HOME記事スケールモデルタミヤ1/48トムキャットは最強の筆塗りキャンバス!『トップガン』の名機「F-14A」を製作【筆塗りTribe】

タミヤ1/48トムキャットは最強の筆塗りキャンバス!『トップガン』の名機「F-14A」を製作【筆塗りTribe】

2022.08.13

筆塗りTribe 『トップガン マーヴェリック』スペシャル 月刊ホビージャパン2022年9月号(7月25日発売)

タミヤ1/48トムキャットは最強の筆塗りキャンバス!『トップガン』の名機「F-14A」を製作【筆塗りTribe】

タミヤの1/48 トムキャットは最強の筆塗りキャンバス!! 大胆に攻めようぜ

 プラモを筆塗りでガンガン楽しんでいるナイスなパイセンたちの作品とテクニックをみんなで読んで、テンションアゲアゲでどんどん筆塗りを楽しんで行こうという連載「筆塗りTRIBE」。今回は『トップガン マーヴェリック』後夜祭と言うこともあり、タミヤの究極の飛行機模型「1/48 グラマン F-14A トムキャット(後期型) 発艦セット」を筆塗りで仕上げます!!!
 担当した大森記詩は「デカいからとっても筆塗りがしやすい!! まるで大きなキャンバスのよう!! こんなに筆塗りが楽しい飛行機模型はないです!!」というほど、筆塗りを受け入れてくれるジェット戦闘機プラモ。その言葉通り、まるでタミヤのパッケージイラストが飛び出してきたかのような、生き生きとした素晴らしい作例が仕上がりました。トムキャットの筆塗り……最高に楽しいこと間違いなしです!!!

今回のパイセン

大森記詩/東京藝術大学 彫刻科を卒業。ここ数号の月刊ホビージャパンではキャラクターモデルを筆塗りで仕上げた作例を披露。今回は大好きな飛行機模型で、彼の腕を振るってもらったぞ! 


筆塗りの準備をしよう!!

主に文盛堂の筆を使っています

▲上野文盛堂の特選セットの筆を使用。手に入れやすく、安価なのでガシガシ使っているとのこと

大学で出会った「VAN GOGH」

▲大学でプラモの筆塗りをしたいな〜と思って大学の生協に行った時に買ったのがきっかけ。ヴァン・ゴッホって……というストレートな名前にも惹かれました。癖がなく使いやすい筆です

ノーブランドの筆も心強い

▲Amazonなどで大量に購入できる安価な筆。ドライブラシや、工作時のパテ盛り、サフ塗りなど、筆がダメージを負う作業をする時にはこういった筆を使います

細部塗装はこの筆で!!

▲上野文盛堂の精密面相筆で、細部を塗っています。こちらはとても気に入っているので、お手入れも他の筆より念入りにしています

メインのグレーはタミヤラッカーで塗って行きます!

▲ライトグレイ、ライトゴーストグレイはタミヤラッカーを使用。またタミヤラッカーに合わせた、リターダー入りのラッカー溶剤も使用。この溶剤がとてもご機嫌で、筆塗りがすごくしやすくなります


パレットは陶器皿で

▲陶器のお皿の硬さが、筆先の塗料の量を調整するのにとても良くて使っています。溶剤にも強いので、使っていて安心です

モロゾフのプリン容器は筆洗い専用

▲筆を小まめに洗いながら塗って行くのですが、そのために常に筆洗い用の溶剤をこちらの「モロゾフのガラス製プリン容器」に入れています。適度な重さがあるので、筆を洗っている時も倒れることなく安定します

Point

1/パネルラインが最初から影になるように「黒」下地で攻める
2/パネルラインを意識して筆塗り
3/クリアーカラーで調色し、機体表面の汚れも同時進行で塗り込んでいく
4/各所のツヤ感を変える
5/塗装中にさまざまな筆に持ち替えてタッチの変化を出す

缶スプレーのMr.カラーのサーフェイサーブラックで下地塗装

パネルラインに黒がシッカリ入るように全体を黒で塗る!

▲最後のスミ入れでパネルラインを強調するのが好みではないので、予め黒下地にして、この黒がパネルラインやモールドに残るように筆塗りしていきます


内部の白は先に塗っておきます

▲脚庫などの内部は、ランナー状態で先に塗っておくと楽です

目立たないので雰囲気重視でOK

▲完成後、覗き込まないと見えないような場所は雰囲気重視でOK!

ラッカー塗料を使用していきます!!

▲記事内上部で紹介した通り、機体色は、タミヤラッカーのライトグレイに、ライトゴーストグレイを使用。この色にこの写真の塗料をちょい足ししながら塗って行きます。特にクリアーオレンジとクリアーブラウンが最高の働きをしてくれます

まずは暗めのグレーを塗って行きます!

