ドイツ軍「MG34/MG42」凡庸機関銃の元祖と言われた理由は?【いまさら聞けないすごいヤツ】
2024.07.20いまさら聞けないすごいヤツ!!/MG34機関銃/MG42機関銃●宮永忠将、大森記詩 月刊ホビージャパン2024年8月号(6月25日発売)
いまさら聞けないすごいヤツ!!
MG34機関銃/MG42機関銃
イラスト/大森記詩
「名前は知っているけど、どんなものなんだろう?」「いまさら聞くのもはずかしいなぁ……」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクッと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。
今回は、第二次世界大戦のドイツ軍が使用し、連合軍兵士を苦しめた傑作機関銃「MG34/MG42」をご紹介します。数々のアニメ、漫画、映画でも登場するので見たことがある人も多いと思います。戦車模型の兵士のアクセサリーとしてもメジャーな機関銃。ぜひこの機会に詳しくなってください。
MG34
口径7.92mm
銃身長627mm
使用弾薬7.92x57mmモーゼル弾
装弾数ドラム給弾(50発、75発)、メタルリンクベルト給弾式
作動方式/ショートリコイル 回転ボルト式
全長1,219mm
重量12,100g
発射速度800-900発/分
銃口初速755m/秒
MG42
口径7.92mm
銃身長533mm
使用弾薬7.92x57mmモーゼル弾
装弾数ベルト給弾式、ドラムマガジン式
作動方式ローラーロック式ショートリコイル
全長1,220mm
重量11,6kg
発射速度1,200-1,500発/分
銃口初速975m/秒 884m/秒
MG34
MG42
マシーネン・ゲヴェーア……連合軍を恐れさせた傑作機関銃MG34/MG42
解説/宮永忠将
空冷式機関銃の大傑作
120年も昔の日露戦争で実用性が認められた機関銃は、第一次世界大戦で猛威を振るう。数百人単位の攻撃部隊も、数挺の機関銃があればおびただしい犠牲者とともに消滅してしまう。そんな戦いが当たり前になってしまったからだ。
ただし機関銃には冷却という問題があった。射撃を続けると銃身が猛烈に加熱するので、これを密閉ジャケットで覆って、冷却水を循環させなければならなかった。だから機関銃は重くて簡単に動かせない。陣地や塹壕の防御には最適だけど、攻撃には使いにくい兵器であった。
これを解決するために各国で空冷式の機関銃開発が急がれたけど、実用化の前に終戦へ。ところが第一次大戦に負けて新兵器開発が禁止されていたドイツのラインメタル社は、スイスで秘密裏に空冷式機関銃の開発に着手。軽量な空冷式機関銃MG30の開発に成功した。MGとはドイツ語で機関銃を意味する「マシーネン・ゲヴェーア」の略号だ。
MG30は陸軍が採用するにはちょっと難ありだったのだけど、銃器メーカー、マウザー社の天才技師ハインリッヒ・フォルマーの手で細部の見直しが図られた。そしてこれがMG34として再軍備中のドイツ軍に採用されたのだ。
二脚(バイポッド)を装備した状態でも重量は12.1kgと、機関銃としてはかなりの軽量であることがMG34の特徴だ。取り回しも簡単、空冷式なので水冷ほど持続的な冷却性はないけれど、加熱速度を抑えられるし、所定の弾薬数を撃ったら銃身を交換して、また射撃を続けるという仕組みであった。
汎用機関銃への道を拓く
MG34は素晴らしい空冷式機関銃であった。なにせ射撃速度は1分で最大900発。もちろんこんな弾数の連続発射は無理だけど、狙った場所に短時間で大量の弾丸を撃てるので、結果として命中しやすくなる。
だけどMG34にはひとつ欠点があった。削り出しの金属部品ばかり使っているので、製造に手間がかかり過ぎた。兵器としては豪華すぎたのだ。そこで新たに開発されたのがMG42だ。部品の多くをプレス加工品に改めたほか、弾詰まりしやすいオープンボルト機構を改良した。その結果、反動が大きくなって集弾性は落ちたのだけど、発射速度を1200発/分前後まで増やし、手数で補ったのだ。
そんなMG42が登場してからも、MG34は変わらず重宝された。というのも、戦車や装甲車の銃架はMG34に合わせた設計だったので、車載機銃として不可欠だったのだ。
ところでこの二種類の機関銃は「汎用機関銃の元祖」なんて言われたりする。この時代、他国の似たようなサイズの歩兵携行型機関銃は、マガジン交換式が主流で制圧力に限界があった。それに対して、MGシリーズはひとりでも扱える50発用給弾ベルトや、これを格納できるドラムマガジンがあり、250発入りの弾薬ボックスで運搬できるので、戦闘継続時間が長かった。射撃手と給弾手のペアで運用すれば軽機関銃になるし、要塞などで頑丈な三脚に据えてサポート態勢を固めれば重機関銃や対空機銃にもなる。他にない汎用性が機関銃の可能性を広げたのだ。優秀すぎたMG42は、基本構造はそのままに使用する銃弾だけ変更したラインメタルMG3機関銃となって、今のドイツ連邦軍で使われているのだから、さすがと言うほかない。
トーチカのドイツ兵
MG42はチェーンソーのような射撃音がするので、連合軍将兵は「ヒトラーののこぎり」なんて呼んで恐れていた。ドイツ軍相手の戦争映画では、彼らのアイコンとしてMG42が登場するのもお約束。映画『プライベート・ライアン』の冒頭、オマハビーチに上陸するアメリカ兵を、MG42でなぎ倒していた名もなきドイツ軍機関銃手は特に印象的だ。後に戦争を回顧した連合軍兵士のほとんどは、MG42の話になると口が重くなりながら、控えめな表現で賞賛した。多くの仲間の命を奪った憎い兵器だが、その性能だけは貶しようがない。そんな機関銃なのであった。
最新フォーマットで蘇る「機関銃チームセット」
1974年に発売された名作プラモ「タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.38 1/35 ドイツ歩兵 機関銃チームセット」は、多くの人にMG34とMG42というドイツ軍の代表的な機関銃の凄さを教えてくれた名作でした。その意思を受け継いだプラモデルがこの7月に発売となります!
三脚銃架に載せたMG34機関銃を射撃する重機関銃チーム2名、レンガ塀の陰からMG42機関銃を射撃する兵士、弾薬箱を運ぶ兵士、そしてMP40短機関銃を射撃する指揮官の計5体をモデル化。最新フォーマットでやってくる新たな5人に今から期待大ですね!!
1/35 ドイツ機関銃チーム (大戦中期)
●発売元/タミヤ●1870円、発売中●1/35、約5cm●プラキット
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