆塗りが楽しい!】

2024.08.03

「筆塗りTribe」に魅せられて/戦闘メカ ザブングル 重装備バージョン【ハセガワ 1/72】 月刊ホビージャパン2024年9月号(7月25日発売)

ホビージャパン連載「筆塗りTribe」に魅せられて。

筆塗りTribeが教えてくれた、筆塗りの大事なこと。

 すべてのプラモデルを対象に、筆塗りの楽しさをみんなで共有していく月刊ホビージャパン人気連載「筆塗りTribe」。そのコーナーの構成やテキストを担当しているライター・フミテシもまた、いま筆塗りに夢中になっているモデラーのひとりです。彼は連載記事を作る時のHow to撮影で直にモデラーの筆塗りを見て、実際にさまざまな手法でプラモを塗装したことで自身の筆塗りスタイルが大きく変化したそうです。
 特集の始めに、「筆塗りTribe」に魅せられて変化したフミテシの筆塗りとの向き合い方や、大きく変わった模型製作スタイルについて、プライベートで製作したハセガワの「ザブングル 重武装バージョン」を例にしながら聞いていこうと思います。

テキスト/フミテシ

──塗りたいプラモのイメージを持つ」だけで自身の筆塗りが変わる

「筆塗りTribe」連載の出発点となった清水圭さんによる「リガード」(本記事下方で紹介)。この作例をきっかけに「こんなふうに塗ってみたい!」というひとつのイメージができあがりました。清水塗りと出会ったことで、筆塗りに対する見方が変わったんです。それ以前の僕の筆塗りは、いろいろ考えながらも漠然と塗っていたんだと思います。それこそ、筆塗りは塗る人によってまったく塗り方が異なります。ひとつ「こんなふうに塗ってみたい!」というイメージが決まれば、いろんな人の作例を見る時も、どのように塗っているのか? を自分なりに分析するようになりました。そうすることで塗る前に作戦を立てる、塗りあがりをイメージすることができます。イメージを持つことで「なんか違う……汚いかな……」という不安や失敗からも遠ざかることができたのです。いま僕が塗り重ねているタッチの向こう側のイメージ。それがあなただけの表現を導き、模型をさらに楽しませてくれるのです。

マスオ塗り

▲成型色の上からなるべく均一に塗り上げていくのがマスオ塗りの特徴。クリーンな雰囲気に仕上がる

清水式筆塗り

▲暗めの下地の上に、少し暗めの1色目を塗り、そこにもう一段明るい2色目を塗り重ねることで色の情報量が増え、重厚な仕上がりになる塗り方

──誰もやっていない!?「縦縦横横塗り」。そして「筆ムラ」という言葉との訣別

「ムラができる。均一に塗れない」。筆塗りでよく言われることですが、そのムラや筆目というのは筆塗りでしかできないご褒美です。筆塗りTribeに出演するモデラーは全員そんなことを言っている、ちょっとだけパンクな人たちの集まりです。彼らの筆塗りを実際に収録で見た時、昔から均一に塗るための技法としてよく言われていた「縦縦横横塗り」を誰もやっていませんでした。彼らが意識していたのは、パーツがかっこよく見える方向、重力方向に沿った筆目(筆跡)を通して模型をかっこよくするという塗り方でした。ムラではなく筆目をタッチや表情と捉える。そしてそのタッチを自分のイメージと重なるように高めていく。そうすると、目の前にあるパーツの塗面に「ムラ」という言葉は存在しなくなるのです。アディオス……筆ムラ。

▲特に何も考えずに下地を覆うことだけ考えて塗っていた頃。塗膜は厚くなり、塗りあがったあとも表情のないつるんとしたものになっていた
▲下地の透け具合、筆を動かす方向、筆目によって生まれる情報量……塗り方ではなく「意識」を変えるだけで、一気に模型の見映えが変わることを知った

──塗る場所を選ばない。プラモが生活スタイルに溶け込む

 本特集は「筆塗りを楽しむライフスタイル」というテーマも込められています。プラモには、「どんなに成型色で色分けされていても、塗ってみたくなる」という魅惑的な魔法が込められています。この魔法のお誘いに即座に答えることができるのが筆塗りです。準備も少なく、リビングやお部屋の机の上を舞台にすぐに塗装を楽しめます。連載で活躍しているモデラーの中にはリビングで塗っている方も多く、いまでは僕もそのスタイルを真似しています。家族がいる前ではスプレーを吹くわけにはいかなかったのですが、いまではリビングで家族とも話をしながら模型が楽しめて、僕の趣味や仕事もより理解してもらえるようになり、より円滑な生活が送れるようになっています。筆塗りを楽しむようになって一番よかったことだと思っています。

▲100円ショップに売っているA3サイズのMDFボードが僕の塗装スペース。これをリビングのテーブルや自室のテーブルにポンと置いて塗装している。塗装したい場所に移動して、どこでも塗装ができる手軽さがある