 いきなりグレーを発色させるのではなく、暗めに調色した黒に近いグレーで覆います。明るいグレーで一気に塗ろうとすると、無理に発色させることになり塗膜も厚くなりがち。暗い色を薄く塗って、だんだん明る色を塗って行くのがポイントです。


使う色全色を皿に出します

▲ラッカー塗料は乾燥しても溶剤で復活するので、使いたい分だけさらに一気に出してしまいます

ツヤ消しクリアーも皿に出しておくのがポイント

▲色の変化以上に、ツヤの変化は飛行機模型筆塗りでは超効果的です。ツヤ消しクリアーを皿に移しておいて、マットな質感で塗りたい箇所を塗る時に、適宜加えられるようにしておきます

皿の端で色をコントロール

▲調色する時は皿の端を使います。中央で色を混ぜてしまうと、混ぜたくない色も混ざってしまったりして調色するのが難しくなります

暗めのグレーを作りました!

▲トムキャットのグレーとはかけ離れた暗さのグレーが完成。これをまずは塗って行きます

表面をさっと覆う程度でOK!

▲スジ彫り部分を塗りつぶさないように、暗いグレーを全体に塗って行きます

下地の色なのでこのくらいラフでOK

▲筆塗りでは「1色ごとにしっかりと塗りつぶそう」としがちです。下地を完全に隠蔽しないことで情報量や雰囲気も増します。各色重ねた時に「結果的に良く見える」というイメージを持って塗って行きます

クリアーカラーを混ぜたグレーで機体汚れも同時に塗って行きます

 クリアーオレンジやクリアーブラウンをグレーに足して、汚れた感じのグレーを作ります。クリアーカラーを使うのは、濁りなく色味を変えられるからです。これを最後に塗るのではなく、機体塗装と同時進行で塗って行きます。そうすることで自然な雰囲気の汚れた雰囲気になります。またパネルごとに若干異なる色味となり、情報量が増えます。

▲先ほどの暗いグレーにもクリアーブラウンやクリアーオレンジを混ぜます
▲塗る場所は完全に好み。記詩はパッケージイラストを参考に、汚れている場所などに塗っていました
▲汚れたグレーが塗られているのが分かります。この上から明るめのグレーを塗ったりすると、黒の下地の箇所とはまた違った色味のグレーになります

グレーを立ち上げていきます!

 ここから本格的に機体色を塗って行きます。塗料皿にライトグレイとライトゴーストグレイを移しましょう。その後、先ほどの暗いグレーを混ぜながら塗って行きます。


お皿にグレー2色を移します

▲皿の端で、グレーを調色します。このグレーもそのまま塗るのではなく、先ほどの暗いグレーを加えて暗めにしたものを作ります。そしてだんだん明るいグレーにしながらトムキャットにグラデーションを加えていきます

1ヵ所をチマチマ塗らない!! 満遍なく塗って行きましょう

▲細かくチマチマと塗るのではなく、広い面を満遍なく塗って行きましょう。そうすることで全体の色味の確認もできます

これだけ差が出る!!

▲暗めのグレーの上に塗り重ねた所と、クリアーブラウンやオレンジを混ぜたグレーに塗り重ねた部分では、ここまで表情が変わります。塗り重ねるたびにグレーを明るめに調色して、機体色のイメージに近づけていきましょう

さまざまな筆に持ち替えてタッチに変化を加えます!

 平筆で塗り重ねるだけでなく、ボロボロの筆で叩いたり、細い筆で線を描くように塗ったりしましょう。筆跡による情報量の追加が可能です。

使い込んだ筆は最高のアシストをしてくれます

▲使い込んで穂先がバラバラになった筆で、叩くように塗ってみます。するとランダムな筆跡が生まれ、描くとは異なる不規則な筆跡を模型に加えることができます。これが良い表情を模型に与えてくれます

表面がジラジラ!!! かっこいい!!

▲叩いたことで生まれたこのジラジラ感。描くことではできないような表現も筆を変えて、使い方を変えることで可能なのです

細い筆で線を描くように塗ります!

▲細い面相筆に持ち替えれば、空気の流れを意識した線を模型に足すことができます

グレーの塗装が完了!!

▲真っ黒だったものが、しっかりと塗り上がりました。汚し塗装をしていないのに、この状態で表面にさまざまな情報量が盛られています

青はパッケージイラストを参考に鮮やかな色で攻めます!

 実機や付属のデカールは暗いネイビーだったのですが、パッケージイラストの鮮やかさに惹かれたので、この色味を目指します!

▲パッケージって本当に最高の資料ですよね。このイラストの青は、本当にかっこいいです


まずは暗めの青を下地色に!

▲Mr.カラーのスージーブルーを基本とし、フタロシアニンブルー、ジャーマングレーを混色したもので塗ります

青もだんだん明るくしていくイメージで塗ります

▲スージーブルーを塗装して、鮮やかな青にしていきます

機首と尾翼の色味をチェック

▲尾翼だけでなく機首側にも青が入りますので、塗ったら一度離して見て色味を確認します

ヘキサブルーをアクセントに加えました!

▲最後にヘキサブルーを少量スージーブルーに加えたもので仕上げ塗装。付属のデカールも貼った後にこの色を塗って周囲と色味を合わせています
▲近寄ってみると、さまざまな青がジラついています。単色で塗ることでは表現できない質感です

デカールの上から塗装

▲キャノピーに貼るデカールは、ネイビー部分とパイロットネームが一緒にプリントされています。ネイビーの色味を、機首と尾翼に塗った色に合わせるために、デカールを貼った上から塗装しています
▲最後の仕上げに、全体にタミヤエナメルのニュートラルグレイと少量のジャーマングレイ、フラットブラックを加えたもので各所をウォッシングし、半乾きほどのところでエナメル溶剤を軽く含ませた筆・キムワイプ・綿棒を使用して拭き取りつつ表情をつけました。自然な雰囲気にしたかったので、パネルラインを強調するピンウォッシュはしていません

エンジンノズルの筆塗り

 大型ジェット戦闘機の特徴とも言えるエンジンノズル内の表現。ここは塗料をうまく使い分けて、リアルな表現としました。

▲Mr.カラーのシルバーで内部を塗装。8番シルバーの適度な輝きがちょうどよくマッチします
▲タミヤエナメルのフラットブラックにジャーマングレイを少量加えたエナメルを重ねて筆と綿棒を用いて放射状のラインを描き込んでいます。また、この方法は可変翼機特有の主翼付け根部分に見られる半円状の汚れを表現する際にも用いました。汚れの流れは付属のエフェクトデカールを参考にしています

ノズルの先は色味を変えます

▲ノズルの先のパーツは、より焼けた雰囲気を出すためにエナメルのブラウンやオレンジなども加えた色で塗っています

プラスチックの塊だったものが、筆を動かすことでシームレスに「スケールモデル」になる瞬間がたまらないんです!

スケールモデルとゾイド


──記詩さんは両親も芸術系の方なんですよね
記詩:はい。そのおかげもあって小さいころから物を作るのが大好きで、プラモやおもちゃを楽しんでいました。父もプラモが好きでしたし、母もお仕事の関係で時には模型を作ったり、デザインの良いプラモの箱を収集したりしていました。

──記詩さんはどんな模型が好きだったんですか?
記詩:ゾイドとスケールモデルです。まずはゾイドなんですが、それこそ自分の人生を決定づけさせてくれたほど遊びました。プラスチックの色でほとんど完結していて、組み立てるだけでかっこいい模型が完成する。「色を塗らないで思いっきり楽しめるプラモ」があるという幸せ。組み立ても超楽しいですし、完成後ガシャガシャと遊ぶことがもできる……物作りの楽しさのすべてが詰まっていますよね!! この感覚で「ガンプラ」も楽しんできたので、ガンプラに関しても色を塗らずにあの「きれいな成型色」を楽しみながら遊んでいました。
 それとは対照的にスケールモデルは、どうしても塗りたくなるプラモだったんです。僕は戦車模型をよく作っていたのですが、作った後に公園の砂場とか、家の床に置いたりして遊んでいたんです。その時にプラスチックの単色だとなんか寂しい……景色が繋がらない……と思って、遊びに行く場所に合わせて缶スプレーで好きな色で塗っていたんです。この時に「塗装する楽しみ」というのが芽生えたんだと思います。

筆塗りは、「絵」の雰囲気を模型に投影できる楽しさ


──筆塗りに目覚めたきっかけは何ですか?
記詩僕はプラモの箱絵が大好きなんです。特に筆のタッチが残っているようなイラストは大好きでした。それを見て「こんな風にプラモを塗るのはどうすればいいんだろう?」と思っていたんです。そんな時に横山宏さんの『マシーネンクリーガー』に出会いました。横山さんが塗ったプラモには、横山さんが筆で描いている絵の雰囲気がそのまま投影されていたんです。缶スプレーでよく塗っていた自分は、そこから筆塗りにのめり込むようになりました。

実機ではなく目指すは「ボックスアート」


記詩:実機も大好きなのですが、それ以上にボックスアートが大好き! だからかっこいい箱絵のプラモはついつい買ってしまいます。そしてそのイラストの影や線をよく見て、プラモを塗って行くのが本当に好きなんです。今回のタミヤのトムキャットの箱絵もまるでキャラクターメカのように「青」が鮮やかでかっこよかったので、「この青をかっこよく塗りたいぞ!」と思いながら筆を進めました。
 また、筆を通して何度も模型に触れると「筆が自分の体の一部」になっているような感じがします。そんな時に目の前の模型を塗っていると、プラスチックの塊だったものが筆のタッチで「スケールモデル」になってくる瞬間を体感できます。この瞬間がとても幸せで、「プラモの筆塗りって本当に楽しい」と思わせてくれるんです。

タミヤ 1/48スケール プラスチックキット

グラマン F-14A トムキャット(後期型) 発艦セット

製作・文/大森記詩

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大森記詩

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