もはや筆塗りは「飛び道具」ではない。模型誌の記事を見て手を動かした結果完成に至った「ザブングル」。

水性ホビーカラーを駆使した清水式筆塗りに感動

▲筆塗りTribe連載1回目として掲載された、清水圭による「ハセガワ 1/72スケール リガード(標準量産型)」の作例(月刊ホビージャパン2022年7月号掲載、単行本「凄腕モデラーのプラモ筆塗りスタイル」に収録)
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「水性ホビーカラー」筆塗りでここまでできるのか! と衝撃を与えてくれた作例。下地に塗装したグレーを活かして塗っていくこと、塗料を混色せずに模型の上で違う色を塗り重ねて色の情報量を増していく塗り方は多くの読者から反響を得ました。僕もこの塗り方がすごく好きで、ザブングルもガイアノーツのメカサフ ヘヴィを塗った後に、各基本色を塗装しています。

きの助レッド。赤の塗り重ね

▲筆塗りTribe連載2回目として掲載された、きの助による「エレール 1/24 ファーガソントラクター」の作例(月刊ホビージャパン2022年8月号掲載、単行本「凄腕モデラーのプラモ筆塗りスタイル」に収録)
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 重めの赤を塗った上から、鮮やかなオレンジを塗る…。そうすることで生まれる絶妙な赤色はこのザブングルの塗りの大きなヒントになっています。トラクターはラッカー塗料で塗られていましたが、水性ホビーカラーでも同じことができると思い、僕はモンザレッドを塗った上から、より透け感が強く鮮やかな「蛍光オレンジ」を塗ることで、トラクターの塗りのような雰囲気を出してみました。

大森記詩によるトムキャットの本体塗装

▲筆塗りTribe連載3回目として掲載された、大森記詩による「タミヤ 1/48 グラマン F-14A トムキャット(後期型) 発艦セット」の作例(月刊ホビージャパン2022年9月号掲載、単行本「凄腕モデラーのプラモ筆塗りスタイル」に収録)
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 パネルラインの表情や、使い込まれた汚れも盛り込んだ上で基本塗装していくのが大森氏の塗り方。この塗りを脚部の白塗装でチャレンジしてみたいと思って塗ってみました。パネルラインはスミ入れせず、下地のメカサフ ヘヴィを残し気味にして塗装し、より自然な陰影になるように狙って塗っています。

水性ホビーカラー筆塗りでできること

 現行の水性ホビーカラーはほとんどラッカー塗料と同じような感覚で使用できるほど進化しました。低臭、速乾、色味の充実といまもっとも勢いのある塗料といえます。そして僕がこの塗料を好んで使っている理由のひとつに「強度」があります。乾燥後は非常に硬質な塗膜となり、運搬したり軽く引っ掻いたりする程度では剥がれません。ウェザリング塗料への耐性もほぼ完璧で、このザブングルも全体にタミヤエナメルのダークブラウンでウォッシングしたり、Mr.ウェザリングペーストを塗っては綿棒でゴシゴシ擦っています。それでも塗膜へのダメージはほぼなし! ラッカーのコートスプレーを数回吹いても目に見えるダメージはないほどです。気兼ねなく家庭で塗装ができて、さらに自分が塗りたいイメージを思いっきり表現できる……「水性ホビーカラー」は僕にとって最高の塗料なのです。

塊を感じながら塗り上げられる楽しさ

▲これは筆塗り全般にいえることであり、筆塗りの楽しさを象徴する事象。パーツをバラバラにすることなく、ある程度塊のまま塗っていけるので完成形が見えやすく、塗装のテンションも高い状態を維持したままどんどん塗っていける。はみ出しても塗り潰せば修正できる手軽さも魅力

水性ホビーカラーのラインナップが充実してきた

▲通常ラインナップだけでなく「水性ガンダムカラー」のような特色が充実してきた。このような特色は現在の模型シーンでの流行色を反映したラインナップとなっているので、まさに「いま欲しい色味」が拡張されているのだ

エマルジョン系水性塗料のススメ

▲付属のフィギュアは、ミニチュア界の横綱塗料「シタデルカラー」で塗装。水性ホビーカラーを凌駕するノビのよさは、小さいプラモを塗るのにとても力になってくれる。塗料の使い分けも筆塗りのポイントといえる
▲こちらがウェザリング前。この状態もかっこいいぞ! と思ったので撮影した。メカサフ ヘヴィの下地の透け具合をコントロールすることで、汚しの工程なしでも重厚感ある仕上がりを堪能できる
▲ウェザリングした状態。筆塗りのタッチとウェザリング塗料が混じり合い、エアブラシ塗装ではなかなか得られない仕上がりとなる。水性ホビーカラーの塗膜の強さによって、ハードなウェザリングもなんのその

ハセガワ 1/72スケール プラスチックキット「戦闘メカ ザブングル」

戦闘メカ ザブングル 重武装バージョン

製作・文/フミテシ

©創通・サンライズ ©1982 ,1984 BIGWEST

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フミテシ

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